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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
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第42話 アダマンタイトと架空無稽とフェンリルの魔力と

「それにしてもエイルさんは凄いのう。女伊達らに此処までの技術習得をしておるとは。これは家の弟子共に爪の垢を煎じて呑まさんといかんな」


「そうじゃろそうじゃろ。ワシの目に狂いは無いという事じゃ」


 エイルの後ろで老人ズが楽し気に盛り上がっている。


 そして、


「あの……エイズル師匠にハディード様……」


 エイルが気マズそうに声をかけると、


「おぉ、すまんのう。 作業中に後ろで騒がしくしてしもうて。 しかし、鍛冶を始めてまだ1ヶ月も経っていないと思えんな」


「エイルはコツコツと毎日努力を惜しまぬからのう。じゃから、教え甲斐もあるというもんじゃ。 それに比べ、どこぞの兄弟子は初めから架空無稽と現せば良いのか……人が考えぬ事を平然としよるからのう……教えるよりも、止めに入ってばかりじゃったからのう……」


 ハディード爺さんは、少し遠慮のような素振りを見せるが、やはり興味が尽きないのかエイルの作業をガン見しながら歓心を示す。

 そして師匠は自慢の言葉を言ったと思えば、なぜか落ち込んだように声のトーンが落ちる。


 そんな光景を俺は自分で入れた茶を啜りながら、


 誰が出鱈目だって? 俺からすれば師匠のほうが出鱈目だっての。 人の知識や俺の考えを、その歳で吸収するわ、自分で改良までするわ…… まったく何て師匠だよ。


 そんな事を思いながら、不貞腐れた態度で眺めていた。



 なんでこんなに和気藹々としてるかだって? そんなもん、


 時間は数時間前に遡り、


「なぁぁぁ!!今日は何だってんだよぉぉぉぉ」

 

 そう俺が叫んだ直後まで遡る。


 俺の叫びが納まると、


「ねぇ、ヒルト……アンタもしかして私の事、ずっと心配してくれてたの?」


 エイルが怖ず怖ずとした口調で話しかけてきた。


 俺は一度だけ首を傾げてエイルの言っている意味を考えるが、そんな俺の様子をじっと見つめているエイルの表情を見て、


「……っっ! べっ、別に心配なんてしてねぇから。単に頑張ってる事ぐらいは理解してるから、それで……」


 顔が熱くなるのを感じ、上手く言葉を出せずに、言葉と共に咄嗟に目を閉じてエイルへと背を向けて、その場から逃げようとしたが、


「待ちなさいよ!! それで……なんなの? はっきり言いなさいよ……」


 エイルは俺の服の裾を掴んできた。


 声色はどこか照れたような色身がかった声色で、その声色になぜか俺は余計に熱が昇るのを感じるし、裾を掴まれた事にも驚いて目を開けてしまった。

    

 そうして、目を開けていの一番に見えた光景は、俺とエイルの様子を、まるで小学生が同級生のカップルの様子を見ているというような、そんなニマニマとした表情をした師匠とハディードの爺だった事で、


「そんな事より。 師匠!! この状況の説明をしてください!!」


 こんな意味不明な事の原因を作った張本人への怒りと、一刻も早やくこの状況から抜け出したいという思いを有りっ丈込めた強い口調で言い放つが、


「ふむ、青春の一ページかのう? どうおもうハディードよ?」


「そうじゃな。 何とも初々しくて、ケツが痒くなる光景じゃなエイズルよ」


 等と、テンプレのようなボケをぶち込んできたので、


「この状況ではなく!! 猿芝居をした理由を――」


 真面目話せという意味を込めて声を張り上げたが、そんな俺の言葉を邪魔でもしたいのか、


「これだけのお膳立てしてやっても、ごらんの通りじゃ。 ワシが苦労する理由もわかるじゃろ?」


「それは師が師だとも思うが、なんとなんく理解は出来るかのう」


 全部を聞く事も無く、勝手に話始める始末。


 それでも俺は諦めずに、


「俺の話を…… 聞けぇぇぇぇ!!」


 再び声を張り上げるが、


「ふぉふぉふぉ。 ちゃんと聞いておるが、ヒルトよ。 ちょいと後ろを見て見る事じゃな」


 相変わらずニマニマとした表情を崩すこともなく、俺の後ろを指差してくる。


 そんな師匠の行動に腹を立てつつも、後ろへと振り返ると、


「あっ……」


「今……そんな事って……言ったよね?」


 体をワナワナと震わしながら俯くエイルが、異様な圧を纏いながら言葉を溢してきた。


 その光景に、


「いや、そういう意味で言ったんじゃ無くてな…… ほら、師匠がさ――」


 俺は慌てて訂正の言葉を言うが、


「私にとっては、そんな事なんかじゃ…… ないんだからぁぁぁぁ!!」


「ぶべらぁぁぁぁ!!」 

 

