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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
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第43話 炎赤と駄犬(フェンリル)と想いと

ペース配分がまちまちで、お待たせしたり連続で投稿したりと安定せず、すいません。


 いやマジでどうする? このままじゃ…… いや考えろ何か方法が有るはずだ


 俺は本気で焦っていた。

 グランの剣はドラゴンの魔物合金が有って、難とかアイツの魔力に対応できる。

 それなのに、ふって湧いた駄犬(フェンリル)の一言で、これまで算段が御破算になろうとしている。


 そうだ、俺の魔力を使わずに、いや無理だ…… アダマンタイトであれだ、エイルと師匠の魔力だけじゃ…… あっ、爺さん……いや、出力がたりねぇ。 クソ、グランも魔力が安定してない…… 


 それでも必死に考え廻らせて計算をするが、何をどうやっても魔力量も魔力出力も全く足りない。 

 

 おい駄犬(フェンリル)!! お前の好き嫌いに俺を巻き込むな!! 最近姿を表さないと思ってたら、突然出てきて、何の嫌がらせだってんだよ!!


 焦りは怒りに変わっり、俺はその怒りを駄犬(フェンリル)へとぶつける。

 そんな俺の八つ当たりにも近い感情に、 


 ≪我の好き嫌いではないわ。 黒炎龍(げんしょのてき)とは因縁の間柄。決して相容れぬ存在だ。 それを忘れ、我魔力を抜け柄とはいえ、彼の者だった存在に注ぐ等と言う暴挙を犯したのは貴様であろう≫ 


 俺の中で駄犬は、魔力を纏い毛を逆立て威嚇するよな素振りで言葉を返してくる。 


 しかし俺には、


 おい、お前……調子でも悪いのか?  


 弱った獣が、悟られないよう必死で威嚇している、そんな風に見えてしまい言葉を緩めいた。

 

 すると、


≪ふん、残志ごときの反動、貴様に心配される程ではないわ。 それより、自分の身を按じる方が良いのではないか? たかが残志と言えど、貴様のように脆弱では、反動に耐え切れていないだろうからな≫ 


 毎度のような人を小馬鹿にしたような態度に戻り、呆れたと言いたげな表情を向けてきた。


 そんな態度に、 

 

 誰が脆弱だって? 単に吹き飛ばされたくらいどうって事ねぇっての。 それこそイラン心配だっつうの。


 心配して損をした思いで言い返すと、


≪そうか……≫


 ただその言葉だけを呟き、俺へ背を向けて再び俺の深い場所へと消えようとする。


 そんな駄犬(フェンリル)を、


 ちょっと待て――


 呼び止めようとするが、


「ヒル…… ヒ……君」


「ちょ…… 起き…… ……ト……」


「も……こぬ…… ……ル…… しっか……か」


「……大丈…… 目を……  したん……」


 頭の上から降注ぐ途切れ途切れの声と、暖かく包まれるような光によって掻き消され、駄犬(フェンリル)へと届く前に、


「いい加減に起きなさいよぉ!!」


 女性の叫び声と共に俺の視界は真っ白になり、次の瞬間に目に映ったのは、


「は? エイル? それに何で皆そんな顔してんだ?」


 泣きそうな表情のエイルと、顔から血の気が引いて心配そうに俺を見守るフラン、その二人の後ろから俺を見下ろしている師匠と爺さんだった。


 状況が掴めずに不思議そうに俺が溢した何気ない言葉に、


「ヒルト君…… うわぁぁん、良かったよぉぉ…… 目が覚めないかと……」


「もうぅ!! なんで…… なんでアンタはそうやって心配ばかりさせるのよぉ!!」


 フランは泣きながら抱きついて、エイルは涙を我慢しているのか俯きながら俺の胸を手で数回打ちつけてから、俺の胸元へと顔を埋めてきた。


 状況を全く掴めてない俺は、


「おいおい、いったいなんだってんだよ? 行き成り……?」


 さらに混乱しながらも自分で溢した、行き成り、という言葉に疑問を感じて顔を上げ、状況の説明を求めるように師匠と爺さんを見上げると、


「っ…… 自分が今まで何をしておったのか覚えておるか?」


 師匠が俺の頭に手を置いてから、心配そうな表情を向けながらも俺に尋ねてきた。


 俺は師匠の大きく温もりの有る無骨な手が頭に触れた事で、なぜかホッとして、焦りや、混乱はいつのまにか落ち着き、


「えっと、素材に魔力を注いで…… それで……吹き飛ばされて……あれ?」


 師匠の質問に答えるが、吹き飛ばされてからの記憶が何故か曖昧な事に気が付いた。


 正確には、駄犬(フェンリル)と会話していた事は覚えているが、どこか抜けているというか、視界に写っていないといけない者の記憶がバッサリと欠落しているような、そんな曖昧で定かじゃない違和感がある感じだった。


