第26話 痛みと笑顔とみんなと
今回は、色々と修正をしながら書いています。
今までよりは読み易くは成っているとは思うのですが、文法って難しいですね。
投稿話の修正の件はまだ続けます。 改行以前に書き直しレベルで酷い部分が多いので時間は掛かりますが、次回投稿に支障の無いように行なっていきます。
ここは何処だ? あれ? 体が動かない…… 暗い、寒い、誰か……誰か。
浮遊感が感覚を支配し、声に成らない声を発し、寒さと不安が俺を包み込むが、それでも俺は声を上げ続けた。
だけど……
どれだけの時間こうしていたのだろう、恐怖、不安、怯え、絶望、によって、精神が悲鳴にも似た声を俺に伝え始めた。
それなのに、それなのに…… 誰も、誰もいない…… 怖い、怖い…… 心が凍り付いていく。
そう、動かない体を丸くし、出ない声で叫び続けた。
いつまで続くとも、終るとも分からぬ時間…… 暗闇の中で一人…… 永遠にも感じた長い、長い時間。そこに一つの光が差しこみ、その光へと藁にも縋る思いで手を伸ばした。
伸ばした手を、暖かな炎の様な温もりが掴み、俺の意識を違う場所へと引き上げていく。
そして目の前を光が支配し、
「大丈夫―― 悪いな―― けるのが遅くなって」
誰? 聞き覚えの有る声だ……
「お前に頼みが有るんだ」
ヴェスさん? なんでヴェスさんの声が?
「もしも、お前が元の世界に戻った時、お前を苦しめてしまうかも知れない。 お前を傷つける事が起こるかも知れない。それでも…… 前を向いて、自分を許してやってくれないか?」
何を言ってるだよ? ヴェスさん
「そして、できればお前には、自分の信じる道を真直ぐ歩いて行って欲しいと思う。 あと…… 何が遭っても、みんなを許して、みんなを笑顔にしてやって欲しい。 あはは、悪いな色々押し付けちまって。でも、そろそろ時間だ。皆がお前を待ってるぞ」
待って! ヴェスさん待って!
「そうそう、最後に悪いついでのお願いだ。 俺にお前の武器を創ってくれないか? 約束だぞ」
ヴェスさん!!
優しい視線を送りながら、上へと押し上げるヴェスさんへと、必死に手を伸ばして連れて行こうとするが、その手を掴めずに俺は、
「手を掴んで!!」
目の前には見知らぬ天井が広がっていた。
俺の小さな小さな声に、
「気が付いたのか? 先生を呼びに行ってくる!!」
親父の声?
「「ヒルト君!!」」 「「「「ヒルト!!」」」
フランに……ファラ先生? それに、母さんと、エイルに、師匠、あと爺さん、それに……
ぼやけた意識の中、色々な人達の声が聞こえてきた。
その声に、必死に身体を動かそうしたが、まるで体が鉛になった様に重く、微動だにせず、唯一動く目で、周囲を見渡した。
目に入って来た光景に俺は、
「泣きそうな顔でなんなんだよ皆…… そうだ、ドラゴン…… ドラゴンを倒して…… それで、それから? そうだ、さっきヴェスさんが…… あぁぁ……」
取り留めの無い思考の中、さっき起きた出来事を思い出し、鉛の様に重たく言う事の聞かない体を、無理やりに動かそうともがく。
すると、
「皆さん退けてください!!」
声と共に知らない白衣の男性が眼下に映り、慌てた様子で俺の体を押さえ邪魔をされた。
「邪魔を…… するな。 ヴェスさんを……ヴェスさんを助けないと」
「落ち着きなさい。君は未だ動ける状態じゃない。おい、沈静魔法を早く!!」
「私がやります! ヒルト、少し大人しくしなさい。 もう…… 心配ばっかり……」
泣いたエイルの顔が見え、同時に心がまた閉じ始め、薄れ行く中、
「エイル…… 泣くな…よ。 それより、身体を……」
意思を伝える途中で俺の目の前が真っ暗に成った。
次に目覚めた時も、また同じ天井が俺の目の前に有った。
