第35話 軌跡と紅炎と皇蟲と
大変遅くなりました
何とか書き上げた形になりますので読み難い点が散見していると思います。
届いた願いは、少女へと群がった絶望を雷閃の前に切り伏せ、
「泣いてんなよ。それに、守るって約束したろ」
俺は誇りを片手に握り、方膝を付いてフランの瞳から零れ落ちる涙を拭った。
涙を拭うとフランは硬直して固まり、口をあけ目をパチパチと瞬きさせる。
しかし俺とフランへと影が延び、俺達を覆い始めると、
「ヒルト君!!」
目を見開いて焦るように俺の名前を呼んだ。
俺はフランが口を開くと同時に体を入れ替え、その勢いのまま剣を横薙ぎに振りぬいた。
すると影は、雷光の光に掻き消されるように跡形も残さず灰へと帰った。
「はぁ…… こう数が多いと格好も付かせてもらえねぇな」
俺はタメ息を付いて、せっかく格好良くこれから決めようと思っていたのにと思いながら愚痴の言葉を零し、目の前の迫る来る芋虫の波を睨みるが、そこで一つのアイデアを思いつき、
「フラン!! ちょっと手伝ってもらって良いか? 今までの分を取り戻してやっからよ」
俺は振り向いて、いつものように悪い顔で笑うと、
「ふえ?」
間の抜けた声と共に首を傾げて頭に疑問譜を浮かべていた。
俺はそんなフランにはお構いなしに、手を掴んでフランを立ち上がらせ耳打ちをする。
俺の耳打ちをする時にフランは顔を真っ赤にさせたように見えたが、俺の言葉を聞いた瞬間に、
「はわわわわ、失敗したらそれってどうなるの?」
一瞬焦ったように驚き、次の瞬間には何も理解していないのか惚けた表情を見せる。
俺はフランのその反応に少し呆れるが、どこかその反応を見れて胸が温かく感じ、自然と笑ってしまった。
すると、
「むー、僕を馬鹿だって思ったでしょ? ヒルト君よりは座学の成績は良いんだからね」
そう怒り始める。
俺はそんなフランをもう少し、からかいたかったが、
「とりあえず雑談はここまでだ。失敗なんて考えないでとっとと片付けるぞ」
俺はフランの頭にポンと手を置いて自信気な表情を向けた。
少しだけ照れた表情を見せるフランだったが、直ぐにパナケイアの外縁を取り外し器用に魔法で操り、自身の前に重力魔法の力場を発生させ、
「うん、僕はヒルト君を信じるよ!!」
両手で魔法を安定させながら、微笑み混じりの真剣な表情で返事をした。
俺はフランの表情をみて、
「任しとけ。魔法史の常識を覆してやるよ」
得意気に答えて迅雷を発動させ、それを右手の平に一気に集中させる。
迅雷で発生した電撃を手の平に集中させると、小さなプラズマの球体を形成する。
しかし、これでは足りない。
さらに魔力を集中させ周囲にある静電気を取り込むイメージを浮かべながら、両手で体内の魔力を小さなプラズマの球体に注ぎ込んだ。
すると小さなプラズマの球体は、ジリジリと電撃音を上げ青白く輝きを発しながらサッカーボールサイズのプラズマ球へと大きくなり、バチンと大きな電気が破裂する音を上げた。
「フラン!」
制御ギリギリのプラズマを無理やり抑え込みながら、俺はフランの名前を呼んだ。
俺の声に反応したフランが、
「いっけー! 風の精霊が起す軌跡」
重力魔法を維持しながら風の魔法を発動させ、幼態まで真空の道を作り出した。
それと同時に、
「吹き飛べ!!」
パナケイアに発生した、重力魔法の力場へとプラズマ球を押し込んだ。
真空のバレルへと重力の力場によって打ち出されたプラズマ球。
本来、俺の魔力特性では体から離した時点で魔力が拡散し、プラズマを維持できずにすぐさま拡散してしまう。
これは現実世界のとある兵器と同じ現象から生じる問題である。
それが、
【荷電粒子砲】
いわいるビーム砲の一種だが現実世界ではある理由から非現実的な兵器とされている。
その理由というのが、ある一定距離以上の射程になると空気の抵抗により荷電粒子が拡散してしまうという地球上での減退の問題である【ブラッグピーク】。
更には、磁場により容易に偏向する特性上、地磁気の影響を受けやすく真っ直ぐ進まないという問題。
またそれを解決しようとすると、更に膨大な電力が必要となってしまい、某新世紀アニメでは関東地方全域を停電にし、機械による演算を併用して、ようやく発射していたような代物だ。
俺には、そんな膨大な電力を生み出す魔力も、SFの演算機械のような頭脳も無い。
しかし、一定の条件さえ整えてしまえば実現は可能。
