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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
序章 異世界と魔法と剣と
6/49

第5話 剣と異世界と俺 と 前編

序章が最終は前後編です。


後編の方に捕捉はいります。


4/23 言葉じり調整

 昨日ボロボロだった理由を説明しよう……。


  時は遡り、早朝。


「準備は良いかなヒルト君? 昨日の要領で電撃を発生させてみて欲しいんだけど……」


 ファラは、歯切れの悪い口調で声をかける。


 俺は、その言葉に従い、魔力を手に集中させ電撃をイメージするが、ウンともスンとも反応しない。

 その事を不思議に思い手を握ろうとするが、指と指の間に青白い電気が走り、指同士を弾かれ、


「痛っつぅぅ」


 静電気が走った時の様な痛みと、指先に残るジリジリした感覚から、声を溢した。


 その後、何度か同じ様に電撃を作ろうと試みるも、ことごとく同じ結果で指がヒリヒリし始めてくる。


 そこで解決策として元の世界の知識でならと考えたが。

 今思えば電気とか電撃って何だけと根本の部分で躓き、小学生~大学の授業を必死に思い返してみるが、なかなか思い出せなかった。


 そうやって悩んでいると、ファラが心配そうに、そして、


「大丈夫かい? ……やっぱり君でもそれが限界なのかも知れないね……」


 どこか暗い声で話しかけてきた。


 言っている意味について俺は解らず、ファラの顔をじっと見ていると、少し躊躇いながら口がひらき、


「えっとね、決して恥じることは無いっていうのは、理解して聞いてね」


 云い難そうに言葉を紡ぐ。 


 この前置きで俺は察しがついて、頷いて返事をする。


 俺の返事で、意を決したように、


「君と同じ魔力性質の子が、[雷電]という魔法を発現していても発現通りの魔法を発動できた事が…… 無いんだ……ただね、同じ系統の魔法を跳ね返したり逆に利用する事に長けていて、アンチ雷撃系として評価はされているんだ。だから……」


 言葉を紡いで行くが、俺は手を前に出し、ファラの発言を途中で止め、ファラの話で思い出した知識を試してみる事にした。



 ファラは、俺の性格を理解しているのか、悲しそうな顔をしながら何かフォローの言葉を言ってくれていたけど、これで出来なかったとしても、俺には[炎]が有るから最後に試させて欲しいと言い、納得してもらっい、俺から一旦離れてもらった。


 確かに、現代の知識が無ければ跳ね返すとか、利用するしかできないわな。電気や雷は所詮電子の流れでしかなく、これは20世紀になってからしか解明されていない。だから仕方ない話だけどな、たしか雷の発生原理は……


 俺は、手の平に魔力を集中させ、原子の正と負が発生するプロセスを頭に思い浮かべる。

 手のひらに負電荷を集め、足元に正の電荷が集まる。そんなイメージを強く思い浮かべていく、すると、髪の毛が静電気で立ち上がり始めていくのを感じ、同時に、手に熱が生じ始めていく。

その感覚が徐々に強くなり、終に、関をを切ったように何かが体から流れ出し、電撃特有の音を手から発した。


 しかし、その音は余りにも小さく、とても弱い音でしかなかった。


 その事実に納得できなく、俺は地面を叩いて悔しがるが、


「ヒルト君、君は強い子だね。こんな短時間で、それだけの電撃を使える子はいないんだよ。だから誇ってくれ」


褒めるように、膝を付き、優しい口調のファラが背中を支えてくれた。


 それでも俺はその言葉が嫌だった。

 別に特別な人間とは思っていないけど、元の知識を使ってもそれ位しかできない、そんな風に感じて、


「慰めならいらないです。事実を言ってくださいよ先生」


 投げ捨てるような言葉を投げていた。


 すると、ファラの手が伸びてくる。

 俺は目を閉じ、叩かれると思い目を閉じた。しかし、伝わってきた感覚は痛みではなく、優しく触れられたような、ふわっとした物が頭へと伝わってきた。

 