 そんな変な違和感に俺が悩んでいると、


「お前は吹き飛ばされたあと意識を失っていたんだ。 それも心臓が止まってな」


 爺さんが俺の目線まで膝を落として意味の判らない事を言ってきた。

 爺さんのその顔は心配と不安、安堵と心労でどう言って良いのか判らない、そんな表情だったが俺は、


 「はぁ? 俺の心臓が止まってた? 嘘だよな爺さん?」


 言っている事が半信半疑なうえ、吹き飛ばされた直前の記憶や、叫んだ記憶が残っている事で、信用しきれなかった。


 しかし、


 黙って俺を見つめる爺さんと、その横で目頭にシワを寄せながらも安堵した表情を浮かべる師匠の顔。

 それに、未だに俺の胸元で泣き疲れたのか、それとも…… 俺の治療で魔力も体力も疲弊して、薄っすらと未だ涙を流しながら眠って俺を放さないエイルとフラン。

 そんな現実が目に映って、


「心臓が止まって……たんだ、俺……」


 そう言葉を溢すと共に、

 

 俺、駄犬(フェンリル)に助けられたのか…… だからあんな事を……


 フェンリルとの会話を思い出し、アイツの言動に納得してしまった。


 若干俺は助けられた事に落ち込みながらも、皆にこんなにも心配をかけてしまったという罪悪感を感じて、その場を動けずに黙っていると、


「ワシが付いていながら、すまんかったヒルト。 始めての出来事とはいえ…… いや……言い訳じゃな。どんな理由であれ、弟子をこんな危険な状態に晒してしまては、師、失格じゃ。ほんとにすまなんだ……」


 師匠が弱々しく俺へ頭を下げた。


 突然の出来事に俺は驚いて目を丸くさせたが、


「師匠!! 頭を上げてください。 師匠は悪くないです!! 俺が……俺が予想しておくべき事だったんです…… 俺の魔力の特性を理解していなかった俺の……」


 自分のミスで師匠に頭を下げさせたという罪悪感が強く湧き上がり、違うと強く否定したが、どう自分の身に起きている駄犬(フェンリル)との関係を話して良いのか迷い、言葉が尻すぼみに消えていく。


 その時の感情は俺の顔にも表れていたようで、


「ヒルト、やはり黒炎龍(フレアドラゴン)の討伐で何か有ったんだな……戦闘中の変貌といい、あの魔石の件といい、今までは黙っていたが…… 流石にいい加減に話してくれないか? お前の身に何が起きているんだ? 何が有ったんだ?」


 爺さんが俺の肩を掴んでいた。

 そして、その表情は怒りなのか、不安なのか、それとも…… 感情を強く噛み締めたようなとても辛そうな表情だった。

 そして、爺さんの言葉に顔を上げた師匠の表情も爺さんと同じ表情だった。


 俺は、二人の表情に胸が締め付けられた。

 

 俺は締め付けられた胸の痛みで先生との約束を思い出し話す覚悟を決めるが、人とはそう簡単に変われるものではなく、胸元で眠る二人が今のやり取りで目を覚ましていないかを確認し、眠っている事を確認して俺は、


「俺の中にはフェンリルと名乗る狼……いや、黒炎龍(フレアドラゴン)と同じ化け物が俺の中にいます――」


 全てを話した。


 黒炎龍(フレアドラゴン)との戦闘中に俺の身に起きた事、俺の体に宿るフェンリルとの関係、フェンリルが黒炎龍(フレアドラゴン)の事を黒炎龍(げんしょのてき)と言っていること、もしかしたら黒炎龍(げんしょのてき)もフェンリルと同じように誰かの体の中で生きている可能性、今の思い、全てを話した。


