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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
29/49

第27話 ヴェスさんと俺と破天荒と

遅くなりました。 

事故で入院して、安静にさせられていました。

軽い事故というか、車を避け損ねてミラーに当ってしまい、横の深い溝?川? 用水路に落ちてしまい。気絶してしまったので、安静入院させられました。

活動報告で心配をおかけしたと思い、前書きにて報告させていただきます。

私は元気です笑


突然、頬に強い衝撃と共に放たれる乱雑な言葉を聞きながら俺はその場に張り倒されていた。


何が起きたのか誰に何をされ、何故こうなったかも分からずただ呆然としていたが、


「ネイトさん!! 落ち着いてください」


「この子が起きてるのに、なんで、なんであの子が起きないのよ!! なんで…… なんで…… あぁぁぁああぁあぁぁ」


発狂して取り乱した女性が俺に向かって手を振り上げ、般若を思わせる表情で俺を睨みながら、ヘスティさんに取り押さえられているのが見えた。


俺はその状況を全く理解が追付かず、呆然と固まっていたが、


「なに…… なっ……! 落ち着きなさい!! 誰か精神魔法師を呼んでくれ!!」


騒ぎを聞いた白衣の男性が声を上げ、俺と取り乱す女性の間に入りヘスティさんと共に女性を落ち着かせようと奔走しはじめた。


暴れて大声を上げる女性は落ち着かなず徐々に騒ぎが大きくなり、徐々に人が集まりその場が混沌と成っていく。


そんな中、


「ヘスティ!! それに…… お母様!!」


スランが慌てた様に名前を呼び駆けつけてきた。


「大隊長、こちらは良いのでヒルト君を!!」


「は! ヒルト、大丈夫か? 何がって…… 今はそれどころじゃないか……」


ヘスティさんの声に脚元でヘタリ込んでいる俺に気が付いたスランが、俺を抱きかかえて騒ぎから離れようとする。


入れ違いに到着した魔法師が魔法を唱え、半狂乱の女性を眠りに付かせ一時的に騒ぎを鎮める。

その後、騒ぎで集まっていた野次馬に、

「見世物では無いぞ!! とっとと解散しないか!!」

怒りを表した声で魔法師が怒鳴声を上げ野次馬を一喝し、その場を収めた。


そんなゴタゴタのなか俺は、何故かその女性に頭を下げていた。




 騒ぎも収まり落ち着いた時、


「急に走り出したと思えば…… ヴェスの所に行って居たんだな……」


唐突に言葉を溢すスラン。 その表情は悲しさと嬉しさと、愁いを含んだ表情をしていた。


その言葉に、


「うん…… 夢で送って貰ったから…… でも……」


まだ混乱した頭でこたえ、

そんな俺の言葉に、


「そうか……」


目を閉じ何かを飲み込むように短い言葉で答えた。



 その後、スランに肩を支えられながら自身の病室へと連れて行かれ又そこで、皆に叱られたがスランが事情を話して、その場を取り成してくれた。


ただ俺の心には、あの女性が発した【なんで】と言う言葉が重く、重く圧し掛かったままで人の言葉を聞く余裕も、精神力も無く、ベッドに横たわった。


そして体が限界を超えていたんだろう、瞼が下がり、思考に反して意識を深い眠りへと飲み込まれていった。



 暗い暗い闇の中で一人、何処とも分からない場所に俺は立っていた。

そして、声が聞こえる。 怨念にも似た黒く濁った感情の声が【何故お前だけが】と響き渡る。

恐怖から俺は走るが、後ろからその声が追いかけてくる。 永遠に追いかけてくる。

しかし、


「人間とは弱く醜い物だな。 我は御主に告げたはずだ」


目の前に、アイツが姿を現した。


「何だよ? 俺を食いに来たのか? 犬っころ」


そう、雷帝フェンリルと名乗るソーンスコルだ。


俺の言葉に、牙を見せて笑うような仕草を見せ、


「いつでも御主を食い殺し、そなたの肉体を奪い取る事は今の御主なら簡単で在ろうな。 しかし、我はそのような事を今は望まぬ。 人の言葉で言う成らば【恩義】というのか? それに今の御主を食い殺した所で、我には何の意にならん。 それよりも、その醜き醜態を笑ってやるほうが我の意に合う」


