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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
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第14話 武器と本気と試合と

お久しぶりです。田植えと展覧会と商談が重なってなかなか筆を執れずにいましたが。次話投稿です。

次回から戦闘多めと学園の授業や、再びあの人に登場してもらったりと、色々始まります。

今回はそのための話のつもりで書きました。


 修練所として使っていた兵舎跡の広場には柱状に伸びた無数の岩塊が乱立していて、広々としていた時の面影は無い。


「エイズルこの剣は良い物だな。軽く魔力を込めるだけで此れだぞ。それに」


 突き立つ岩塊に向けて一振りすると、まるでバターを斬るかの様に真っ二つになり轟音と砂埃が舞った。


「そうじゃろそうじゃろ。ここ最近で一番の出来じゃ、本当に弟子を持つとは良いのうスラン」


 2人は顔を見合わせてから満面の笑みで


「「あはははははは」」


 笑い声を響かせる良い歳をした爺共、その姿は旧知の仲で本当に幾つになっても男の友情とは変らない物だと思わせる光景だった……


「おい……この有様を何だと……思って……」


 俺は気絶寸前の意識の中言葉を吐いて意識を手放した。

 最後に目にした光景は隣のグランがボロ雑巾の様に朽ちた姿だった。



  エイルとフランに武器を渡す少し前


 俺達は何時ものように師匠の店先に集合していた。ただ、一つ何時もと違う事があった。


「ところで、スランさん今日は遅いね? いつもなら僕達より早く来ているのに。それにエイズルさんも居ないね?」 


 フランが周りを見渡しいつもと違う事に気が付いて俺に尋ねてきた。


 俺は理由を知っていたが


「ああ、今日は先に修練場に行っててくれってさ。まぁ用事でもあるんだろ」


 俺が話をはぐらかすと


「アンタまた悪い顔して。何かあるんでしょ」


 エイルが俺を指差し突っ込みを入れてきた。

 俺はそんな事は無いと否定するが


「いや、お前がその顔をする時は何かある顔だよ」


 グランも乗っかって来た。これ以上この話をさせられるのは困るので


「いや本当になんも無いって。それより、エイルこの前の晩飯美味かったよ。温かいうちに食べれなくて悪かったな」


 話を逸らすと


「えっ? エイルちゃん……その話詳しく話して」


 何故かフランがエイルの襟を掴んでいた。その後エイルが凄く慌てながら色々否定したり、取り決めがどうとか話していたが長くなりそうだったし、俺に飛び火しそうだった事もあって、


「そろそろ行くぞ。時間もないし」


 そういって俺はグランの首に腕を掛けて引っ張っていく。

 グランはそうだなと言い素直についてきたが、その時グランの顔は何故か喜んでいた。



 俺達は何時もの兵舎、もとい修練所に着いた。


 俺はそこで店から担いで来た、長物と大袋の封を解いた。


 すると三人が集まってきて


「ずっと気になってたんだけど、もしかして」


 一番に声を掛けてくるエイル。


「ああ、約束の物だよ。これがエイルので、これがフランのだ」


 俺がそれぞれに武器を渡すと、

エイルは喜んだように槍を手に取り、少し離れてから軽く素振りをしたり舞わしたりと感触を確かめ始めた。


 しかしフランは、


「えっと……これってどうやって使うの? 盾だよね?」


 フランは困惑した表情を浮かべて俺に尋ねてきた。


 フランが困惑するのも判る。

 フランの武器だけは本当に悩んだのだ。フランはどんな武器でも器用に使いこなす。しかし、基本魔法で距離を取り、魔法で防御するという魔法主体での戦闘スタイルのためにどんな武器でも腐ってしまう。

 杖も必要かと問われれば否、それも必要ないレベルで魔法が使える。むしろ杖を持たせると固定砲台かというくらい動きが鈍る、最初の鎌を持った時もそうだ。何故かは知らないが長物を持たせると動きが止まるのだ。


