37 敵襲(3)
『おい、あんなところに雌がいるぞ』
『ありゃまだガキだ。
食べても腹の足しにもならんぞ』
『腹の足しぐらいにはなるだろ。
満足できるとは思えんがな』
『違いねぇ』
木を倒しながら森から出てきたオーク達は、軽口を叩きながら村の土壁の前へと進んできた。
「戦ったゴブリン達はどうしたのじゃ?」
ヴィーヴルは、そんなオーク達に問い掛けた。
『お、言葉が通じるのか。
お嬢ちゃん、そんなところに居ないでこっちへおいで。
俺達が可愛がってやるからよ』
『ゴブリン共といるより安全だからこっちへ来な』
「戦ったゴブリン達をどうしたのじゃ? と、聞いておるのじゃ」
『おぉ、怖い怖い。
おい皆、ゴブリンなんていたか?』
『何か動き回っているものならいたけど、あれか?』
「どうしたのじゃ?」
『腹の足しにもならないって、あれのことを言うんですよ』
『違いねぇな』
そう言って、オーク達は下卑た笑みを浮かべていた。
つまりは、文字通りの弱肉強食だと言うことだろう。
「お主らはこのまま引き返すつもりはないのじゃ?」
ヴィーヴルからの最後通告だ。
しかし、オーク達はまともに取り合おうとはしない。
『お嬢ちゃんこそ、可愛がってやるからこっちへ来い。
まだ死にたくないだろ?』
「それが答えで良いのじゃ?」
『上にいるからって逃げられるとでも思っていたのか? こんな壁、すぐに壊して捕まえてやるからな』
「ふぅ、仕方がないのじゃ」
ヴィーヴルは両手を前へと翳した。
両手の先からはオークと同じくらいの大きさの火の玉が突然出現して、オークの下へと向かっていった。
あまりに突然の出来事で唖然としているオーク2体を巻き込みながら、火の玉はその姿を消した。
そして、その場には2体の焼け焦げたオークの死体だけが転がっている。
「まだやるのじゃ?」
『……皆、散らばれ。
散らばって壁を壊すんだ』
並の魔法使いならば、その方法は有効だっただろう。
魔法を連発することは難しいし、同時に使うなんて芸当は到底できるはずもない。
計算違いは、ヴィーヴルはそこいらにいる並の魔法使いではないということだ。
「無駄なのじゃ」
先程放った火の玉の半分ほどの大きさで、オークの頭数と同じだけ火の玉をオークへ向けて発射する。
そして、その場にいたオークは全て丸焦げの状態で、地面の上に横たわっていた。
「長老、終わったのじゃ」
『終わったとは?』
「外には、こんがり焼かれたオークがおるのじゃ。
食料にするが良いのじゃ」
『そんな、まさか……おい、お前。
門を少しだけ開けて、外の様子を見てみるのだ』
長老は1体のゴブリンに指示を出して、外の様子を確認させた。
外の様子を確認したゴブリンは、息を切らせながら外は安全そうだと伝えた。
「オークの死体を、村まで持ってくるのじゃ。
妾は、保存できるようなものを作っておくのじゃ」
ヴィーヴルは土壁から飛び降りると、何事もなかったかのように水場の方へと向かって歩き始めた。