そう言って、蔑むような表情を見せて不適に笑い始める。


その言葉と行動に、怒りも何も感じず、


「笑いたきゃ笑ってろ。 俺は…… どうして良いのかわからねぇよ」


投げ捨てた感情の言葉を口から吐き出すと、


「本当に醜いな御主は。 醜い御主に良い事を教えてやろう。 御主を助けたアノ男は、二度と目を覚まし起き上がる事は無く、命尽きるまでアノ男は寝たまま朽ち果てる。 そう成った理由が、御主を庇い、自らを犠牲にした無意味な行動の結末という、笑えない話では在るがな」


笑ったような口調の言葉に俺は、


「何が無意味なんだ!! あの人を悪く言ってクソ犬がぁぁぁ!!」


怒りを感じて叫びながら拳を振り上げて殴り掛かるが、


「ふん、その拳で何をするつもりぞ? 今の御主に何が出来るのだ?」


フェンリルの瞳から放たれた威圧に身体が動かず、うろたえていた。


そして、そんな俺へと、


「それに無意味を無意味と言って何を怒る? あのまま黒炎龍(げんしょのてき)の最後の一撃、いわいる龍の呪いを受けていたとしても、御主の体には我が宿っておるのだぞ、なんの問題が有るのか? 結局あの者のした行動は無意味な行動だ」


牙を見せて言葉を放つフェンリル。


そんなあいつの言葉に、


「五月蝿ぇぇ!! お前の様な犬が何ができたんだ!! お前みたいな……」


と叫ぶが、


「吠えるな小僧! お前のその醜き状態を見て無意味な行動ではないと何故言える。 御主の行動を見て何が言えるのか? 答えてみせよ」


そんなフェンリルの言葉に俺は答える言葉を見つけられず、


「五月蝿い、五月蝿い! 俺が倒した(ドラゴン)も倒せなかった奴に言われる筋合いも、聞く耳も在るもんか! 俺は、俺はぁぁぁ」


逆ギレの様に感情を荒げ、その感情のまま言葉を吐いた。


その言葉に、


「哀れな…… この様な者のために…… 哀れすぎて物を言う価値も見出せぬ」


はき捨てるように言葉を置いて姿を消すフェンリル。

 

再び、静寂と闇の中、


「俺は…… 俺は…… うぁぁぁぁぁ」


声を上げ目を覚ますと、また白い天井が目の前に有る。


「クソ……」


喉の奥に何かがつっかえた感触を不快に感じつつも言葉を投げる。

そして、右手の甲が不意に視界へと入り、そこにあるアノ紋章が青白く光、更に気分を害していく。


「あら、起きていたのね。 気分はどうかしら?」


不意に聞こえてきた声に反応し目線をやると、優しく微笑む母さんが扉の側に在った。

俺は母さんの姿を見て、何故か目を合わせられずに目線を逸らし、


「母さん…… 昨日はごめん。 心配かけたよね……」


何とも言えない詰まり気味の声で言葉を発すると、


「お話はスラン様から聞かせて頂いているは…… 確かに心配はしたけれど、お話を聞いてお母さんねヒルトの事を誇りに思えたは。あとね……」


俺の隣に腰掛け、言葉と共に俺の背をなでながら語り始めた母さん。

その言葉の中の【誇りに思う】という言葉に、


俺はそんなに誇れるような人間じゃないよ。 今も訳が分からず…… 恐怖と罪悪感で頭が可笑しくなりそうなんだよ…… そんな弱い俺が……


そう思い悔しさから、手を強く握り閉め、爪が肉に食い込むほど強く、強く握っていたが、


「もしも、お母さんがあの人と同じ立場なら同じ事をしていたとも思ったは…… 自分の息子が起きなくて…… 助けられた子だけが目を覚ませばきっと同じ様にね…… でもね、その言葉が本心ではないのよ。 私の息子が助けた命なんだ、あの子は人をちゃんと守れたんだ、よく頑張ったね、貴方が助けた命が貴方にお礼を言いに来たわよ早く起きて御礼を聞いてあげなさい。そう…… 思って居たとおもうの」


