第25話 紺碧と真紅と漆黒と
三連休の最後に投稿できた。
あと、過去の話数に未だ誤字脱字の他に読みにくい表現や書き方が多いので、新話より先に直そうと思っています。 言葉運びや表現を変えるだけですので大きな話の変更はないと思います。
獄炎の火球が天空で破裂する。
破裂した獄炎は拡散しながら降注ぐ紅色の雨へと変わり、その一滴一滴が大地を更に炎の海を形成してく。
しかし、青白い雷光は止まる事無く紅の雨の中、黒炎龍へと帯を引きながら閃光を輝かせる。
また黒炎龍も、雷光の帯を断ち切るかのごとく爪を振るい、尾で薙ぎ払う。
互いに一歩も引かず、命を削り合い、空間を獄炎と雷光に染めていく。
獣と龍が暴れ狂う地獄……その戦いを見た人はそうとしか見えなかった。ただ数名を除いて……
涙を流しながら少年の名前を溢し、震える手を押さえ、仲間を守る小さな少女……
その少女を支え、絶望する仲間に勇気を分け与えながら、少年に思いを祈る褐色の少女
その少女達に負けじと勇気を持ち暴れ狂う炎を魔法で抑えながら、友を信じて託す心優しき少年
そんな彼らに触発されるように衛士達も着いた膝を上げて彼らを支え始める。
衛士の姿、学友の姿を見て、一人、また一人と続く様に恐怖と戦い始める。
小さな力だが、集まり、一つになって目の前の最悪を抑え込み、被害を少しでも抑えようと奔走し始める。
暴れ狂う炎が少しづつ治まり始める。しかし、目の前の戦闘はより一層激化していき龍の咆哮が響き渡る。そして、雷光が弾き飛ばされ、恐怖が再び獄炎を彼等へと向ける。
それでも彼等は、その取り戻した勇気を手放さずに心を繋いでいく。
そして、その心に反応する様に三つの光が獄炎渦巻く恐怖へと伸びる。
「お前等!! なんで付いて着やがった? 未だ間に合う、今すぐに――」
雄黄色の炎を放つ青年が二人の少年に叫ぶが、言葉の途中で、
「俺は、アイツに負けられない。 それに……俺は、アイツの友達なんだ!!」
本来の赤紅の炎を宿し、剣を構えて叫びながら黒炎龍へと駆ける少年
「もう無様なのは御免ですよ。 それに、勇者が一番なんですよ!!」
小さく吐き捨てた後に、剣に光を宿し叫びながら翔ける初年
そんな二人の少年の言葉に言い掛けた言葉を破棄して
「たく……馬鹿ばっかり…… チッ、良い所を全部お前等に持ってかれる訳に行くかよ!! 仲間の仇は俺がキッチリ支払わせてやる」
雄黄色の炎を四肢に纏わせ、より一層輝かせながら地を蹴り天を駆ける。
そして三つの光が金切り音を響かせ黒炎龍の顔を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた拍子に獄炎の火球は在らぬ方向へと飛び、着弾地点から黒い炎柱が上がる。
その光景に歓喜の声と安堵の声が上がり、それに混じるように
「グラン君! それに、ノエル君に隊長さん!」
「来るのが遅いよ、本当、グランのクセにカッコつけちゃって」
「ノエル様!!」
そう彼等に対して笑顔を向ける三人。
そして、炎と光に反応するように弾き飛ばされた雷光が咆哮を放ち、再び光の帯を引き黒炎龍へと牙を立てる。
青い閃光が輝き、衝撃が響き、音が周囲へと広がる。
その牙の一撃は黒炎龍の喉を確実に食い破る一撃だった……はずで有った。
