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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
19/49

第17話 勇者と折れた剣と本性と

一話丸まる戦闘で書いてみました。初めてなので所々読み難い点が有るかも知れません。むしろ、癖が出ているのでイツモと少し感じが違うと感じるかも知れません。 改良点など有りましたら教えていただけると幸いです。

   『時は一回戦』


 フランは同じ魔法師課同士の戦いで【パナケイア】を使いこなし、周囲の人達を驚かせた。

 当然、相手選手まぁ、エリック・ヴァン・ゼルト なんだけどな。

 その多機能武装に振り回された挙句に、フランの重力魔法に捕まり這い(つくば)っている所にチャクラムでトドメとまぁ可哀想なものだった。

 感想は、俺も魔法だけでフランの相手をすれば同じ末路だろう。


 次にノエルだが、コイツは言うまでもなく高出力の光魔法で一撃。その度に闘技場に亀裂が入り補修班が修復を繰り返していた。


  『そんなこんなで三回戦での出来事』


 俺が憂鬱そうなグランに気を取られている時、銅鑼の音と同時に爆発音と魔法障壁を突き抜ける衝撃が俺達に伝わってきた。

 ノエルに対して、もう少し考えろと思いながら闘技場を見るとそこにあった筈の闘技場は見事に砕け原型を留めていなかった。修復不可能な状態。相手選手がこの状況でも無傷な事には驚いたが……この後の試合どうすんだよ?

 と思いながら呆れていた。



 『そして、そんな事が起きた結果』


 俺とノエルの試合は校庭で行なう事になった。 

 周囲は何時もなら広々とした訓練用の平らな広場なのだが今のここは、土魔法で周囲を岩塊で囲まれた砦の中に居る様だった。


 そんなフィールドを試合用の魔法が囲み闘技場より一回り広い戦闘空間が出来上がった。


 その、俺とノエルために用意された、特設会場の中央で、互いに向き合うと


「ようやく君と戦えるね。本当に楽しみだったんだよ、君と戦う事がね」


 またあの胡散臭い笑顔を俺に向けて、話しかけてくるノエルだったが、

 また俺の剣へと視線が動く。


 いい加減あの視線の意味が知りたくて、


「俺と戦うのが楽しみだったんじゃなくて、この剣と戦うのが楽しみだったの間違いだろ?」


 と、俺は嫌味交じりに剣を前に出して告げる。


 しかし、ノエルは、あの胡散臭い笑顔が少しも崩れる事無く


「そんな事は無いよ。純粋に君と戦う事が楽しみだったんだよ? まぁでも確かにその剣に興味がある事は確かかな」


 本心か? それとも俺の疑心暗鬼か? まぁグダグダ悩んでてもしかたないか。

 等と、内心いろいろ考えたが答えが出なかったので、


「そっか、疑って悪かったな」


 戦ってみれば分かる事だと思い、言葉の後に鞘に収めた剣を腰に挿し直して[電磁加速抜刀レールガン]の体勢になる。


「別に謝る事じゃないよ」


 ノエルは俺が構えたのを見て、この大会で初めて剣を抜いて構えた。

 正直その構えはアニメ持ちとでも言うのだろうか? 大型のグレートソードを片手で持ち、左手を前に出して右足を少し引いた構えだ。意図が分からない。


 そんな状況で、お互いに向き合うこと数秒、開始の銅鑼が鳴る。


「【光子力砲(フォトンレイ)】]


 開始の銅鑼の音と同時にノエルが先制とばかりに光の魔法を放ち、着弾点からは大きな白煙が上がる。


 白煙を後方に置き去りにして、[電磁加速抜刀レールガン]の体勢のまま【迅雷】と地面の反発を利用した跳躍で右斜めに飛び出した。

 一つの動作でノエルとの距離を詰めた俺は、[電磁加速抜刀レールガン]を放つ。

 ノエルは予想していたのか、あの胡散臭い笑顔を崩す事無く剣で受ける。 

 俺とノエルは目を合わせてから、後方に飛び距離を取り構え直す。


  『一方会場では』


「開幕からなんちゅう攻防だぁぁぁ。俺の目には何が起きたのかわからないが、白煙が上がったと思ったら剣を交えている。この二人には俺達の常識なんて通用しないのかぁぁぁ?」