それが、重力場と真空のバレルだ。
それに俺の魔法とは、電撃を生み出す魔法ではなく、電子という物を操り事象を起す物理的な魔法。
一度発生させてしまえば、魔力が拡散しようとも発生した事象は物理法則や科学的法則に従う。
そんな俺の魔法特性と、フランの操る重力と風という条件が整えば【近】の魔法特性であっても遠距離に膨大な魔法を行使する事が出来る。
が、
「あ……ヤベ」
打ち出されたプラズマ球は真空のバレルの中を突き進み幼態の群れへと届くが、たとえ蟲であったとしても生物の体内は60%~80%を占める成分は水である。
そんな殆どが水分で出来た物に高密度に凝縮されたプラズマなんて物をぶつければどうなるか……
「ふぇ?」
それは、卵を電子レンジに入れるのと同意義である。
プラズマ球が幼態の群れの中心へと到達し真空のバレルから解放されたことで、一気にプラズマ球は拡散を始める。
拡散するプラズマに巻き込まれた幼態は全身から体液を滲み出しながら風船のように膨らみ……
極限に達した幼態の体は破裂する。
それも全身の水分を一瞬のうちに沸騰して破裂するんだ。
これが意味するものは一つ、
「フラン! 防壁魔法を早く!!」
フランは俺の焦る声を聞いて、全ての魔法を即座に防壁魔法へと切り替える。
間一髪の所で防壁魔法が間に合い、俺とフランに被害は出なかったが、
しかし人ほどの大きさを持つ幼態が一斉に破裂したのだ。
その衝撃は卵を電子レンジで爆発させた威力の比ではなく、破裂の轟音を上げ若草色のキノコ雲を発生させた。
そして飛び散った中身が上空へと巻き上げられ……降り注ぐ……
その光景は、真っ白の画用紙の真上から黒いインクの瓶をぶちまけたような惨状を作り上げたのだ。
しかし、そんな惨状だというのに幼態の群れは再び、ぶちまけられたインクを白く埋めるように群がる。
一瞬だけ俺の心に絶望の二文字が過ぎる。
しかし、
「ヒルト!! 何をぼさっとしてんだよ!! お前が抜けた穴に向けて残りが群がってるぞ。早く残りを蹴散らせ!!」
上空からグランが、クソ蟲と戦闘の合間を縫って俺へと叫ぶ。
その声に群れの先頭へと目をやると、先ほどまでの隙間も無いほどの埋め尽くされた濁流とは違い、微かに隙間を覗かせた急流へと姿を変えていた。
そう、奴らとて無尽蔵では無い。
その微かに見せた有限だという証拠に希望を見出し希望を見出したが、同時に俺のやらかしたミスも見てしまった。
それは、
「くそ……やらかした。咄嗟だったから削りきれてねぇ、間に合うか……」
フランを助けるためだったとはいえ、あの状況で俺が抜けたという事は明らかな采配ミスでしかない。
俺の抜けた穴へと多数の幼態が群がり、決壊したダムの如く漏れ出る幼態が後方と周囲へと襲い掛かろうと広がり始めていた。
その光景に愚痴と焦りを漏らしながらも剣を構え迅雷を発動させるが、
「チッ……こんな時にガス切れかよ。クソが……」
全身に一瞬だけ雷陣を纏うが、パチンと電気音を弾かせて拡散してしまう。
それでも漏れ出る蟲を睨みつけ、足を前に踏み出し走ろうと地面を踏みしめた時だった、
「ヒルトはフランちゃんを守ってあげなさい!!」
突如、俺を叱るような女性の声が響き渡り、同時に穴から漏れ出た幼態の群れへと緋色の突風が戦場を走り抜け、
「剣聖が巻き起こす剛陣」
大地にレイピアを突き刺し、剣状の石英柱を乱立させ漏れでた幼態の尽くを貫き抜いき、見覚えのある緋色の髪を靡かせこちらへと振り返る。
その振り返った見覚えのある顔に、
「かあ……」
「クリス、遅かったじゃねぇか!! おおかたゼンの爺さんでもゴネてたのか?」
俺の驚きの声に被せて親父がその人物の名前を呼んだ。
その親父の声に、
「それだけじゃないわよ、町のほうを見てごらんなさいよ。貴方と御父様の蒔いた種が芽吹いてるわよ」
緋色の髪を手櫛で纏めるように撫で、町を指差した。
その指差す方へと目をやると、
「オヤジさんとの約束を守るために来たぞい」
「お前みたいに耄碌したジジイが何の役に立つんじゃい。ワシの邪魔をするんじゃないぞい」
「なにを言っておるんじゃい。ワシら全員ジジイじゃろうが。はっはは」
数名のお爺さんがなにやら古ぼけた剣を掲げてなにやらワチャワチャとしている。
あっ……腰をやったか? おいおい……大丈夫か? いやいや母さんはなんであんな爺さん達を連れて来てんだよ。危ないにも程ってか邪魔すぎるだろう、おい!