強く握り締めていた俺の手を優しく包み、暖かな温もりを伝えながら柔らかく手を広げながら、言葉を紡ぎ、伝えてくれる母さん。


どこか優しく、どこか辛そうな言葉に俺は……

 

「俺は…… それなのに俺は…… ヴェスさんに伝えられなかったんだ…… 【ありがとう】ってその一言が言えずに…… 逃げ出して…… ヘスティさんに慰めてもらって…… でも…… あの人の言葉が本当の意味だと思って…… それで…… それで……」


涙を流しながら嗚咽(おえつ)の言葉を吐き続けた。


その間ずっと、背を摩り、黙って俺の言葉を聞き続けてくれる母さん。

感情のままの言葉と涙を流しきり、俯き、嘔吐(えず)きながら涙を拭い続けていると、


「そうだったのね。 ヴェスさんがあなたを孤独な夢からも助けてくださったのね…… 本当に…… 感謝しても仕切れない…… ありがとうございます…… 私の子を守っていただき…… 本当にありがとう……」


言葉と共に落涙する母さんが居た。


その姿に俺もいつしか再び涙を流し始めていた。

その涙は今までの涙と違い、悔しさや、辛さ、悲しみ、虚空な感情からじゃなく、自分の深くにある感情から流れた涙だった。


俺の言いたかった言葉…… その言葉は母の口から零れた言葉…… どうしようもない感情から、


「俺…… もう一度行ってくる!!」


本当に考えの無い行動なのかも知れない…… もしかしたらまた、あの女性を傷つける行動なのかも知れない…… それでも…… それでも!!


俺の体は動き始めていた。 その脚は一直線に歩を進めて行く。



「あの子は…… まったく誰に似たのかしらね。 アナタもそう思うんじゃ有りませんか?」


「ふんっ。 今はあいつの好きさせてやれば良いさ。後の事は親である俺達が責任を取ってやれば良いんだからな。 それにしても…… 本当に素直に育ってくれたな」


「そうね。 そういえば、タングはあの子に何も言わなくても良かったの?」


「お前が全部言ってくれたんだ、俺が伝える必要は無いだろう。 それに今のあいつには、必要は無いだろう」


二人は方を寄せ合い、走る後ろ姿を暖かな眼差しで見つめていた。


その後、慌てて俺を追いかけたのは別の事。






そして俺は真っ白な扉へと手を掛け、重く、重く感じるその扉を開いた。

そこには、安らかに眠るヴェスさんが居てて、


「なんだ?今度はどうした? あんまりマジマジと見られると小っ恥ずかしいんだぞ」


そう言われたように感じ、心臓が締め付けられ、何かがこみ上げ、喉を圧迫していく。

自然と瞳が熱くなり、何かが零れそうになりながら俺は、


「ヴェスさん…… 逃げ出してごめんなさい…… 俺…… 怖くて…… でも、 それでも……」


俯きかげんになり、言いたい言葉が全然出てこない。 

どう言葉を出して良いのか分からず、ただどうしたいのか分からない。


そんななか不意に、ヴェスさんの笑い声と


「で? お前は何が言いたいんだよ? 聞いててやるから、落ち着いて話せ」


なんて言葉が耳に入った。


それは幻聴だったのかもしれない。

それは俺が作り出した幻影だったのかもしれない。

それでも、俺の耳と心にはハッキリと聞こえた言葉。


その言葉に俺は、


「ヴェスさん。 俺を…… 俺を助けてくれて、 ……ありがとうございました!!」


頭を下げ涙を流し、精一杯の言葉を口にした。


すると後ろから、何かが落ちるような音と共に、


「あぁぁ…… うぅ…… ヴェスペン……あんたの助けて子が御礼を言いに来ているのよ…… 早く起きてやんなさいよ…… それで…… それでいつもみたいに、返事してやんなさい。 そうでないと失礼よ……」