 そんな俺の突拍子も無く確証も証明も出来ない話を、爺さんと師匠は眉を顰めて悩むような仕草をする場面もあったが、真剣な表情で黙って全てを聞いてくれ、


「……なんと…… たしかに他人に話せる内容ではないのう」


「うむ…… まさかとは思っていたが、ここまで深刻だとはな」


 難しい表情を浮かべていたが、


「しかしだ、良く話してくれた。そして、一人でよく今まで耐えたな。これからの事は俺達大人にまかせろ。お前の中に居るフェンリルの事も、黒炎龍(フレアドラゴン)の件もな」


「そうじゃな。可愛い弟子が困っておるのに放置していては、本当に師、失格じゃてな」


 俺の不安を取り除こうと、二人がニッと笑いかけてくれた。


 その笑顔が嬉しかった。

 そして、話して良かった。

 俺は一人じゃない。 

 どれだけ困った状況でも誰かが手を差し伸べてくれて、側に居てくれる。

 それがどれだけ幸せな事で、幸運な事なのか、今なら理解できるきがする。

 先生が言っていた「俺が思うその気持ちと同じだけ、俺が守りたいと思う人も俺を守りたいって、そう思っている」 この言葉のお陰で。


 そう思いながらも、


「ありがとうございます 爺さん、師匠…… でも……このことは、ここだけの話にしてもらえないですか? これだけ皆を巻き込んでおいて自分勝手なのは理解しています。 ……それでも、俺は…… これ以上誰かが傷つく姿を、苦しむ姿を見たくないんです。 心配をかけたくないんです。」


 胸元で眠る二人、親友のグラン、母さんや父さん、先生、爺さんに師匠、そして……ヴェスさん。

 みんなの悲しむ姿や、去っていく姿、そんな事が脳裏にチラついて、恐怖感から言葉を口にした。


 そんな俺の言葉に、


「はぁ、御主の気持ちくらい理解しておるよ」


「本当にお前は誰に似たのやら…… 大丈夫だ、内密に事を進めるからな」


 苦笑いを含んだ表情だったが、俺の事を理解してくれていた。


 しかし、


「だが、俺達二人だけという訳にはいかんな…… 俺はお前の祖父であると同時に、国の防衛を預かる騎士だ。 お前の予測道理、黒炎龍(フレアドラゴン)があれで終わりではなく何所かで生きている可能性が数パーセントでも有ると言うなら、国の安寧のためにも上には報告しないわけにもいかない。それは判るな?」


 腕組みをしながら真剣な眼差しで俺に訴えかける爺さん。


 その言葉に、


 確かに爺さんの言葉も理解できる。あれだけ脅威的な化け物を放置する事は、騎士団長という立場から考えれば出来ない相談なんだろう。 でも…… 本当に混乱しないだろうか、黒炎龍(フレアドラゴン)の脅威を知っていれば…… あんなモノが人の皮を被っていると知ったら…… そして、俺も……


 理解しながらも恐怖で素直に「判った」とは口にできずに黙って俯いてしまうと、


「これスラン、少し脅しすぎじゃ。もう少し言葉を選んでやらんか」


 師匠が爺さんを諌めるように声を上げた。


 俺はそんな師匠の言葉に顔を上げて「えっ?」という言葉と共に首を傾げると、


「はぁ…… わかっている。 それでも、覚悟を問う必要も有るだろう?」


「それでもやり過ぎじゃ御主は」


「すまんすまん。 まぁそういう事でだ。 下手に公表できぬ情報である以上、最低限、緘口令を引かずとも内密かつ、知識と情報を確保できる人物には話をする必要性は有ると言うだけだ」 

 

 爺さんは師匠に叱られバツが悪そうだっが、また優しい表情と照れた様子で片目を閉じて俺に伝えてきた。


 俺はその言葉に、


「それってもしかして?」


 思い当たる人物に嫌な予感を感じつつ口にすると、


「ルーズに決まってるだろ」


 俺の嫌な予感は的中し、爺さんの口からやはりアノ雌狐の名前が出てきた。

 

