第1話 俺と神の恩寵と儀式と
一話です、誤字・脱字・文章構成・言い回しが、オカシイ箇所が有れば教えていただけると嬉しいです
※についてはあとがきに
年齢設定をリアルの中世ヨーロッパに近づけ過ぎたので修正入れます。
第二修正3/27
言葉じり調整4/7
[悲惨な乳幼児期から10年]
家の近くに在る大木の木陰。そして穏やかな空気、こんな日は昼寝が最……
「ヒルゥゥトォォォ、何処いきやがったぁあぁぁ」
工房の方から、親父の怒鳴り声が響いてきた。
きっと、頼まれていた仕事からバックレた事がバレたのだろう。
「たく、あのクソ自称『神』なにが恩寵を授けますだよ。何が悲しくて異世界に転生してまで、元の世界同様に鋳造しなきゃいけねえんだよ」
そうあのクソ…… 自称『神』は、よりにもよって鍛冶師の家に転生させたのだ。
しかもこの世界の武器は基本鋳物で削り出しの武器が主流なんだ。
別に金属加工が嫌いな訳ではないのだが……鋳物作業というのが、元の世界での職業と同じという事で、何の面白味が無くて嫌なんだ。
ただし一つだけ違う事が有った。それは魔力強化の概念と、それに伴う素材による魔力伝達と強度変化である。
元の世界で例えるなら導電率が近いだろう。
この世界で一般的な武器の素材としては鉄や青銅、白銅等の銅合金に魔石を混ぜた魔鉄や魔銅合金と呼ばれる合金がメインのようで、その合金も魔石の純度や品質よって、刃物や武器の出来が左右されるようだ。
また、その他にもこの世界には竜の牙や鱗を代表に魔物の素材を混ぜ込んで作ったり、この世界特有の鉱石等も存在しているようで、RPGに登場するような伝説の金属まである。
まぁしかしだ、こんな王都から離れた辺境の町で、選りにも選って町の外れも外れに位置する、しがない鍛冶屋で作っている物なんて、もっぱら鉄や銅合金に低品質の魔石を混ぜて作る量産型の魔銅もしくは魔鉄の剣か、ただの鉄包丁位の物だ……。
俺は自称『神』に文句を言いながらも、親父にバレない内に逃げるための準備に、上体を起き上がらせ伸びをする。
しかし、背後に大きな影が伸び、そして同時に振り下ろされる鋼鉄のような拳骨。
「げふぅぅぅ」
頭部から走った激痛に無様な声を上げ、涙目になりながら、恐る恐る怒気を発する影の方へと振り向いた。
「ヒルトォォォ、こんな所でサボってやがったなぁ。儀式用の短剣受注で忙しいんだとっとと手伝え」
親父が声を上げた直後に逃げようとするも、親父に捕まり、襟首を掴まれ引きずられるように工房へ連れて行かれた。
そして、工房に着いた時の親父の顔は、キレたオッサンの顔ではなく一人の子の親として鍛冶師としての顔がそこにあった。
「ヒルトも明後日には教会で儀式を受けるんだ、どんな結果で有ってもお前が一人前の〔大人〕として生きて行ける様にならなきゃならん。だからな……」
親父の話している顔が少し寂しげに見え、そして言いかけた「だから」の続きを気にしていると、
「タング、ヒルト、そろそろご飯ですよ」
手に持ったバスケットを挙げながら、母さんが俺と親父の名前を呼び、いつもの笑顔でこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
「クリス、もうそんな時間なのか? ヒルト、お前を捜していたらもう半日すぎてしまったじゃないか」
そう、母さんへ、話しかけていた親父の顔はいつの間にか元の表情へと戻っていた。
そうして、親父は母さんからバスケットを受け取り、母さんに俺がサボっていた事や今日は何時位に作業が終わるかを話しはじめた。
母さんは、俺がサボっていると聞いた時は、アラアラという表情を浮かべながらも[ダメよ。でもまだ子供なんだから仕方ないわよ]等と俺の頭を撫でながら親父と話していた。
俺はその光景に、居心地の良さを感じるていると本当に幸せな気分になる。
しかし、それと同時に転生前の家族の事を思い出すと少し切ない気持ちにもなってくる。