むせび泣く女性の声が聞こえた。


それが誰かは見なくても分かる…… だから……




俺は何も言わず、その人に向き直って頭を再び下げた。


無言のまま俺はどうして良いのか分からずに唯々頭を下げ続ける事しか出来なかったが、


「ごめんなさい…… あの時も御礼を言いに来てくれていたのに…… 取り乱して貴方に酷い事を言ってしまったわね…… 覚悟していたのに…… 本当にごめんなさい…… それと…… 今はまだ…… 受け入れて貴方とお話を出来る状態では無いの…… だから…… 今のうちに帰ってください…… ごめんなさね」


嗚咽交じりの言葉が聞こえてきた。

俺はその言葉に従いその場を無言で後にした。 

ただ最後に振り向き、泣く女性の姿に再び頭を下げて。




 その後、帰り道で、


「ヒルト君、ありがとうね。 きっと貴方の言葉を聞いて本人も安心して寝てると思う」


そう、ヘスティさんに声を掛けられた。

俺はその言葉に、


「そうだと良いんだけど…… またあの人に背中を押されて、それで言えたんで……」


そう答えた。


ヘスティさんは俺の言葉を聞いて、少し首をかしげてから、


「本当に不思議ね、アイツは寝ているはずなのに。 でも、少し妬いちゃうかな? アイツはヒルト君の前には出て行くのに、私の夢に出てきたり話かけてくれないんだもん。 それでも、ヴェスらしくて笑っちゃうわ」


そういって、何かを懐かしむようなそんな笑顔で微笑み、続けて、


「後は私に任せて。 お母様の事も大丈夫だからね? 私が側に居て、ヴェスも側に居てるから。 貴方は自分のすべき事をなさい。 そうヴェスとも約束したんでしょ?」


そう言って俺の背中を優しく押してくれた。


その時、二つの温もりに押された気がした。



そして時が進み始める。



俺は入院生活も終わり、何故か知らないが……


「ヒルト・レーヴァ! そなたの黒炎龍(フレアドラゴン)討伐の功績を称え、第45代グラズトルニ皇帝にして国王陛下、クヴァシル・ソル・ヘイムダル陛下より叙勲及び――」


帝国王室…… 後宮にてささやかな? 叙勲式が執り行われていてそれに、主賓として参列していた。


何故か? それは時を遡る必要も無く遠征終了後直ぐ、俺が緊急入院をしていたからだ。

そして、もう一つの原因が、ノエルだ……

俺が入院している中、国民向けに行なわれた盛大な叙勲式。

その最中アイツは事も在ろうに、叙勲を拒否したのだ。加えて更に、


「ヒルト・レーヴァよ、そなたに第45代グラズトルニ皇帝クヴァシル・ソル・ヘイムダルの名においてそなたに【帝国白銀翼勲章(インペリヤル・レフコクリソス・カナフ)】と【帝国聖勇騎士(インペリアル・ナーオスガード)】の称号を与える」