 一連の流れを実況する先輩。


 その実況の後に大きなどよめきが会場で上がった。

 会場中央には魔法で作られたスクリーン内に俺達の姿が鮮明に映されていて、それを撮影する鳥型の使い魔が俺達の上空をホバリングしている。

 これは俺とノエルの戦闘が危険と判断された結果で(いく)らフィールドを覆う魔法があるとはいえ、その魔法壁を切り裂くノエルに、高速に動き回る俺のとの戦いだ。流れ弾? 流れ魔法? で何時(いつ)観客席を襲うとも限らないと判断されたからだ。

 正直最初からそれで行なえと思うだろうが、この魔法自体、上級魔法師6人掛かりで維持している代物なために戦争時ですら長時間の使用をしない魔法だ。

 まぁ、こんな魔法があるなら使い魔の潰しあいになるからそもそもだが。


 そんな会場の盛り上がりに反して、俺達2人は沈黙の間が出来る。


 しかし、それを最初に崩すのはノエルだ。


「やっぱり、お互いに手の内が分かってる最初はこうなるよね。それにしても、光を避けるなんて本当に凄いねヒルト君は。でも次は避けれるかな? [光子散弾曲射(フォトンアローレイ)]」


 胡散臭い笑顔は健在のまま再び魔法を放つノエル。


「ちっ」


 舌打ちと同時に反発で後方に飛び後方の壁を利用して再び跳躍するが、ノエルの魔法は一本の太い光線から細い光線へと拡散して追尾してくる。


 さっきの一撃なら避けれるかギリだったが、遅い


 このホーミング魔法に対して俺の感想だ。

 しかし、厄介な事に追尾性能が高いのか、何度跳躍を繰り返しても付きまとってくる。


「やっぱり君なら避けるよね? でもまだまだだよ」


 そう言うと、光魔法それも同じホーミング魔法を連射してくる。


 こうなると厄介で、壁や地面を利用して法弾を打ち消しても、追加の法弾が追加される無限ループ。


 それでも、打開をとらないまま俺は壁や地面を迅雷で蹴り続けていると、


「おおっと、ヒルト選手。ノエル選手の魔法に成す術無く逃げまくる。しかし、俺達の目には唯々黄色と白の線が描く線しか見えねぇぇぇぜ。異次元、異次元の試合です。参考にもなりません」