しかし、そんな複雑な想いは、母さんの昼飯の味で吹き飛んでいた。
そして、昼ごはんを食べ、午後からはサボる事も出来ずに、夕方まで儀式用の短剣の鋳込みと削り出しを親父と共に作業をすることになった。
そして、作業も一段落した時。
「予定より早く終わったな。ヒルトは先に帰って母さんの手伝いをしてあげてくれないか? 父さんは少し片付けをしてから帰るから」
額を手で拭いながら俺に、今日の作業が終わりだと声を掛けてきた。
俺は、拭った事で額が真っ黒になっている親父を見ながら、
「えー、帰っても手伝いって人使い荒くない?」
そう、ダルそうに返事をした。
しかし、親父は俺の返事を聞くと、笑顔で握り拳を作りこちらを向く。
そんな無言の威圧に俺は、潔く「ハイ」と答えて工房から家に帰って手伝うことにした。
工房から家までは直ぐである。正直歩いても数十秒だが、この家では昼はお弁当を工房と家の間にある庭で食べる事が日常になっている不思議はさて置き。
玄関を開けると料理の良い匂いが鼻をくすぐった。
その匂いから今日はホウキン※とトマトのスープかな? なんて考えながら、
「母さん只今、今日は早く終わったから何か手伝うよ」
玄関から声を掛ける。
すると、
「お疲れさまヒルト。ありがとう、でも先ずは手を洗って服を着替えてきなさい」
タオルで手を拭きながら母さんは何時ものように出迎えに来てくれた。
そして、俺は促されるままに手を洗い、自室で部屋着に着替えてから台所へと向かった。
台所へと到着すると、母さんがスープを皿へ盛り付けをしていた。
それを見た俺は、
「母さん、テーブルに食器とご飯運んでおくね」
率先した素振りをしながら食器とパンの入ったバスケットをテーブルへと運び始める。
そんな俺に、
「ありがとう、今晩はヒルトの好きなスープだからね」
俺が元の世界の癖で、ご飯と発言した事を華麗にスールしながらスープに最後の盛り付けをしていた。
俺はその言葉に、
やっぱり当たりだ。今晩はとホウキンとトマトの香草スープ。これが美味しいんだ。
まぁ欲を言えばアピスカウ※の肉かアルミラージ※の肉の方が好きなんだけどな。
そんな思いに耽りながら、テーブルにパンとスープ、そしてサラダを並び終えた。
そして、並べ終わったと同時に玄関の扉の音が鳴った。
「帰ったぞ、美味そうな匂いだな」
いつもの様に親父がリビングに入ってきて椅子に腰掛けようとしてた。
その時、母さんの方から銀色の物体が親父に向かって飛んで行くのが見えた。
ビーンなんて振動音立てながら、その銀色の物体はテーブルに突き刺さり、飛翔した物体がフォークであると確認し、同時に俺とタングは飛翔元であるクリスの顔を見た。
そこには、黒いオーラを纏った母クリスが笑顔で、
「タングさん、おかえりなさい。ご飯の前にする事があると思うのですけど……あらなんでフォークがそんな所にあるのかしらね? ウふふゥ」
そう言い放つ。
そんな、クリスの言葉に若干引きつる俺と、焦ったように行動するタング。その姿には父親の威厳など存在していなかった。
そんな一連の流れの後、家族でテーブルを囲み夜食事が始まる。もちろんタングのフォークは突き刺さった物を引っこ抜いて使うことになるのは必然である。
そして、食事も終わりかけた時、
「そういえば明後日は教会で儀式でしょ? 明日、ヒルトが配達が終わった後は私と一緒に準備しましょうね」
「そうだな工房の方も一段落しているからな。明日はクリスと準備をしながら、ゆっくり過ごせば良いんじゃないか」
思い出したかの様に母さんが言い、親父がそれに同調するように話す。
その後、両親と明日の事等を話しその日は就寝した。
そして翌日、短剣を発注者の家に配達する。
あたり前だが、その家々には俺と同じ様に儀式を受ける子供達がいて、明日への不安や希望に満ちた表情が有った。配達自体は全部で30件ほどだ。
30件程の配達を三時間ほどで終え、その後、クリスと一緒に儀式に必要な衣装などの支度し、俺は明日への期待の中、自室でゆったり過ごした。