「謹んで拝命いたします。 そして帝国のため、一層の努力と精進を重ね称号と勲章に恥じぬ働きをここに誓います」


俺の宣誓を受け、皇帝陛下は剣を掲げ俺の肩を叩く。

そして、勲章と称号を示す一振りの短剣を俺に授けた。


周囲から拍手が起こった。 

その後、長ったらしい大臣閣員からの祝辞やらなんやらが続き、


「すまぬな。そなたの受勲式がこのように小さき物で。 本来で在れば国を挙げ国民の前にて新たな英雄の誕生を祝うべきなのだが……」


俺は全ての長ったらしい行事を終え後宮のテラスへと陛下に誘われ、二人で話をしている。

そして、


「いえ…… ノエルの事は聞き及んでおります…… アイツが受勲を断り一悶着起した事は……」


「そうか聞き及んでおるか。 私も国王であり皇帝という立場ではあるのだが、力及ばず、貴族や大臣、官僚達を全て束ねられておらぬのだ…… すまぬ」


皇帝陛下の言葉どうり帝国ではあるが派閥争い利権争いが多くあり、一枚岩と言う訳では無い。

そして、


「貴族主義とは格も醜いものだ。 称号や爵位で全てを片付けるのだからな。 はぁ、 ノエル殿の件で更に力関係が崩れてしまったがな……」


そう…… 今回ノエルが受勲を断った事で、貴族派閥が戦々恐々とし民衆主義派閥が嬉々としているのだ。

さらに


「すまぬな、子供であるそなたにする話ではないな」


頭を下げる皇帝


その行動があまりに恐れ多く感じ、


「頭をお上げください陛下!! この様な所誰かに見られたら!」


辺りを気にしながら声を上げていた。


それでも、


「これは一人の大人としての責任なのだ、それに私の頭一つで権威が下がるような帝国なのであれば滅んだ方が良いだろう」


なんて人だ…… 破天荒を通り越している……


「そう思っては居るのだがな…… そういう訳にはいかぬ物だな……」


そう言って頭を上げ、城下へと目を向ける。


俺も陛下に釣られて城下へと目を向ける。

そこに町の明かりが煌いて、賑わう町が有った。

しかし、いつもとは違い一部の施設の明が無く、欠けた光が目だっていた。


「この現状を収めるためとは言え…… そなた達には本当に礼を欠いたと思っている」


そう…… ノエルの行動で暴走した貴族主義者が強行手段に出て、町の一部機能が停止しているのだ。

それも国の重要施設ばかりで、首謀者達の言い分が、


「いえ陛下、私達は十分な褒美を頂いています。 俺も、グランも十分――」


「すまぬ。 しかし、ヴェスペン殿には国の最高勲位を授けたかった…… 何が前例が無い、貴族以外の者へ授ける物では無いだ! そしてあまつさえ、貴族として誇りを捨て民衆の命や財へ被害を出してまでの暴挙。 私の力の無さに腹が立つ……」


俺も言葉を遮って皇帝は怒りを表し、そして自分を責める。


前例、貴族、これが言い分。 そして陛下が強行するのならと、自分達が居なければこの国は回らない事を実力行使で分からせると言う強行手段を出ているのだ。


結果、俺達への受勲は陛下の膝元である後宮にて関係者のみの非公開方式で行なわれた。

因みに、問題のノエルも一枚噛んでいる様で、ヴェスさんや俺達戦闘に参加した人全員に自分より高い勲位を授与するなら国民公開の授与式に参加し、受勲拒否を撤回すると言ったようで、その結果が、陛下の意思と貴族主義者との間を取る形で勲位や称号を決めた形で現在に至るようである。


まぁそれでも気に入らない連中が一連の事が解決するまで実力行使を続けているようだが、


「陛下…… 俺はヴェスさんへの気持ちだけで十分な褒美です。 俺はあの人に命を助けていだきました。 いえ俺だけじゃなく、あの戦闘に参加した全員を助けていただきました。それを口にして頂いただけで俺は……」


陛下がヴェスさんの事をちゃんと理解してくれている事が嬉しかった。 

だから俺は、言葉の中で涙が出た。 

でも、悔しさも有った涙だったと、今は思う。


「そなたには頭が上がらぬの…… そうだ言い忘れていた事が有ったのだ」


陛下が急に声を変え、思い出した言葉を言い始める。

最初は頭の上に疑問符を上げたが、


「今回の討伐の褒美の他に、そなたが寄付してくれた武器に対しての代金を支払おうと思っている」


この言葉に俺は目を丸くして驚いた。


だけど直ぐに、


「いえ、そのような事をしていただく必要は! それにアレは俺が自分の為に行なった事で――」


そう拒否するが、言葉の途中で、


「ふむ成らば、グラン殿ヴェス殿、両名を含めた連名における功績に対して特別報酬の名目で、黒炎龍(フレアドラゴン)の素材、それも希少部位の所有権を送ろう。 これなら受け取るであろう?」


そんな提案に切り替えられた。


「はぁ?」


驚きすぎて間抜け面を晒して声が出た。


しかし皇帝は俺のそんな間抜け面を無視し、真剣な面持ちで此方の返事を待っている。

そんな皇帝の姿に、


「謹んで受け取らせていただきますが…… 本当に良いのですか? 龍種(ドラゴン)の希少部位は国宝にも匹敵する素材です。 それこそ陛下独断だと知れれば問題になるのでは?」


