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ある龍の物語  作者: まっこ
第3章 流転
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32 ゴブリンの調理?

『今日は、シカを皆で食べるぞ』


 久しぶりの大物に、皆、上機嫌の様子だ。


「どのようにして食べるのじゃ?」


『どのようにって、どういう意味だ?』


「そのままの意味なのじゃ。

 ゴブリンの料理を妾は知らないのじゃ」


『料理か……料理というか、調理なんてしないぞ』


「そうなのじゃ?」


『あぁ、調理する必要がないからな』


 調理する必要がないとはどういう意味なのだろうか? ヴィーヴルの頭の中は疑問だらけになっていた。

 サーシャと一緒にいた時は、調理と言うにはほど遠いかもしれないが、焼いて食べた。

 少なくともそのまま食べるようなことはせず、「焼く」という一手間を加えた。

 ゴブリン達はそれすらもしないと言うことなのだろうか?


「焼いたりせぬのじゃ?」


『どうやって火を出すんだ? 我達では、ヴィーヴルのように魔法で火を出すことが出来ない。

 火を起こす方法がない。

 それに、火で炙らなくても身体を壊すことはない』


「火で炙るのは、身体を壊さないようにする為にするのじゃ?」


『そうだぞ。

 ヴィーヴルは違うのか?』


 人間であるサーシャにとって、動物の生肉を食べたり川魚をそのまま食べるということは、自殺行為に等しい。

 人間にとっては害となる細菌や寄生虫が、その体内に含まれている。

 寄生虫の存在は知らないが、昔からの経験則として生の魚や生肉を食べないようになっていた。


 その細菌や寄生虫も、ゴブリンにとっては何ら害を及ぼさない。

 だから、生のまま食べることができる。

 それならば、態々、手間を掛けて火を起こす必要がない。

 火を起こせなかったから、身体が細菌や寄生虫を受け付けないようにしたのかもしれない。


 今となってはどちらが元となったのかは分からないが、ゴブリンにとっては害がないと言う事実だけが残されている。

 ヴィーヴルも生のままで食べても問題はないのだが、サーシャと一緒に生活しているうちに、焼いて食べるようになっていた。


「焼いて食べた方が、香ばしくて美味しいのじゃ」


『ヴィーヴルが居る内は、それでも良いだろう。

 だが、ヴィーヴルが居なくなった後はどうなる? 火を起こすことが出来ないのだぞ? そうなったら、元のように生のまま食べることになるんだ。

 焼いて食べる事が美味しいとなったら、元のように生で食べることができなくなるかもしれない。

 そうなったら、村が崩壊してしまうかもしれない。

 安易に何でもやるのではなく、そういう先まで考えないといけないんだ』


「分かったのじゃ……妾も久しぶりに、生のまま食べてみるのじゃ」


 その日、久々に食べた生の肉は、やはりあまり美味しく感じなかった。

 そのことにより、香ばしいという香りが美味しさに一役買っていることを実感した。

 

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