その間、下の台所では母さんが何か忙しなく料理の仕度をしていた。
その後、夕食の時間になると、食卓にはアルミラージの丸焼きが用意されていた。
この料理は儀式の前夜に食べる風習があり、子供の幸せや、逆境を乗り越える、そんな意味合いで振舞う料理だとクリスから説明された。
そんな料理の話や、明日でもう大人だな等を談笑しながら楽しい食事の時間を過ごし、食器の片付けを終え、リビングの椅子に座っていると。
「ヒルト。明日の儀式用の短剣だ」
不器用でそして少し照れたそんな感じでタングは俺に短剣を渡してきた。
その短刀は他の物とは変わらないけど、綺麗に何の歪みもなく鏡面に磨き上げられていた。そして心なしか金属色が濃く感じた。
中身は30手前のオッサンだが凄く嬉しかった。本当に童心に返って肉体相応の喜びがこみ上げてテンションが上がり、
「ありがとう、親父、すげーきれーだ」
上がったテンションのまま発していた。
俺の言葉を聞きながら、はにかむ表情のタングだったが、大きく深呼吸をし、その後、父親の顔になると、じっとこちらを見据え、
「明日でお前が進める道が決まる。どんな結果だったとしても、お前なら大丈夫だと信じている。だから胸張って受けて来い」
胸を軽く叩きながらタングが言い、その後、クリスから優しく俺を抱きしめられた。
俺は恥ずかしくなって、今日は寝るよと言いながら自室に駆け上がった。
その時の俺の顔は喜んでいたのだろう、両親は微笑んでいた。そして俺は渡された短剣を握りながら就寝した。
[そして儀式当日]
両親に送り出され教会前の広場に向かった。その道中で幼馴染であり悪友の、
グラン(町の兵士の息子)ムーラ(酒場の息子)シオン(農家の息子)フラン(行商人の息子)の4人と合流し、
俺は、きっとスゲー〔魔法適正〕とか〔スキル〕がでるんだぜ。
なんて、友達と夢のような事を言い合いながら歩いていると、昔の小学生時代なんかを思い出す。
なんて思い出に浸りながら広場へと歩いた。
そして、広場へと辿り着くと、そこには今日儀式を受ける子供達が集まっていた。
皆トガ※姿に短剣を持ち、広場で順番に並んでいた。総勢50人位だろうか、町の大きさ的には多い方だろう。
そして、全員の表情は希望の顔とは裏腹に不安が有るのか、落ち着かない様子の中、儀式をまっていた。しかし、そんな雰囲気を割るように鐘の音が広場へと鳴り響き、その音と共に司祭とシスターが教会の扉から姿を現し。
「皆さんこれより、恩寵を授かる儀式を始めます。名前を呼ばれた子は教会の中へ」
司祭の言葉から儀式が始まった。
一人一人名前が呼ばれ教会の中に入って行く。その後、出てきた子供は、全員涙目で出てくる。
その涙目も、明るく笑ながらも涙目、只々泣く子、絶望に打ちひしがれた様な顔で泣いている子、こんなもんかみたいな感じの奴、表情は様々だった。
そして、順番が来たのか、俺の名前をシスターが呼んだ。
教会の中には青白く光る魔法陣が有り、その前には短剣を刺す為の凹みを持つ台が有る。司祭はその横で資料の束を持ち、こちらを見て魔法陣へと来るように合図をする。俺が魔法陣の中央へと進むと、司祭から。
「ヒルト。そなたの血を捧げ『神』からの恩寵を賜る試験に挑みなさい」
俺は、司祭の指示に従いながら短刀で指を斬り、滲み出た血を短刀の峰に塗り、台に短刀を差し込んで、片膝を突き祈りを捧げるポーズをとる。
突如、
「がぁぁはぁぁぁぁ」
背中に焼ける様な激痛と、体には膨張するような激痛が走る。
悶える様な声を吐きながら、祈りのポーズを保てずにうつ伏せで倒れこみ、痛みに耐えた。
これが出てくる子供が全員涙目な原因。それと、10歳から儀式を受ける理由だ。
その痛みの理由は、恩寵を受け取り発現するスキルや魔力などが体に適合するさいに起きる現象で、簡単に言えば成長痛を凝縮した物だ。
そして、背中への焼きつく痛みは、ステータス魔法模様が背中に出現するさいに背を焼くからである。