受け取るとは返事をしたが、それはそれで問題になるのではと心配する。


しかし、そんな心配ごとはお見通しの様で、


「問題にはならんよ。別に帝国出兵や帝国発布の討伐命ではなく偶発的な戦闘であろう。その場合は慣例として討伐者には皇帝名で優先権の譲渡が基本である。 もしも異議を唱える者が居れば、それこそ業突く張りとして笑いものだろう」


豪快な笑い声をだして話す陛下。


しかし俺は、


そんな簡単な話しじゃないような? 第一、今回は帝国兵の遠征と王立学園の探索演習の最中に起きた戦闘だ、きっと帝国主導の一環だという反対意見が多かったはずだ。 だからこそ皇帝陛下は、特別報酬や代金だのと言ったはず、本当にこのまま受け取っても良いのか?


そう考えながら言葉を捜すが、


「しかし…… 本来で有れば、解体専門衛士を派兵しての大解体作業をして遣りたいのだが…… はぁ、反対されるだろうな……」


少し悩むように言葉を言う陛下。

その言葉と言動で、


やっぱりか…… 所有権を譲渡という事は、解体、分解、運搬、売るにしても自分達で行なえとなるだろうな。あんなデカブツをどうやって解体やら運搬をするんだよ。 まぁ多分……


俺が憂鬱そうに悩み始め、陛下の顔を見た時だ。

悪い顔と、してやったりみたいな表情を浮かべ、


「そこでだ。 今回の特別報償をスラン・サーバー大隊員にも分配贈与という形を取ろうと思う。そうすれば、大隊規模で解体、運搬をする事が出来るが? ヒルト・レーヴァよ、どうかな?」

 

何かを気にしたように視線を変えて言う陛下。


俺は思っていた予想と違った事で、


「あっ…… ありがとうございます陛下。お言葉のままに」


すこし戸惑いながら答える。


すると扉の向こうで人の気配を突如感じ、誰かが何処かへと立ち去った事に気が付いた。

その気配が完全に消えると、


「はぁ…… まったく業の深い奴らだ…… ほんとうにすまんな、巻き込んでばかりで」


疲れた顔を浮かべて言う陛下。


それで理解した。

俺が気が付かない内に隠者が聞き耳を立てていたようだ。何処から居たのかは分からないが聞き耳を立て、俺と陛下の会話や、何が有ったのかを、誰かに報告するのだろ。

そして、俺が気が付かないレベルの隠密者が気配を漏らしたという事は、それだけ……


「大丈夫なんですか? アノ様子から考えると、かなり大変な事に……」


ヤバイ事だろうと思って口にするが、


「反対だよ。個人に贈与すると思って居たのに、大隊へも贈与すると成ったから驚いたのだ。もしも我が個人に贈与しよう物なら、断罪の材料になる考えて居ったのだろう。しかし、なぁヒルトよ、私は大隊に与えるといって居ったか?」


「いえ大隊員へと…… あっ」


「早とちりな隠者だな。そう、国帰属ではなく個人所有という事だ」


舌を出して言う陛下の言葉で分かった。


もしも大隊への報償で有れば素材は国帰属の物として扱い、最終的に換金方式の分配報償という形になる。そうなれば素材は国庫へと収められる。

解体作業も国家主導の名目の出兵だ、あわよくば貴族主義の息の掛かった者を解体衛士に忍ばせ、自分達も美味しい汁を吸う事ができる。だから隠者が焦ったのか。


そう納得したが、


「それにしても陛下。 よく隠者が居るときがつきましたね? 俺は全く気が付かなかったですよ」


そう驚きを口にした。


しかし、


「はははっ、我も気が付いてはおらんよ。 どうせ居るだろうと思って、かまをかけたに過ぎんよ」


えぇぇ、じゃぁあの時の視線の動きもハッタリかよ!!