しかし、閃光は徐々に黒く変色していき、衝撃は黒い重さを持ち、音が濁っていく、
牙は黒炎龍の爪によって防がれていた。そして、その爪のから徐々に色が変わっていく。 赤黒い鱗が波紋が広がるかの如く、漆黒へと染まっていく。
そして、爪で牙を弾き飛ばし、漆黒炎を口内から獣へと放つ。
「ヒルトォォォ!!」
赤紅の炎の少年が叫ぶ。
その叫びと共に、少年の炎が燃え上がり少年の髪を炎髪へと染め上げ、少年は剣に炎を纏わせ黒炎龍の背へと振りぬく。
漆黒の鱗に炎が触れ、共鳴音が響き渡る。
炎が揺らめき共鳴音に掻き消されるかの様に弱くなるが
「お前だけは……お前だけはぁぁぁ」
その叫びに呼応するかの様に紅の炎が黒く、黒く、黒く染まって行く……
まるで、黒炎龍の炎の様に漆黒の炎へと変化して行く。そして、その黒炎は龍の鱗を焼く。
蟲のような小さな物から受けた痛みに龍は、咆哮を上げて、その小さな物を敵と認識して体を翻し、その同種の炎を掻き消さんと口から漆黒炎を向ける。翻した身体に弾かれた少年は身動きを取れない、咄嗟に剣で防御の体制をとるが
「[光子の勝者の剣]」
光の大剣が黒炎龍の鼻先へと落ち、強制的に口を塞がせ。
「無茶くちゃバッカリしやがって」
青年が黒炎龍が口を塞がれた隙に少年を抱いて地上へと降りる。
同時に光の剣と龍から金切り音が響き、光の剣が砕ける。そして、技を放った邪魔者に爪を振るい光の少年を弾く
「ノエル!!」
地面へと叩きつけられた少年へ青年が叫ぶが
「勝手に、殺さないで下さい。 アレぐらいなら僕には余裕で防げますよ」
悪態交じりに答える少年。 しかし、爪を防いだ剣は砕けて柄だけしか残っておらず、少年も体から血を流している。
「お前が強がれるのに、俺がお姫様してる場合じゃないな。それに今ので分かった。あいつに一撃を与えれるのは俺だけみたいだ」
青年の胸を押し除け、腕からおりながら言う少年
「無茶をするな!! 此処は俺が持たせるから、ヒルトを回収して全員王都まで逃げるんだ」
青年は少年達の肩を掴んで止める様に言葉を吐く
しかし、
「アレを此のままにしてたら、逃げれる者も逃げれなくなるよ」
再び炎を発して剣を握り直す少年と
「貴方は何を勘違いされているのかは分かりかねますが…… 僕は自分の為に戦っているんです。 それに、そんなに王都まで他の人を連れて行きたいのなら、ご自身が連れて逃げれば良いのではないのですか?」
折れた剣の柄から光の剣を伸ばし、一振りしながら黒炎龍に眼光を向ける少年
その回答に一瞬だけ目を見開いてから、感情が出そうになる青年だったが
「それにさ、俺はもう逃げたり、誰かに守られたりしたくないんだ。誰かを守るそれが俺の今の望みなんだ」
身に纏う炎を更に燃え上がらせて言葉を放つ少年。その炎は綺麗な紅色と茜色を放ち熱を放出する
その熱と色に青年は首を振り、深く呼吸をしてから
「分かった……もう逃げろなんて言わない。だが、俺の指示に従ってくれ」
青年が雄黄色の炎を手に宿し、握り拳を構えて言い放つ
その言葉に、少年達は頷いて返事をする。
その返事に青年が少年達の前に出て、脚に炎を灯してから
「俺と勇者で奴の気を引く、その隙にお前が一撃を決める。之を基本に動け。それぐらいしか奴を討つ方法は無い!! 」
その指示と共に黒炎龍へと跳躍する。それを追うように
