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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
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第13話 折り返しと魔物素材と女心と

短めの文章になりますがよろしくお願いします。

緩和のつもりで書いていますので、製作メインです。


5/30 まだ田植え中です・・・体が痛いです……機械で植えるのですが、四隅や飛んだ場所は指し苗ですし、苗を田に運ぶ作業が本当に重労働すぎる……水を吸った苗箱の重さたるや……そこから機械植えですが、水の照り返しとエンジンの熱がケツから襲う劣悪な環境……暑さで体力が奪われる。 本当にすいません、もう少し待ってください。終わり次第書き始めます。


 エイルとフランに武器を渡す数日前。


 学園が休みのため朝から工房で俺はチタンのインゴットとソーンスコルの歯と爪に魔力を注ぎ込む。

 すると、インゴットは融解して液体に変わり、同じように歯も爪も液体に変わり交じり合い白銀のインゴットが出来上がった。


「魔力消費が……もう無理――」


 俺はマジックフローでその場に突っ伏した。


 純粋に魔力のみで素材を融解させる行為は魔法で過熱して融解させるのとは違い、魔力抵抗の限界値を超える魔力を流す事により魔物素材を炭化させずに合金化させる事が出来る方法だ。

 しかし、魔力もそうだが、魔力出力が魔力抵抗を超える必要があるため、こうなってしまう。


「ほう……一人でやってしまうか。タングでもワシのサポート無しでは融解させられなかったのにのう」


 エイズル師匠は、俺が一人でこの作業をこなした事に驚嘆しながら魔力精製水を飲ませてくれた。


「ありがとうございます。あっ師匠、別に俺一人の力で出来た訳じゃないですよ、コイツのおかげですからね」


 魔力精製水のおかげで魔力が戻って普通に動けるようになった俺は、手に付けていた手袋を師匠に渡す。


「……御主また、えげつない物を作ったのう……ソーンスコルの魔石まで贅沢に使いおって」


 俺の手袋を見て師匠は呆れていた。


 その手袋は、ソーンスコルの毛皮で出来ていて中央に手の甲と同じサイズの魔石を埋め込んである。ただの作業用手袋にしては贅沢以外の何物でもないが


「これで魔力をブーストしたから一人で出来たんですよ師匠。贅沢とは心外ですよ」


 俺が冗談風に言うと師匠は頭を抱えながら


「なにも一人でせんでも、ワシが手伝うじゃろう全く……本来は4人掛かりで行なう作業なんじゃがのう」


「一人で出来ないと独り立ちした時に困るじゃないですか」


 俺は直ぐに返事をした。


 その返事を聞いた師匠は少し困った顔をしてから。


「人に頼る事を覚えんか。何でそこまで一人でやる事に固執するかのう」


 俺は言っている意味を理解できずに


 一人で出来る事に越した事は無いのに何で叱られているんだ俺は

 そう思い、キョトンとしていた。


「まぁ良いがのう……それにしてもその素材を芯に使うのかのう?」


 師匠は俺の反応にタメ息交じりで答えてから質問した。


「そうですよ、最初に言ったじゃないですか。試作品でも成功したんですし使わない手はないと思うんですけど」


 俺は、魔物素材の合金の製法を教えてもらった時に思いつきで造った試作品のナイフを指差して言う。


「此れが試作品のう……正規の値段じゃとワシの武器より取れそうじゃがのう」


 試作のナイフを手に取り値踏みをする師匠。


 まぁ、ソーンスコルの骨をチタン合金化させた芯金にウーツ鋼の刃、皮金に不銹鋼に酸化皮膜を施した漆黒のナイフにウーン※のヒエログリフを施してあるのだから、試作品と呼ぶには(いささ)か贅沢かもしれないが。


「成功したからそう思うだけですよ。実際成功しなかったら唯のナイフですよ」


 このナイフは、実験的に芯金までヒエログリフを彫り込んだ所にニッケルロウ※を流し込んで作ってある。

 その効果は絶大で、普通に彫り込んだ物よりも魔力伝導率が良くなり発現する効力が強力だった。通常ならC等級程度の雷撃を発するが、このナイフの場合、B等級以上、つまり俺の電撃以上の雷球を発現させられた。

