第22話 緑と最悪と結晶と
気が付けば梅の咲く季節になりましたね。
春も近付く気配を感じながら明日を夢見て今日もせっせとチタンをリアルで磨いてます
合掌
そんな前置きは置いといて
最近更新が遅くなりすいません。
本当にユックリですが待っていてくれる方が居ると思うと本当に感謝しか有りません。
「ふざけんなぁぁぁ!! 毎度毎度同じ事を繰り返しやがってェェェ」
「ふぇぇぇ。ヒルト君そん事言ってる場合じゃないよぉぉ。早く」
「僕はなんて……」
「ノエル様お急ぎを」
「ヒルト、アレをどうにかしろぉぉぉ」
「貴方達、無駄口叩いてないで早く走ってぇぇ」
「ヴェス……早く……走って。少しマントが溶けた」
「お前は俺におぶさってるだけだろうぉぉぉぉ」
「イヤハヤ。ここまで来ると痛快ですな」
「ヴェス。お前のところのガキ共といいお前の小隊といい、いい加減にしろよぉぉぉぉ」
俺達は今、全速力で巨大な青緑色した巨大な塊から逃げている、何故こんな事になったかは……また、あのバカ達がまた同じ二の舞三の舞をしたためである。
「おっ。あと少しでホールだ。四の五の言わずに走るぞぉぉぉ。対処はその後だ」
『時間を遡る事数時間前』
俺とノエルはフランによって重力に潰された時、
「本当にごめんねヒルト君」
そうションボリしながら俺の治療をするフランだが、
「貴女が謝る事はないわよ。そこの二人が敵の目の前で喧嘩なんかしていたのが悪いんだから」
そう、俺とノエルに呆れて物も言えないという、眼差しを向けてフランをフォローするヘスティ、
「そうね……そこの白黒コンビが……悪い」
ジト目で、俺達を見ながら無頓着に言葉を発するエールだった。
しかし、
「なんて事をしてくださったのですか? 貴女が手を出さなければノエル様があんな駄犬位、軽く倒していましたのに。大会で優勝した事で本当に調子に乗っていたのではないんですの? ――」
そう捲くし立てるようにフランへ言葉を吐き出し続けながらノエルの手当てをするへレネー、
それを見て、
「オイ、クソオン……チッ」
文句を言おうとするが、
俺は言葉を途中で止め、回復中のフランの手を払い除け、一足飛びに通路の奥、俺とノエルが切り捨てたはずの一匹のダイアウルフへと火炎を纏った拳を叩きつけた。
切り返して隣に転がるダイアウルフの死体へ追撃を加えようと体を入れ替えたが、同時に光の塊がその死体を消し飛ばし、
「君も気が付いたんですね。それでどうします? まだまだ居そうですが」
ノエルが魔法を放ったポーズのまま俺に声をかけてきた。
残りの三人はいったい何があったのか。何故、俺とノエルが死体に追撃をしたのか判らずにキョトンとしていたが、
「良い反応だな。手伝いは要るか?」
そうヴェスが剣に手を掛けて言う。
言葉と同時に、奥に転がっている3つの死体がモゾモゾと動き、その後、同時に腹部の皮が伸び、伸びた皮を突き破っり、赤味ががった白い身体をしたワームがこちらに対して飛び出して来る。
だが、
「いらねぇよヴェスさん」
言葉と共に俺は、飛びかかってきた3体のワームを一瞬のうちに燃やしつくしてから言う。
しかし、俺の言葉の後を追うように、俺の顔の横を光の矢が通り過ぎ、俺の背後で多数の光弾に分散して、通路の奥で爆散したのを感じ、