 時既に遅し。

 エイルの纏っていた異様な圧は一気に魔力へと変化し、俺は頭上より降注いだ水圧によって地面へと叩きつけられた。


 「理不尽……だ……」


 結果的に俺はその一言を最後に意識を失い、気が付いた時には目の前で爺さんズの光景とが広がっており、何となく茶を啜りながら傍観しているという訳だ。



 そんな風に俺が無言のまま傍観していると、


「はははっ。 まぁ、その兄弟子とやらは、なにやら不服そうな様子じゃがワシはその、架空無稽とやらを直接見て見たいもんじゃな。 なんたってワシの上客を奪っておるんじゃからな」


 笑った後に俺の事を見ると、上機嫌そうに俺に近付いてくるが、目は笑っていない。


 そんなハディードさんの行動に、


「なんじゃ起きておったんなら言わんか」


 師匠も俺が起きている事に気が付いて、ハディードさんに遅れる形で俺のほうへとやって来る。


 しかし、


「いや……それより師匠…… あぁぁぁ近い近いぃぃ!!」


 俺は徐々に眼前まで迫り来るハディードさんの圧に圧迫され、身動きを取ることが出来ない状況に追い込まれる。


 そんな俺を確認した師匠は、


「すまんがハディード、家の弟子が怯えておるでな……。 それと、そうじゃな、そやつの架空無稽を知りたいのなら、そこにうず高く積み上げられた、【試作品】とやらを見れば納得もいくじゃろうよ。」


 ハディードさんの肩を叩いたあと、俺の作業場の隅のほうに追いやられ、まるでゴミでも扱うかのように無造作で乱雑に積み上げてある固まりを指差した。


 そんな師匠の行動に、


「おぉぉ、やはり職人としては気になってしまってな」


 そう言って俺から離れたあと、師匠が指差した【試作品】の固まりのうほうを向くと、


「しかしエイズルよ、あれは失敗作ではないのか? 試作品というには余りにも数が尋常ではないか? 失敗作だとしても多すぎるが……な?」


 固まりへと歩みを進めながら師匠へと疑問を言うが、固まりへと辿り着いて、その中の一本を無造作に選び手に取った瞬間、ハディードさんは黙って手に掴んだ物を二度見し、無言のまま師匠と俺、それと【試作品】の固まりの間を忙しく顔を行き来させる。


 そんな光景に師匠は、


「これが普通の反応じゃよな…… 最近は皆、慣れきってしまっておったからのう……」


 苦笑いを浮かべながら、蓄えた髭を撫でている。


 そんな師匠の言い分に俺は、


「それじゃ、まるで俺が失敗作ばっかり造ってるみたいじゃないですか。 それに成功品以外は、本来なら爺さんに頼んで解体する所を、師匠が勿体無いとか言って処分できないから、エイルの教材用の資料に放置している物なんですから、そんな言い方をしなくて良いじゃないですか」


 全て俺が悪いと言われたように感じて反論する。


 そして、


 だってそうだろう。本番で新しい事を試す訳にいかない。 だから、素材の品質を落とし、作りも簡素化してた実験を経て、そのうえで、必要なら改良、試作をおこなったあと、本番の素材でのマッチングを確認してから、それでようやく正規品を造るんだ。 それなのに、初期試作品なんかを師匠のように勿体無いとかで保管なんかすればゴミが増える一方なんだよ。 それに金もかかるし、あまり人に見られて良い気文の物でもないんだから、正直はやく処分したといのが本音なんだよな。


