第39話 湖畔と仲間と指輪と
色々とご心配をお掛けしましたが、無事に日常生活をおくれています。
町を出てから数時間が過ぎた。
これといって何も無い順調な旅路を俺は、俺専用の特等席である馬車の屋根の上でボケっと空を眺めて寝転んでいた。
そんな俺の視界に、一匹の魔物が悠々と蒼天の空を飛行する姿が映り込んだ。
その姿に、
長閑だねー。それにしても豪く高い所を飛んでんな……俺達もあれくらい高い所を飛んでみたいもんだな。
なんて悠長な感想を想い浮かべていると、右手に針で刺されたような激痛が走り、次に、
「ふん、偉く上機嫌で有る様だが此方としては不愉快極まりないのだがな」
等と怒り交じりの声色で駄犬が語りかけてきた。
せっかく上機嫌だった俺の心中を、あえて乱すような事をされた俺は駄犬に対して怒りを覚えつつ、
「あぁん?何がそんなに気に食わないんだよ? こんなに天気も良いし、あの魔物だってアンナに高いところを気持ち良さそうに飛んでんだろう!! ちょいちょい出来てくるたびにお前は、なんだって俺の気持ちを害するんだよ。嫌がらせか?」
毎回毎回、出てくる度に俺の感情を苛立たせる様な事しかしない事に対して文句を返す。
すると、
「天候など如何でもよいわ!! 其方が忌まわしい彼の者の因子を肌身離さず所有しておるから此方は本当に気分が悪いのだ!! 今までは近くに有れど、離れておったから我慢をしていたが、こんなに近くにあっては我慢の限界だ。そのような物をとっとと消し去らぬか!! 災いの種にしかならん」
そう激昂に近い感情を俺の中で発しながら言葉を返してきた。
ヒトがせっかく大人な対応をしてやっているのに、この駄犬はヒトの身体の中で言いたい放題やりたい放題な態度で暴れてやがる。
いい加減にして欲しいが、
「たく、黒炎龍だか何だか知らないけどな、お前のように誰かに乗り移られたらこっちは堪った物んじゃないんだよ。それにな、このちっぽけな欠片だって何の拍子に誰かに乗り移るとも限らないんだ。はいそうですかって、破壊もできねぇだろうが。 考えて物を言いやがれよ、この駄犬が」
俺の中にある不安を口にしながらも、駄犬へと文句を言う。
俺の文句に唸り声を鳴らして何かを訴えてくるが、それを完全に無視していると諦めたのか、
「はぁ…… ならば何故……我の近くに置く必要が有るのだ!! 我は今は静かに寝ていたいのだ!! 何故!!何故に其方は因子を寄りにも因って、我の紋章の上に置くのだぁぁぁ!!」
溜息?を発したと思ったら、頭の中に響き渡る程に声を張り上げて叫び始めた。
俺は余りに響くその声に眉を顰めてから体をなぜか仰け反っていた。
そして、響いた声が収まったので、
「ああ! だってアレじゃん。龍の呪いだっけか?あれを受けてても、お前が居たら大丈夫みたいな事を前に言ってただろ。だからお前の文様の上に括り付けとけば安全かなって思ってさ」
そう意趣返しを含めた言葉をケロっとした感情で言い返しておいた。
俺のその言葉と行動に、
「……御主……まぁ良い……一時的に許可してやろう。だが、直接触れさせるのは止めろ。せめて布かその手袋の上に頼む…… 本当に不快でしかたないのだ」
尾を下げ威厳も勢いも無い様子だが、言葉だけはといった感じで俺の深い場所へと姿を消して行った。
俺はその姿に、少しやり過ぎたかなんて心の中で思いつつも、やはりこの魔石は危険で放置していて良い代物ではないと確信した。
そんな俺と駄犬の一悶着が有りながらも馬車は快適に帝都への街道を進んで行く。
……なんて事はなく……
突如、大きな振動音と共に馬車が跳ね、同時に左側へと傾いた。
俺はその衝撃で体が浮き上がり、
「なぁ!! あぁぁぁぁ―― げふっ」
声を上げて咄嗟に身体を捻って馬車の屋根に捕まろうとするが、仰向けに寝ていたのが災いしたのか、俺の手は屋根に引っかかることもなく屋根から振り落ち、とんでもない体勢で地面へと落下した。
そんな俺の様子に、
「すまんすまん。皆、怪我はないか? 余りにも長閑な天気で居眠りをしてしまったようだ」
気が付かない爺さんことスランが申し訳なさそうに馬車内を覗きながら声をかけていた。
しかし、馬車の中に俺が居ない事に気が付いたのか、馬車内の誰かが伝えたのか、あっヤバイみたいな雰囲気で屋根の上をゆっくりとした動きで覗き、首を傾げた後にマサカみたないみたに地面へと目を向けた後、
「無事か!? ……はぁ……」
声と共に俺と目が合うと、溜息を吐いてから首を振ると、
「どうやればそんな風に落ちれるんだ? あぁ……お前には受身の指導を強化する必要性を考えるべきなのか……」
眉間を押さえながら言葉を漏らし、真剣に考え始めた。
いやいや咄嗟の出来事で、受身や云々なんて取れるかよ!! むしろ爺!お前が暢気、居眠りなんて扱いたせいだろう!!先ずはそこをだな。
なんて心の中で叫ぶが言葉には出さない。
何故かって? そらそうだろう。
ジャーマンスープレックス
プロレス技でも知らない人は居ないと思われる有名な技。 その技を掛けられた者は無様に股間を開きその間から顔を覗かせるという、なんとも屈辱的な体勢を取らせるという最高の技だ!!
