36 敵襲(2)
土壁の上へと飛び上がったヴィーヴルは、先程ゴブリンが指し示した方を見た。
今のところは、オークの姿は見えない。
(まだのようなのじゃ……)
ヴィーヴルは土壁の上で腰掛けた。
視線は、オークが居るであろう方へと向けたまま。
『オーク共はまだ来てないか?』
土壁の下にいる長老から声が掛けられた。
「まだ来ないようなのじゃ。
子供らは大丈夫なのじゃ?」
『どれ程危険なのか、まだ分かっておらんのだろう。
まだ子供達はオーク共を見ておらんのだからな』
「一度、戦っているところを見せておく必要があるのじゃ」
『そうだな。
もう少し大きくなってからの方が良いだろうな……』
その辺はその村ごと、そのゴブリンごとの考えがあるだろう。
ヴィーヴルが口を出すようなことではない。
「リーダーはまだ帰ってこないのじゃ?」
『まだだな。
まぁ、奴ならばここに着くのがオークより遅れたとても、上手く対処するだろう』
「きっと、そうなるのじゃ」
ヴィーヴルの視線は、まだオークが居るであろう方へと向けられている。
その時、そちらの方向から木がへし折られる音がした。
「お客さんが到着したようなのじゃ」
『来たか……
皆、準備は良いか?』
ヴィーヴルは土壁の上に立ち上がった。
『良いな。
もう一度言うが、決して無理をするんじゃないぞ』
「大丈夫なのじゃ。
魔法で少し遊んでやるだけなのじゃ」
『分かった、それならばもう何も言うまい』
「ときに村長、もしオークを仕留めたらそのオークは食べるのじゃ?」
『オークを仕留める? これは可笑しなことを言う。
追い払うので精一杯だろう。
仕留めるなんて、夢のまた夢だ』
「だから、『もし』と言ったのじゃ」
『そうか……まぁ、もし仕留めたら食べてみるのじゃ。
人間は、オークを自分の住み処まで持ち帰ると聞いた事があるし、目撃したものもおった。
ひょっとしたら食べているのかも知れんしな。
食べられるのならば、食べられるものが1つ増えるしな』
ヴィーヴルにはオークを仕留める自信があった。
ヴィーヴルの放つ魔法で、間違いなく仕留められるだろう。
ただ、ヴィーヴルは積極的にオークを食べようとは思わない。
食べなくても生きていけるし、意思疎通ができるものを殺す気にも、食べようと言う気にはなれない。
しかし、自分に害を及ぼす相手は別だ。
ヴィーヴルも、遠慮する気はない。
今はゴブリンの村で世話になっているので、村に害を及ぼすものはヴィーヴルの敵だ。
(まぁ、話してみて気が変わるかも知れんのじゃ)
木をなぎ倒して、オークが姿を現した。