「全く気に入りませんが……任せましたよグラン君。僕が援護するんですから、確実に決めてくださいね。ミスは許しませんよ」
その言葉を残して少年は光の剣を構え、光を纏って宙を翔ける。
「アイツ以外に背中を預けるのも悪くないか…… でも…早く帰って来いよ」
剣を構え、大地を蹴り、真紅の炎を靡かせながら少年は空へと駆ける
雄黄色の炎が黒炎龍の翼を叩き付ける。炎は金切り音を鳴らし弾けるが、衝撃で黒炎龍が体制を揺るがし。 其処に、光の粒子が黒炎龍を覆い込み、破裂していく。
その破裂から逃れようと翼を羽ばたかせ上空に上がる黒炎龍。
しかし、更に上空から黒炎龍目掛けて真紅の炎が打ち下ろされ、地上へと引きずり落とす。
そんな攻防の中、一つの意思が瞬き始める
逃げなければ……今の黒炎龍には、此の身体と牙では届かない
何処へ……逃げるって……言うんだ……コロ
いや母に此の事を一刻も早く知らせ、眷属と共に滅ぼさねば
母さん、母さんって…… マザコンが……まってろ
なっ身体が言う事を利かない?! まさか……
俺の剣を……俺の想いを……俺の体を…… 勝手な事ばっかりヤッてんじゃねぇぇぇ。
なっ……我を押しのけるか。
ったく、好きかってやりやがって犬っころが。
っ!? 我と拮抗するか、此の人の子は…… 仮にも我を討ち果たした者と言うか。
何をブツクサと言ってやがんだよ。 って、何処なんだよ此処は? それに、何であの時のソーンスコルが目の前で言葉を話してるんだ?
ソーンスコル如きと我を同列に扱うでない餓鬼が。我は母の直系子フェンリル。雷帝フェンリルだ。
はぁ? フェンリル? 俺とオヤジに討ったれたのにお前は何を言ってんだよ? それも子供時代の俺にだぞ? 馬鹿か?
ふんっ 幼きスコルの肉体を媒介にしていた為に負けたに過ぎん。本来の身体で在れば御主やあの人の子に負けたりはせん。 それより、我は長き時間を生き外界の眷属を見守り、もしも、世界の均衡が揺らぐ時、母を目覚めさせ均衡を取り戻す役目を持っている。
はぁぁ、 でっ?
今目の前で、黒炎龍が目覚め、世界の均衡を崩そうとしておるのだぞ!! その役割を果たさなければ成らんのだ。 御主の体は未だ未熟で小さき者では在るが、我の体にするには良き器で有る。だから、邪魔を――
うるせぇぇ!! 勝手な御託をほざきやがって。 そんなに助けて欲しけりゃお前が俺に力を渡しやがれ。
なっ!? 人の子の分際で、我を阻むと言うか?
あぁぁ? 阻むも何も有るか! お前の事情なんて知らないし、お前の役目なんてクソくらえだ。 それにな……
なんと、傲慢な……
俺の体は、俺の物なんだよぉぉぉ!! 犬ころ如きが好き勝手にうるせぇぇぇ!! 俺がその黒炎龍って奴を討ち倒してやるから、テメェが黙って俺に力を渡しやがれぇぇ
人の子が我を押し戻すだと…… ふんっ まぁ良い……仮にも我は負けた身で在るか…… 今は我の力を貸そう人の子よ。 しかし、我は何時でもお前の意思を食い尽くしてその身体を奪う事が出来る、努々忘れるでないぞ我仇敵手よ。
「くそっ、いい加減にしろよトカゲ野朗」
炎の拳を振り上げながら吐き捨てるように言うヴェス
「全くですよ。いい加減飽きてきますよ…… 本当に、速くトドメ刺してくださいよ」