そして……
そんな技を喰らったかと思わせる体勢の俺……こんな体勢で凄めるはずも、言い訳できるはずも無く……沈黙するしかないのだ……。
そして、そんな俺の無様な様を馬車の窓から覗き込む一同が笑いの余りに、腹筋が崩壊したとか、その後に笑いながら、もう一度もう一度とからかわれたとか、そんな事は断じて有るはずも無いと思いたかった……
そんなバカな話は置いておいて、
「これは駄目だな…………」
車輪を一目見ただけで言う、若干ボロボロな姿のスラン。
そして、
「悪いがお前達……修理が終わるまで其の辺で休憩しててくれないか? 頼む……」
頼み込むように頭を下げた。
それもその筈である…… 目の前には悲惨、惨劇、無残、と形容したくなるような光景が広がっているのだ。
その元凶は、壊れた車輪の手伝いをすると意気揚々だった三人だ……
この三人は何をトチ狂ったのか、なぜか予備の車輪をフランが取りに行くという選択から始まり、落下させて破損、続けて、それを修理するという名目でグランが紅蓮剣を使用して引火、其れに気が付いたエイルが消火のために巨大な水球の魔法を発動、火は消し止めたが水球の余波で、生きていた筈の右輪が大破…… 結果、馬車の下で作業をしていた俺と爺さんは余波プラス下敷きに……
そんな散々な状況なのだから当たり前である……
そして、
「「「ごめんなさい」」」
三人は頭を下げて謝罪した。
しかし……
「そういえば、休憩するのに良い場所がこの近く在るの!! みんなでそこに行かない?」
「あぁ!!来る時に言ってた場所か? 湖面がどうとか景色がって所だよな!!」
「ふぇ? 何それ!!すごく気になるよぉ!」
等と、舌の根も乾かぬ中にハシャギ始めて、エイルを先頭に駆けて行ってしまったのだ。
その姿に内心では、何て奴らだよ……反省という言葉をだな、なんて思い浮かべながら、
「お前等な!! ちょっとは――」
と言い掛けたが、
「何してんのよ!? 置いていっちゃうよ!!」
「ふえ? ヒルト君は来ないの?」
「なにボサット突っ立ってんだよ? めちゃくちゃ綺麗な場所らしんだからさ行かなきゃ損だろ、早く行こうぜヒルト!!」
等と此方に振り向いて、手招きや、来い、行こう、という動作をしながら、俺の言葉に被せて、三人揃って俺を呼び始める。
そんなグラン達の姿に俺は溜息をつき肩をすくめ、
「だぁぁぁ!! 人の話を聞けェェ!!」
そう叫びながらも、まぁそんな物かみたいな諦めの感情と、どこか嬉しいような思いを抱きながら俺は、フラン達の下へと拳を上げて怒ったフリをしながら走っていた。
そして、鬼ごっこのような状態で目的の場所まで走り抜けたが、目的地直前の小高い丘の頂上で突然、目の前で俺から逃げていた三人が立ち止まった。
三人が急に立ち止まった事を疑問に思いながらも若干距離を離されていた俺は、あの三人より、純粋な駆けっこでは遅いなんていう事実を受け止めたくなくて、残りの距離を本気で走って無かった事にしようとした。
その結果、息が上がってしまい、三人の元へと追い着いた俺は俯き加減に、
「おいおい、いきなり止まってどうした――」
体が倒れないようにグランの肩に手を置きながら声をかけた俺だったが、言葉と共に顔を上げた俺の眼前に、
太陽の光を反射する湖面、湖面という巨大な鏡に映る深緑の山峰、深緑の山峰を背景に飛び立ち飛ぶ白い鳥々、そしてその全てを包み込むような蒼穹の空と真っ白な雲。
ゲームやアニメの世界でしか描かれない空想の中でしか見られないような景色が目の前で広がっている。
リアルな景色として肉眼へと映ったそんな景色に俺は、言いかけた言葉を失ってしまった。
その景色に四人揃って、暫くは一言も言えず、唯呆然と景色に圧倒されながら立ち尽くしていた。
そんな俺達四人だったが突然、目の前の景色の一部だった鳥達が一斉に上空高く羽ばたくと、木々や草々が揺れ、草原と風とが擦れた音が近付いてくる共に音が大きくなり、ついに俺達へと到達した風は山から運ばれてきた冷気と共に強い衝撃を伝え、一気に過ぎ去っていった。