 そこで俺が考えた武器は


「まぁ盾っちゃ盾だけど、ランタンシールドになるんだよな。とりあえず使い方を説明するから左手にはめてくれよ」


 そういうと俺の指示どおり左手に装着した。見た目は本当に手甲と盾が一体になったものだが。


「見た目より軽いんだね」


 機能を追加しすぎて円形なのに、ミドルシールドサイズまで大きくなっているのに……でも軽いって……それなりの重量はあるんだけどな……


 そんな感想を想いつつも


「とりあえず手首を目一杯曲げてくれるか?」


 指示通りの動作をするフラン。

 すると盾から金属を弾いたような音と共に外側を形成していたパーツが外れる。


「ふぇぇぇぇ。壊れちゃったよぉぉぉ!?」


 慌てながら外側のパーツの中央部にある持ちて部分を持って振るフラン


 俺は呆れながらも


「それで良いんだよ。とりあえず魔力を込めて投擲してみろ」


 俺の言葉を聞いたフランは疑問に思いながらも魔力を込めて投擲する。

 投擲の時、間抜けな「えいっ」という掛け声さえなければ完璧な投擲ホームだった。


 回転しながら前方にある木に向けて放たれたパーツは魔力の刃を形成して、木をUターンしてフランの手元へと戻る。


 器用に持ち手を掴むフラン。

 それと同時にUターンしただけだと思われた木が横に倒れて音を上げた。


「おいおい、なんだよあれ。当ってない木が切れたぞ?」


 なぜかグランが俺に質問してくる。

 一方フランは、起きた事がわからないのか呆けている。そして、エイルは槍に集中しているのか未だに振り回している。


 そして俺は、


「いやぁ……あんなに刃が広がるとは思ってなかったは。はっははは」


 俺は予想以上に広範囲に広がってしまった刃に笑ってしまった。


 まぁ技芸天の【ウ】のヒエログリフに、韋駄天の【クウ】のヒエログリフを刻んだ[チャクラム]なんだから、当たり前っちゃ当たり前か。でもドンだけの魔力を込めたんだよフランのヤツ


 そう感想しながらもフランに他の機能の説明を続けた。隣でグランが(あき)れて頭を抱えながら


「俺の武器は頼むから大人しめで頼む」


 と小声で呟いていたが、もう考えてあるから変更不可能だと伝えておいた。


 まぁ嘘だけどな



 その後フランは……


「ヒルト君、見て見て」


「おっオウ」


 横にいるグランも引き攣った顔をしている。


 フランは俺が想定していたよりもこの武器こと【パナケイア】を使いこなし……いや、名前の通り万能具として昇華させたのだ。

 フランだけではなくエイルもまた、【トリアイナ】を使いこなしている。


 引き攣ってる原因? そんなもん俺の目の前で繰り広げられているこの模擬戦のせいだよ。


 最初こそエイルは水の刃を飛ばすだけ、フランも【クウ】のヒエログリフ利用したアイススケートの様な動きで回避するだけだったが、フランがパナケイアの武装具を使い始めた頃から激しさが増していき、

 今では、フランは【クウ】のヒエログリフを使いこなして空中でスケートの様な動きをしながら、武装具であるチャクラムとダガーでエイルを攻め、その攻撃をエイルは水の刃をまるでシールドの様に使ったり、水圧を利用した移動法で瞬間的な加速で回避したりと、俺とグランさながらの模擬戦を繰り広げている。

 あと、エイルがフランに負けじと水の刃を円形に広げてそれを足場にして空中戦を繰り広げている。


 そんな俺達でも出来ない空中戦をしているんだ、顔が引き攣る理由もわかって貰えるだろう。

 てっ俺は誰に話しかけているんだろうか?



 模擬戦が終わり


「ヒルト君……これ、本当に貰って良いの?」


「これって、買ったら幾らするの?」


 と言う事に繋がる事になる。



 そして、姿を現した2人と一本の大剣

その大剣は、親父(オヤジ)が使っていた剣に似ている。しかも同じ黒剣(コッケン)だが、金のヒエログリフが剣の刃に沿って細かく施されていたり、剣の腹に魔石が有り其処からヒエログリフまで金色の文様が在ったりと相違点は多い。