光の剣と、光の粒子を撒き、爆裂させながら翔けるノエル
「分かってる。 コイツでどうだぁぁぁ」
炎を撒き上げ、真紅の一撃を天空から振り下ろすグラン
こんな攻防を何度も何度も繰り返す。黒炎龍は、その度に体制を崩したり咆哮を上げる
しかし、傷が入ったとしても即座に再生し、更に
「「「ぐぁぁぁ!!」」」
黒炎龍は鋭い爪で空を裂き真空の刃で彼等を吹き飛ばし、巨大な尾で追撃を振るう。
今回は直撃を喰らい三人纏めて大地へと叩きつけられてしまう。
そして、トドメと言わんバカリに熱を溜め、口を開ける。
「くそ…… 此処までか……」
「…… 僕は…… 未だ……」
ヴェスが弱音を溢しながらも二人を守ろうと身体を起そうし、ノエルは震える足で無理やり身体を起そうとモガキながら言葉を放つが、同時に起き上がれずにその場に倒れてしまう。
「未だ…俺は諦めない……、俺は…俺は、此処で…負ける訳に行くかぁぁぁ」
真紅の炎を上げ仲間を守る様に剣を掲げ、瞳の炎を消さずに雄叫びを上げる。
しかし、炎はその意思に反して弱く揺らめいて消えていく。
そして、その場に突っ伏しそうに身体が揺らぎ、そのタイミングをの見測る様に黒炎龍は再度に咆哮を上げて獄炎を作り上げた。
しかし、消えそうな炎を消さぬよう
「くそぉぉぉぉ」
雄叫びを再び吠える。
その雄叫びに呼応したのか
一つの咆哮共に青白い光が空へと上がり。
そして、咆哮と光は大地へと再び引き戻されていく
引き戻された青白い光は、紺碧の蒼穹色へと光を変え咆哮は雄叫びに変わり、
一筋の光が一直線に黒炎龍に向けて剣を振りかざして。獄炎を斬り裂き、更に黒炎龍を弾き飛ばした。
「待たせて悪かったなグラン。ボロボロみたいだけど動けるよな?」
不思議と身体が軽い。それに、頭もスッキリしてダンジョンの時が嘘の様にハッキリ頭が回る。
あれもどうせあのクソ犬のせいだろうけどな。
俺は言葉をかけながら、そんな考えや想いを抱きつつグランの横に着地する。
そんな俺に
「……お前……ヒルトなのか?」
グランは、変な物を見た時の様な形容しがたい表情を向けながら言葉を溢す。
その反応に
「何を馬鹿みたいな顔をしてんだよ。そんなに俺が此処に居るのがそんなに可笑しいか?」
笑交じりに俺は言葉を発するが
「いや…お前… その髪と……手…気が付いて無いのか?」
はぁ?髪と手?
グランの発言に疑問を持ちながら、自分の髪を触ると
「なんじゃこりゃぁぁぁ? はぁ?長……てかなにこれ、青くね? てっ 手がぁぁぁ」
自分の変化に対し驚いて声を上げる。
髪は白から紺碧色に変化を起し、腰まで長く伸びてしまっている。
そして、一番驚いたのは…… 手の甲に青く光る文様と中央に小さく魔石が刻み込まれてしまっている事実。
そして、その文様は何処かあのクソ犬に似ている……
そんな事実にワタワタしていると
「本当に貴方と言う人は、バカな事ばかり起しますね」
呆れた表情を露わにしながらも何処と無く羨ましそうな目を向けて言葉をかけられた
そして、その言葉の主へと向き治り
「俺だって好きでこんな姿になって… って、ノエルお前はまた一段とボロボロだな。大丈夫か?」
俺の反応に対して、ノエルは
「五月蝿い。貴方に心配される事は何も有りませんよ! こんな時でも本当にフザケテばかり。此方がどれほど苦労と心配をしたと――」