「チッ……バカ」
「まぁカッコ付けるのもいいですが、奥の奴らを倒してからにしてくれませんか? 全く不用意ですよ」
俺の舌打ちと同時にノエルが自慢気に声を出してきたが、
「はわわわわ。あれって魔食芽蟲じゃないの? はわわわわ」
「なんて事をしたんですかノエル様。アレは不味いですよ」
慌てて武器を構えるフランとハルト。
「この下民。なんで直ぐにノエル様に魔食芽蟲だと忠告なさらないのよ。ワザとでしょ」
俺を罵倒しながら即座に後方に隠れて喚き散らすへレネー。
そんなガヤガヤとした状況を相手は許すはずものなく、前方や横の壁が音を立て始めた。
「クソノエルが、この借りは返せよ。フラン防壁」
咄嗟に俺は声を上げてフランに指示、それと同時に拳に魔力を溜め全員から離れ、フランが防壁を張ったのを確認してから、その魔力を拡散させた。
手のひらの魔力が煌々と輝きを放ち、ガラスを引っかいたような甲高い音と共に細かな光となり拡散する。
同時に、魔力という餌を目掛けて壁という壁から魔食芽蟲が、まるで白い波の様に押し寄せて俺を飲み込みながら一つの塊になる。
そして、
「いやぁぁぁ。ヒルト君……ヒルト君……」
フランの悲痛な叫びが響き、周りは顔を下に落として暗い顔したり。
「バカ野朗、強がっても死んでしまっては何も」
「本当に下民の考える事は……ノエル様は何も悪くありませんわ。責任なんて感じないでくださいませ全部あの下民が――」
等と言っていた。
しかし、とある二人は我慢が出来なかったのか口に溜めた空気を噴出そうとした時。
「うるせぇよテメェら! それよりとっととアレを封じろよ! そこの二人も」
俺が全員の後ろから声を上げると
「ぶっは。あははは。いやー、余りにも感動的な一面だったからなついな。それにお前が要らないって言ったんだろ?」
「ぷっ。君はその頭に付いた蟲をどうにかしてから話したらどうだい? それに僕ならそんな事にならずに片付けていたのに君が出しゃばるから」
その二人の反応にイラつきながらも、目の前で今にも拡散した魔力を食い終えてこちらに目標を変えようとする、まるでイトミミズを数百匹固めた形状の白くもぞもぞと蠢く巨大で気持ち悪い塊を見て。
「早くアレを水で包めよハルト。また散らばるだろうが」
俺は頭に噛み付こうとしていた魔食芽蟲を掴み速攻で火炎で燃やしながら怒鳴る。
その怒鳴り声に咄嗟に、
「はっ! [水陣牢閉壁] しかしこれでは……」
「それで良いんだよ」
俺はハルトが張った水の防壁に向けてナイフを投げ込んでから結んだワイヤーを通し、一気に電流を流し込む。
すると、水の防壁内で気泡が大量に発生し、白い塊を中心に巨大な気泡へと成長した。
その光景に、
「ヒルト君もしかして!? はわわ [風の妖精の加護]」
フランが前方の固まりと俺達を遮断するように風の結界で通路を塞いだ。
それに呼応して俺は火種をナイフの先に発生させる。
フランの結界で音は聞こえないが、一瞬で水の防壁内が真っ赤になり、次の瞬間には防壁を弾き飛ばし目の前の結界を激しく揺さぶる。フランが全力でその衝撃に堪えるように魔力を込めて押さえ込み、その暴力的な爆発が収まるとその場にへたり込んだ。
さて問題です。筒状の片方を閉じて内部で爆発を起すとどうなるでしょう?