と更に驚かされて、言葉をなくした。


その後は、俺の評判について話があった。

どうやらアーシアさんが話した様で、俺が弁償に無理やり渡した剣が国宝に匹敵すると思い、陛下帰属の宝剣として納めようとしたらしい。

まぁ結果は素材的価値からお蔵入りとなり、ヘーゲ・アグライヤ家所有の宝剣となったようであるが。

しかし御前披露の願い出は届けられたようで、魔法演舞及び剣技披露が執り行われ陛下が目にする機会となったようだ。

そして、その時に行なわれた魔法剣と通常時の試し切りで簡単に斬鉄したため、陛下自身の御眼鏡にかなったと言う話しだ。

全くあの人は要らん事をする。


そして、


「そこでだ、我にも一振り製作してもらいたい」


とんでもない話へと展開されてしまい、


「へ? 陛下今なんと?」


「うん? 我個人所有の剣を一振り頼むと言ったのだ」


いやいやいや陛下の剣て。それって王剣だろ? 国家的な有れじゃないん? いやいやいや。


陛下の突拍子も無い言葉に焦る俺。

しかし、そんな俺に構いなく、


「そなたの思っている程の大仰な話しでは無く、単に個人的な依頼だ。 それに、私の父や祖父はエイズル殿作の剣を所有しておったのだから、弟子のそなたに同じ依頼をしても不思議ではないだろ?」


笑顔で話す陛下。


俺はそんな言葉を言う陛下に、


「いやいや、師匠の剣と俺の剣が同等という事は無いです。 全然師匠の技術には遠く及びもしないですし、経験も知識も全然」


未だに動揺が消えず、言葉使いがひっちゃめっちゃかになる。


でも、


「そなたの言葉で更に欲しくなった。 私も未だに父や祖父に遠く及ばない。しかし、いつかその背中を追い越していきたいと思っているのだ。そなたも師を追い越そうと思っているで在ろう?」


強い眼差しを向けて言う陛下。


その眼差しに心が跳ね、


「当たり前です。俺は師匠を超える剣を打つつもりです。それに俺には、超えなければ成らない剣が有ります」


強く言葉を発していた。


その言葉を聞いて、


「やはりな。ならば私とそなたは仲間だ。目の前にある大きな壁に挑む仲間。 共にその大きな壁に挑戦してはくれぬか? 力になってもらえぬか? それにな、我もそなたの力になりたいと思うのだ」


大きな波の様に力のある雰囲気を発しながら言う皇帝。


その雰囲気に、


「分かりました。 一振り、全力で励みたいと思います」


承諾していた。


皇帝は俺の言葉に喜んでか、


「おおっ、そなたに感謝を。 もしも素材面などで必要な物が有れば我が用意しよう」


なんとも豪快な事を言い始めた。


しかしその言葉で、


「あっ…… すいません陛下。 先約が有りますので陛下にはお待ち頂かなくてはいけないかも……」


グランの剣を思い出して、言葉をこぼす。


それに遠征以降、緊急入院や今回の事で大方二週間以上、鎚にも触れていない。

そんな状況やらなんやらを考えると、待ってもらわないと正直ヤバイ。


そう思い、自分が漏らした言葉にも気が付かずに頭を抱えて後悔し始めていると。


「よいよい。 そなたの納得いく仕事をしてくれればそれで良い。 まぁそれでも、あまり待たせ過ぎるでは無いぞ。 我も我で楽しみなのだからな」


言葉にの後に大きく声を上げて笑い始める。


そんな陛下に、


本当に器の大きい人というか破天荒というか、なんだか楽しい人だな。


と思っていた。


そして話しも終わり握手を交わしてその日は終わりを告げた。




そして二日後、俺はあの場所に来ていた。


「おーい、解体作業を始めるってよ!」


「おう、分かってるよ。 さてと、コイツの解体にどれくらい掛かる事やら。戦闘で手間をかけさせられたんだから、事後処理くらい手間をかけさせんなよ」


俺は巨龍を見上げて腕まくりをした。


まぁ、ここでもまた一悶着あるんだけどな。







次回


帰ります。

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