喧しく吠え始めたので言葉半分に聞き流す事にした。
それにしてもコイツの口から心配の言葉が出るってのも何だかな…… 笑っちまうな
なんて想いながら流していると
「戦線復帰早々、賑やかにお前の容姿について話しているとこ悪いが、そんな暇はトカゲさんくれる気はなさそうだぞ」
ボロボロの身体を引きずりながらも戦闘態勢を取り俺達の前に立ち、翼を羽ばたかせて飛び上がった黒炎龍を睨みつけ、言葉を放つヴェス。
その姿を確認して俺は剣を腰の鞘へと納め、抜刀の体制と[迅雷]を発動させ。
「俺が飛び込みます。ヴェスさんは少しの間、ノエルの面倒を頼みます。それと…… おいグラン!!」
俺はグランの名前を呼ぶと同時に地面を蹴り抜いて、一直線に駆ける。
今までは、身体が[迅雷]の負荷に耐えられず本当の全力を出せなかったが、今なら
「リミッター抜きの全力だぁぁぁ」
[迅雷]と[電磁加速抜刀]を合わせた、神速の一撃で黒炎龍の爪を切り飛ばす。
その一撃に悲鳴に、にも似た咆哮を上げて尾を振り廻し始めるが
「いちいち呼ばなくても…分かってるってぇの!!」
真紅の炎を剣に宿して振り下ろされる尾を弾き返し、その勢いのまま体を回転させ炎を渦状に巻き上げ、
「[紅炎の龍帝剣] どうだよ? 俺の新技も結構やんだろ」
はぁ こんな状況でもその厨弐名叫ぶんかい。 でも、すげーな
炎と火の粉を渦を巻き上げながら、黒炎龍を飲み込んでいく。
しかし、黒炎龍を覆い尽くした炎の渦は、一瞬膨れ上がり巨音な咆哮と共鳴音と共に一瞬にして爆ぜる。
「はー。見た目の割りに全然じゃねぇか…… って、危ねぇぇ!!」
爆ぜた炎が襲いかかってくる。それを回避しながら俺は文句を叫んだ
「五月蝿な。 お前が切り飛ばした爪だってもう生え変わってるよ」
グランは炎風輪で空中を器用に動きながら爆ぜた炎を避し続ける。
「タフだねぇぇ。 つか、お前だけ飛ぶって卑怯じゃね?」
そんな言葉をかけながら
再生能力がウザイな…… どうすっかな? 弱点とかが在れば何とかなりそうだけど、そんな都合よく見つかる訳もないしな。
対策を考える
「羽でも生やして飛べば良いだろ。 それか、エイルがしたみたいに足場でも作れよ」
グランはそんな事を言いながら、果敢に炎を上げて黒炎龍へと切りかかる。
「それが出来ればやってる!!」
迅雷の磁気を利用して地面との反発を生かして黒炎龍への跳躍と斬撃を放つが
直線的過ぎる俺の攻撃に慣れてきたのか、黒炎龍は翼を器用に動かし体を入れ替えて俺の攻撃を交わす。すかさず反撃の為に体を仰向けにして火炎を吐こうとするが
「見てられませんね、全く」
「やらせるかよ!!」
ノエルが地上から光弾を黒炎龍へと無数に放ち接触する寸前で爆破させ、
ヴェスがそれに続いて上空へと跳び上がり、黒炎龍の背中に炎を宿した蹴りを放ち
「はぁぁぁ。 [紅の紅蓮剣・改]」
怯んだ隙に回転を加えた[紅の紅蓮剣]で黒炎龍へ追撃を入れる。
その一連の攻撃によって黒炎龍の攻撃目標がグランへと変わり、炎弾がグランへと向く。
それを軽くいなす様に空中で避けるグラン。
落下しながら、それを見て
たく、なんでアンナにデカイ生き物が自由に空を飛行できるんだよ。 魔法で飛行してんなら常時羽ばたいてる必要も無い訳だし。 かといって飛行時の風圧が在る訳でも無い。 完全に航空力学無視かよ……