答えは……
「ヒルトぉぉぉぉ。お前って野朗はぁぁぁ殺す!」
「いやちょっとまっ……えっ……話をきけぇぇぇぇ」
髪の毛の先が切れた俺は黒焦げになったグランが剣を持って追い回し、それに対して言い訳を嘆く
「もう嫌だァァァ。なんでまたァァァ」
「ヴェスぅぅ。お前と言う奴は毎度毎度ぉぉ!」
「待て待て今回は俺じゃない。こいつ等がなぁぁっぁ! 話をきけシン」
もう一人真っ黒に焦げた鎧でヴェスを追いかけ、衣服の大半が焦げ落ちた男が嘆いていた。
この現状から答えは判るだろうが……答えは巨大な大砲もしくは、火炎砲だ。
通路内で巨大な爆発を起こせば、その先にあるホールまで爆炎が走り抜け、ホールという広間で一気に放出されるのだ。
もしも、そこに誰かが居れば……その結果がこれだ。まぁそのおかげでホールまでの通路は魔物一匹残らず炭だったがな。
そして
「「「あーもう! 一旦黙りなさぁぁぁい」」」
三人の女性が大きな声を上げた。
その事で俺達はその声の主に正座させられ叱られた事は言いたく……
「それでこの惨事なわけね?」
「はい……」
「言い訳は?」
「有りません……」
俺がうな垂れると
「アンタは?」
「へっ? 俺もですか?」
「あぁ? 反省は?」
「いえ……すいません……」
俺とグランは褐色の女性の前で正座しながら顔を下げる。
他のメンバー……もと言いヴェスとシンと言われた男性は二人の女性に頭を踏まれ這い蹲って
「すんませんでした……」
「取り乱しました……」
と力なく声を出す。
女怖い……
『一連の御叱りの後』
「本当にごめんねこのバカを放置して。ティア……」
「良いのよ別に。普通ならこんな馬鹿げたことなんて起きないもの。それにこの御馬鹿が判ってて楽しんでた事や、直情的に場を乱したウチの馬鹿隊長が悪いんだもの」
そう言いながら現状把握作業を始めるヘスティさんとティアと呼ばれる女性。
「フラン大丈夫だった? って……」
「あらデミ・ヒューマン生きてらっしゃったのね。忌まわしいわ」
「はいは。ところでフランあの馬鹿の暴走で大変だったでしょ? こっちで休もう。あっそちらの三人もこちらで一旦休憩してください。念のため回復もかけますので」
「えっでも……」
エイルがフランを引っ張って連れて行きながら、奥で放置されていた三人に声をかける。
「しかし、あの四人は?」
「すまないなお嬢さん。ホレ、ハルト殿も言葉に甘えさせて頂きましょう」
「自業自得……ほっとけば良い」
ユーリとエールに背中を押されながらハルトは「でもしかし」と言いながらエイルの指定した場所まで運ばれて行き。エイルに出されたお茶を気まずそうに啜っていた。
まぁ隣で自分達よりボロボロで放置された馬鹿が転がってればそうだろう。
「僕は君達と同列に扱われていると思うと情けないよ。もう少し大人になれないか?」
そう言いながらボロ雑巾の様に転がる俺とグランを突くノエル。
なんていう事があったとか無かったとか。
回復や全ての荷物整理が終わった後
「ところでシン。お前達の隊の人数が足りない様だが何があったんだ?」
ヴェスが体を解しながら冗談半分に聞くが、シンの顔を見て顔を強張らせてから
「斥候に出したんじゃないのか?」
「ああ……でも死んだ訳じゃない」
その問いに忌々しというか釈然としないように答え、そして
「本当に今年の子達は、どうなっているのかしらね? 片方は突然仲間と共に集団で逃亡。そちらはそちらではぁ……」
そうティアと呼ばれる女性が嘆いている。
俺はそのやり取りを見て、
「おい、グラン何があったんだ? 確かお前達の班は……」
俺の質問にグランは頭を横に振り、
「はぁ……、お前の想像通り彼奴らだったがな戦闘中にいきなり走り出したと思ったら、それに合わせた様にシンさんの部下達もな……」