 素材を試作だと割り切って落としているので俺にとっては試作品の何物でもない。


「まぁそうなんじゃがのう。此れで試作品となると、今から造る物がどうなるか心配でのう。いつも言っておるが――」


 師匠は俺を見ながら続きを言おうとするが、


「強すぎる力は時として使い手を傷つける。使い手に合わせた武器を作れでしょ? 解っていますよ。それにエイルとフランの武器ですよ? 大丈夫ですって」


 耳にたこが出来るくらい言われた言葉だったし。それに、彼女達の力量もこれまでの早朝鍛で嫌ってほど見てきたのだから少しは信用してくれても良いのにと思い、


 俺は言葉を滑り込ませた。


「はぁ……判っておるならそれで良いのじゃがのう……」


 首を振りながら師匠は鎚を持ち背を向けて倉庫へと消えていった。


「心配なのは判るけど……本当に少しは信用して欲しいよ」


 俺は独り言を呟きながら他の材料を用意していく。そして休憩ついでに念のために用意しておいた魔力精製水を飲み魔力を回復させ、再び素材加工を継続する。



 割り込み加工が終わり素材の準備が完了して俺が鎚を置くと


「もう慣れたもんじゃのう。後は形状加工と仕上げだけかのう?」


 師匠が声をかけてきた。


「師匠いたんですか? って、もうそんな時間ですか?」


 師匠は、花柄のエプロン姿にフライパンという、鍛冶師には到底見えない姿で立っていた。


 俺は師匠のその格好を見てもう昼になっていた事に気が付いた。この格好を初めて見た時は腹を抱えて笑いそうになったが、今では日常の光景だ。



 昼飯を食べ終えて再び工房


「素材加工はもう終わっておるんじゃよな?」


 エイズル師匠が作業再開前に声をかけてきた。


「そうですね。一応2本分の割り込みは終わっていますので。どうしたんですか師匠?」


 俺は素直に答えながら質問すると。


「少しばかり手伝ってもらって良いかのう? 御主の武器を見ていて試したい事が出来たんじゃ」


 珍しく師匠が手伝えと言ってきたので、


「わかりました。ただ何をするかだけ教えてもらえませんか?」


 正直、俺の試作より師匠の試作事の方が危険な事が多くて怖い。

 グラン曰くどちらの試作品も使いたくないと言っていたが同類にして欲しくない。

 まぁ……前回の事は悪いとは思っている。


 そんな事を思い出しながら言うと


「なに、久しぶりに良い砂鉄鋼※が入ったのでな、向槌※を頼みたくてのう」


 そう言いながら向槌用の重たく柄の長い鎚を渡された。


「本気で言ってますか? 本来、向槌って2名以上でやりますよね? 俺一人じゃないですよね?」


 俺の返事を聞いて師匠はニッコリ笑い


「御主一人に決まっておろう。ワシの相槌が務まる者はタングと御主以外おるまい」


「イヤー。無理無理――」


 俺が逃げようとすると、襟首を掴んで強制的に師匠の作業スペースに連れていかられた。




「ホレ、ムクレとらんでやるぞ」


 師匠は、砂鉄鋼と魔物素材合金を重ねた合わせ鋼を炉から取り出し、真っ赤になった鋼材に鎚を入れる。俺はタイミングを合わせながら向槌を入れていく。

 一定のタイミングと一定のリズムに力加減で鎚を交合に入れていく。鎚が入る度に真っ赤な【のろ】が飛び散る。徐々に平坦化していき一つの延べ棒になる。直ぐに師匠はその延べ棒にタガネで切れ込みを入れてから折り返して行く。