 反論しながら、言葉には出さないが俺はそう心の中に留めてつつも不貞腐れた態度を取っていると、


「うん……っ?」


 俺の頭上に影が伸び、それに気が付いて顔を上げるとハディードさんが、


「御主……これ全てが失敗作と言ううたか……のう?」


 表情の一つもない真顔で、俺を覗き込んできていた。


 その行動に俺は、 


「いや……その……失敗作と言いますか、試作品の初期段階と言いますか……なんにせよ……商品としての段階には無いものでして……」


 思いっ切り引きつつ、


 いやいや!! 怖い怖い!! なんでこんなに圧が強いんだよ!? 確かに初期段階の物だから、素材も造りも簡易的で粗末な物だけど……そこまで怒る事はなくない? でもまぁ、顧客を奪った相手の作った物がアレじゃ切れるのも判るかもしれないけど。 ……そうだ!! 最終の試作品なら如何にかなるか? 


 混乱する頭をフル回転させて思考し、不意に、ハディードさんの後ろに微かに見えた棚の物が目に映り、


「あっ! そこの棚に飾って在る物は御眼鏡には叶う物だとは思いますよ!! それに……ノエル用の最終試作品もありますから、宜しければで良いのでアドバイスなのども頂ければ……あははは」


 俺は棚に飾ってある三本の試作品を指差して、空笑いを浮かべた


 すると、


「……っ」


 無言のまま俺が指差した方へと、まるで錆付いた機械が動作するようにゆっくりと振り返り、ピタと動きを止めた。


 そんな様子に師匠が心配そうにハディードさんへ近付いて、無言で肩に手を置きくと、


「ぬわははは!! ……負けじゃ負けじゃ!! 架空無稽、確かに。 此処まで型破りならば致し方ないと言う他ないのう!!」


「痛てて……」


 突然、天を仰ぐように笑ったと思えば俺の元へと来ると、俺の背中を数度叩いて負けたと意味不明に何かに納得する。


 俺はその行動が理解できずに、頭に疑問譜を浮かべながら呆気に取られていると、


「しかし…… エイズルが心配するのも無理はないか……」


 ハディードさんは、急に柔らかい表情に変り俺を見ると、小さな言葉を溢した。


 その言葉と表情に俺は、余計に混乱したのは言うまでもないだろ。



 そして俺は長い質問攻めやら、エイルの事で色々と茶化されながら時間は過ぎていき、


「おお、もうこんな時間か。 やはり真新しい物に触れておると時間が経つのが早いのう」


 時計の針が18時の時を知らせた事でハディードさんは、名残惜しそうに立ち上がり、


「ワシにとっては苦労しかないがのう……」


 師匠が続いて腰を上げて、こんなドタバタな一日も終わりがやってきた。


 暫し、師匠とハディードさんは二人で話し、その会話が終わると、 


「小僧!! 勇者(ブレイバー)殿の剣じゃが、ワシの知り合いに良い腕の魔石加工師が居るから、ソイツに話を通しておくでな。 必要になったら頼みに行くとよいぞ」


 相変わらず、小僧、呼びで固定だが、俺の事を認めてくれたのか、そう言い残してハディードさんは、俺達に背を向けて扉へと歩いていく。


 そんな後ろ姿に、


「ありがとうございます!! 完成したら見に来てください!!」


 俺は、感謝の意を込めて頭を下げる。


 すると振り返る事なく右手を振って返事をし、帰って行った。



 ……はずなんだが、締まった扉が再度開くと、


「そうじゃ。 エイル嬢とは仲良くするんじゃよ!! 照れ隠しは逆効果じゃてな」


 ハディードさんは、茶目っ気一杯の素振りを残して、再び扉は閉まった。


 俺はその言動に唖然としたが、


「大人しく帰れよぉぉお!!」


 直ぐに正気に戻ると、閉まった扉へ砂袋を投げていた。


 しかし、


「なんかあったの? ……あー!アンタそれ!!」


「なんじゃ? 騒いどらんと、とっとと片付けをせんか…… ヒルトぉぉ!!」


 ハディードさんの最後の姿は俺しか見ていなかったようだ。

 そして、俺が投げた砂袋は、師匠のお気に入りの腰掛用砂袋だったようで、投げた拍子に袋が破れて破損していたようで、俺は師匠に追いかけられ、


「本当に……なんて日なんだよぉぉぉ!!」


 そう叫び、日は暮れていった。




 