「エイル、俺の体を動けるようにって…… 動く……」
さっきとは違い、体が起き上がった。
確かにまだ重さは残っているが、鉛の様な重みは消えていて、不思議に思いながらも続けて手を動かし確認した。
すると、手は自分の意識どうり動き始め、そのことでハッとし、顔を上げる。
花瓶を手にしていたフランと目が合った。
すると、花瓶を落とし、両手で口を押さえたと思ったら、
「ヒルト君…… ヒルト君……」
言葉と共に涙を流しながら抱き付いてきた。
「どうしたんだよ泣いて? それより、ここは?」
「うぅぅっ、ここは病院だよ。 ちょっと待ってて皆を呼んでくるから」
「あぁ? わかった……」
涙を拭き、俺の返事を聞くと扉を開けて走っていった。
俺は現状を把握できずに困惑した思考を落ち着かせようと、また手を動かしながら見つめていた。
それにしてもなんで俺は、病院のベッドで寝てたんだ? それよりも俺は一度起きて何をしようとしてたんだ? なんでまた寝て…… そういえばエイルが…… 夢で……
しかし、俺の思考が回復し始めた時だった。
「ヒルト! 起きたのか!」「ヒルト、起きたのね!」
同時に二人の声が聞こえたと思ったら、親父と母さんが扉を勢いよく開き、部屋に入ってくるなり、母さんが抱きついてきた。
「なっ? オヤジに母さん? なんで王都に?」
「本当にあなたは心配ばかり掛けるんだから。本当……一週間も…… でも、生きていてくれて良かった……」
「馬鹿息子が…… 親をこんなに心配させるんじゃない。 でも……クリスの言うとおり、生きていてくれて良かった」
涙を流しながら両親に言われた言葉に、なぜか罪悪感を感じた。
しかし、その事で思考が再び混乱し始め、声を出そうとした時、
「ヒルト君、起きたようだね。 あまり無茶な事ばかりして御両親を泣かせちゃ駄目じゃないか」
懐かしい声が耳に届き、その声の方向へと目を向けると、
「ファラ先生!!」
入り口に、先生が涙を溜めた瞳でこちらを見て微笑んでいたのが目に飛び込んできた事で、名前を呼んで驚いてしまった。 しかし、俺の目に映ったのは先生だけではなく、
「それに、師匠、エイル、あと…… 何で?」
扉の前で皆も居た。
そして、
「失礼します。 彼の容態を確認いたしますので、少し宜しいでしょうか?」
白衣の男性が声を掛けながら部屋へと入って来た。
その後ろにフランが居た事で俺は、フランが医者を連れて来たんだと理解した。
その事で、自分がどんな状態に有って、なぜ今の状態に有るのかを薄々だが理解した。
「身体のほうは大丈夫そうだね。 あと3日は経過観察のために入院してもらう事にはなるけど、無茶はしてはいけないよ」
医者の男性は話し終わると、両親に向き直ってから何か話し、
「ちょっとお医者様とお話をして来るね。皆に迷惑をかけちゃいけないわよ」
「スラン師匠、エイズル師匠、少しの間ヒルトの事お願いします」
二人は医者について行き病室を後にした。
そして、診察を終えた俺は、
「みんな心配をかけてごめん。俺かなり無茶な事をしたんだな」
反省の意味と感謝の意味を込めて言葉を溢すと、
「そうだよ、君は魔力の酷使で、神経系も魔経系も、ズタボロの状態だったんだよ。 そんな事になるまで君は、無茶な事をしたんだよ」
ファラが叱る口調で話し、
そして、俺の横に座って頭を撫で。
「でも―― みんなを守るために良く頑張ったね」
自然と涙が出た。
そして、涙を流していると、
「まったくじゃな、良く頑張ったもんじゃ」
「そうだな。俺は助けてやる事もできなかったが、良く力を合わせて守ってくれ、生き残ってくれた」
師匠と爺さんが涙を我慢したような表情をして言葉をくれ、
