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ある龍の物語  作者: まっこ
第3章 流転
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41 置き土産

 村の子供達と別れた後、少しだけ村から離れて木の上に飛び上がった。

 今日はここで夜を明かすつもりだ。


(熟睡せぬのは、久しぶりなのじゃ)


 旅を始めた当初は、熟睡しないでいた。

 寝込みを襲われると、ヴィーヴルでも太刀打ちできない。


 それが、ゴブリンの村に入ってからは毎晩のように熟睡していた。

 周りが囲まれていて、近くに他の者が居るという2つの安心感が成せる業だ。

 何かあったとしても、周りで騒ぎがあれば気が付くことができる。

 1人きりだとどうしてもそれは難しい。


(妾と共に行けるものなど居らんのじゃ。

 寿命が違うし、第一、その者にはその者の生活がそこにあるのじゃ。

 仕方がないのじゃ)


 自分に言い聞かせるかのようにしながら、木の上で目を瞑った。

 一抹の寂しさを胸に抱えながら……


 夜が明けて、ヴィーヴルは木から地上へと飛び降りる。

 下草には夜露が付いていた。

 その為、足は多少濡れてしまった。


(さてと、また歩き始めるのじゃ)


 ヴィーヴルは最初の目的地へ向けて、本格的に旅を再開する。


(ん? なんじゃ?)


 濡れた足元を確認しようと視線を下半身へと落とすと、腰の辺りに短い紐が付いているのを発見した。


(いつの間に付けられたのじゃ?)


 ヴィーヴルの記憶の中に、そこに紐を結わえた記憶は無い。

 付けられたとしたら、昨日、ゴブリンの子供達の誰かに別れ際にでも付けられたのだろう。


(とんだ置き土産なのじゃ。

 いつか、返しに行かねばならないのじゃ)


 ゴブリンの子供達にはヴィーヴルが返しに来ることを望むという意図はなかったのだろう。

 単純に、今までのお礼の意味で何かを渡したかったのかもしれない。


 だが、ヴィーヴルには村へ行く口実としてその紐を利用できると考えた。

 心のどこかで、再びゴブリン達の村に行きたいと思っていた。

 それがいつになるのかは分からないが、村へ行ったとしても『紐を返しに来た』と、言い訳にすることは出来る。

 自分自身を納得させることは出来る。


 ヴィーヴルは、あまり良い出来とは言えない短い紐を腰から吊り下ろしたままにして、歩き始めた。

 こんなお土産を貰えるならば、縄の作り方を教えておいて良かったと思いながら……



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