グランはシンという人物を心配そうに見ていた。その姿から深追いは止め、俺はエイルへと目をやるとそれを確認してか、エイルは頷いてから。
「グランが話した通りよ。まぁそれを追いかけてここまで来たって訳なんだけどね。この場所で見失っちゃったから深追いしないで別の班が来るのを待っていたハズなんだけどね……? それをあんたが見事に爆発してくれたの」
うーん……何が起きてるんだ? 今の話を聞く限りだとニールとロタが戦闘中に脱走。それを追いかけにシン隊数名がとなるはずだが……反応を見る限りだとその数名も脱走だろうな……そんな事、あるのか? 正規兵だろ……
そんな考えをしていると、
「とりあえず俺達が合流したんだ。その子達と追っていた奴らを迎えに行くかシン。まだ上層部だから良いだろうが危険なのは変わらんからな」
ヴェスがそう告げると、シンの肩をポンと叩いて、
「予定とは大分違うが、緊急事態なんでな悪いがお前ら学生にも付き合ってもらいたい。良いな?」
そう続けて言うと、へレネーがなにやらノエルに耳打ちをし、それに頷いたと思ったら、
「僕もヴェス隊長の進言に賛成します。それに下層に下りなければならなくなった場合、戦力は多い方が良いですからね」
等と、いかにも僕が勇者です、とでも言いた気に格好をつけて言葉放ちやがる。
俺はその光景に、
はぁ……あの馬鹿女が何か吹き込みやがったな。まぁヴェスの言う事も理解できるし、ノエルの言葉からだと脱走組みが何らかのトラブルで下層まで下ってた場合戦力が必要になる。まぁ見捨てる訳にもいかないだろうしな……面子上だけはな……はぁ……
そう心の中で呟きながらも、
「俺も構わないけど、一つ質問がある。もしも行方不明組が何らかの理由で下層まで落ちてしまってた場合はどうするんですか? 見捨てますか? それとも」
そう隊長格である二人に対して質問を投げかけた。
そんな俺の質問に、全員が隊長である二人を見る。
そんな状況の中、シンが、
「勿論見捨てる。一定階層まで下っても見つけられなければ死亡判定を下すしかない」
表情は冷静に言葉を出しているが内心は苦悶という感じで答える。
そして
「俺もコイツと同じ意見だ。それにな……ここには遠足で来ている訳でも、ましてや英雄ゴッコのお遊びでもない。俺達は現実を学ぶ為、何よりここから漏れ出す魔物被害の低減という国民の安全を守る為に居るのだからな」
シンの言葉に続けてヴェスが、強めの語気で言葉を発した。
その発言に内心、
ヴェスさんは周りをよく見ている。あの馬鹿女の行動やそれに対するノエルの答えへ釘を刺して抑制しようとしている。
そう思い、
「判りました。出すぎたマネをすいません」
頭を下げた。
俺の回答にヴェスはヒラヒラと手を振って応えてから正規隊を集めて会議をし始めた。
まぁここに居る一人を除いて全員覚悟を決めてる様だし……一人を除いてな……
「そんなぁぁぁ。自分はっ自分はっ……もう帰りたいよぉぉぉぉ」
この弱音を吐く奴こと、司祭の息子……サケル・ドーテを除いて
はぁ……締まらねぇぇぇぇ。何でコイツがここに選ばれてんだよ……
俺の思いに全員が一致したかのように頭を振った。
そして……
俺達はホールから次のホールへのシャフトを進む事に。
隊列は、トップに俺とグランとノエル。リーダーにシンとヴェスが二枚。ガーディーにユーリ、フラン、ハルト。変則的だが、ウィングという中隊ポジションの右にヘスティ、エイル、左にティア、サケル。最後にセーフへ、エールとへレネー。
そんな隊列を組む事に。
なぜこうなったかは、グラン、ノエルが俺の邪魔をして喧嘩になるからだろう。現に……
「なんで君は先ほどから僕の獲物に攻撃するのですか? 位置的にも技量的にも僕の方が適任じゃないですか」