そういや……
「物は試しか」
迅雷を脚に極所集中させ感覚を研ぎ澄まし電圧を上げていく。
一瞬だけヌルっとした感触が伝わったタイミングで、極大まで迅雷上げて爆ぜさせ、同時に空を蹴り抜く
反動で身体が持ち上がり再度の跳躍で上空の黒炎龍目掛けて剣を振りぬく
「っち、 ずれたか」
振りぬいた剣は黒炎龍の大腿部を掠め鱗で弾かれる。
反撃とばかりに尾を俺目掛けて振られるが、もう一度空を蹴り抜いて回避し、体を捻ってから切り返しに空を蹴り、再び剣撃を放ち黒炎龍を斬る。
弐撃目は鱗を斬り裂き肉をも切る。 ようやくまともな一撃を入れた
咆哮を上げる黒炎龍
俺はそのまま空を駆け周りながら剣撃を浴びせ続ける。
「出鱈目だろお前! 空で何て動きを」
グランがそんな俺の姿を見て驚きの声を発した。
「足場を見つけたんだよ」
恰好を付けながら自慢げに言う
理屈はクマバチの飛行と同じで空気中の粘度だ。
航空力学上クマバチが飛行は不可能とされていたが、空気中の乱流の利用と粘性の違いで飛ぶとアレだ。
其処に、魔力の粘性を応用して足場にしてる。
これだけ大量の魔力を放出してるんだ、そこ等中に魔力が充満して熱気流で空気も乱流だらけ。
之だけの条件でアノ黒炎龍も飛行してんだろうからな。
心の中で考えを口に出しながら身体を動かし続ける。
しかし、どれだけ此方が優勢に攻撃を展開しても黒炎龍は衰える事無く、体を再生させ反撃をしてくる。徐々に俺達の限界が近付き
「はぁ、はぁ…… 全く弱る気配が無いぞ。 ……がはぁぁぁ」
「ほんと…そろそろ、はぁ…留めを刺して、いただけませんかね。僕でもこれ以上は、 ……かはぁ」
ヴェスとノエルは肩で息をし[魔力枯渇]との狭間で身体がふらついた所に、黒炎龍が横薙いだ尾が直撃、弾き飛ばされた体が後方の焼け朽ちた巨木へと叩き付けられる。
「ヴェスさん! ノエル!。 なっぁ、くそ」
叩きつけられた二人の名前を呼ぶグラン、助けに行きたいが黒炎龍の爪が降りかかり、ギリギリの所で剣で防ぐがノックバックで地面ギリギリまで降下させられ[魔力枯渇]寸前で炎風輪も最後の力を出し切ったのか鎮火して膝を付く
「間に合え!!」
膝を着くグラン目掛けて黒炎龍が漆黒炎を口内から吐き出す。それを目にした俺は空中を蹴り抜き声を上げる。
爆炎が上がり着弾点の後には何も残らず黒く焦げ上がったクレータが出来あがる
しかし、何とかギリギリの所でグランの手を取って助け、膝を着いき黒炎龍を睨みつけると
「無茶…させて悪いな、ヒルト」
「無茶をしてるのはお前だろ」
俺の肩を使って立ち上がるグラン、それを手伝うように共に立ち上がりながら俺は一つの賭けを考える
「はっ…違いないな。 でっ…何とか成りそうかよ?」
「後何回、紅蓮剣を振れる?」
俺はグランの顔を見ずに黒炎龍を睨み付けながら質問をする。
一瞬グランは鼻で笑ってから
「一回だけなら全力で叩き込んでやるよ」
「上出来だな… ノエルを起してから俺の指示道理やってくれるか? それまでは俺がどうにか時間を稼ぐ」
俺の言葉に驚いたような顔を見せるグランだったが、俺は指示をグランに伝える。
それにグランは少しだけ嫌な顔を見せるが頷く。