 会場ではそんな実況と固唾を飲んで見守る観客生徒。 


 しかし、


「派手にやりやがって。俺より目立つとか美味しすぎんだろ」


 グランはウズウズした様子で愚痴る。


「本当に綺麗だよね。ヒルト君きっと楽しんでやってそうだよね」


 グランの愚痴にフランがそう返す。


 この2人は楽しんでいるように俺の事を見ているようだが、


「ウザッたくなって来たな流石に」


 俺は未だに魔力切れを起さずに、魔法を連射してくるノエルに驚きつつも後方を追尾する法弾が増えていく事を確認して声をだす。


「マジックフロー狙いみたいだけど、君の体の方が先に限界が来るんじゃないかな?」


 ノエルが挑発と言わんばかりにあの顔を向けて言ってくる。


 内心、

 黙ってろよクソが。そう言うなら、そろそろ手の内を見せろってんだ。

 と声に出して言ってやろうとも思ったが、負け犬の遠吠えにしかならないので無視していると、


「人の忠告は聞く方が良いと思うけどな? まぁ聞いてくれなかった君が悪いんだからね? [光子の舞踏会(フォトンロンド)]」


 ノエルが魔法を唱えると俺を追尾していた法弾が俺の逃げ場所を無くすように岩壁周囲に配置される。

 それは尋常じゃない光の点が集まり一本の線に見えて周囲を覆う輪の様に見える 


 仕方なく俺は地面に脚止片手を地面に付くと


「ようやく脚を止めてくれたみたいだけど、もう遅いよ。 [舞踏の終幕(フィナーレ)]」


 そう言うと俺に向かって四方八方から法弾が襲う。 

 その数は尋常じゃない、本当に光の輪が俺に向けて絞られるように迫る。逃げ場は上方のみ。

 そう判断して俺は瞬時に上空に飛び上がる。


 しかし


「無駄な事はそれぐらいにしてくれないかな? 遅いって言ったじゃないか」


 光の輪は俺に向かって上ってくる。


 だが


「この技の持ち主に出来て、俺に出来ないはずが有るかよぉぉぉぉ」


 俺は体を捻り下方を向きながら手に握った小石を脚元に投げ、それを[迅雷]の集中させた脚で蹴り、反動で下降する。

 絞られ迫る光の輪の真ん中をギリギリ通りぬけながらノエルの頭上から剣を振るう。


「本当に凄いね君は。でも遅いって言ってるじゃないか」


 俺の剣を受けようと剣を上方に構えてながら言うノエル。


 後方からは俺を追尾して輪から一筋の極太な光線になり降り落ちる光が迫るが、


「お前が食らっとけや」


 ノエルの構える剣を緩衝材代わりに使い、切っ先を滑らせて時間を稼いぎつつ、地面に着地、と同時に地面を蹴って後方に飛ぶ。 

 ギリギリまで迫った光の滝は方向を変えれずにノエルに降り注ぐ。

 そして地面に激突した光の束は巨大な衝撃と土煙を上げて消失する。


「っっっなっなっまさか、まさかの方法でぇぇあの絶望的な魔法から逆転の一撃ぃぃぃぃぃ。自滅、自滅させたぁぁぁ。なんという幕切れかぁぁぁ」


 先輩の実況の後、ノエルの勝ちを疑わなかった生徒から、

「勇者さまが」「ノエル様ぁぁぁ」「ウソヨォォォあんな下卑た平民にノエル様が」

 等々声が上がる。


 しかし、


「おぉぉぉと。ヒルト選手あの状況なのに構えを解かない。むしろ追撃のために必殺の体勢に入ったぁぁぁぁ。鬼畜、なんと言う鬼畜。勝負は決まっているのにまだ止めを刺そうと言うのかぁぁぁ」


 その実況の通り俺は[電磁加速抜刀レールガン]の体勢になり、未だに収まらない砂煙に殺気を当て続ける。


 それでも


「あはは、本当に君には驚かされるよ。でも本当に、そろそろ決めさせてくれないかな? 流石にここまでされちゃうと僕の実力が疑われちゃうんだけどな?」


 少し苛立ち混じりの声だが人をおちょくる様な物言いと、軽い声を出しながら砂煙からノエルが飛び出す。

 服や防具には少し汚れたような跡はあるがダメージらしいダメージは無い。


「まぁ、自滅してくれる様な奴じゃないわな……」


 俺の予想より、何も無い事に苦虫を噛み潰した顔をしながら独り言を言う。


「これはどういう事だァァァ。自滅と思われたノエル選手だが、無事です。本当に何事も無かったかのように服の埃を叩く。これはとんでもない試合にだぁぁぁ。この二人が準決勝とかうっそだろおおおお」


 先輩はなおも実況する。


 その実況で悲嘆に暮れていた者たちは歓喜の声を上げて俺をディスる。

 まぁ聞こえないからどうでも良いけどな。


「お前、あの魔法の威力で無傷とか本当にふざけてるよな?」


 カマをかけてみる。

 正直に話すとは思わないが、これが防御魔法とかなら攻め手が無い。むしろダメージすら加えられるか判らん。


 そんな俺の焦りを知ってか知らずか、ノエルは満面の笑みを浮かべながら、


「追尾系の魔法だよ? 術者が自分の魔法を操作できないとでも? 当たり前だけど当たる前に拡散させたに決まってるじゃないか」


 そう得意げに語りながら、またカッコ付けたような剣の構え方をしてくる。


「そうかよ。それならまだ……」


 俺は言葉半ばに迅雷での加速からの[電磁加速抜刀レールガン]を放ち、


「勝ち筋は有るってこった!」


 ノエルが俺の剣を受けると同時に言い放つ。


 その言葉を聞いたノエルは、心底呆果てたような笑顔を浮かべて、


「本当に僕の話を聞いてくれないよね。さっきから言ってるけど君の体は、そろそろ限界だよね? 後数分しか持たないような状態だと思うけどそれで僕に勝てるって、本気で言ってるのかい?」