「はぁ? さっきから聞いてたら馬鹿ばっかり言いやがって。スライム種相手にお前の魔法や戦い方だと分裂するし、こういった相手なら俺の炎魔法が良いに決まってる。それに俺の方が早いからな、なぁヒルト?」
魔物と遭遇する度に、くだらない口喧嘩を始め剰え俺を巻き込んでくる。
そんなやり取りと言葉に、眉間から何かが出そうになりながら、
「うるせぇぇぇぇぇ。お前等が俺の邪魔をしてるんだろうぉぉぉ」
俺はこいつ等の邪魔により、片側は黒焦げ、片側は穴ボコという姿になり切れて、感情のまま叫んだ。
そして
「あんた達い、い加減にしなさいよ……はぁ……」
「ノエル様もヒルト殿も落ち着いてください。それにグランは全体を把握して――」
エイルとハルトが止めに入る流れとなるが、
「それにしても変よね?」
「ヘスティもそう思う?」
しかし、この二人の言葉から一転する流れに。
「何が変なんですか?」
フランが不思議そうに尋ねると、
「さっきからスライム種ばかりと遭遇している気がするの。だから変だなって思ってね」
ヘスティがフランの疑問に答える。
しかし、
「たまたまだろ。スライム種なんて物はこういった下層では珍しくとも何ともないし。一番繁殖力が強い魔物なんだ、それかどっかの馬鹿が切り捨てて放置したかだな」
ヴェスが笑いながら楽観的な答を口にした。
しかし、俺はこの言葉から一抹の嫌な予感がした……
そして、
「いやヴェス違う。俺達はこのダンジョンに潜ってからとずっとスライムとしか遭遇していないんだ。お前達の方は違ったか?」
シンのこの一言で、俺の心にある一抹の不安から、俺はサケルを睨んだ。
そして、グランも俺と同時に様にサケルを睨み突けるが、俺と同じタイミングで、互いに顔を合わせて、そんな無いと、お互いに首を横に振り、
「流石に無いよな?」
「無いだろ……流石にアイツも座学で習ったし、初日の件も覚えてるだろ」
俺達は流石にと言葉を交わしてから頷き、他のメンバーも片側の通路にスライム溜りが出来てただけで特段気にする事ではないと結論。
その後、数度のスライム種との戦闘はあったが先へのホールへとたどり着いた。
そして、ヴェスが一番乗りだと言う感じで、真っ先にホールへと入り、
「オッ、ラッキーだな。珍しくお客さんの居ないホールだぜ」
安全だと、おどけた感じで振り向いて声を発した。
その言葉に、
「きっと他の班か、大隊長の班が先に通過したんだろう。ほら戦闘痕もある」
続いてホール内へと入ったシンが周囲を見渡しながら予想を口にした後、ホール内にあったエグれ溶けたような戦闘痕を指差して、確定だなと言った雰囲気をだした。
そんな二人の後に続いてホールへと入る俺達だが、
「でもここまで来ても見つからないっていう事はもっと奥まで行ってるわよね?」
「そうですな。仮に彼らがここに居たとすれば先に辿り着いた班が回収して、ここで我々を待っているであろうしな」
「居ないなら……その班より……先に通過してる……」
未だに遭遇、発見できない、仲間を気遣うように現状と予想を三人が口にした。
その発言に、
「すまんが状況が状況だ。休憩は無しに先を急ぐぞ」
ヴェスが真っ先に指示を飛ばし、足早にホールを抜けシャフトへと入っていく。
それに続く様に俺達はその先へと進む。
しかし、
「やけに静かだし、魔物の気配が無い……グラン何か感じるか?」
俺は違和感から隣のグランへと問いかける。
しかし俺の問いかけに、
「俺は何にも感じないぜ。 まぁ先行した班が居たんだし片付けたんじゃね?」
楽観的というか、当たり前だろ、そんな感じを出した回答が帰ってきた。
俺はその回答に、
俺の考えすぎかな? まぁさっきのホールでも言ってたし、それに一本道なんだから先行する班が居るんだったらそうだよな。 やっぱり俺の考えすぎか……
心の中で、ぶつくさと小言を言いながらも納得する事にした。
そんな風に俺が釈然としないが納得し、シャフト内を黙って進んでいると、
