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ある龍の物語  作者: まっこ
第3章 流転
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36 敵襲(2)

 土壁の上へと飛び上がったヴィーヴルは、先程ゴブリンが指し示した方を見た。

 今のところは、オークの姿は見えない。


(まだのようなのじゃ……)


 ヴィーヴルは土壁の上で腰掛けた。

 視線は、オークが居るであろう方へと向けたまま。


『オーク共はまだ来てないか?』


 土壁の下にいる長老から声が掛けられた。


「まだ来ないようなのじゃ。

 子供らは大丈夫なのじゃ?」


『どれ程危険なのか、まだ分かっておらんのだろう。

 まだ子供達はオーク共を見ておらんのだからな』


「一度、戦っているところを見せておく必要があるのじゃ」


『そうだな。

 もう少し大きくなってからの方が良いだろうな……』


 その辺はその村ごと、そのゴブリンごとの考えがあるだろう。

 ヴィーヴルが口を出すようなことではない。


「リーダーはまだ帰ってこないのじゃ?」


『まだだな。

 まぁ、奴ならばここに着くのがオークより遅れたとても、上手く対処するだろう』


「きっと、そうなるのじゃ」


 ヴィーヴルの視線は、まだオークが居るであろう方へと向けられている。

 その時、そちらの方向から木がへし折られる音がした。


「お客さんが到着したようなのじゃ」


『来たか……

 皆、準備は良いか?』


 ヴィーヴルは土壁の上に立ち上がった。


『良いな。

 もう一度言うが、決して無理をするんじゃないぞ』


「大丈夫なのじゃ。

 魔法で少し遊んでやるだけなのじゃ」


『分かった、それならばもう何も言うまい』


「ときに村長、もしオークを仕留めたらそのオークは食べるのじゃ?」


『オークを仕留める? これは可笑しなことを言う。

 追い払うので精一杯だろう。

 仕留めるなんて、夢のまた夢だ』


「だから、『もし』と言ったのじゃ」


『そうか……まぁ、もし仕留めたら食べてみるのじゃ。

 人間は、オークを自分の住み処まで持ち帰ると聞いた事があるし、目撃したものもおった。

 ひょっとしたら食べているのかも知れんしな。

 食べられるのならば、食べられるものが1つ増えるしな』


 ヴィーヴルにはオークを仕留める自信があった。

 ヴィーヴルの放つ魔法で、間違いなく仕留められるだろう。

 ただ、ヴィーヴルは積極的にオークを食べようとは思わない。

 食べなくても生きていけるし、意思疎通ができるものを殺す気にも、食べようと言う気にはなれない。


 しかし、自分に害を及ぼす相手は別だ。

 ヴィーヴルも、遠慮する気はない。

 今はゴブリンの村で世話になっているので、村に害を及ぼすものはヴィーヴルの敵だ。


(まぁ、話してみて気が変わるかも知れんのじゃ)


 木をなぎ倒して、オークが姿を現した。


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