 鍔競り合いの中、俺の状態を解析して解説しながら俺に勝ち道がない事を自慢気に言う。


「御高説どうも。だがな、有るか無いかは――最後までわかるかよっと」


 俺は鍔競り合いにのさなか、ノエルに対して蹴りを入れる。


 その攻撃は簡単に決まり。

 その反動を利用して後方へと一回転しながら後退、その後、再度の突進のために地面を蹴ろうとするが、無理やり飛ぶ方向を変える。


「僕に蹴りを入れるなんて……いい加減にしろよぉぉぉぉぉ」


 ノエルの叫びと共に、俺が地面を蹴った場所が光の刃によって潰されていた。

 もしも、あのまま突っ込んでいたら俺は消し炭だっただろう。


 しかし、俺に蹴られたくらいの事で、ノエルの、あの変貌振りのほうが驚愕だったので、


「おいおい、なんだよ有れ……切れる若者かよ」


 正直な感想を滞空中にこぼし、地面へ脚を付く。


 俺が地面に脚を着くと同時ノエルと目が合い、


「僕に一撃を入れた返礼に、僕の最強の技で君を倒すよ。こんな所で使う気は無かったんだけどね」

 

 再びあの胡散臭い笑顔に戻りながら剣に光を纏わせ、更にその光を延ばしながら天に掲げて


「この[光子(フォトン)勝者(イクス)(キャリバー)でぇぇぇぇ!」


 そんな大仰な技名を叫びながら、剣を頭上から俺に向かって振り下ろす。

 大振りな一撃だけど威力とその射程の長さから、反撃の(すき)なども無く回避するしかないと判断して、躊躇(ちゅうちょ)無く左に避ける。


「キャラ変わりすぎだってマジで」


 俺の居た場所は、また光の塊が鎮座している。

 そして、その余波で後方の岩塊の壁を二つに割れる。


 大振りで二度目は無いと思い、そこにつけ込めると判断。

 俺は攻勢をかけるために、滞空しながら地面を蹴るタイミングを窺うが、


「本当にそろそろ飽きてきたから終わってくれないかなァァァ?」


 剣を横薙ぎに振るうノエル。


 俺に向かって光の刃が伸びて来る。

 その間、闘技場を構成している岩塊も斬り裂きながら迫る光の刃。 

 間に合うかギリギリだったが地面を蹴り反時計回りに、その刃から逃げる。



 そして、一周回った頃に、


「僕の剣から逃げれると思わないでくれよ」


 そう言葉を吐きながら、軽々と闘技場を全てが射程の剣で、横薙ぎ、唐竹、突き、袈裟切りとまるで普通の剣を振るうかの様に振り始める。


 そんな連続攻撃で、避ける事すらキツくなり始めるが。


「本当に、この世界は想像上のファンタジーとは違って夢の無い世界みたいだな……所詮自称『神』か」


 俺は闘技場を一周回る間に気が付いた事があった。

 それは、根元と先の動きにラグがあるという事だ。


 この世界の魔力には粘度がある。それも魔力適正に準じて強く拡散し難くなる。

 それはコイツも同じようで、幾ら光魔法だの言っても光の速度が出る訳ではない理由でもある。それで最初の一撃も追尾魔法も今の一撃も避けれるカラクリだった様だ。

 流石に光速のものを避けれる人間なんて存在しない、今の俺でも現代の銃弾ならギリギリ発射タイミングさえ判れば避けれる。

 つまりそういう事で、コイツの魔法も例外に漏れずこの世界の法則に縛られている。

 そして、その魔法速度は粘度によって初撃以下でしかない。 


 その判断から俺は避けながらノエルから距離を取り、壁際で避ける。

 ラグがあるという事は、ノエルの手元さえ見ていれば次の一撃が何か、どこに振るのか一目瞭然だ。

 それにコイツの戦い方にフェイントなんてものは微塵もなく、純粋な力押しだけ。


 避け続ける事は今なら余裕だ、余裕だが……