「ヒルト君、助けてくれてありがとう。 あの時はどうなるかと思って…… ふぇぇぇ」
「ほんと、アンタには何時も心配させられぱなしよ。 でも、ありがとうね」
感謝の後、いつもの様に変わった声を上げて泣き始めるフランと、少し怒った感じで涙を溜めるエイル。
みんなの言葉で心が落ち着いたが、そのことで。
「あれ? でもなんでグランの奴が居ないんだ?」
この状況ならグランが居てもおかしくないのに居ない事に気がついて尋ねるが、
「それは……」
「あぁ、アイツなら用事が有って今日は居ないだけだよ」
フランの反応とエイルの反応が違う事で、
「もしかして、グランも怪我を……」
「少し落ち着つけあの子は無事だ。 それにお前を担いで部隊まで運んだのはグラン君だ……」
スランは、俺が焦っているのを止める様に諌めてくれた。
でも……
「ならなんで、それに…… ヴェスさん……」
あの人の名前を呼んで、心が再びざわつき始める。
ざわついた心と不安から、頭が真っ白になっていく。
視界の中でみんなが何か心配そうに何かを口にしているが、声は聞こえず、何を言っているのかわからない中、俺は、
あれ? なんで? なんでこんなに嫌な予感がするんだ? それに、なんだ? 心が痛い。 何かとても大事な事が有ったはずなんだ。 ヴェスさん……
右手に痛みが走り、
「行かなきゃ…… 行かなきゃ…… 助けに行かなきゃ」
思考がその事で溢れかいり、俺はみんなが止めるのも分からずにベッドから飛び降りて走り始めていた。
体は未だにだるく、満足に走れる状態ではないはずなのに自然と体は動け、何処へ行けば良いのかも分からないはずなのに、何かに導かれるように、その、方向へと進んでいた。
そして。
いつの間にか、目の前には病室の扉が有った。
そして俺は、無意識下でここがヴェスさんの病室だと分かり、扉を開けていた。
「ヴェスさん!! たすけ……に……きまし……た……」
俺の目に映った[もの]に言葉が途切れていった。
分からない…… なんだ? ヴェスさんじゃない? でも…… ヴェスさんだ。 信じられない、何が起きてるんだ? 俺は何を見てるんだ? あれ? あれ? わからない なんでこんな事になっているのかも、どうしてこの人がヴェスさんだということも。 なにも、なにも分からない。
その場に俺は膝から崩れ落ちていた。頭の中も本当に真っ白で、何も考えられずに、ただ……ただ…… 涙だけが、頬を伝って流れ落ちていくだけ。 ただそれだけだった。
しかし、そんな俺を、
「ヒルト君!! どうして貴方がここへ!?」
一人の女性の声が俺の意識を戻した。
その事で視界が戻り、その女性がヘスティさんだと認識できた。
そして、
目の前に映る人を改めて認識した。
その姿は痩せ細り、本当に皮と骨だけの姿で、まるで寝ている様に息をしていて、元の面影なんて留めていなかった。 それでも、この人がヴェスさんだと言う事は分かる。 顔の形、雰囲気、全体がヴェスさんだと証明している。
そして、元の世界で起きた一つの記憶も甦り、重なり、混じり合いその結果、
「あぁぁぁ…… 何が起きてるんだ? どうして……?」
「ヒルト君!?」
それを、脳が処理も認識もせず、意識が心が事実を拒否していた。
体から何かが抜ける感覚が襲い、気が遠くへと流され、頭が落下する感覚がした。
意識が消えるなか突然、暖かな感覚と共に落下する感覚が消えた。
無意識に暖かさを感じた方へと顔をやると、
目の前には、泣きそうな顔をしながら、優しく、それでも、辛そうな顔をするヘスティさんが、
「良かった、良かった…… 君の意識が戻ってくれて、、本当に良かった……。 ヴェス…… 貴方が守ったこの子が来てくれたよ……」