 不思議に思い目を開けると、優しい顔で俺の頭を撫でているファラが目の前にいた。


「本当に強い子だよ君は。酷い子だとね、たった一つの失敗や、たった一つの苦手だけの為に落ち込んで投げ出す子だって居る。それに、失格者の烙印を自分で押してしまって立ち直れない子だっている、だけど君は違うよ、それでも努力をして結果を出したんだ、だから君は強い子だよ」


 優しく、慈愛の感じる口調で言葉を伝えようとしてくれるファラ。


 それでも、俺は、ファラの言葉を受け入れられずにいた。 




 その後もファラとの魔法の特訓が続いていき、特訓の内容も[炎]主体に切り替えて進行されていった。


 ファラ曰く、俺の[炎]は[雷電]から生まれている物らしく、簡単に言えばプラズマなんだそうだ。

 

 まぁ、火ってプラズマらしいと、元の世界で聞いた事が有るから納得出来る話だった。


 しかし、[炎]は、すんなり高威力の物を発現させられるまでにはなったが、それでも白止まりで、高々1600℃もない炎……しかも拳大の大きさが限度という結果。


 正直やる気なんて出ないし、元の世界の知識とかいうチートですらこの程度と惨めな気分だ。


 そうして腐ったようにしていると、


「魔法的に、君の天敵になるのは私になるんだけど、その意味は理解してるよね?」


 正直嫌みに聞こえた。俺じゃファラに勝てない、チートを使ってもね、という風にしか聞こえない。


 だから、


「水には、俺の火も電撃も効かないって意味ですよね?」


 また言葉を捨てた。


 俺の回答を聞いて、ファラは少し悲しい顔をしていたけど、


「その通りだよ。でもどうしても対峙しないといけなくなったら君なら如何するの?」


 そう言うと水の塊を俺に向けて放つ。


 バカにして。蒸発させてやる。


 俺は安易に考え、手の平の上に、高温で白く光る炎を作り出し水の塊を迎え討つ。


 しかし、炎と水が接触した時に事件は起きた。


 大きな音を立て、膨張するような熱に包まれ、内包された衝撃で、俺は後方に吹き飛ばされていた。

 原因は、簡単に言えば水蒸気爆発だ。


 そらそうですよね……高温の炎、しかも俺の特性上この炎はプラズマと同じ原理で発生しているんだ。水に触れればそら一瞬で沸騰。その体積が急増してこうなりますよね。漫画みたいにジュウとかいって蒸発しませんよね……。


 はい、いつもの回復フェイズからの昼間の出来事……。


 この異世界に希望なんて無い。漫画の様な伝説の素材も無く、都合の良い現象なんて起きはしない、もう本当につまらない世界。

 所詮、自称『神』の所業だ……それに俺は、自分から望んでこんな所に居るわけでも、来たわけでもない。 



 一連の事がショックで俺は不貞腐れ、胡坐を組んで工房の木台*に座っていると、


「ヒルト、何時まで落ち込んでるんだ? ヒヒイロガネにどんな幻想を抱いていたのか、はたまたチタンか何か知らないけどな、そんなにヒヒイロガネに想いが有るなら、自分でこの素材の活用方法を見つければいいだろ」