そんな吹き降ろされた突風に俺達は一瞬驚きながらも、我に返っり、互いの顔を見合わせると同時に、
「ぶっ!お前等の顔、顔よ! あははは」
「ちょっと、アンタだって人のことは言えないでしょ!! ああもう髪が……」
「あははは、確かにお前もエイルも酷ぇぇな。髪の毛も服もしっちゃかめっちゃかになってんの。あとフラン、ぐふっ……何で尻餅……ははは」
「ふえぇぇ……でも、そういうグラン君はおでこに葉っぱが付いてるんだからね」
お互いの酷い有様を指摘しながら、みんなで笑っていた。
皆が一緒に居て、こんなに綺麗な景色が見れて、バカみたいな事で驚いて、笑って、その事が凄く嬉しくて、今まで心の中にあった重たい問題を忘れて本当に久々に笑った。
そんな俺を、
「やっと笑ったね!」
覗き込むようにして俺の前に顔を出したフランが呟いた。
その言葉に、
「えっ?」
惚けた言葉を溢した。
溢した言葉を拾うように、
「はぁ……アンタ、全然気付いてなかったの? 最近ずっと眉間にシワを寄せて難しい顔してたんだよ」
「そうだぜヒルト。お前ずっとこんな顔して俺達の話も上の空だし、それに馬車でも独り屋根の上だろ、少しは俺達に相談しろってんだよ」
エイルは溜息をついてから、呆れたと言いたげな表情で右手を仰向けた。
そしてグランが、左手で眉間にシワを寄せて俺の顔の物真似をしながら、苦笑いと、心配そうな口調でエイルに続いた。
俺は二人の言葉にハットした表情になり視線を向けると、グラン、エイル、フランの三人が心配そうだけど優しく微笑んで俺の事を見ている事に気が付いて、
「お前等……」
そう言葉を溢しながら、
ああ……またやっちまったな…… 先生と【約束】をしたのにな。はぁ、ほんとうに今回の課題は難しいですよ先生。
そう心の中で、なかなか改善されない先生との約束の難しさを再確認させられていた。
そんな一幕が有りながらも俺達は、池の畔へと脚を進めていく。
そして、湖畔へと辿り着くとまた違った景色へと変化し、巨大な湖の壮大差と頂上を雪化粧に覆われた山々の雄大差に再び心を奪われる。
そんな景色を見つめていると、
「ヒルト君!! お茶の準備が出来たからこっちに来てよ!」
「すげー美味いぞこのマフィン!」
「コォラァァ! あんまり数が無いんだから考えて食べなさいよ!」
いつの間にかシートを挽きピクニック状態でお茶会が始まっていて俺を呼んでいたが、両手にマフィンを持ち、口にもマフィンを頬張るグラン、それに気が付いて怒るエイル、そんな光景が目に映った俺は、
「はぁ…… 風情もヘッタクレも有った物じゃないな……」
溜息とともに言葉を溢してから、
「あぁすぐに行く。てかっ俺の分は食うなよグラン。食ってたら切り刻むからな」
今までの激動のような日々から、いつもの日常に戻った光景に心が緩むような気持ちで声を上げてから、皆の場所へと歩いた。
用意されたマフィンは本当に美味しくて、ペロッとたいらげてしまった。
そして、
「てかお前等、この為に馬車の車輪を壊したのか?」
疑問に思っていたというか感じていた事を、エイルが淹れてくれたお茶を啜りながら徐に口にした。
そんな俺から口にした質問に、
「まぁアンタなら気が付くよね。 あっでも、アンタは素直に言う事を聞かないからってスラン様が馬車の事を計画してくれたのよ。だから後でお礼しときなさいよ」
どこかバツが悪そうというか、唐突に爺さんの名前を出して答えたエイル。
そして、
「あぁそうだな。本当に良いお爺さんだよな、お前の事もちゃんと理解して今回の事を提案してくれたもんな」
「はわわわ……」
バツが悪そうと言うよりは、何かを押し付けるような感じと其れに対するフォローをしたような言い回しで、目を逸らしてグランが続いて、そんな二人の様子にフランが若干焦っている。
その状況から俺は、
「おい……何か隠してるだろ」
そう怒りを表した電撃を身に纏い声を発すると、