「本当に往生際が悪いね。でも、君が何時まで逃げれるか……僕が試してあげるよぉぉぉ」


 そんな事を言いながら剣を振るい続けるノエル。

 あの胡散臭い笑顔は、そこには無く、アレが奴の本性(ほんせい)だろう。


 本当に高慢な奴だよ。でも不味いな、このままだと俺の体が持たない事は明白だ、(いく)ら節約して体への負担を減らしているとはいえ不利だし、攻撃も出来やしない。


 そんな事を思いながら避けていると、


「ヤッべ――」


 ノエルの剣で刻まれた岩塊の一部が音を立てて崩れ始める。


 咄嗟に降り注ぐ岩を避けるが。


「貰ったよ。運が悪かったね、これで僕の勝ちだよ」


 降り注ぐ岩に行く手を阻まれ、更に岩を蹴って避けたとしても上に方向にしか避け道が無い所を、ノエルは上段からの振り下ろしを繰り出している。


 逃げ場は当然無い。


 振り下ろされた光の剣が崩れる岩や砂煙を切り裂くように振り下ろされ、

 俺の居た場所は光の塊によって浸食され、その場に有ったものは全て消え去ってしまう。


 そして、


「あっははは。本当に楽しかったよヒルト君。驚かされる事が多くてつい本気になっちゃったよ。でもそれだけ君が強かったって事だよ」


 自慢気に勝利宣言をするノエル。

 でも、決着が付けば消える筈のフィールド魔法は健在な事で、


「決着は付いたでしょ? 早くこの魔法を解いて……」


()りぃなノエル、勝ったつもりで勝利宣言をしないでくれるか? 俺はまだ負けてねぇんだわ」


 俺がノエルの技で消えていない岩影から、顔を出して声をかけると。


 赤面して、


「何で君がそんな所に居るんだよ。僕の技で君は負けていた筈だ。それとも、ズルでもしたのかな?」


 そんな風に平静を装っているノエル。


「はっ、んな訳ねぇえよ。答えはコイツだよ。コイツで助かった……いやお前の技の御蔭だな」


 俺は脚元に転がる、石ころになった岩塊の一部をノエルの足元に投げる。


 それを疑いながらも拾うノエル。

 そしてその石ころを見て、奥歯を噛み締めて明白(あからさま)な表情を浮かべる。


 そして、俺はそこに、


「そういうこった。切れ味がよすぎてか熱量かは知らねぇけどな、表面が鏡になっていてその断面に魔法が弾かれて俺に届く前に避けれたって事だよ」


 俺はネタバレを自慢する。

 でも、全部は言わない。


 仮説だが魔法と言えども光の特性を有している以上、光と同じ挙動をするという事だろう。つまりは、砂煙で乱反射して威力が弱まり、そこに鏡面状の岩で光が反射した御蔭で、俺に届くまでに時間が掛かり避けれた。という事だ。まぁ仮説だけど、ほぼ正解だろう。


 そうして俺は岩に凭れて休む。

 正直キツイ。流石に反動で休まないと動く気になれないし、休める時に休む。これ、戦いの常識。 


 その姿と自慢気に言われた事で身体をワナワナと震わせてから、剣を持つ手に力を入れる。

 それと同時に又、剣に光が纏われ伸びていく。


「悪運が強いのも大概にして欲しいものだよねぇ……でも、君が勝てない事は変わらないんだよぉぉぉ」


 叫びながら本当に乱雑に剣を振るうノエル。


 頭に血が上ったのか、恥ずかしさの余り狂ったのかは知らんが好機。


「あぁ? さっきまでカッコ付けてた事がそんなに恥ずかしかったか? そらアンだけ自慢気にしてたもんな、そら恥ずかしいよな」


 俺はその乱雑な太刀筋を避けながらノエルを挑発しする。


「馬鹿にっっするなぁぁぁぁ。どうせ君は僕の前には手も足も出ないんだぁぁぁ。口だけで何が出来るんだい? 避けるだけで何が出来るんだよ? もういい加減に当たっちゃえよぉぉぉぉぉ」