 タングが話しかけ、ヒヒイロガネと書かれた一つの袋を渡してきた。


 不貞腐れながら俺は、差し出された袋を


「なんだよこれ、それにこれで俺にどうしろって言うんだよ……」


 言葉と共に突き返した。


すると、タングは膝を付いて屈み、俺と目線を合わせ、持っていた袋を置き、その手で俺の頭掴み、


「俺はこのヒヒイロガネを使って剣を打つ。俺が打つ剣は実戦用だけだ」


 そう言って袋を置いてタングは、炉に向かって行き、金属の厚板を数枚重ねて紙で固定してから、溶かした粘土で包み、灰をまぶし、炉に入れ鍛造を始めた。


 俺はそれを眺めているだけしか出来なかった……。




 その後。


 これといってやる気の出ないまま日々は過ぎていく。その間も勿論、剣と魔法の授業と訓練は欠かさなかったけど、意味が有るのか解らなかった。


 タングはその間ずっと鍛造を行い、俺に、一切何の強要もせず、何も教える事もなく、ヒヒイロガネを鍛えてる。


 それを俺は只々見ているだけ、そんな日々を繰り返した。



 そうして日々が過ぎ、6本目の剣が打ち上がる。

 これまでの物は、チタンと鉄が剥がれたりチタンが砕けてゴミになっている。しかしこの一本は違った。鉄とチタンで木目金*がしっかり作られている。


 本来加工が難しく、酸化膜や科学変化で木目金を作ることが厳しい素材で制作しきったのだ……。

 それでも、チタンの脆化と活性化を知らないため実用強度には達しておらず、その剣は、一振りだけで砕け去った。


 それでもまた、無言でタングは新たに剣を打ち続け始める。


 その親父(おやじ)の姿に俺は、自分が情けなくて仕方くなっていった。

 いくら知識が有っても、いくらチート的な能力を持っていても、何もしていない俺は、無能と言われながらも努力をし、前に向かう人の前では、駄々をこね、何もしない理由を見付け、努力を放棄した人と同じだと思い知らされたからだ。



 だから俺は、この世界での一つの決意をすることにした。


 あの日からずっとそこに有り続ける袋。それを開け、中から精製された銀鉄色の金属を取り出し、その決意と共に作業を始める。


 それを黙って、呆れているのか笑っているのか解らない表情のタングが手を止め見守ってくれていた。



 この世界で学んだ魔法は、想像とは違い、万能な物じゃない。

 基本的には、エネルギーやチャクラ、又は気と呼ばれる存在に近い性質の魔力があり、その魔力が化学変化を起し、事象として発現する所謂魔法と、物理干渉を起こす事で発生する魔法の、その二種類の魔法が存在している。


 しかもそれは、個人で性質や資質が違う上に、知識や明確な認識が無ければ不発に終わる欠陥品だ。それでも十分に魔法や魔力自体、元の世界からすればチート以外の何者でもない。