「おい! 何でいきなり切れてんだよ! 俺は別に何も隠しては…… なっちょっと落ち着けって……」
「はわわわ」
グランが慌て始め、相変わらずフランは落ち着きなく狼狽える。
しかし、
「はぁ…… そうよ、ちょっとやり過ぎちゃったのは認めるけど、アンタもちょっと冗談が過ぎるわよ、もぅ」
エイルが大人な対応というか、俺の事を見透かしているのか溜息を吐くと苦笑いを浮かべながら答え、呆れた表情で俺を諌める言葉を口にした。
そしてネタバラシなのか、エイルの言葉に安堵したグランが、
「おいおい本気で脅かすなよ。本気で怒ってるんだと思うだろ。まぁ確かに、ちょっとアドリブが過ぎて遣らかしすぎたけどな、いやーまさかあそこまで燃えるなんてな。あはは、まぁでもエイルが慌ててあんなに大きな魔法を使うなんてな――」
ぺらぺらと話始めたので大人しく聞いていたが、大体の元凶がこの馬鹿である事が判ってきた上に、まったく反省の色も見せていなかったので、俺は満面の笑みを作ってグランの肩に手を置き、
「そうか、そうなんだな」
とだけ呟いてからグランの顔を見据える。
すると、今まで饒舌に話していたグランの口が止まり、
「っ? ……ちょっと……ヒルト目が笑ってっっ。あぎゃああぁぁぁ」
顔が引き攣っていたのでが、俺がほんの少し魔力を高めると、悲鳴を上げてその場に突っ伏した。
たく、殆どがお前の責任じゃねぇかよ。何が、いやーまさかだよ。お前のが全部悪いんじゃねぇかよ。たく……
そう心のなかで愚痴を溢しながら呆れて頭を抱えていたが、不意に一つの事を思い出し、
「わるい、この馬鹿のこと少しの間だけ見張っててくれないか?」
エイルとフランに頼んで、馬車の方へと体を向けると、
「ちょっと、急に何処へいくのよ?」
「ヒルト君? 急にどうしたの?」
慌てた様子と驚いた表情で二人揃って声を上げるが、
「ちょっと忘れ物をしてな! まぁ、すぐに戻るから」
俺は迅雷を発動し、もと来た道を全速力で駆けた。
そして馬車に辿り付き、目的の物を手に取ると再び地面を蹴って走り始めた。
なんだか爺さんの声が聞こえたが、まぁ気のせいだろう。
そして三人の場所へと戻るが、
「お待たせ!! っ? えぇっと……悪いけど回復させてやってくれない?」
俺の様相とは裏腹に、頼んでいたはずのグランは俺が感電させて気絶した状態のまま完全に放置されており、なんだか可哀想な気分になったので、仲良くお茶の続きをする二人へと声をかける事にしたが、
「ふん、ほっておいてもそのうち目が覚めるでしょ。知らないよ」
「うん、それぐらいなら回復魔法はいらないと僕も思うかな」
言葉に棘が有る口調で、明らかに怒っている雰囲気を纏って言葉を返す、エイルとフラン。
そんな二人の様子に疑問譜を頭に浮かべながら、何が起きたんだと首を傾げつつもグランの様子をマジマジと観察すると、あからさまに感電以外の外傷が見受けられるというより感電の形跡は無く、他の切り傷や濡れたような痕が体に刻まれている。
そこから俺は、
あぁぁ、遣らかしちゃったのね…… ご愁傷さまです
そう結論つけて手を合わせた。
そして、俺がグランに黙祷を捧げていると、
「それより、アンタは何をして来たのよ? 忘れ物とか言ってたけど」
エイルが俺の背中を引っ張りながら、興味が抑えられないと言った様子で声をかけてきたが、
「あぁぁ…… いやでもっっ、コイツが此れだとな……ちょっと可哀想というか…… これ以上の追い討ちは可哀想だからさ……」
俺はこの状況で、持って来た物を先に二人だけに渡すのはグランが可哀想なのも有るが、何だか思い浮かべていたモノと違う気がしたので、言葉を濁しながら眉を顰めてグランの方へと目をやりながら答える。
そんな俺の困った様子に、溜息を吐き
「もぅぅぅ。本当に手間ばっかり…… ほら、ささっと起きなさいよ。 むしろ息の根を止めた方が早いかも」