 人が変わったと言うより本性が出たのだろ。

 乱雑だった太刀筋はもう、剣撃と呼ぶにはそぐわない、唯々俺を追いかけるだけになる。


 これで誘導は楽だ、後は……


「なら()ってみろよ。俺の限界が来るのが先か、お前が俺にぶった切られるのが先かさぁぁぁ」


 俺は未だに原型を留めている岩塊の前へと剣を誘導し、そこで俺を追いかける剣を飛び越えて脚を止める。


 それを見てか。俺の言葉を聞いてか知らないが、


「良いよ。そんなに消し炭になりたいなら。それに応えてあげるよぉぉぉ」


 嬉々として……いや狂気だろうが、子供が棒切れや傘を振るうように乱舞し始める。

 もうこれは剣術とは呼べもしない。単なる振り回し、これでは幾ら射程や威力が高かろうと無いに等しい。


 被弾しないギリギリの所で俺は最低限の移動と最低限の魔力消費で避け続ける。これなら[迅雷]の発動は一瞬だけですむ。


 何回も何十回も振られる光の棒。


 後方の岩塊がそろそろ崩れる頃。


「何で……何で……何で……当たらない……何で当たらないんだよぉぉぉ。俺の魔法は最強のはず。光なんだぞ。勇者なんだぞ。神に選ばれた勇者なんだぁぁぁぁぁ。お前なんかに……お前なんかに、負けるなんて有り得ないぃぃぃぃ」


 発狂したかの様に、言葉を散らしながら、むちゃくちゃに棒を振るうノエル。あの胡散臭かった笑顔の時と同一人物とは思えない。 


 そうして(しま)いには、岩塊から一つの欠片がこぼれる。

 その欠片が地面に付くと同時にバランスが保てなくなった岩塊は小石や岩の塊となって降り注ぎ、再び砂煙が舞い散る、だが、さっきネタばらしをしたはずなのにお構いなしに振られる剣によって鏡面状に切れた断面がキラキラと光を反射しては消えを繰り返す。


 これだけはしたくはなかった……でも、負けるよりはましだ

 俺はずっと迷っていた事を行動に移す。砂煙の中からワイヤーの付いたナイフを投げ、同時に砂煙を引きながら体術のみで飛び出した。

 投げたナイフはノエルの足元の地面へ刺さる。


 そして、砂煙の中から飛び出した俺を見つけたノエルは。


自棄(やけ)になったのかい? それとも限界がきたのかなぁぁ?」


 嬉々として俺に向けて光の大棒を振り込むが、


 ワイヤーを通して電撃をナイフに流し込むと強烈な電圧に地面が爆ぜ極所的な砂煙が舞い、その砂煙に一瞬だけ光が弱まる。


「それはどうかな? でもまぁ、俺の剣をお前にくれてやるから、お前は負けとけやぁぁぁ」

 

 迅雷を限界まで纏い、弱まった光に剣を翳して進む。弱められた光は俺の剣によって切り裂かれていく。

 磨き上げられた剣は鏡。それに、前の戦闘で水圧洗浄までされている。

 しかし、魔法の光だ圧力はある。徐々に砂煙が晴れるにつれて、その圧力も増していく。

 覚悟は決めてる。ここで行かないと無駄になりかねない。

 そう判断して俺は、地面を強く蹴りぬき、迅雷で光の中を駆ける。徐々に剣が悲鳴にも似た音が鳴り始める

 堪えてくれ、後一歩だけで……


 その俺の思いに応えて剣はノエルの目の前で甲高い声を上げて根元から折れる。


「ザァァンネェエェェだねぇぇ。僕の勝ち……だよ」


 俺の剣の音とは違う金属が割れる音と共にノエルが膝を突いて倒れる。


 倒れたノエルの後ろで、


「はぁ……はぁ……わりぃな俺の勝ちだ。俺の剣を()って行ったんだから、お前の勝ちなのかも知れないけどな」


 息を整えながら肩で息をする。


「決着ぅぅぅぅぅぅ。壮絶な攻防の末に勝利したのはヒルト・レーヴァぁぁぁぁ。最後は折れた剣を捨て、ノエル選手の懐から地面を転がり刺さったナイフを手元に引き寄せての雷撃を込めた後方からの一撃で勝利したぁぁぁぁ。なんともギリギリの勝負、一歩間違えれば剣共々、光に呑まれていただろうぉぉぉ――」


 会場は静けさの後に、我をいち早く取り戻した実況を聞き歓声と悲壮が混じる音が響く。


 俺はその聞こえない大きな振動の中、ナイフを直し地面に転がる折れた柄と剣先を拾い鞘に収めてから、その場を後にする。


 そこで俺の記憶は消える。




 『俺は後頭部に温かな温もりと頭の上で響く音の中目を覚ます』


「――だから、もう大丈夫です。私が責任を持って癒しますから」


 エイルの声か?


