10 お話
夏。
セミが鳴いている。
「ふぅ〜。疲れた…げっ……」
俺は思わず小さく呟く。
「凰理なにか言ったか?」
パドの鋭い目線に俺は震える声で答える。
「ナ、ナニモイッテマセンヨ。」
「……」
ソファに座った篠雨が切り出す。
「話ってなんですか。」
何か……最近多いような。
「大事な話だ。訓練中に立ちながら寝るような真似はしないで、ちゃんと聞くように。」
「うぐっ。」
俺は思わず呟く。
烏兎が小声で
「立ちながら寝たん?」
と、呟いている。
パドがため息をつきながら言う。
「二つある。一つ目は凰理のことだ。」
「俺?」
「食堂の使い方が悪い。」
「…帰っていいですか。」
篠雨が静かに言う。
「いや、二つ目が多分大事なんやろ。」
烏兎が立ち上がろうとする篠雨を押さえながら言う。
ちなみに俺は……首を傾げていた。
「普通に使ってるつもりなんですけど……」
そのとき、部屋に入ってきた佐竹が言う。
「あなたが食べすぎて、毎回返却口はいっぱいになって片付けるのは大変だし、作るのも疲れるらしいで
す。」
篠雨が小さく呟く。
「くだらなすぎるだろ。」
「どんだけ食べとるん……」
烏兎が半ばあきれたように言う。
俺は首を傾げながら言う。
「ダメなんですか?」
「ダメに決まってるだろ。」
「え〜。」
「二つ目だ。」
パドが篠雨に書類を渡す。
書類をめくった瞬間、篠雨が硬直する。
何だ……?
「パドさん……ほとんど緑人倒したことない新人と、緑人引きつけて蕾ごと焼くこの大バカ野郎にこれができるんですか……」
「なんかひどくない!?」
俺は思わず言う。
烏兎は納得しているのか何も言わない。
俺は書類を覗き込む。
「新人教育……?」
「できるんか……?」
烏兎が不安そうに言うと
「お前ら二人…というか凰理は期待してない。」
「パドさん、ひどいですよ!」
「黙れ。烏兎なら医療知識を教えられるだろ。それ以外は篠雨がやれ。」
「俺、経験ないんですけど。」
「大丈夫だ。指導相手は指導員が着くたびに、指導員をやめさせてるやつだから、ある程度はできる。」
「なんかさらりとヤバいこと言うてへん?」
烏兎が驚き半分焦り半分というふうに言う。
「少しの間だけだ。普通に任務をすればいい。」
「めちゃくちゃ不安やねんけど……」
篠雨は無言で書類を見つめている。
「指導相手は二人組だ。メンタルケアについては凰理に任せる。」
「え、あ、はい。」
「だが、教育に関しては期待していない。」
「……」
二回目……
「新人二人の教育と、隣のバカを抑えるのは大変だろうが頑張ってくれ。」
パドは篠雨に言うと立ち上がる。
さりげなく色々ひどい……
ミーンとセミが鳴いた。