涙を流しながら、俯いて言葉を溢す姿が目に映った。
その涙に、
「ヘスティさん…… ごめん……」
「どこに行くの? 待ちなさい!」
俺はその場を逃げ出し…… どこに行くでも無く、ただただ逃げた。
現実からも、事実からも、自分からも、何もかもからも逃げて、走り続けた。
何も考えず、体がどんな悲鳴を上げてようが、脚が動くだけ逃げた……
そして突然、目の前が反転し地面が目の前にあった。
俺は転んだんだ。脚が言う事を聞かずもつれて転んだ。
顔を上げれずに地面に頭を着けたまま涙を流し続けた。 感情がぐちゃぐちゃで、何もかもがぐちゃぐちゃだった。 このまま居なくなりたかった。 でも居なくなれなかった。 体が言う事を聞いてくれなくて居なくなれなかった。 心が怖がって居なくなれなかった。
そして、夢の事を思い出して、もっと居なくなれなくなって、感情のまま涙を流し続けた。
声に成らない声を出して、泣き続けた。
そして何時間たったのかも分からず、流す涙も無くなり、感情も消えかけていた。
「こんな所に居た。 みんなが探してるよ。 もう帰ろう、大丈夫だから」
女性の優しい声が聞こえた。
「ほら、座って落ち着いたら帰ろう。 それまで私が側に居るから。 ね?」
いつの間にか俺は座らされていて、抱きしめられていた。
「どうしたの急に? 無理も無いか…… 目覚めていきないリあの人の姿をみたら…… でもね、あいつは、きっとこう言うと思うの」
泣きそうな声、でも、とても優しい声が語る。
「俺を見て逃げるなんて酷くないか? 助けられた礼の一つでも言ってくれよって。 それも情け無い声をだしてね。 あいつはああ見えて、弱虫で、強がりで、そして人一倍、寂しがり屋なんだよ。 笑っちゃうでしょ? いつもいつも回りに迷惑ばっかりかけて、その度に私や、みんなが苦労してさ、 それに、心配ばっかりかけさせられたりもしたかな。 無茶ばっかりやらかして、怪我ばっかり。 ほんとに振り回されてばっかり…… それなに、不思議とあいつの側には人が集まってくるんだ。それで、いつの間にかみんな笑顔になって、みんなで馬鹿やって…… いつだって…… 自然と笑顔になって…… 笑って……」
涙で濡れた、詰まった声の後、
「あはは、湿っぽく成っちゃったね…… ごめんね…… でもだからね…… 私はあいつのために、笑顔でいたいと思うし、誰かを笑顔にしたいと思ってるの」
その言葉に彼女を見上げると、夕日に照らされはっきりとは見えなかったけど、涙を輝かせ、不器用そうに笑う顔が、
「ヘスティさん……」
「立てる? 行こうか、皆もあいつもきっと心配してるから」
とても綺麗で、優しく暖かな物をいっぱい感じ、差し出された手を握っていた。
その帰り道、ヘスティさんと色々話した。
夢でヴェスさんと有った事、言われた言葉、思い出した事をとりあえず口にした。
ヘスティさんは、ヴェスらしいなと言いながら笑っていた。
そして、ヴェスさんの容態の話を教えてくれた。
容態の話の時のヘスティさんの顔は辛そうだったけど、俺の顔を見て
あいつらしいでしょ? と微笑んでいた……
その後、病院まで戻った俺は、ヘスティさんに無理を言って自分の部屋へ帰る前に、ヴェスさんにお礼が言いたいと言う願いのために、ヴェスさんの部屋へと向かった。
そこで俺は、頬に強い衝撃と
「なんでお前が生きていて…… あの子を…… 返せ、返してよ。 なんで貴方だけが助かって……あの子が…… あぁぁぁ」
取り乱した様に泣き崩れ、俺へと言葉を乱雑に…… ただただ乱雑に発狂し続ける女性が泣いていた姿を目の当たりにしていた。
まだ少しこんな感じの話が続きますが、長くはならないと思います。