「分かったわ、じゃぁ後はよろしくお願いね」


 スクルド先輩か?


 そんな事を思いながら目を開ける俺。

 目の前にはたわわに実った果実……もとい……が有る。


 慌てて起きようとすると。


「起きて早々迷惑かけないで。もう少し寝てなさいよ未だ決勝が残ってるでしょ」


 そう言って俺はエイルに押さえられ再び温かな物の上に頭を置かされる。


「もう良いって。十分回復したし、それに重いだろ?」


 どうにかこの状況から脱したいから声を上げた。

 すると、頭が落下する感覚から固い物に後頭部をぶつける痛みがおきる。


 すぐに


「っってぇぇな、もうちょっと考えろよ。俺は怪我人だぞ」


 と抗議するが


「あら? そうだったかな? もう十分回復したんなら怪我人じゃないと思うけど違う?」


 そっぽ向いてから「行くわ」という言葉を置いてそそくさと扉を開けて、その場を後にするエイル。

 その後ろ姿を座りながら見る。


 そして、自分の横に鞘と柄が抜けないように包帯で巻かれた俺の剣が、布袋の上に大事に置かれている事に気がついて。


「ありがとうなエイル。コイツまで治療してもらって」


 俺は剣を持ち上げてから袋に入れる。

 そして俺は辺りを見渡してから自分がどこにいるかを確かめる。


「ええっとここは……闘技会場の医務室か? って、何で俺をベッドに寝かせないで床に寝かせてんだよぉぉぉぉぉ」


 俺はエイルに抗議の声を上げる。

 それと同時に、この部屋の上から大きな歓声が上がった。

 俺はここが闘技会場の医務室だと確信してから慌ててその部屋を後に闘技場があったであろう場所に駆ける。


 薄暗い通路から光で満たされた出口が迫り、その光から体を出して闘技場の方を見る。

 目の前には、闘技場が無くなりフィールド魔法と会場席に覆われた場所で戦う二人の影が踊っていた。


 一人は炎を剣の様に振り翳し。もう一人はまるでダンスを踊る様に宙を舞う。

 その様子に会場は沸き立ち歓声や声援を二人におくる。

  しかし、その幕切れは直ぐに訪れた。

 宙を舞う少女がダガーを投げた後にチャクラムを投げ、そこにカマイタチを重ねるように放つ。

 その攻撃を炎の剣でいなすが、戻るチャクラムが頭上で止まりそこから発せられた重力の折に潰されてギブアップ。


「はぁ……グランの奴、フラン相手にも魔法だけで勝負したのかよ。本当にアイツは馬鹿だろ。でも……よくあんな技ホイホイ思いつくよな……感心するわ、マジで」


 俺は苦笑と共に肩を上げてから、心の中で感心と共に笑ってしまう。

 むしろ、アイツだけには負けたくはないから、笑ってしまったのかもな。



  『数十分後、俺とフランは闘技会場の中央で向き合っていた』


「ヒルト君、手加減は無しで行くからね。グラン君みたいに手を抜かないでよ?」


 そうフランが勝気に言う。


「おいおい、俺はアイツとは違うぜ? お前に手加減なんかするかよ。全力で勝ってやるよ」


 俺はいつもの様に構えようとするが……開始の銅鑼が鳴る。


「ちょっタンマ……剣が……まって――」


 俺のタンマを待たずに目の前に来るチャクラム。


 それを無様に屈んで回避するが


「ぶへぇぇぁぁぁ」


 ヒキガエルが轢かれたような恰好になり、無様な泣き声を上げて俺は重力により潰された。


 会場からはブーイングの嵐と怒号と罵倒が巻き起こり、会場席からはゴミが飛ぶ。


「だって剣が無いんだぜ? だから待ってって言ったのにぃぃ」


 潰されながら俺は情けなく声を上げながら気を失う。


 その後、俺のあだ名がヒキガエルと言われたのは言うまでもない話と、表彰式に出なかった事は分かると思う。




 『エイズルの工房にて』


 山の様に積み上げられたインゴットを前に腕まくりをしてから


「さてと、打ち始めるかな」


 煌々と燃えあがる炉を背に準備を始めていく。


 




次回は製造回です。ようやく製造です。製造ですよ。 金属万歳

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