 そして、その見た目からは美麗差よりも、刃に使われた最新のウーツ鋼の刃文が放つ威圧、ヒエログリフの魔力的な魔性とヒエログリフに繋がる文様の迫気に圧倒されてしまう。

 グランとエイルにフランが固まってしまうのは仕方ない。


 そんな大剣を担ぎ言い放った「試験」という言葉を思い返して、俺の気持ちはワクワクから一抹の不安がある物に変わり、一瞬顔が固まった。


 そうすると


「なんだお前達、固まってしまって」


 不思議そうな顔で俺達を見るスラン。そしてエイズル師匠。


 俺は、その言葉と情景から恐る恐る「試験」のと言う疑問について声をだす


「もしかして、模擬戦とか言わないよな?」


 この人が言う試験が正直ただの的切りな訳も無いし、それに付き合ってもらうという言葉。その推測が当たらない事を祈りながら回答を待っていると。


 笑顔で右手をサムズアップさせて


「なんだ分かっているんじゃないか。何、本気で振るう訳ではない。今回は魔法も使って良いから安心して……二人掛かりの全力で戦えば良いんだ」


 一拍置いてからの言葉の時、顔は笑顔だったが目がマジだった。


 それに……


「えっ? 今2人って言わなかった?」


「えっ? 」


 俺はその2人が誰を指して言ったのか見当が付く、その当の本人も顔が引き攣り気味で声を出した。


 そんな事にお構い無しに


「分かってるじゃないか。お前とグランの2人に決まってるだろ。女性にそんな無茶をさせる訳無いだろう」



 俺とグランは嫌な予感から全力でその場から逃げようとするが、即座に捕まり剣の為の模擬戦に付き合わされる事になった。


 その直後エイズル師匠が口を開いた。


「スランはのう、ヒルトに言われた武器が弱点だと言う言葉を気にしておってのう。それで張り切って居るんじゃ、判ってやれ」


 と俺に言う。 


 それを聞いたスランは、師匠に何か抗議をしながら照れた表情を浮かべて焦っていた。

 途中、師匠の口から「ワシも、自信作の出来を知りたい」という言葉が出た事で、俺とグランの顔が絶望の表情に変わった事は言うまでもない。



 そして強制的な模擬戦が始まった。


 俺とグランが、スランの前に並んで剣を構えると


「今までの修練の実力を見せてもらう。さぁ、掛かって来い」


 そう言うと、(カア)さんと親父(オヤジ)の構えを合わせたような、半身の構えをする。


 その構えを見る度に、本当にこの人は親父(オヤジ)の師で、(カア)さんの父なんだと思う。

 そんな想いをしながら俺は、【迅雷】を発動する。


 そして、


「初っ端から全力で行くぞ」


 俺はグランに声を掛ける。


 すると


「判ってるよ」


 グランも全力である証拠に炎風輪を発動させ、更に剣に炎を纏わせて構えて返事をする。


 スランは鼻で笑ってから手招きをして合図をしてくる。


 俺とグランは同時に、魔法を利用した加速で一瞬で距離を詰める。俺は頭上、グランは下からと上下から同時攻撃。

 それも、俺の【電磁加速抜刀レールガン】とグランの【くれない紅蓮剣グレンケン疾風】という炎を纏うだけでなく加速に使うという新たな必殺技とも言える俺達の全力でだ。


 しかし


「俺の【清流法リュウセイホウ】を抜くか、流石だな」


 不敵な笑みを浮かべて俺とグランの技を鞘と剣で受け止めて言い放つスラン。


 俺とグランは即座に剣で弾いて元の位置に後退する。


俺は内心、何が抜くかだよ。快音が出ただけで、衝撃を完全に殺しておいて。くそ


 グランも又、同じ思いだったのだろう。苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「では、次は俺からだ。受けきれよお前ら」


 スランは言葉を発した後、鞘を捨ててから地面を蹴り、一足飛びに俺達に向けて距離を詰めてから横薙ぎをする。咄嗟にグランは後方に避けながら剣を当てるがグランの剣は弾かれる。