また痛みは一過性で、疼くことはなく徐々に引いていき、視界にステータス画面のような物が目に浮かんだ。
ステータス画面のような物には、
魔力適正
[近]
魔力量
[特]
発現魔法
[炎][雷電][魔力的強化]
発現スキル
[聖剣][剣輝][付与向上][親和性増大][修練短縮][疲労軽減][行動補助]
そう表記されていた。
司祭は、俺の背中を見ながら資料と照らし合わせ、
「うぉおおこれは……」
感嘆を溢す。
しかし、間抜けな声だ。
だがそのような声を上げるには理由がある。
この世界において、ステータスとは分類分けされる指標でも有るからだ。
大まかに説明すると、
魔力適正については、[近]<[中]<[遠]と上位へとランク付けされ、
[近] 体の周囲に発するか、体に纏うようにしか使用できない。又は、武器や道具に纏う程度しか魔法を発現させられない
[中] 自身を中心に、4~10m程の距離まで魔法を発現させたり飛ばす事が出来る。[近]と同じ様な使い方も出来る。距離に関しては、魔力量に比例して伸びていくが、幾ら魔力量が多くても10m以上伸びる事はない。
[遠] 自身を中心に、10m以上魔法を発現させたり飛ばす事が出来る。[近][中]と同じ様な使い方も出来る。距離に関しては、魔力量に比例して伸びていき、本人次第ではあるが視認範囲内全域まで、魔法を行使する事ができる。
魔力量についても、同じ様に[無][小][中][大][特]の順でランク付けされる。
[無][小]に関しては一般生活には支障は無いが、どんなに高いランクの発現魔法が発現したとしても使えないので低ランクに分類されてしまう事が普通だ。
発現魔法に関しては、A B C D そして、無しの順で分けられている。
A 光 闇 癒復 重力 神聖
B 雷電 氷水 嵐 豪炎 金剛 治癒
C 炎 水 風 電 土 回復 強化 etc
D 火 無系統 砂 静電 微動 微集 微と付く物全て etc
等、多岐に亘るのだが上級ランクは限られている。
発現スキルに関しては、全員必ず何らかのスキルが発現する。
そして、そのスキルは、親からの遺伝的要素に大きく存在しており、一定のスキルは統合され強く発現する。
しかし、突然変異や突発的な発現は基本的に起きず、特殊な例で有るため、王族や貴族・特権階級には、高位のスキル持ち、多数スキル持ちが自ずと多くなる。
一般階級は、低位スキルで1~2個持ちが大半。その中での婚姻しか出来ないのだから一般階級で、3個以上や高位スキル持ちは、極稀な存在だ。
まぁ、そのスキル自体、一概に順位が有る訳では無く曖昧なものではあるが、今回の俺の様に、特殊な[聖剣][剣輝]の他にも、[聖]と付くスキルや、[勇者][神憑依][模倣専技][結界][○○紋章]等の、発現が稀なものはランクが高いようである。
因みに、一般的なスキルとして[○○補助][夜目][○○耐久][○○微向上]等は、低ランクスキルに分類されるらしい。
このステータスを総合評価して、S・A・B・C・Dでランク付けされていくのだが、そのランク次第で、学校・職業・収入が全て決まってしまう。
この学歴や、職業、収入がランクで左右されてしまう要因は、S・A・Bの者は、15歳になると一度王立学校に集められ、適性に合わせた学部で2年間の勉学修練を受けるからである。
そして集められた子供達は、卒業後、最高等教育機関への進学し所謂キャリアコースの権利を得て、S等級や上位のA等級の者は、一級衛士・司書・司祭等の上級職業に就く事が出来るようになる。
しかし、一部能力的に低いA等級やB等級の者は、高等教育機関への進学許可が下りずに、二級衛士・平ギルド職員・探索者などに就職可能という、能力ランク別で将来が決定してしまうのである。
一部例外的にC等級等が就く、冒険者や傭兵と呼ばれるフリーランスで活動する者も一定数居たり、例外的にEランクであっても、勉学優秀者・技術的に優れた者などで、収入や職業が良い人も、存在はするが、どちらも極少数である。