その爺さん達の登場に心の中で、突っ込みを入れざるを得なかったが、
「タング!! 遅くなってすまなかったな!! 嫁や子供を説得するのに時間が掛かっちまってな」
町の若い衆、親父と同年代位の人達が、白銀の剣を担いで登場する。
「何を言ってるんだよ。お前が最後までビビッて尻込みしてたんだろうが」
「そうだぞ。それにお前の嫁さんは、お前の尻を最後に叩いてたろうが」
「お前等だって一緒だっただろうが!! こんな時にばらしてどうすんだよ」
「「「はははは」」」
「って 爺さん達は腰が弱いんだからじっとしててくれって」
「何じゃと!! まだ若いもんに、はう!!」
「ほらほら……」
なんだか緊張感を全く感じない雰囲気だったが、
「まったく……」
その光景に親父は何かを感じて熱い何かを流すが、
「お前等なんで来やがった!! 俺は家族を守れとソイツを持って行かせたはずだ」
自身へと飛び掛かってきた幼態を切り飛ばして、怒鳴り声を発した。
しかし、
「へっ、家族を守るって事は町を守るって事だろう!! それに、衛士さん達、タングや女、子供が町のために戦ってるって時に、お前から貰った剣を握って家の片隅でガタガタ震えてろって、それは俺達の事を馬鹿にしすぎだろ」
「そうそう。俺達は魔法や魔力はてんで駄目だけど。昔取った杵柄はまだまだ錆びついちゃいないぞ」
そう町の若い衆の代表と言わんばかりに二人の男が声を上げると同時に剣を掲げ、
「「みんな行くぞぉぉぉぉ!!」」
剣を振り下ろして加勢の掛け声を上げ、
「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」
その声に続く様に全員が雄叫びを響かせて剣を片手に蟲の激流へと突撃する。
そして俺の目には疑わしい光景が飛び込んで来る。
ただの町人、町の叔父さんだと思っていた人達のはずなのに一糸乱れぬ陣形を組み、蟲の波に押され始めていた衛士達の元へと駆けつけ、蟲へと剣を振るい始める。
その剣は見る見る内に押し込む蟲の波を蹴散らし、形勢を逆転させ始める。
そして、
「ねっ、言ったでしょ。きっとこうなるからって」
背中同士を預けるように親父と母さんが重なり、母さんが言葉をかける。
すると親父は頭を掻き、
「それを止めて欲しいからお前を行かせたんだぞ。あと、爺さん達まで連れてくんなよな。腰が心配で目を離せないじゃないか」
不器用そうに表情をしかめて文句の言葉を言うが、
「そのわりには嬉しそうですよタングさん。それに、みんな剣を捨てて平和に暮らす事を選んだとしても、守る事を捨てたわけじゃないですから、そこは素直に喜んで良いんじゃない? その種を蒔いたのは貴方と御父さんなんだから」
そうクスクスと笑う素振りを見せるながら返事をする母さん。
その母さんの返事に、
「戦乱の残り香の世代が平和に生きる時代に、父さんがした事を考えると素直に喜べる訳あるかよ。本当は俺一人で十分な話だったんだからな」
何か険しい表情に変わり、強めの語気で言葉を返し剣を強く握り締める。
そんな親父の様子にタメ息を付いて、
「本当に素直じゃなんだから……」
言葉を溢す母さん。
溢された言葉に、
「何か言ったか?」
親父が首を傾げて何かを合図したような仕草をすると、
「別に何も無いわよ。それよりも」
「ああ、子供達が見ている前でサボってる場合じゃないからな」