「決まりだ。 ……行くぞ!!」
俺は黒炎龍へ向けて跳躍し剣を振るう。同時にグランが走り。
それを横目で確認して
「速くしろ……俺も限界だからな」
黒炎龍の咆哮が響くなか俺は言葉を溢す。
攻防が上空で始まり
黒炎龍は上空で身を翻しながら剣を避わし
雷光も黒炎龍の爪や牙を弾き、光の帯を引き閃光を輝かせ空を駆ける
「遅い…」
限界が目前まで迫る中、言葉を溢しながらも雷光の一線を延ばし黒炎龍へと攻撃を仕掛ける。
咆哮と共に漆黒炎を吐き出す黒炎龍
「ちっぃぃ、殺られるかよぉぉぉ!!」
漆黒炎を避けきれないと判断して、咄嗟に剣を雷電させた状態で[清流法]を繰り出し漆黒炎を斬る。
それと同時に視界の端に紅い光が見え
「遅すぎんだよ。でも…コイツで、終いだぁぁぁ!!」
剣に魔力を注ぎ込み雷電を帯びさせ、全力で空を蹴り抜いて叫ぶ。
その一撃に黒炎龍も漆黒炎を最大限まで圧縮させた漆黒の獄炎球を放つ。
真っ向からブツカリ合う両者。
だが、
[清流法]
どんな激流であっても、逆らわず、抗わず、流れに身を乗せ、清流へと変化させる、究極に近い防衛剣技
それは、言い換えれば相手の攻撃を止める瞬間その志向に従いながらブレーキをかけ、徐々に弱くさせる技だ。 更に此の技にはもう一つ、の顔が有る。
溜め、激流を清流へと変化させるエネルギーは蓄積され拡散する。
では、その蓄積されたエネルギーを拡散させずに蓄え、零の瞬間に跳ね返せばどうなるだろうか。
答えは、
「イィマダァァァァ!!」
漆黒の獄炎球を二つに斬り裂き、その勢いを借り一直線に黒炎龍へと駆ける、
更に空を蹴り踏み込み黒炎龍の額に輝く魔石、目掛けて渾身の一撃を突き立てる。
黒炎龍の悲鳴が轟き、藻掻き苦しむように爪を振り上げるが、
「殺らぁせるかぁよぉぉぉ!!」
真朱殷の炎を掲げ渾身の斬撃を放ち、黒炎龍の眼光を切り伏せる。
片目を切り裂かれ更に哭声を上げ、未だ抵抗しようと獄炎球を吐こうとするが
「往生際が悪すぎんのも、大概にしやがれぇぇ!」
右手で暴れる黒炎龍から振り落とされないように握り締めた剣を機軸に、雷電を圧縮させた左手を勢い任せに黒炎龍の魔石へと叩き込む。
魔石は光を放ちながら真っ二つに爆ぜ、黒炎龍の額から飛び散り地面へと落下。反動で俺は更に上空へと弾き上げられ、直後に
「光子の勝者の剣ァァァァ」
光の巨剣が黒炎龍の額を貫いた。
絶命の咆哮を上げて事切れたように、漆黒に包まれた身体から色が失われていく。
「良い所取りさせてやったんだ…… あとで礼ぐらい言ってもらわねぇとな」
俺はこの言葉を最後に全身から力が抜け、目を閉じて自由落下する。
この戦いが見える丘の上で一人の人影が口を開く
「おやおやぁ、【神域獣】の抜け殻を殺すとわぁ。肉片の一つでも残って要れば良いと思いましたが…… 計画の変更ですねぇ。あぁっぁあ非常に悲しき事ですが、あの子には此処で御退場して頂きましょうかねぇ。 それに、良い素材も見つかりましたし。之も神へ感謝を」
不適な笑い声と共に持っていた本を閉じ、漆黒のローブだけを残し消える
「お前はスゲェよ。俺も…… あぁぁ……うぁぁぁ」
絶命した筈の巨龍の目が赤く光輝き、次の瞬間には血の様な色をした閃光を打ち上げる。
それを目撃した、グランの血声の叫び声だけが谺した