そんな世知辛い理由な訳で、俺はランクが気になり始める。
暫くの沈黙が続くが、唐突に司祭が口を開き、
「ふっふむ、ヒルトそなたはAランクである。『神』に愛され祝福された者であるようだな。後日、国より手紙が届く」
何か不快感の有る口調で言葉吐き捨てた。
その直後、司祭からステータスが書かれた羊皮紙を手渡され、感傷に浸る間もなく立ち去るように促され、教会から出だされた。
しかし広場には、先に儀式を終えた悪友が待ってくれており、悪友達は俺に近付き、
「ヒルト、お前はどうだったよ。俺なんてB等級だぜ、父ちゃんに自慢してやるんだ。そして父ちゃんを超えるぜ」
最初に声を掛けてくれたのはグランだった。その後、ムーラとシオンも続くように、
「僕はC等級だったよ、家業を継ぐ事になると思うけどね」
「あっ俺もな、C等級だったよ」
自分達の結果を口々に言った後。
三人は、お前はどうなんだよ的な感じで、お前は? お前は? なんて言って来るもんだから、正直言うか迷って居たが、
「俺は、A等級だよ……」
少し気まずい、本当に気まずい。
なんて心の中で思いながら三人の反応を待っていると三人は、
「「「ああぁぁ、やっぱり」」」
そんな反応で肩透かしを食らった。
その後、俺が何故納得したのかと反応をかえしたが、
「だってなぁ?」
「ああ、分かってた事だしな」
「うん、ヒルトだし」
そんな感じの返事だけをして、明確な答えを言わない。
ただ、その間フランがずっと黙っているのが気になる。
沈黙の理由は、みんな察しているんだろうが、どうして良いか解らず微妙な雰囲気に包まれ始めたが、
「そっそうだ、儀式で痛すぎて疲れてるし今日は皆家に帰ろうよ」
そこで俺が気を利かして? 言うと、皆賛同したかのように、そうだな的な感じで自宅に帰る事にした。
終始帰り道は、微妙な空気だけが漂っている事実は変らなかった。
そんな微妙な雰囲気を引きずったまま家へと着き、扉を開けると。
クリスが扉の開く音を聞き、俺の言葉を聞く前に駆け寄ってきてくれ。
「お帰りなさい、痛みは大丈夫だった? 結果は、タングと一緒に聞くからね? ほらほらおいで」
ぱたぱたと、忙しなく身振り手振りしながらも、優しく声を掛けてくれた。
その事で引きずっていた気持ちは消え、心が軽くなった。
それにしても、相変わらずこの人は過保護と言うか、優し過ぎるというか。普段の何も無い時は、口喧しく、怒ると怖く、旦那を尻に敷いているけど何か有った時等はいち早く気付き心配して。まるで、自分の事のように一緒に悲しんだり、一喜一憂してくれる。親という字は木の上に立って見るなんて言うが、本当に立って見てるんじゃないのかと思ってしまう。
この思いからも分かるが、母親とは、どの世界でも一般的には優しく温かいという事が身にしみてわかる。
まぁ、今の肉体的年齢の時は、ウザかったり、構わないで欲しくて、そんな優しさには気付けずに居たり、苛立ったりしていた。
でも中身が、20代後半で二度目の人生だと、懐かしかったり気付く事ができて素直になれる。
そう思いながら母さんを見ていると、優しく微笑むと、何時の間にか背後に回られ、背中を押されながらリビングにつれて行かれた。
俺がリビングに入るとタングが、俺は何も心配していないぞと言わんばかりに手を組んで椅子に座っているが、後ろからクスクスと笑うクリスの声えが聞こえた事で察する。
タングも、クリスの様子を察したのか表情に出ないように努めていたが、少し慌てた? 照れた? もしくは恥ずかしかったのか? 咳払いをし。
「そんな所でボーっとしてないで、さっさと椅子に座ったらどうだ? 疲れてるだろうしな」
不器用そうに照れた表情を隠しながら席に座るように促した。
そして、クリスと俺が椅子に座ると。
「様子を見ると、痛みには耐えれたみたいだな、痛みで泣きながら帰って来るかと心配していたぞ」