「丁度魔物も居ないし自己紹介がまだだから名乗っておくよ。俺はシン・レヴォネ。そしてコイツが」
「ティア・ミェセよ。 私達はヴェスやヘスティと同期なの。よろしくね」
簡易だが自己紹介をする二人。
その後、俺達も自己紹介をして、ヴェス達の話やシンとヴェスが今の俺とグランやノエルの様にこの遠征で喧嘩をしていた事、それをヘスティ、ティア、ユーリ、エールがフランやエイル、ハルトの様にしていた事を話しながら先を進んだ。
きっとこの話をしてくれたのは、仮にもこんな状況で不安になっているであろう俺達への配慮だったんだろう。
しかし、そんな気使いも束の間、
「なんじゃこりゃーーーー」
俺は、次のホールに着いたと同時に、目の前に広がる光景に絶叫した。
俺の絶叫に、後方にいたシンとヴェスが俺の前へと勢いよく跳び出し、
「「退避っっつ。退避だぁぁぁぁぁ」」
着地と同時に叫んだ。
その叫びに、全員でシャフトを全力での後退を決断。
なぜかって? そら……
「なんなのよアレは」
「俺が知るかよ」
叫ぶエイルに俺は回答と同時に背を向けて走り始めた。
しかし最後尾に居たへレネーを追い越した時、後方で爆音が響き渡った。
その爆発に全員が立ち止まる。
そして、全員で後退したはずなのに後方で起きた爆音に、俺は嫌な予感を持ちつつも後方に振り返るが、
「なんでスライム種如きに逃げる必要があるんですか? 僕に掛かればこの位簡単に」
「凄いですわノエル様。皆様安心なさい、勇者であるノエル様が全部かき消して下さいましたわ」
等と馬鹿をやらかす二人が目に入ってきた……
そんな馬鹿二人に特大の文句を言いたい、そんな気持ちを抑えながら俺は即座に【迅雷】を発動しノエルまで駆け寄り、速攻で腕を掴み、その場から全速で仲間の位置まで離れた。
そして、グランも俺と同じだったのかアイツがワンテンポ遅れて、へレネーの腕を掴んで戻って来た。
しかし、
「何をするんだい君……」
「なんですの? なんなんですの?」
助けた俺とグランへと文句を言い始めた馬鹿二人だったが、ノエルは背後の状況に気付いたのか、口を押さえて押し黙った。
もう一人の馬鹿は、状況が理解出来ていないのかキョロキョロとしていたが、ノエルの視線を追って後方の状況に気が付いて、無言で尚且つ、全員を置き去りにして一目散にシャフトを逃走していく。
そんな馬鹿みたいな状況に、
「ノエルやっちまったもんはどうでも良いけどな……」
俺は落胆と哀れみに近い感情を抱きつつも、ノエルに声をかけようとしたが状況が状況だったので、言いかけた言葉を破棄して、
「とりあえず逃げるぞぉぉぉぉ」
ノエルの腕を掴んだまま走りだした。
なんで逃げたかって? 俺達の辿り着いたホールにはスライム種の塊であるスライム溜りがホールの三分の一を埋め尽くしていたからだ。もしもそれに気が付かれて襲われれば一瞬で熔ける。それに下手に処理をして拡散分離増殖を加速させればそれこそ手が着けられない代物なんだ。
それなのに、この馬鹿勇者様は事も有ろうに光の弾をスライム塊へと、ぶち込んでくれやがりくださったのだ。
ちなみにコイツの魔法はすこぶるスライムと相性が悪い。
理由としては本来スライムの対処法は熱による蒸発しか方法は無い。光も熱の一種だが温め方の違いだ、炎系魔法の場合魔力を炎という媒体に変化させその熱で物体を過熱するので問題なく蒸発させれるが、アイツの光魔法は魔力を光というエネルギーという形にしているだけで原理上魔力でそのうえ光の加熱は物体に接触した時に波長という単位に変化して分子を振動させて過熱させる、簡単に言えば電子レンジな訳だ。結果的にスライムの表面だけが水蒸気爆破を起しただけで残りの魔力はスライムに吸収され結果……
