29 ブランコを設置する
ゴブリン達は出来上がったばかりの縄を引っ張りあって、縄が途中で解れたり切れたりしないかを確認していた。
途中から確認のためと言うよりは、単純に力比べのために引っ張りあっていたのだけど……
ヴィーヴルはその様子を少し離れたところから眺めていた。
ヴィーヴルと力比べをしたとしても、1体や2体では相手にもならない。
ましてや相手が子供ならば、村にいる全員とやってもヴィーヴルが勝つだろう。
だから、一歩引いた位置からゴブリン達の様子を眺めていた。
(そうじゃ、座る板を作るのじゃ)
村の外れにある、皮の剥かれた木が積まれている場所へと瞬間移動で移動してきた。
(1つだけではなく、3つぐらい作っても良さそうなのじゃ)
風魔法で木を縦に切り分けて、3枚ほどの長い板を作り出した。
その内の1枚を、更に3つへと切り分けてブランコの座席とする板を作り出した。
(さてと、帰るとするのじゃ)
瞬間移動で元の場所へと帰ってくる。
『おねぇちゃん、どこにいってたの?』
先程、ヴィーヴルと一緒に縄を編んだ子供の1体に聞かれた。
「材料を取りに行っていたのじゃ。
これから遊び道具を作るから、皆を集めるのじゃ」
『わかった~。
みんな~、おねぇちゃんがあつまれって~』
力比べをしていたゴブリン達が、皆その手を止めて集まり始めた。
子供のゴブリンだけではなく、大人のゴブリンも……
「あぁ、大人は集まらなくても……いや、良いのじゃ、皆で作るのじゃ。
長老、1つ聞きたいのじゃ。
どの木であれば、子供の遊び道具を設置しても良いのじゃ?」
『どの木でも構わない、好きな木に設置して良いぞ』
「分かったのじゃ。
では……あの木に付けるのじゃ」
ヴィーヴルは目をつけた木に向かって歩き始めた。
その後ろをゴブリン達が付いていく。
目的の木の前に着くと、ヴィーヴルは縄を2本持ち枝へと飛び上がる。
そして、枝へと縄を括り付けようとした時に、リーダーが声を上げた。
『ヴィーヴルは結び方を知らないのか? 教えてやるから、そこまで連れていってくれ』
「分かったのじゃ。
少し待つのじゃ」
ヴィーヴルは枝から飛び降りてリーダーを持って枝の上へと上がった。
『ブランコを作るのなら、上の方はこの結び方が良いだろう』
片方に輪を作り、その中を下から通して縄を跨がせて再び輪の中を通して……と、何か複雑な結び方をした。
※もやい結びと呼ばれる結び方です。
異世界ですので、結び方に呼び名はありません。
『じゃあ、やってみろ』
リーダーは自分が作った結び目を解いて、ヴィーヴルに縄を渡した。
ヴィーヴルは、リーダーがやった事を真似るように結び目を作っていく。
『そうじゃない、ここを通すんだ。
そして、そこに持っていって、また輪の中を通すんだ』
リーダーに教えられながら、何とか縄を結ぶことが出来た。
もう一つ、教わったばかりの結び方で縄を枝に括り付ける。
1本の枝から2本の縄が垂れ下がっている状態だ。
ヴィーヴルはリーダーを抱えて枝の上より降りる。
「あとは、この板を縄に付ければお仕舞いなのじゃ」
『その分だと、板の取り付けも怪しいな……ヴィーヴル、板を出すんだ』
「これなのじゃ」
ヴィーヴルはストレージより先程作った板を取り出した。
『板の端の方に穴を開けられるか?』
「簡単なのじゃ」
風魔法で丸い穴を開けた。
『上出来だ。
その穴に縄を通して、こう結べば良い』
輪を2つ作って、その中へと縄を通す。
※今度は固め止め結びと呼ばれる結び方です。
異世界ですので……(以下略)
「分かったのじゃ」
リーダーがやったのと同じように、もう片側を結んだ。
「出来上がりなのじゃ」
『ねぇ、これ、どうやってあそぶの?』
先程の子供が、ヴィーヴルの傍へと近づいてきて聞いた。
「これは、こうするのじゃ」
その子供をブランコへと乗せて、前後へと揺らした。
『なにこれ? おもしろ~い』
他の子供達が集まってきて、代わる代わりにブランコで遊び始めた。
良く見てみると、大人も何体か混じっているようだった。
(次を作るのじゃ)
同じ木の反対側にもう1つ、他の木に1つと3つ設置した。
ヴィーヴルが作っている最中から、周りを取り囲むようにしてブランコの出来上がりを待っていた。
『暫くの間は、大人も遊ぶだろうな……』
リーダーが遠くを見つめながら呟いていた。