そう言葉を交わし、
「「この話は後でだ(よ)」」
同時に背中を離し、蟲の波へと駆け抜けていく。
そして見る見る内に蟲の波は数を減らし勢いを失っていく。
その光景に、
おいおい……この町は戦闘民族の集まりか何かかよ? 異常すぎるだろ……
などと心の中で呟きながらも剣を強く握ると、
「ヒルト君、僕はもう大丈夫だから行って」
俺の背中を押してフランが声をかけてくる。
その言葉に、
「大丈夫なわけあるかよ!! さっきの魔法でお前の魔力だって枯渇して……」
自分の中にあった気持ちを殺して振り返りながら言葉を出す。
しかし振り返った俺の口に両手を当てて言葉を止め、
「大丈夫だよ。だから今度は僕だけじゃなくて皆を助けるために剣を振るって欲しいの」
強い眼差しを向け言葉を放つフラン。
その姿に一瞬だけ殺した気持ちが生き返るが、それでもと思い、口を塞ぐフランの手を払いのけて、
「なにを……っ!?」
言葉を発しようとした時、俺へと背伸びをして顔を近付けるフランの顔が目に映ると同時に、柔らかく、暖かな感触が俺の口を塞いだ。
俺はその驚きから全ての感情が吹き飛び混乱した気持ちで、その場に硬直していると、
「行って……僕は本当に大丈夫だから」
暖かな感触が唇から離れると同時に、俺へと背を向けてフランが言う。
それでも俺の頭の中は混乱したままで、言葉をなかなか出せずに、
「いや……でもな……え? いや、え?」
言葉になっていない音を口から漏らして右往左往していると。
くるっとフランは振り返って、
「もう!! 早く行く!! 僕だってどうしていいか分からないんだから!! 早く!!」
顔を真っ赤に染めた何て表現していいか分からない表情を向け凄む。
その勢いと何とも言えない空気に気圧されると同時に、
「近い近いって!! わかったから行くよ、行くからぁぁぁ!!」
近付いたフランの顔に焦って、たじろぎながらフランへと背を向けて戦場へと駆けていった。
その後ろで、
「僕のバカ、何で僕はあんな事……でも……」
小さく言葉を溢し、唇を指で撫でるフランの姿があったとか無かったとかは知らない。
そして逃げる様に戦場へと向かう俺だったが、
「たく何なんだよ……いきな……」
あの瞬間を思い出し、顔を真っ赤にしてから
「あぁぁぁぁ!!」
叫んで首を振って、頭に映る映像を掻き消していた。
そんな事があったか無かったはさて置き、
「それにしてもどうすっかな…… 空っケツの魔力と此の戦場で俺のやる事って有るのか? 魔力が在ればあのクソ蟲を……チっ」
戦場へ出たはいいが、本当にやる事やする事を見つけられずに、上空で戦うグランとクソ蟲を見て湧いた感情から舌打ちをする。
そんな悶々とした物を抱いてイライラしていると
ほう、これは懐かしい【皇偽餓蟲種】ではないか。 我が寝ている間に楽しい事に成って居るな。
頭の中に、大きく口を開けて欠伸交じりの駄犬の声と映像がチラついた。
その映像と態度に一瞬だけ八つ当たりの殺意が湧くが、
いま何て言った? あのクソ蟲を知ってるような事を……
そう駄犬に対して語りかけたが、
ふむ…… 虎と馬なる者はソナタの中から消え、再び牙を手にしたか。 それに……女子か、随分と現金な話で在るな。
全く届いていないのか、完全に無視してなのか、俺をバカににするような事を言い始める。
その余りにもな態度に、
聞こえてんだろ!! 俺の質問に答えろ!!