 折り返し鍛造と言われる工程の始まりだ。


 終始無言で作業を進めていく。再度加熱のために炉へ地金を入れる時に話を出来そうな間が出来るが、話す雰囲気でも無いし、話す体力が有るなら休みたい。

 そんな感じでこれから8回から20回、同じ工程を繰り返す。


 12回目の折り返しの時、ついに俺の腕は悲鳴を上げ始めた。魔力ブーストを使用しているのに鎚が上がらないのだ。


「あと少しじゃ。踏ん張らんか」


 師匠が初めて口を開いた。その言葉を信じて身体に鞭を打って無理やり鎚を上げて振るう。


 そして


「師匠の……嘘つき……」


 あの言葉のあと、4回の折り返しを行なうという鬼畜の所業により俺は体力と肉体の限界からその場にへたり込んで言葉を吐く。


「なにを言っておる。これからが本場じゃぞ」


 なぜか疲れの一つも見せない師匠は、俺を更に死の淵へと追いやろうとする。


 その時、俺の後ろの扉が開き俺の後頭部に衝撃が走り、その痛みで後頭部を押さえて悶絶していると。


「エイズル様、呼ばれてきたんですが? あら? なんでアンタそんな所に居るのよ?」


 エイルが扉から顔を出して、悶絶する俺を見下すように見る。


「見て分かれよ……痛っつうう」


 俺は睨みなが文句を言っていると


「すまんのうエイルさん。そこのに倒れておる愚弟子を回復してやってくれんか?」


 師匠がエイルに俺の回復を頼んだ。エイルはその言葉に快い返事をした後、


「ちょっとアンタそこ邪魔よ少しどけなさいよ、入れないでしょ」


 俺の体が邪魔で扉が完全に開かないので文句を言いながら、扉の隙間から体を出そうとするが胸がつっかえて入れないようだった。

 その後何度も扉を開け閉めして俺に追撃を加えてきた。俺は芋虫の様に這って移動すると入れるだけ扉が開いたので入ってきて


「もう少し気を利かせなさいよ、そんなんじゃモテないよ」


 そう言いながら手を翳して俺を回復してくれた。

 淡い光に包まれてから俺の体は軽くなり痛みも引いていく。


 元気になった俺は、


「エイルお前が追い討ちをかけたんだろう! 動けるかぁぁぁ」


 俺はエイルに怒鳴った。


 するとエイルは、そうだった? 等とはぐらかしてから


「えっとエイズル様、今日は何の用で私は呼び出されたのでしょうか?」


 そう言いながら師匠の下に行き、回復魔法を師匠にかけた。


「ワシまでスマンのう、エイルさん、休みの時に。見ての通り作業の途中でこうやって倒れられるのでのう、回復してやって欲しいんじゃ」


 その言葉を聞いて俺は不服を言おうとしたが。


「エイズル様、そんな事ないですよ。エイズル様のお手伝いが出来るなら私は嬉しいですよ。それに……父も恩返しが出来ると喜んでいましたので」


 途中で顔を真っ赤にしてから口ごもってから言いなおすエイル。その姿をみた師匠は、


「ほほっ、青春じゃのう」


 俺を見て笑う。


 その後にエイルに何か耳打ちをすると、顔をまた真っ赤にしてから師匠の背中を叩いた。


 エイルって爺專なのか?