「なんで……なんで……スライムがあんなに増殖してるんだ……確かに僕は……僕の魔法はあのスライムの塊を吹き飛ばした筈なのになんで……」
そう俺に引きずられながら、自分の仕出かした後方の出来事を口にしつつ、俺へと捨てられた子犬の様な眼差しで尋ねてくる。
そう、この馬鹿様ことノエルが言うように、魔力……もと言い、ノエルが放った強大な魔力を取り込んだスライム塊は、本当に手の付けようが皆無な程に増殖と分裂を繰り返した挙句、再び一つの巨大なスライム塊へと融合をし、餌認定された俺達を追いかけてきているんだよぉ。
縋るようなノエルの眼差しが俺へと突き刺さるなか、俺はこの状況を誰に伝えるでもなく心の中で解説していたが、
「やっちまったもんは仕方ないって言ったろうが、それよりもとっとと逃げるぞ」
いい加減ノエルの視線がウザく感じたので、無理やりノエルを前方に投げ立たせてから背中を押して走るように促した。
そして、ノエルの背中を押しながら決して口には出さないが、
まぁそれでも、お前の行動はスライム以外や対人戦なら、その選択は正しかったんだけどな、本当に相手が悪かったな……
そう心の中でフォローをしておいた。
そして、律儀にもフォローをした直後、一つの疑問が俺の中で湧いた。それは、
なぜこんなにもスライムが集まっているかだ。スライム溜りなんてせいぜい直径1メートルが最大だろう……でもアレはそんな生易しいものじゃなかったし、奥からも続々と押し寄せてる感じだった、もしかして、このダンジョン内、全てのスライムがこの場所を目指して…… でも何故?
そう心の中で呟きながら、この問題の根本的な部分について俺は最後尾を走りながら考えていた。
しかし俺の考えに対する答えは、あの時に出ていたのだと知ることになった。
そう、この……
「あぁぁ神よぉぉぉ。私をこの苦難からお助けくださいぃぃぃ。もう熔けるのは嫌だぁぁぁぁぁぁ」
元凶にして、この問題の根本的な張本人が、そのアレを握り締めて祈っている瞬間を目撃した事で。
そして即座に迅雷を纏い、
「クソ野ろうがぁぁぁぁ」
俺は叫びながらサケルの手元から、その元凶の物をブン取り、
「おい馬鹿ぁぁ。ダンジョンに何てもんを持ち込んでんだよ。あぁぁぁぁぁ」
サケルの横で声を荒げた。
そんな俺が取り乱した様子に気が付いた全員が足を止めずに俺の手に視線を向けて、
「お前……それって……またカァァァァ」
グランがイの一番に切れ、サケルを掴もうとするが後方から迫る恐怖が目に入ったのか、悔しそうにまた逃げる事を選び、そして
「……魔水結晶……大きい……凄くレア物……」
「ヒルトお前よくこの状態でそんレア物を拾った……」
中央に位置するヴェス&エールが自分達の発言の後に顔が真っ青になり、
「っくるなぁぁぁぁぁ」「……それを持って……突っ込んできて」
そう発言しながら、ヴェスは足を速め、エールは後方を指差して突っ込んで来いと、言葉使いと裏腹な表情を向けてきた。
そしてそんなドタバタに、遅れて気が付いたシンが、俺の手元を二度見したあと、
「魔水結晶なんてなんでこんな所にあるんだよ。ヴェスお前かぁ」
何故かヴェスへと怒りを向けていた。
しかし、その怒りは、
「返してくださいよ。自分のお守りなんです。それが何か悪いって言うんですか?」
元凶から発せられた無自覚な言葉によって掻き消されたのか、青い顔で頭を抱え始めた。
そして、なぜ元凶を除く俺達がこんなにも魔水結晶に対して驚くかだが、
魔水結晶とは簡単に言えば自然発生した魔力精製水の凝縮結晶体だ、この結晶自体はダンジョンではありふれた鉱物でスライム種や鉱石生物なんかの餌として有名な物なんだが……今俺の手にあるこれは、純度も大きさも一級品だ……そんな最高級の餌があれば……という事で皆はダンジョンに潜る時は決して持ち込んじゃいけないぞっ! って、俺は心の中で誰に説明を?