 しかし、その事でスランの横薙ぎの勢いは多少殺がれた。


 そして俺は、その剣を【清流法リュウセイホウ】で受ける。勢いが殺がれたと言っても保々本気の一撃だ、


「ぐぅっ……イッテェェェ」


 俺の【清流法リュウセイホウ】では完璧には止められず弾き飛ばされてしまい、転げてしまう。

 弾き飛ばされたとはいえスランの動きが一瞬でも止まった。


 それに対して


「うぉらァァァっ」


 掛け声と共にグランが上段から切り込む。


 しかしそれを、


「ハァァァァァ」


 魔力を剣に流し込んで地面に剣を突き立てたスラン。


 同時に岩塊の柱がグランの剣を阻むように突き立ち弾いた。

 俺は、そんな事お構い無しに背後からもう一度【電磁加速抜刀レールガン】を繰り出す。

 しかしそれも又、突如発生した岩の壁に阻まれた。


 俺は、そのまま切り裂くがその場にスランはいなかった。


 次の瞬間横からの威圧感が襲う。咄嗟に振りぬいた剣の勢いを利用して身体を後方に捻ると、足が伸びてきた。

 スランの蹴りだ。即座に切り返すが、体勢が悪くて力の無い剣線は【清流法リュウセイホウ】で防がれ恰好のカウンターの餌食となり俺の視界が回転する。

 追撃がくれば終わりだったが、回転する視界にグランが映ると同時に剣を離すスランの姿が見えた。


 俺が地面に落下した時には、グランの剣を拳で受けてから蹴りを入れて吹き飛ばし、再び剣を拾い俺に追撃をしようとするスラン。  


 瞬時に地面に雷撃を放って反動で避ける。

 しかし、体勢を整える間もない体術交じりの剣撃が俺を襲う。


 【迅雷】での身体加速をフルに活用しながら無理やり剣で弾く。

 その隙に、体勢を立て直したグランが再びスランに剣を振るうが、岩塊に阻まれる。


 俺はグランが作った一瞬の隙を突いて体勢を整えるが、反撃を許さない連撃で防戦一方。グランも加勢するが入れ替わるように岩塊が邪魔をして反撃が出来ない。

 分が悪いと判断して、俺とグランは地面に魔法を叩き突けて、煙幕を張り、スランから距離を取る。 


 まぁ、後から考えてみれば逃がしてくれたが正解だろうけど。


 一旦距離を取れた事で、体勢を完全に直す事が出来た。

 しかし、俺は[迅雷]の反動で限界が近い。グランも疲労の蓄積と魔力の酷使で[魔力枯渇(マジックフロー)]が近い様子だった。


 その姿を見たスランは


「もう終いか? まだ俺に一撃も入れれてないじゃないか」


 そう言って剣で手招きする。


 限界ギリギリの俺達は目を合わせてから


「まだ、やれんよな?」


「たりめぇだろ。お前こそ一刀くらい振れるよな?」


 グランの質問に俺が嫌味交じりの何時もの返事を返す。

 そして、最後の力を振り絞り俺とグランは有りっ丈の魔力を使っての一撃を放つ。


 側から見た視界は、俺とグランの姿は消えて、黄色の雷光と紅の炎光だけがスランに向かって引かれた軌道の様に見えた。


 でも、そんな二人の一撃をスランは、


「ようやく一撃か」


 俺とグラン剣はスランの鎧に触れていたが、岩塊の剣と黒剣で完全に受けられていた。


 そして


「だが、詰めが甘い」


 俺達の剣を払いのけ、地面に剣突き立てた。


 俺とグランは伸びてきた岩塊の柱で上空に運ばれた。



 そして、最初の場面に繋がる。


「もう、やり……ですよ……する私達の……くださいよ」


「僕……ます……」


「ホン……すまん……久振りに……でき……して」


「わる……つい……なりすぎ……」


 周りが騒がしいな。もうボロボロなんだから寝かしといてくれよ。


 俺は甦る意識と周囲の騒がしさの中そう思いながら温かな温もりを感じながら目を開けて


「頭の上でガチャガチャやかま――ぶふぅ」


 苛立ちの言葉を吐きながら身体を起こすが目の前にある膨らみに顔を埋めてしまった。


 その邪魔な膨らみを掴んで顔を離すと、顔を真っ赤にしたエイルと目が合う。そして掴んだ手の平に伝わる柔らかい感触で自分が何を掴んでいるのか把握して直ぐに手を放して、


「いやこれは……そう事故だ事故。とりあえず落ち着け。なっなっ」


 プルプルと震えるエイルだったが、直ぐに真顔に戻って


「柔らかかった?」


 そう笑顔で尋ねてきた。


 俺は即座に、


「綿の様な柔らかさに、スライムの様な弾力が……あっ」


 俺は次の瞬間、地面へと顔面を叩きつけられていた。


「やっぱりワザとなんじゃない。変態、エロ、助平」


 エイルは顔を真っ赤にして胸を押さえながら師匠の後ろに隠れた。


「ワザとじゃ……事故……だ」


 咄嗟に聞かれた質問に素直な感想で答えた俺は有らぬ誤解の為にまた気を失った。

 そしてフランが自分の胸を確認してから落ち込んだ事は俺の知らない話で、グランが俺と同じ様にフランの胸に顔を埋めてしまい、更に揉んでボコボコにされた事も俺の知らない話だ。


 色々とあったが俺とグランが意識を戻した。


 女性陣が怒り心頭で、その光景を呆れたと言うか甘酸っぱいものを見る、そんな眼差しで、師匠とスランが俺達を見ていた。


 そして、スランが何かを思い出した様に、古典的な動作と共に、


「そうだ、言い忘れてたが。明日学園で全科代表による対抗の試合がある。まぁ医療魔道科は治療役になるがな、エイルさんなら試合に出ても大丈夫そうだがな」


 そう笑いながら言う。


 俺達は


「「「「はぁぁぁぁぁ?」」」」


 唐突な発表に困惑した。






次回未定。未だにばたばたとしています。 

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