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「コウ。晴夏さん」

 揺さぶられて目を開けると、光の中に彼がいた。

「朝になっちゃったよ。俺ら、お酒飲んで寝ちゃったみたい」

 

 ああ、ただ単に朝日が入り込んでいただけか。んー、体が重いのはソファで寝てしまったからか。頭も重いままだけど、彼を送り出さなきゃ。ちゃんと寝られたようで良かった。


「朝ごはん作るから。今日はライブリハでしょう。あまり食材ないわね。KOUSYAKUの二人、起きているかしら?」

 冷蔵庫に何もないのを見て、電話をかけてみると二人とも起きていた。各部屋を廻る。


「久しぶりやな。晴夏さんのご飯」

 (いぬい)皓市(こういち)は、垂れた可愛い目をキラキラさせた。食パンとヨーグルトと共に連れ出した。


「やっぱ、手作りっていいよねー」

 真島(まじま)佳典(けいすけ)は、寝ぐせのまま眼鏡を持って、フルーツとトマトと共に連れ出した。


 みんなステージに立つ状態は万全のようだ。本当はもっと力となるご飯がいいのだろうけど、材料は二人からの提供と冷蔵庫のプリンと牛乳。それらでフレンチトーストとトマトのスープ。フルーツを切って入れただけのヨーグルトとなった。


「いいパフォーマンスしなきゃいけないしね。朝ご飯はちゃんと食べてほしい」

 なにかしらを口にしてという意味で。

「晴夏さんも見に来てくれればいいのに」

「いつも自分はええわって言うよな」

「そうそう。『自分の席がもったいない。その一つでもファンの子を楽しませてあげて』って。席は用意するから関係者席でって言っても、『その席は、お世話になっている共演者の方や後輩たちが来る大事な席だよ』ってさ。実は俺らのステージ見たくない?」

 私は微笑む。

「DVDで十分楽しんでいるから。みんな出ている側だから気づかないかもしれないけど、画面のほうが大きく見えて、君たちの表情も楽しめるんだよね。特典映像もおいしいし」

「ステージの生パフォとDVDと両方楽しめばええのに」

「それは贅沢ねぇ」

 のほほんと朝食を済ませ、社長兼マネージャーの東海林(しょうじ)(かなで)が迎えに来たので家を出る。


『女。ヤツの背中を叩け。結構強めでな』

 ……あ。ダンテのこと忘れていた。女はやめろって。ていうか、夢じゃなかったんだ。姿が見えないけど、とキョロキョロしてみた。

『まだ、波長が完全ではないからカタチが保てない』

 なるほど。


「晴夏さん? どうしたの?」

「ううん。外に出るから、コウね。えいっ!」

「痛っ!」

 黒い靄みたいなのが見えたんだけど。もわーん? だるーん? って沈んで。


『ほぅ。其方、思っていたよりも向いているな。一回で祓えるとは思わなかったぞ』

 それは良かったです。


「何すんだよー」

「ごめんごめん。気合入れよ。気合入れ」

「あ、いいな。俺もやって」

「俺もー」

「うん。えいっ、えいっ」

 二人は少し軽めにしておこう。


「で、なんで僕まで車に乗せられてるん?」

 男装のまま、彼らの迎の車に連れ込まれた私は、浅月コウでしゃべる。


「いやー、こいつらがいつもお世話になっているからね。ライブ会場に放り込んだ後でお食事でもどうかなって思いまして」

「社長。ナンパするなよ」

「えっ。ダメですか?」

「ダメやろ」

「ダメですね」

 いや、この社長にそんな趣味はないと思うよ。もっとも、社長には女だってことはバレているんだけど。

 

 彼らを文字通り会場に放り込んで、奏は神妙に話しかけてきた。

「怖がらせるつもりではないことは承知していてください。あなたに憑いているものがいます。その……ダンテくんだと思うので怖いものではないような」

「えっ。社長さん、視えてるん?」

「えっ。知っていて憑けているんです?」

 

 ……話が早い、のかな。


「ええ、ダンテです。色々ありまして」

「オーラの整った犬だなぁと思っていましたが、なるほど使命がおありのようで」

 訝しげに見ていると、奏はフッと笑った。

「僕にも視えへんのに、目ぇがいいですね」

「家系が住職でして。私も目指していたのですが、どうやら巫女に近い力しかなく、住職は弟に任せたんです」

「住職は巫女的な力があったらダメなんですか? 宗派が違うからとか?」

「ダメではないと思いますよ。ですが、住職は祓う力を重視しますから。私は祓うよりも仲良くなりたい性質でして」

 

 イマイチ違いがわからないけど。


「じゃあダンテは祓われないということで大丈夫ですか?」

「あなたはそう望まれる?」

「はい。僕もダンテも」


「……わかりました。同意の上で依りましとなっているのでしたら、いいことにします。それにしても、二又ですか。可愛いですねぇ」

 なんか興味津々?


「では、お食事に行きましょう」

「え、本当に行くん?」

「え、行かないんですか?」

「だって、社長やねんから見なきゃやん」

「まぁ、それはそうかもしれませんがね。おなかすいていません?」

「別に」

「あ、そうだ。ここのお弁当を拝借して、ライブリハ見ながら食べます?」


 全然人の話を聞かない人だなぁ。


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