 俺はそれを見て内心そう思っていたら。


「ほれ、再開するぞヒルトや」


 背中を摩りながらそういって、再び作業を再開していく。


 エイルは、何時もの様に木台に座ってから


「頑張れ、倒れても私が癒してあげるから安心して倒れなさい」


 無責任な事を言う。



 再開した作業は、先ほどよりも巨大な合わせ鋼の折り返し鍛造だった。この事から更なるデスマーチが始まったのは言うまでも無いだろう。


 先ほどの作業よりも過酷な鎚振りを余儀なくされ、体の限界が来ればエイルに回復されを繰り返す。 肉体は元気なのに精神が死んでいく。

 折り返し作業が終わり、作りこみ※、素延作り※形成と日本刀の製法と同じ工程を行なっていく。



 俺の精神は無になり記憶が戻った時には向槌の必要な作業は終わっていた。


「あれ師匠?  向槌って終わりですか?」


 俺は自分が置かれている状況が飲み込めずに鎚を担いだまま声を出すと。


「何を()けとるんじゃ? とうの昔に終わっとるじゃろう」


 師匠は呆れた表情で返答し


「アンタ大丈夫? 頭が」


 とエイルに馬鹿にされたように心配され、頭に癒復魔法を掛けられた。


「頭は関係ないだろ! てかそれだと俺がバカって事か?」


 俺はエイルの手を払い除けて怒りながら、エイルと口喧嘩をしていると


「ヒルトや、痴話喧嘩をしておらんで焼入れを手伝わんか」


 師匠が俺に手伝うように促してきた。俺はエイルに背中を向けて師匠の方を向いて


「痴話喧嘩じゃないですよ! 俺を馬鹿にしたから――」


 そう言っている途中にエイルに背中を押され


「そんな事いってないで、手伝いにいきなさいよ」


 と言われた。


 俺は、言われなくてもわかってる、と言いながら師匠の手伝いに走った。




 焼き入れも無事に終わり手伝う事も無くなったので自分の作業に俺は戻った。


 すると


「それ私の武器だよね?」


 エイルが俺の作業スペースに来て声をかけて来てから、俺の横に座った。


「未だ居たのか? てか、そこに居られると邪魔なんだけど?」


 俺は作業の邪魔になるし、横は危ないので注意すると


「回復してあげたのに何よ。少しは感謝しなさいよ」


 と文句を言いながらプイっいう擬音がでそうな態度で師匠のほうに消えていった。 


「注意しただけでなんだよ全く」


 本当に女心はわからん。

 と思いながら独り言をつぶやいた。 



 その後は、何事も無く一人で黙々と作業をこなしていき、彫り作業も終わり後は象嵌を行なえば終わりという所まで、エイルの槍が完成した。

 俺は槍を持って工房の中をうろつくが誰も居ないし、窓の外は暗くなっていた。


 俺は慌てて二階にある住居スペースへと行くき扉を開けると。


「ようやく戻ってきよったか。何度も声を掛けたのにのう……まぁ、御主は集中すると何時もの事じゃが、エイル嬢ちゃんには謝っておくんじゃぞ。折角晩ご飯まで作ってくれておったのに」


 師匠は、もう晩ご飯を食べ終えて番茶を啜っていた。 


「そうだったんですか…… ところで、俺の分は?」


 テーブルの上は綺麗に片付けられており、俺の分の料理の姿はなかった。


「まぁ、自業自得じゃのう」


 俺はその言葉に落胆して膝をつく。


 すると、師匠は冗談じゃよ等と言いながら台所にある俺の分をテーブルに並べてくれた。 

 料理は既に冷めていたが確かに美味かった。 


 本当にエイルには悪い事をしたな……本当に武器でお礼をしないとな

 と思いながら、料理を堪能した。








※は後日

ウーン※ 金剛夜叉明王の梵字です ウーンと読む梵字は他に4種類ありますムシロ字がかなり似ていますので見分けが基本付かないですが、書いている人曰く若干の異差はあるそうです。


砂鉄鋼※ 砂鉄です 純粋に砂鉄です。


向槌※ 刀鍛冶の相方の事。 大きな鎚の事もさしますので、ややこしいですですが。

    因みに弟子が基本担当します。あとは嫁さんや息子、家族の誰かが担当することが多いです。最近では、電動ハンマーになってきたので、本職の日本刀の刀鍛冶さん以外では見かけなくなりました。


作りこみ※、素延作り※ 作りこみと素延作りは基本、割り込みのことを言うのですが、作りこみも素延作りも刀匠によりやり方が違う、そして、口伝が多いため消えた技法も数知れず有ります。この工程の善し悪しでもかなり物に影響するので大事な作業です。 正直私も教わりましたが口伝を大切にしたいので詳しくは書きません。 ですが、鍛接作業と言うことと、峰、皮、刃、各種鋼で芯金を囲む、四方詰めが一般的です。正直、溶接してから鍛接作業したいんですけどね



また田植えや、依頼品の山の処理の為に6月8日以降になると思います。 

更新が遅くなりますね本当に……

 


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