 そのチートでなら、金属周辺に魔力を流し科学反応を止めながら、魔法で加熱して熱間鍛造を始める事だって可能なはずだ。


 俺は、その思いだけでヒヒイロガネを打っていく。

 しかし魔力が想定以上に消費されていき、魔力枯渇(マジックフロー)が起こりはじめる。


 それでも俺は、


 俺の魔力が尽きるのが先か、打ち上がるのが先か、この世界と、いや違うな、何もせず何も自分から手にしようとしなかった自分との勝負。

 力も知識も、それに支えてくれる人も揃ってる。負ける筈がない。


 その思いの限り鎚を振るい続けた。




 そして何時間位たったのだろうか、外は暗く月明かりも無い。


 そんな暗闇で、飾りも無く、刀身と持ち手だけしかない、純粋な一振り剣。その刀身の光だけが手元を照らし出していた。


「今回は、引き分けだな」


 精も根も尽き果てた俺は、そんな言葉を溢し同時に意識も零れ落ちた。




 俺はベッドの上で目が覚めた。空は明るくて、日の位置から言えば8時位だろうか。

 そして俺の周りには、タング、クリス、ファラがこちらを見ていた。皆心配して一睡もしていないのか、目が赤くなりながら俺が起きるのを待ってくれていたようだ。


 俺が起きたのを確認してからは、皆に心配され、叱られたり、色々した。


 それに親父は、止める事もできたが見守ってくれていたんだろう、一番辛そうな顔をしていた。

 それなのに一言二言だけ言ってから工房へ行くとだけ残し扉から出ていった。


 不器用だ……でも。


 実際信じて待つという事がどれだけ辛く大変だったのか、よくわかった気がする。




 その後は、食事をしてから又眠った。次に起きた時は、昼を過ぎた頃だ。


 起きて一番最初に目に入ったのは、俺のベッドに上半身を預けて眠るクリスとファラだった。

 その姿を見ながら、


 俺は、何で考えなかったんだろうとか、また気付かなかったんだなとか考えていると、工房から金属音が聞こえてきた。


 俺は、二人を起さない様にベッドから降り、直ぐに工房へ向かった。


 工房までが遠く感じた。

 そして扉に手をかけて開こうとするが、いつもの扉のはずなのに重たく開かない扉。どうやっても開かない扉、そう感じていた。


 でもその扉が勝手に開いていき、


「来たのか? そんな所で何をしてるんだ? 入れば良いんだ、お前は俺の子だ、ただそれだけのことなんだからな」


 親父の顔が見えた。


 その顔は、いつもの顔で、いつもの様に不器用な言葉だけど、だけど……




             何が有ってもそこで待っていてくれている。



 その言葉が心の中で浮かび上がった。


 俺は、元の世界でも、そんな存在に気付く事も無く忘れ、過ぎ去っていく日々を繰り返し、本音で話す事すらもせず、勝手に疎ましく感じ、そして甘えていたんだ。そう、自分から本気で挑む事すらせず、誰かに理解して貰おうと甘えていたんだ。


 でもこうやって扉を開いて待ってくれている存在。


 そんな親父の背中を、俺はどうやれば越えられるのだろうかと、


親父(おやじ)


 そう声をかけていた。


 その言葉と共に振り返り一振りの剣を渡された。


 そうこれは、


「お前が本気で戦った(やいば)だ、今のお前が打った最強のな」


 そして、また背をむけて、


「進め。倒れても折れても塞ぎ込んだって良い、それでも最後は、進め」


 その言葉と不恰好で軽い最強を残して、再び剣を打つタング。


「本当に不恰好な最強だな」


 自然と言葉が出た。



 でもこれが今の俺だ。

 そう素直に受け入れられた。


 そして剣を見ると、持ち手に銘が刻まれていた。


『Hilt・Laeva/Blacksmith』


 と。




 親父を見ると汗を流しながら鎚を振り続けていた。


 その姿を俺は、今度は本当の意味で見ることが出来た。

 その姿は、一つの物に真っ向から対峙し、逃げも言い訳もせず、向き合う、そんな姿だった。


 そんな姿を目に映し時間が過ぎていった。


 途中クリスとファラが来たけど、声をかけずに暫く見守ってから家に帰って行っていた。


 