 そんこんなもありながらも日は過ぎていき、


「魔力を上げろ!! このままじゃ魔力許容量を超えらねぇぞ」


「判ってるわよ!!」


 魔力が増すにつれ、坩堝の中は光に満ちていく。

 だが、それほどの魔力を込めても、この素材の完全融解までに達していないのか液化した様子を見せない。

 

「ちっっ!! もっと上げろエイル!!」


「あぁぁもう!! なんなのよこれ!!」


 このままでは単なる魔力損に終わってしまう焦りから俺は声を荒げつつも魔力上げる。

 エイルは文句をいいつも限界ギリギリの様子だが、必死に魔力を放出し続ける。


「クソノエルの馬鹿野朗ぉぉぉ!! なんつう(もん)を持ち込んで()やがんだよ…… こなくそがぁぁぁ!!」


 そう俺の叫びと共に、坩堝の光は一気に拡散し甲高い金属音を響かせ、


「はぁはぁ…… ありえねぇぇ……」


「無理…… 本当に可笑しい……んじゃない…… アンタ……」


 俺達の魔力の全部を持っていき、ようやく完全融解を果たした。


 俺もエイルも完全に限界を超える魔力を費やした事で慢心相違の状態だったが、ようやく融解させた地金を放置する訳にもいかず、


「うるせぇ…… 型枠用意しろエイル…… このままじゃ、もう一度だぞ……」


「言われなくても、判ってるって……言ってる、でしょ……」


 お互いにフラフラの状態にも関わらず、最後の力を振り絞るように体を動かし、地金を型枠への流し込み作業をこなしていく。


 その作業が終わると同時に、二つの落下音と共に目の前が真っ暗に暗転する。


 そんな暗転する意識のなか俺は、


 さすがに想定外だったな……グリフォンなんていう素材をノエルが持ち込んで来たときは、それこそ、あの馬鹿げた剣を造れるって喜んだけど……あの馬鹿、魔力量だけじゃなく出力も化け物とか、普通の単一金属じゃ耐え切れないずに崩壊するんだもんな…… 結局、アダマンタイトをでを元に合金化するとなったんだが、このアダマンタイト……こいつの正体がなんと、SNCM材で……って、まぁ簡単に説明すれば、ニッケル、クロム、モリブデン、に微量のマンガンを含んだ合金なんだが…… はぁ夢がない話だ全く。 


 おっと話が逸れたが、このアダマンタイトは本当に馬鹿みたない魔力許容量を誇る上に、SNCM材の特性で、耐熱、焼入硬化性、靭性、どれをとっても、合金鋼のなかでは最高クラスの強度を誇るという、どこぞの化け物にうって付けの素材。 

 それを魔物合金化するってなったまでは良いんだが、はぁ…… 結果的、その加工段階の一番最初でこの有様だよ…… はぁ、こんな事なら要らん事を思いて、師匠達に探しにいってもらうんじゃなかった…… 


 そんな長い長い後悔の走馬灯を吐き出しつつ、意識は暗闇の中へと沈んでいった。



 そんな暗闇から、衝撃と共にチカチカと点滅する光が走り、


「ほれ、自分で言い出しておいて寝てるでない!! まったく、ワシの可愛い弟子に無茶をさせてからに……」


「うぅぅ…… 酷いですよ師匠…… 何も叩き起こす事はないでしょうに……あと、俺も可愛い弟子じゃないですか」


 俺は師匠に叩き起され、未だに気だるさが残る体を起き上がらせながら、叩き起された事への文句を口にすると共に、寝起きで働かない脳を起動させるために大きく首を振り、若干の愛嬌を続けて口から吐くと、