 正直、俺はあの人がかなり苦手だ。

 信用できる人なのは理解は出来るが、どうも俺の事を目の仇にしているような節があるし、隙あらば俺を玩具にして楽しもうという考えが見え見えで、本当に苦手なんだ。


 そんな考えを露骨に表情に出していると、


「なんじゃ御主? ルーズの事がそんなに信用できんか?」


 師匠が不思議そうな表情をしながら尋ねてきた。


 その質問に俺は苦笑いを浮かべつつも、


「信用できないとかはないですけど、苦手なんです……」


 素直に答えると、


「まぁ此処で言い争っておったから予想はしておったが、ルーズはファラ嬢ちゃんの魔道学の師匠じゃし、御主の両親の戦友でもあるんじゃぞ。そう、あまり嫌ってやらんでくれ。 それに、あれでも御主の事を気にかけておるんじゃ」


 師匠は困ったという表情を浮かべて、優しい口調で喋る。


 しかし俺は、師匠の言葉から出た言葉に驚いた。

 両親と何か有ることは薄々理解していたから特段そこには驚かなかったが、アレだけの戦闘技術を扱い、魔法に関しても完全俺の上位互換のようなあの雌狐(スルーズ)が、魔道学の師匠になれるレベルの知識量を誇り、そのうえ、寄りにも因ってファラの師匠という事実に。


 そうやって俺が驚きのあまり口を開けて驚いていると、


「あとな、ルーズに相談する理由は他にも有るんだ。 すまんが、お前の右手をもう一度見せてくれないか?」


 爺さんも師匠同様の困った表情をしながら発した言葉で、


 フェンリルとの事を話す時に見せたのに、また見せろと言われた事を疑問に思い、俺は口を開けたまま首を傾げたが、一応右手を差し出す。


 そして俺の右手の甲を爺さんと師匠がマジマジとみると、


「いや、右手に刻まれたという紋章なんだがな……俺にはやっぱり唯の傷跡にしか見えん……だが何かの気配は微かに感じる……エイズルはどうだ?」


「ワシもじゃよ。 確かに変った形をしておるが、やはり文様や紋章には見えん。だがスラン、御主の言うとおり微かではあるが魔力のような、得体のしれん気配は感じておるよ」 

 

 そう首を傾げて悩んだような仕草をと相談をし始めた。


 俺は二人の言葉を聞いて、


「何を言って…… ほらちゃんと駄犬(フェンリル)の紋章が浮かんでいるじゃないですか」


 俺は自分手を確認してから、焦り混じりで抗議の声を上げると、


「誰もお前を疑っている訳じゃない。ただ、俺達の目には、お前の言うような紋章を目視できないというだけだ。 俺達はこういった魔法に関しては戦闘中なら対応も対策は出来るが、如何せん感知が出来るというだけで、こういった場合の対応が出来ない。 そこでルーズの出番という訳なんだ。判ってくれるな?」


 爺さんは優しい声色で俺に諭すように語り懸けてくる。


 爺さんの言葉を聞いて、


 はぁ? つまりは俺にだけしか見えていなかった? 確かに、入院中も其れからも誰にも何も言われなかったか…… 色々と有り過ぎて今の今まで考える時間もなかったからな…… ちっ、駄犬(フェンリル)のヤツ、本当に毎回毎回、いい加減にしろよマジで。


 思い返せば納得のいく言葉だったが、今回も面倒事を起こす駄犬(フェンリル)に対して俺は心の中で文句と怒りを口にする。


 すると、


≪ふん。起きるなり騒がしい奴だ≫ 

 

 俺の頭に不機嫌そうな口調で直接語りかけてくる駄犬(フェンリル)の声が響く。

 

 そして続けて、


≪一つ此の機会に言っておくが、貴様は勘違いしている。全ての事象を我の所業のように思っているようだが、其れは間違いだ。 貴様と我は、魔力の根元で繋がっている。其れはつまり貴様の思いでも、我の想いでも、事象として発現するという事に等しい。 確かに今回の因果は我の物であるが、今の事象は貴様の物だ。 忘れるな。貴様の魔力と我の魔力の根源を≫ 