そう強く駄犬に対し心の中へ叫んだ。
すると、
喧しい!! 聞こえておるは。 余りにもソナタの動機が不純に満ちた物で在った故、呆れておったのだ。
牙を剥き出しに威嚇したような動作を浮かべ唸り声交じりの言葉を返し、
ふん、まぁ良い。貴様がクソ蟲と呼ぶ【皇偽餓蟲種】の事なら知っておる。昔に我が滅ぼし尽くしたのだからな。しかし一匹残らず屠り尽くした筈だが……再び生まれるとは一興な事だ。どこぞの鳥の差し金か入れ知恵か……くはは
すぐに訂正するかのように、自慢気に自分が滅ぼしたと宣い始め、最後には小言のようにボソボソと聞き取れないように言葉を溢す。
俺は聞き取れない最後の言葉も気になったが、
はぁ? 質問に答えろとは言ったが、誰もお前の冗談に付き合う気は無いんだが……お前は滅ぼしたとか抜かすけど、現にああやって生き残ってるじゃねぇか。
イライラした感情を混ぜた言葉返していた。
しかし、そんな俺のイライラした感情に、
新たに生まれたのなら我の管轄外の話で在ろう。 しかし、滅ぼし損ねたのもまた事実か。 小僧!! 我の魔力をソナタに貸そう。 この力で【皇偽餓蟲種】を滅ぼすがよいだろう。 それと、我が目を覚ますまでに決着を着けて居るのだぞ
一方的な言葉を投げっぱなしにして駄犬は姿を消す。
俺はその一方的な行動に文句を叫ぶが、その思いは虚空に消え返事は返って来なかった。
しかし返答の代わりに、心の中の虚空から膨大な波動が渦巻き溢れてくる。
それが何かは直ぐに理解できた。
青白い稲妻のような力を含んだその波動が駄犬の魔力の本流であると。
その波動が空っぽだった俺の体の中を廻る感覚。
それと同時に全身から電撃が暴れ弾け、破裂音を響かせる。
その音に、
「たく……何でもかんでも投げっぱなしとか、今日は厄日か何かか……」
諦めはするが愚痴を溢し、
「まぁそれでも、ありがたく使わせて貰うよ駄犬。アイツとの約束を果たすために」
俺は感謝の言葉を漏らし大地を蹴りぬく。
そして、上空では、
「いい加減に大人しくしろよ……害虫がぁぁぁ!!」
巨大な炎を巻き上げ剣を振るうグラン。
しかし、その一撃は【皇偽餓蟲種】の放つ金色の風に阻まれ、あらぬ方向に逸れる。
こんな事を数回、数十回と繰り返しているグランの顔に疲れの色と悔しさが滲み始める。
そんなグランを【皇偽餓蟲種】は嘲笑うように大顎でガチガチと音を鳴らしながら停空飛行をする。
その挑発的な行動に一瞬だけ感情が表情に表れるグランだったが深呼吸をし、
「害虫のくせに頭だけは回るみたいだけどな、お前だって焦ってるんだろ。だからそうやって俺を挑発するんだよな。嫌ってほどお前みたいな奴とこっちはやり合ってるんでね、お前の狙い位はわかるよ」
地上に一瞬だけ目をやり言葉を投げ、不敵に笑みを浮かべた。
そんなグランの行動に【皇偽餓蟲種】は言葉がわかったのか、首をグニュグニュっと動かし羽根を小刻みに羽ばたかせ始め、振動音を上げ始める。
その行動にグランは直感的に剣を強く握り締め正眼に構え、剣越しに鋭く眼光を飛ばす。
そして睨み合いが続く中【皇偽餓蟲種】が突如として羽根の振動を止め、同時に姿を消した。
その後一瞬の静寂が生まれたが、
「やっぱり害虫はそういう行動に出るよな……やっぱりそこだけはアイツとの違いって奴だな」
吐き捨てるような哀れみの言葉を口から溢す。
溢れた言葉を皮切りに劈くような金切り音が響き渡り、その音から遅れ悲鳴にも似た害虫の絶声が上がる。
そして、
バチンという大きな電撃音が響き、その音に弾かれたように影が不規則に動き回りながら元の位置へと戻され、
「遅いお着きで……馬鹿だか虎馬だかは完全に解決したみたいだな」
グランの呆れているのか、嬉しいのか分からない声色の言葉を口にする。
その言葉に、
「誰があのクソ蟲と同じだって!? 俺はあそこまでセコくねぇよ。それに、お前こそあんな雑魚蟲一匹相手になにを手子摺ってんだよ」
電撃音を上げながらグランの横へと並び立ち、拳を前にやる。
そんな俺の拳にグランは鼻で笑うような仕草をし、
「だからそこだけは違うって訂正したろ。それに梃子摺ってる訳じゃないし。お前の為に残してやってるんだよ」
言葉と共に拳を合わせた。
俺とグランの行動に、元の位置に弾き返された影は怒りを表すように羽根を振動させ大顎を打ち鳴らし始める。
その音に俺とグランは音の主の方にゆっくりと視線を戻し、
「なぁグラン? あのクソ蟲は何に怒ってるんだろうな?」
「さぁ? 害虫の考える事なんて俺に理解できる訳ないだろ。ただな……」
腰にある牙へと手を伸ばし迅雷の稲光を上げる俺と、背中に獄炎を纏い剣に火炎を蓄え真紅の火花を巻き起こすグランと言葉を交わす。
そして互いに剣を完全に構え終わると同時に、
「「俺達のほうがもっとクソ蟲(害虫)、お前にイラついてんだよ!!」」
そう叫び、雷光と紅炎を天に引き【皇偽餓蟲種】へと一直線に駆けた。
後に改変する可能性あり 本筋は変えない