なんて心の中で、この可笑しな状態から怒りの余り現実逃避をしていたが、一通りの説明を終えたことで、不意に現実へと帰ってくると、何を思い出したのか、心の底からふつふつと怒りが湧き出て
「ふざけんなぁぁぁ!! 毎度毎度同じ事を繰り返しやがってェェェ」
そう叫ぶことになる。
そして、冒頭の発言に繋がるのだ。
そして俺達がそんな事をしている時、このダンジョンの下層部では
「「「天使乃子守歌」」」
五人の黒色のローブに身を包んだ魔法師が詠唱と共に歌声を響かせ、大きな物が落ちたような地響きと共に砂煙がホール内を包んだ。そして、ローブの魔法師の後方から一人の騎士が前に出てから
「身影幻影」
魔法を唱えると姿を消した。
そして、数分の後にまた姿を現したがその手には一つの宝玉が握られていた。そして
「これを……これで我らの悲願の成就も目前です」
その男は宝玉を魔法師と同じ様なローブに身を包んだ男とも女とも判断付かないような物に丁重に渡し誇らしげに語りかけ、その者の言葉を待っていた。
その者は渡された宝玉を掲げてからまるでワインをスワリングするかの様に確かめてから笑みを浮かべ
「あぁぁぁなんと良い日なんでしょうね之も我手に。あぁっぁそれに此処でアノ忌々しい者共も始末できるのですね。それも之もアノ子の御蔭でしょう。しかし、此処でアノ子も死んでしまうのは惜しいですが致し方有りませんねぇぇ。本当に残念ですねぇぇぇ。肉片の一つでも残って頂ければ良いのですが……」
粘つくような喋りで声を出し、嬉々としているのか悲哀としているのか感情の読めないような声だし作り物のような笑みを浮かべていた。
そして一人の女性が、その者に
「宗主さま。アレが眠っているうちにこの場を離れましょう。そうしなければ我々も危険です。お早……」
そう声をかけていたが、女性の声が途中で途切れドサっという何かの落下音がした。
その音の元には、その女性の身体だけが転がり頭は無い。血の一滴も滴る事無く倒れた身体。
その者は一瞬だけ最高の景色の中にある最悪な汚点を見るような顔をしてから、その倒れた女性の身体を見て、また作り物の様な笑顔に戻り
「あぁぁなんと言うことでしょうか。また一人神の膝元に旅立たれました。あぁぁ、この者が最後に発した言葉を大事にし我々は此処を後にしなくてはなりません。この哀れにも神の啓示を伝えた者に祝福を。フレイズ・ベル・べーグ」
「「「フレイズ・ベル・べーグ」」」
彼の者の言葉に続いてその場にいた黒装束の者たちも手を頭の前で重ねて祈りの言葉を捧げる。そう、何も無かったかのように平然と。
そして、彼の者が聞き取れない言葉を発すると黒装束の者達は消え、その場には頭の無い身体だけが残されていたが、その体はまるで時計の針が急に動き出したかの様にその身体から血を噴出し辺りを血に染めた。
そして、その匂いに吊られてなのか巨大な者が目を覚まし、
「ガァァァァァ」
怒り狂ったかのような雄叫びを轟かせた。
次回からは今の流れとは少しづつですが変わって行きます。