なんて、言って豪快に笑って見せているが、それでも一瞬、俺の手に有る羊皮紙へ視線が行って居たのを俺は見逃さなかった。
やはり、結果が気にはなっているのが解る。
それでも、決して口には出さず不器用だけど見守る様な優しさを見せ、俺から言うのを待ってくれている。
父親と言うのも、どの世界でも変わらない。子供と一緒になってバカをして怒られたり、子供を叱るにしても、言葉足らずで1言ったら10解れみたいな言い方しか出来なく、最後には感情的になって、口ではもう知らんや、好きにしろなんていってしまう。
でもそれを、後で後悔して嫁に愚痴のように話して、後で反省していたり、落ち込んだりしながも、それでも絶対に見守ってくれている。
本当になんでこんなに不器用なんだろうな。
それにしても、この家族は本当に温かい。二度目だから気付ける事が、いっぱい有るからなのかもしれないけど、それでも、心が温かくなる。
しかし、その思に反してなぜか、胸がギュっと締め付けられる感じがして、涙目になってしまった。
それを見て、慌てる両親の。
その反応に俺は、
「違う違う」
なんて全力で首を振った。
でも、何が違うと言うのだろう? 自分でも何を否定したのか分からなかった。
そんな事もあったが、俺はテーブルの上に羊皮紙を出そうとすと、まるで、高校や大学受験の結果発表の書類を見るかのように固唾を飲む二人。
その、羊皮紙をみた二人はAランクだと解ると喜んでいたが、内容を読んで少し黙って少し難しい顔をして互いに見合わせたが、直ぐにタングが、満面の笑みを浮かべて、
「ヒルト良かったな、これからが楽しみだ。そして、喜べ。明日からは俺と剣の稽古をしよう」
「そうね、後は魔法の講師さんも探さないといけないわね。それと今日は、ご馳走を用意しないといけないわね。お父さんと、買い物に行かなくちゃ。ヒルトは儀式で疲れているから部屋で少し休みなさい」
まるで劇をするような喋り方をする二人は、わたわたと慌しく動き始めた。
俺はその様子から、王立とは言え、金は掛かるしそれの相談なんだろう。
そう察して、大人しく自分の部屋で休むことにした。
それにしても、親父が剣の稽古をつけるって何をふざけた事を言ってんだよ。こんな辺鄙の、鍛冶屋のオヤジが稽古を付けれる程の剣技を持っている訳が無いよな。
むしろ普段から考えれば、母さんの方が上じゃないのか?フォークがテーブルに刺さる程の勢いで投げれるんだし。あと、グランの叔父さんにグランと一緒に稽古付けてもらう方が、現実的だろう。付くならもう少しマシな嘘を付けばいいのに。
等とこの日は考えていた。
そして、余談になるが
後日知ったが、この司祭の息子も儀式に参加しており、特別なスキルや魔法の発現も無いがAランク認定されていたらしい。
ホントにゲスだ、何が聖職者だよ。
と、あの時の、帰り道を思いだして憤慨した。
本当に、何処の世界にも特権階級等による賄賂・口利きなんて言う、汚いやり口は横行しているものだ。それで、一般階級が煮え湯を飲まされるのには変わりないようで、異世界なのに夢も希望もありゃしない。
ホウキン※巨大な猪のような魔物で基本的に動きがユックリだったり怒って突進してきても一直線なので罠に嵌め易い。此の世界では一般的な魔物で有り食用肉として狩られている、数も多く害獣のようなもの
アピスカウ※角が発達していて獰猛な牛の魔物 ホウキンと同じ様に一般的で食用で狩られているがホウキンの様に狩りやすい生態ではなく危険が伴うためホウキンよりお高めで肉は流通している
アルミラージ※一角兎で危険度も対して高くないただ臆病で逃げ足が速く直ぐに隠れる習性が有るがホウキンと同程度からほんの少しお高めである
トガ※ 古代ローマの上着の名称。 形状は、一枚の長い布とも、八角形の布を半分に切ったような形だったのではないかという説もあり、わりと解っていない。 着方は、肩や腰に巻くように着る物らしい。
正装として使用されていた物。