なんともな言葉を吐き出してから、無造作、粗雑、乱暴、という言葉が合う、回復魔法師に有るまじき動作でグランを仰向けに転がし、回復魔法を掛け始めるエイル。
その様子に、いったい俺が帰って来るまでに何が起きたのか、本当に謎だったが、
「ごっごっ…… 誤解だァァァァ!!命ばかりは命ばかりはお助けをぉぉぉ!! なんで俺は駄目でヒルトは許されるんだよぉぉぉ!!」
目を覚ますなり全力で飛び起きて叫び、その場から逃げようとするグラン。
そんなグランが俺の前を通り逃げようとするので、襟首を咄嗟に掴んで停止させるが、それでもなおギャグ漫画のように足をばたつかせてる様子に、
はぁ……マジでお前は何をして、何をされたんだよ。 それと、俺がお前の何に関係してるんだよ。マジで怖すぎるんだが…… ヤメテクレよ
呆れた気持ちと、女性陣に対する恐怖を覚えた事だけは此処に記したい。
まぁそんなこんなが有ったが、グランも落ち着きを取り戻して、俺の横で小さくなって話す準備が整ったので、
「おほっん。 みんな手を前に出してくれないか?」
俺は咳払いをして場を仕切りなおすと、三人に手を出すように頼んだ。
三人は一瞬だけ目を見合わせると、
「危ない物じゃないだろうな? いつもの事から考えると怖いんだけど」
「ふえぇぇ、またとんでもなく高価なものとかじゃないよね?」
「はぁ…… アンタ……また変な物だったり、強力な物とかを作ったとかじゃないわよね?」
疑いの眼差しを俺に向けて、恐る恐るといった感じで手を前に出す。
そんな様子に、
「だぁぁぁ、本当に情緒とか感激とか無いのかよ!! なんでそんなに疑うんだよ!! あぁぁ、お前らに期待した俺が馬鹿だったよ!!」
感情を口から吐き出しながらも、いつもの反応だったことが嬉しく感じながら、ポケットに入れた物を
一人一人の手を順番に引っ張っり、その指へと嵌めていった。
嵌められた物を見た三人は、
「「「これってまさか」」」
声を重ねて驚いてくれた。
だから、
「勘違いするなよ、偶々、そう偶々人数分の良い石が手に入ったから、それで作っただけだからな。 別に大した理由とかはないから」
俺は何だか恥ずかしくて、変な言い訳を口走ってしまう。
でも、そんな俺の表情を見て、
「へー偶々ねぇー」
「ありがとう、ヒルト君。前のも凄く嬉しかったけど、今の方がもっと嬉しい」
「何を照れてるんだよ。作った本人が照れてたら貰った俺達はもっと恥ずかしいって。なんたって全員お揃いの指輪なんだからな。今くらいは素直に話せよ」
其々に言葉を口にして、喜んだ笑顔を浮かべてくれた。
俺はそれが嬉しくて、自分の分を指に嵌めて
「之からも一緒の仲間としての証みたに成れば良いなって思ったんだよ。あと、俺はお前らに色々助けられぱなしだし、心配もかけたからな、それのお礼みたいなもんだよ」
皆に嵌めた指輪を向けてから、言葉を口から出すと、
「本音と言い訳が反対になってんぞ」
「別に悪い気はしないし、アンタらしくて良いんじゃない。でも、ヒルトがそんなにロマンチストだったんて以外だったなぁ」
「えへへへ、僕は本当に嬉しいよ。それに、僕達はヒルト君のおかげで皆こうして友達になって、一緒にいるんだよ。だから、」
口ぐちに言葉を言いながら円陣状に並ぶと、
「「「ありがとう」」」
その感謝の言葉と共に、俺の指輪へと其々の指輪を引っ付け合った。
きっとこの時、俺の顔は真っ赤だっただろうし、みんなも恥ずかしくて顔を染めていただろうけど……そんな事よりも、嬉しい感情と温かな気持ちで、みんなで笑っていた。
が、
「おーい、何を悪巧みをしてるんだ? 馬車の車輪が治ったからソロソロ出発するぞ!!」
空気を読めない爺さんのお陰で、この不思議な空間が破壊された事で我に戻った俺達は、気恥ずかしさを抱きながら馬車に揺られ帝都への帰路に着いた。
そして、朝焼けを背に久しぶりの帝都へと帰って来た俺は、
「はぁぁぁぁ!? 師匠ぉぉぉぉ!!」
工房の戸を開けると同時に、その惨状に驚きの叫びを上げていた。