 言葉を良い終えると、俺の深い場所へと消えていくのが判った。


 咄嗟に俺は、


 また言いたい…… っち。消えたか……


 呼び止めるが、既に駄犬(フェンリル)は俺の深い所へと消えていた。


 そんな駄犬とのやり取りに意識を集中していると、


「ヒルトや大丈夫か? やはり相当体への負担が残っておるのではないか?」


 師匠が心配そうに声をかけてきた。


 その事で俺の意識は心の中から現実へと戻り、


「へ? あぁぁ…… 心配しないでください師匠。少し考え事をしていただけですから」


 心配そうな師匠の表情から、また心配をかけてしまったと思って返事を返すが、


「それなら良いが……」


 半信半疑というような表情を浮かべ、直後に悩み始める師匠。


 そして俺が師匠の様子に首を傾げると、


「ヒルトや、黒炎龍(フレアドラゴン)の素材の使用を禁止にする。御主の様子からもじゃが、この素材は余りにも危険過ぎる。処分も視野に入れてワシの方で対応する」


 突然、俺の目を見据えて真剣な表情で口を開いた師匠。


 その言葉に俺は驚いき目を見開いたが、直ぐに、


 確かに師匠の言う通り危険な素材だと思うし、使用せずに適切に処分をする方が安全なんだろう。


 そう考えて納得をするが、


「でも師匠……本当にそれでグランの力に耐えれるんでしょうか?」


 俺の口からは納得とは真逆の言葉を吐き出していた。


 俺自身も考えと心の解離に驚いたが、それよりも俺の口から出た言葉に驚いた表情を見せてから、


「御主は何を考えておるんじゃ!! アレほどの事を身に受けて危険なものだと理解しておるじゃろう!! それを理解できぬ御主でも有るまいに…… よもや力や魔性に魅了されての言葉じゃなかろうな」

 

 声を荒げる師匠。


 心配しての言葉なのは理解できるが、師匠の表情は、愁いの表情と怒りの表情が入り混じっていた。


 そんな師匠の荒げた声に、


「うぅん……? 私、寝てて…… はっヒルト!! アンタ大丈夫なんでしょうね!?」

 

「ふぇ!? ……、……ヒルト君!? 良かったよぉぉ!!夢じゃなくて、本当に良かったようぉぉ」


 エイルは寝ぼけた様子で起きたと思えば、勢い良く顔を上げると俺の襟首を掴み上げて、顔を寄せてくる。

 フランもまた驚いて起きたからなのか、暫く寝ぼけた様子を見せたのち、俺の顔を見るなり取り乱した様子で俺の腕を掴んでいた。


 そんな様子に俺は温かさを感じ、それに笑みを浮かべ、未だに複雑な心境の表情を浮かべる師匠を見据えて、


「師匠。俺は力にも魔性にも魅了されてませんよ。ただ、グランの武器にはこれ以上の素材は見つからないし、これ以上の物は存在しないと思います。それに……いえ、それ以上に、皆の力が有れば如何にか出来るって、信じてるんです俺。だからお願いします力を貸してください」


 不安も恐怖も焦りの気持ちもが一切無い穏やかな心のままの言葉を口にした。


 そんな俺の言葉に、エイルにフランは何が有ったのか理解できずに、互いを見てから首を傾げ、爺さんは一度首を落として俯くが、俺の気持ちを理解してくれたのか、苦笑はしていたが優しい表情を浮かべてくれた。

 

 師匠は、


「しかし……これほど危険な賭け、ワシは承服しかねる……もしも何か在れば――」


 難しい表情を浮かべるが、俺はその言葉を遮り、


「もしもの時は俺が責任を持って……叩き折ります」


 力を込めて言葉を放った。


 そんな俺の言葉に師匠は押し黙っていたが、大きく息を吸い大きな溜息を吐き出すと、


「…… 成長したと言えば良いのやら……ホンに頑固な弟子を持つと気苦労が耐えんで仕方ないのう」


 目じりにシワを寄せて柔らかな笑みを見せて呆れた表情を浮かべた。


 



 そして翌日


 淡く優しい魔力の光を輝かせ、生まれ変わった喜びの産声を轟かせる。

 元は浅黒い赤だった素材は、人の想い、作り手の想いを吸い込み、赤く、紅く、真紅の輝きを宿した。

 朝焼けにも似たその真紅の輝きは形を変え、もう一つの想いを、思い出を取り込む。

 それを芯に再び形を変え、使用者の為だけに、二振りの刃へと、その姿を変貌させていく。

 

 そして……


 少年が手にすると、二振りの刃は込められた想いを伝えるように、炎赤の刃紋を浮かべる。

 その想いに答えるように少年もまた、魔力を炎に変え想いを形へと変化させた。


  



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