 そしていつしかオレンジ色をした光が工房を包んでいる。


 焼き入れの湯が蒸発する音が工房を響かせ、上がる湯気と共に夕日で輝く剣が姿を現した。


 刃研ぎが終わったその剣には、波紋状の積層目がまるで刃文の様に形成されていた。

 形は同じなのに全く違うその刃を見つめていた。


 するとタングは、俺へ近づいてから。その剣を革の鞘に収めて俺に差し出し、


「俺とお前の一振りだ、これを超えて見せろ」


 それを俺が受け取ると、ふらふらと工房から出て行った。



受け取った剣は、重くて暖かく力強かった。


 しかし、そんな想いを感じていると家の方から声が聞こえた。

 慌てたような声だった。


 俺は、剣をその場に置き急いで家に駆け込む。

 すると玄関で親父が倒れていてクリスが治癒魔法で治療していた。



 そこから何時間も過ぎ、太陽は沈み、夜が更け、辺りは暗闇に染まっていた。


 俺は、力なく沈み込む親父(おやじ)の横に座り、


「おやじ、これからどうすれば良いんだよ……」


 声をかけても無言のタングに、俺は泣きそうになりながらしがみ付いて揺すっていた。




 周りは沈みかえり音も無い。


「くそ……なんでこうなんったんだよ」





             【クエスト】【貴婦人達の怒りに触れた罰】

         成功条件 町近くの森のからカーバンクル*の毛皮と宝石を手に入れて

              貴婦人の怒りを鎮めろ+使い込んだ銀貨100枚の補填

         報酬   許しが有るかもしれない     




 周囲から気配を感じ、


 囲まれている。2匹? いや……


 俺は自分の剣を腰から引き抜き、臨戦態勢を取りつつも、


「オイ、クソ親父、囲まれてんだ、働きやがれェ」


 そう叫ぶが、タングは、ブツブツ独り言を言いながら落ち込んでいて使い物にならない。


 周囲を警戒しつつ、臨戦態勢を崩さずに剣を構えていると、前方からダイアウルフ*が3体姿を現した。

三匹はジリジリと距離を詰めるように歩みを進め、口から呻きを溢し、 いつでも跳びかかり、お前を食い殺せると言いた気な雰囲気を俺に当ててくる。


 しばらく睨みあいが続くが……先に動いたのはダイアウルフの方だった。

 腰を落とし、唸りを強め、今にも跳びかかってくるような威圧を強めていく。


 しかし、

 こいつ等は囮だ、本命は……


「そこだ」


 俺の声と同時に、右の茂みから一体のダイアウルフが飛び掛ってくる。


 所詮は動物、殺気を押し殺しきれずに、居場所を教えた状態で飛び掛るダイアウルフは、前足を横薙ぎで切り飛ばされ、胴部へ反動を利用した蹴りにより体をくの字折り曲げ、返す刃で晒された首を切り飛ばされて絶命した。


 その事で周囲のダイアウルフは、一時的に動きを止め、再び睨み合う形になる。

 そして、俺の後ろに居るタングだが全く動く気配は無いため。


 使えない本当に使えねぇ。仕方ない、親父は後方の餌にして見捨てるとして、前方3体に攻め込めばどうにか引くか?


 そう考えながら睨み合っていると、先に前方のダイアウルフが動いた。三方に分かれた牙が俺目掛けて襲い掛かってきた。


「これだからワンコロは嫌いなんだ……クソが」


 俺は声と共に、フィジカルブーストと左手で拳大の[炎]をつくりながら真正面の一匹に対し突っ込み、斜め左右の二匹をやり過ごしながら、[炎]を下顎へ叩き込む。


 下顎を1600℃の炎で焼かれ、そのまま正面の一匹は沈黙、残りの二匹は後方からの二撃目を加えようと再び飛び掛かって来る。

 なんとかフィジカルブーストを維持した状態での廻し蹴りを放ち、二匹まとめて胴を蹴り飛ばし、方向を逸らせたことで、牙を避ける事もでき、二匹とも逃げてくれた。


 そして後方を確認すると、


「おっ終わったのか? 割と動けるじゃねぇか、流石は、俺とクリスの子だな、でも出来れば餌にするのは止めて欲しかったがな」


 首や胴体を真っ二つにされたダイアウルフ4匹が足元に転がり、そして、その中央で先ほどと同じ様に座り、ニコニコと笑い話しかけてくるタング。


「食われてなかったんだな、とりあえず呼んでも動かなかった親父が悪い」


 正直悔しい。俺が必死で2匹を狩り2匹を撃退する間に、4匹を狩り切っているし動いてもいない、本当にウザイ。


「まぁ怒るなって、とりあえずこいつ等から魔石の……」

「あぁぁ」


 返事しようとすると言葉を途中で止め、臨戦態勢になり真剣な眼差しで森の奥を見つめながら片手で俺に静止するように促してきた。


 周囲の気配がピリピリと張り詰めているのが解る。暫く時が止まったような静けさが全てを支配し、鼓動だけが強く不安定に脈うっていた。


 しかしその静寂は、一筋の雷撃と咆哮により破られ、雷撃の後ろから、帯電した白銀の毛皮に覆われ、額には、蒼く輝く魔石を宿した大型の狼が姿を現した。


「なぜこんな森の浅い場所に……いや考えても仕方ないか……ヒルト、やばくなったら俺を置いて逃げろ、ソーンスコル*相手じゃ俺でも解らん。俺が一撃でも食らったら直ぐに逃げろ。いいな?」