「ふん。 可愛い弟子なら、ワシを使いに走らせたり、可愛い妹弟子に此処までの無理をさせるでない」


 師匠は俺に苦言を言うと、


「ほれ、エイル御主もいつまでも寝てるでないぞ」


 エイルの元へと行くと、ゆっくりとエイルの上半身を起き上がらせると、優しく背中を数度叩いて目覚めるように促す。


 そんな優しい師匠に起されたエイルは、


「あっ……エイズル師匠、お帰りなさいぃぃ。 うぅ、頭痛い……」


 まだ寝ぼけた様子と、魔力枯渇(マジックフロー)で体調が悪く、頭を押さえていた。


 そんな様子を見ながらも、


「師匠ぉぉぉ、魔力精製水を取ってくださいぃぃ」


 壁を背もたれ代わり使いながらも、俺は弱りきった声を上げる。


 すると、


「もう、ヒルト君。 あんまりエイルちゃんに無茶な事をさせちゃ駄目だからね。 僕だって……」


 俺の視界外から声と共に、魔力精製水を握った小さな手が伸びてきた。


 その声と手に、


「へっ? フラン? どうしてお前までここに?」


 手元から腕を辿り目線を顔へと向けると、やっぱりそこにはフランが居た。

 そうやって不思議そうに俺がフランの事を見ていると、


「っっ!! 何もないよ! べつに何も言ってないからね! それよりこれ、これ飲んで!! っあ! エイルちゃんもこれ!!」


「っちょ!! おととと。 なんだってだフランの奴?」


 なぜか顔を赤面させ俺からそっぽ向き、意味不明な事を口走ったと思えば、魔力精製水を俺へとこれでもかと押し付けてきたが、魔力精製水を急に手放し、慌しくエイルの下へと逃げる様に小走りで駆けていった


 そんな俺達の様子に、


「はぁ…… ワシが連れて来たんじゃよ。 御主の事じゃから無茶をして倒れとると思ったからのう……案の定、エイルを巻き添いにしておったしの」


 師匠は溜めきを付きながら首を振り、呆れたと言いた気な表情を浮かべていた。


 しかし俺は、


「ぷはぁぁ。 生き返るぅぅ!  あっ師匠、何か言いました? それと、俺の言ってた物は有りましたか?」


 何とか落とさずに掴んだ魔力精製水を飲み干すと同時に、師匠の言葉は聞こえてすらいなかったので、自分の用件を口にしていた。


 そんな俺に師匠は、


「御主に一般常識を期待はしとらんが……もう少し鍛冶への意欲を他にもまわせぬもんかのう……」


 小声で何かを呟き、頭に手を当てて首をふっていた。

 

 俺は師匠が何を呟いたのかと思い、首を捻っていると、


「はぁ……ほれ、御主が言っておった風信子ヒヤシンス石じゃったか? マグマが冷え固まって出来た岩石を嫌と言うほど砕いて取り出してきてやったがのう、そんな宝石としての価値も薄く金剛石の似非物を何に使うというのかのう?」


 俺へと袋を放り投げると、難しそうな表情で俺へと使用用途を尋ねてきた。


 俺は投げ渡された袋掴み、中身を確認してから、


「ありがとうございます師匠!! いやー、グラン用の素材にちょっと必要なんすよ。 あっ! 爺さん!! コレも分解お願い……あっ」


 師匠へ使用目的を簡単に答え、分解を爺さんへと頼んだが、俺の目線の先には、


「なんじゃ、スランも来ておるのか? 来とるなら来とると…… ぬわぁぁぁスラン!!」


 真っ白に尽き果て爺さんの姿が在った……


 そういえば静かだなとは思っていたけど、悪い爺さん。 まさか魔力枯渇(マジックフロー)で倒れてるとはな……  作業に集中しすぎて完全に忘れてた。 てか、誰か気が付いてやれよ。 まったく白状な話だな。


 なんて俺は思いながら、慌てる師匠やフラン、エイルを他所に、爺さんへと合掌しておいた。


 