 相手から目を離さず睨み合いながら、俺に伝えてきた。声が強張り、額に汗を滲み、親父が焦っているのが解る。


 それもそのはずだ、本来ソーンスコルは、この森の最深部に在るダンジョン、それも最下層に住む魔物だ。こんな森の入り口にいる事自体ありえない。(Byファラ著、ダンジョン探索丁より)


「親父……わかった……」


 俺は、震える声で了承するしかなかった。


 そんな俺の返事を待っていたのか、ソーンスコルがタングに対して咆哮と同時に雷撃を打ち込み、一瞬帯電を足へ集中させたのが見え、電撃が弾ける音と共に消えたと同時に、鈍い金属音が響く。


 その金属音は、ソーンスコルの牙と爪の追撃をグレートソードで防いだ音だった。

 ソーンスコルは剣を蹴り一回転して後方に飛ぶ。その反動でタングは後ずさりさせられていた。


「クソが、息子との別れの挨拶でもさせたつもりかよ」


 そう吐き捨てるように言いながらも、俺の前に立ち続けて、相手に対して剣を向けている。

 またソーンスコルの帯電が足に集中して、姿が消える。



 数度繰り返されるこの攻撃を全て防ぎきりながらカウンターを2度も決めるタングだが、毛皮に防がれ意に介されていない。息が上がり更に劣勢になっていくタング。


 助けたい、


 そう思うが、でも……力が足りない、余りにも大きな力の差に心が負けていく、そうしていると又帯電が集中するのが見えた。


 タングは数メートル弾き飛ばされ膝を突かされていた。次で留めだと帯電を強めるソーンスコル。

その行動を見て。


 一か八かの賭けだ。ここで親父が遣られたら俺もどうせ遣られるんだ。

 だったら(ソーンスコル)のマネをしてやる、加速する生体電流に[魔力的強化(フェイヒュ・ブースト)]の合わせ技だ、成功すれば。


「助けられる」


 俺は、体に魔力を今まで以上に巡らせた。それで生体電流を操り、加速させようとする。


 一か八かの賭けだったが、体が帯電し加速された信号と強化ブーストされた肉体で地面を蹴り、刃もまた魔力と帯電で輝く。



 意に介さない方向からの一撃に、反応が遅れ、回避が追い付かなかったソーンスコルの右目に斬撃が通り、鈍く乾いた音と共に銀閃が火の粉の様に舞い散っていった。

ダイアウルフ*犬型の魔物で群れで行動する、体高: 70–82 cm体重: 50–54 kg、大型犬サイズ、魔法の類は使用しないが、一番人的被害が多い魔物の一種。武芸者や冒険家の稼ぎや修行相手でもある


木目金*金属を重ねて高温圧着させた地金、基本溶着ではなく分子レベルでの摩擦で引っ付いている為に加工が面倒臭い。異種金属を重ねるクラッド鋼の上位互換的な物、ダマスカス鋼はクラッド鋼系で溶着系純粋な違いは無いけど、此処では技術の高さと言う意味でこの表現を使用


ソーンスコル*オリジナル魔物、雷系の狼種 体高: 182 cm体重: 154 kg程度 額に魔石を持つ。ソーンは、茨の意味のルーンではなくトールの頭文字と正確な発音のソールから

スコルは、北欧神話に登場する狼である。 魔狼フェンリルと鉄の森の女巨人との間の子


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