 そんなこんなで、


「がははは。 まさかアダマンタイトがあんなに分解できぬ素材とはな!! いやーまいた」


 エイルとフランの治療の甲斐もあってか、爺さんは豪快な笑いを上げる。

 そんな爺さんに、


「御主も若くなんじゃ、孫と同じように馬鹿をするでない」


 そう師匠は呆れるが、


「いや、あれだけ強情だとは思わんくてな。ついつい意地になりすぎた。ははは」


 あっけらかんとした表情で笑いを返す爺さん。


 そんな二人のやり取りに俺は、


「師匠の言うとおり、あんまり無茶をすんなって爺さん。倒れられたら心配するだろ」


 横から爺さんを心配すると、


「ヒルト…… あぁぁなんて優しい孫だ。こんないい孫に心配かけるのは確かに良くなかったな」


 爺さんは感激の余りか、俺を抱きしめてきたので、


「おい爺さん、みんなの居る前で恥ずかしいって」


 一応の罪悪感から俺は言葉を選んで、拒否の意思を示しながら、全力で拒絶その腕から逃れる。


 すると、


「すまんすまん、つい嬉しくてな。 ははは」


 爺さんは少し残念な表情を浮かべてはいたが、満面の笑みで笑い飛ばし始めた。


 そして俺も、


「全くだぜ爺さん。 ははは」


 つられて笑い声を上げた。


 そんな俺達を師匠が溜息を混じりに呆れていたのは様式美だろう。



 

 そして、そんな余談はさておき、


「さてと。 材料も揃ったことだし、グランの地金造りに入りますか」


 俺は坩堝に規定の材料を入れ終わると、そう元気良く声をかける。


 そんな俺の声に、


「はぁ、まったく御主は……また豪く突拍子も無い材料を……」


「はぁ…… エイズル師匠、これって本当に私達だけで溶かせるんですか?」


「まぁ、やるしか有るまいて…… ワシですら試した事など無いからのう……」


「なんだか私、こんな状況に慣れきってしまって違和感を感じないくなってます」


「奇遇じゃな……ワシもじゃよ……」


「「はぁぁ」」


 二人は大きな溜息を吐き出すが、


「もう、二人とも早く!! これから最強の素材が生まれるんだから」


 俺は楽しみすぎて、大きな溜息を付く二人とは裏腹に、最高の気分だった。



 しかし、魔力を注ぎ始めると、


「うわぁっつ!!」


 俺の魔力は反発する破裂音を上げ、その衝撃で師匠とエイルの魔力を弾け飛ばした。


 そんな突然の出来事に何が起きたのか理解出来ずに呆然としていると、


「なにやってんのよ? ふざけてないで真面目にしなさいよ」


「はぁ…… 楽しみなのも理解できるがのう、少し肩の力を抜かんか」


 師匠とエイルが、心配そうな表情を浮かべつつも、もう一度と試すと伝えてくれる。


 そんな二人に、


「そっそうだよな。 ちょっと楽しみすぎて、あははは」


 そう心の不安を隠すように、苦笑い交じりに言葉を返し、そして深く息を吸い込み、


「じゃぁ、もう一度…… せーの!」


 その掛け声と共に再び魔力を強く込めると、


 バチン!!


 再び上がった大きな破裂音と共に俺は再び後方へと弾き飛ばされた。

 そのあからまに可笑しいな現象に俺は、その衝撃と共に思考がフリーズし、呆然としたまま、その場に尻餅を着くと、


「なんじゃ!? ヒルトや大丈夫か?」


「えっ? 何?」


「ふぇ、ヒルト君?」


「ヒルト!!」


 驚きの表情を浮かべた全員が俺へと振り向き声をあげる。


 その声に、


「はっ? 今……俺の魔力が弾かれた?」


 俺は漠然とした記憶で言葉を振り絞りながら、

 

 なんで? いったい何に弾かれたんだ? こんな現象って…… ありえるか? いや、いくら魔力と素材の相性が悪かったとしても…… はぁ? なんで? 

 

 起きた現象を未だに混乱する脳内で思考し始めるが、答えなんか出るはずもなく、更に俺は混乱していく。


 そんな中、


 ≪我の魔力で何を仕出かすかぁぁぁ!!≫


 俺の脳内に駄犬(フェンリル)の怒鳴り声が響いた。

 その脳内に響いく駄犬(フェンリル)の言葉に、

 

「はぁ? 今なんて? お前の魔力がどうの言ったか?」

 

 不意に言葉が漏れる俺へ、


≪言ったで在ろうが、黒炎龍(げんしょのてき)と我は相容れぬ存在だと。 それなのに貴様は…… 我の魔力が混じる状態でなんて事をしでかすか…… そのせいで我にまで反動が跳ね返ってきたではないか≫


 再び直接的に伝わってくる駄犬(フェンリル)の感情と言葉。


 そんな事を切っ掛けに巻き起きた重大な問題に、


「うな、ばかなぁぁぁぁ」


 俺は情けなく言葉を吐き出していた。

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