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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
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第12話 先生と坩堝と素材と

令和になりましたね。新しい時代になりこれからの日本がどの様に変っていくか楽しみです。

そして新しい令和という時代に受け継がれた古来の技法の継承者が増える事を祈ります。

まぁ旧態的なモノなのでなかなか私達若い世代からすれば3Dプリンターでヨクね?とか、カーボンでよくない?とか、マニュアル作れば良いとか、言う人が増えてますが。 其れ等で出来れば苦労しないんですよね…… 本当に興味が有るかたは、30歳でも遅く有りません弟子入りして継承者を増やすんだよー

聞きますが、

 金属と金属がぶつかり弾ける音が響き渡る。そのリズムは常に一定、一切のズレは無く正確に音を刻む、その正確さは時計と同じだ。


 しかし、


「御主は、何度も何度も同じ失敗を繰り返すのか?!」


 一つの怒号が響いた。この怒号については、今日は始めてからまだ3度目。

 俺は冷やした金属の延べ棒を触って確認する。ほんの僅かな圧延斑(あつえんむら)が有るのを感じる。正確な数値で言えば0.01~0.005mmの間に満たない誤差だ。


 まじか……この誤差を目視で感知できるってどんな目を……人なのか?


 驚嘆を通り越し本当に人間種かと疑ってしまう。まぁ触覚でわかる時点で一種の高精度測定器と同レベルのなのだが


「すいません……やり直します」


 素直にやり直す。また一からインゴットを用意してから炉に入れて打ち伸べる。


「最初の頃からは進歩はしておるが、まだ甘さが残るのう……均一に打てなければ厚みを管理しながらバランスの良い剣など打てんぞ」


 エイズル師匠の言う事は正しい。均一な板を作れなければ武器に合わせた重量管理は出来ない、ただでさえ其処(そこ)に使い手の癖に合わせて重心位置を0.001mm単位で調整するなんて変態染みた神業を要求する師匠。

 正直、人間の脳で熱膨張と熱収縮を計算して打つなんて頭がメルトダウンを起しそうだ。


「……ヤベぇぇ……」


 俺は不意に言葉が漏れてしまう。


 同じ事をかれこれ一週間毎日していて気が狂いそうだったからだ。

 その言葉を聞いた師匠は、一瞬だけ鋭い眼光を見せたあと目を閉じてから深く深呼吸をして。


「鎚を一旦置け。休憩にするかのう」


 エイズル師匠はお茶を準備し始める。俺は鎚を置き、今まで伸べてきた金属板を手に取りじっくり観察する。


「そんな事をして何かわかったかのう?」


 エイズル師匠が少しキツメの口調で言いながらお茶を出してくれた。


「すいません……何にも解りません」


 出されたお茶を受け取りながら言う。


「ふぅ……じゃろうな。休む時は休むんじゃ、無駄な事をする必要はない」


 師匠は煙管(きせる)を取り出し一服しはじめる。そして、ある程度吸ってから灰を炉に落とし


「ところで、学園と鍛練の方はどうじゃ? 上手く行っておるのかのう?」


 師匠が突然聞いてきた。


「そうですね――」



 【学園生活の最近】


 初日、俺達はギリギリで学園に辿り着き其々のクラスに駆けていった。

 俺とグランは同じクラス割りだった為、同時に教室に駆け込んだ。扉を開けると全員の視線が一時的に集まる。嫌悪を向ける者か、関わりたくないので瞬時に視線を逸らす者の二択だった。


 そして


「おい! あの時はよくも嵌めてくれたな平民」


 あの時のG……ゴミ蟲達5人が絡んできた。だが、俺とグランは、その5人の姿を見て笑いを堪えられず


「あっははは、なんだその頭……くぅっ……ピッカピッカじゃん。あっははは―― ひー、腹いてー」


 俺は腹を抱えながら言う。ここまでスキンヘッドが似合わないのも珍しい。

 グランは目を背けながら笑い、俺に手を置き


「止めとけって……ぷっふ……可哀想だろ」


 俺とグランは笑う。その姿に我慢の限界を超えたのか5人が


「「「「「ふざけんなー」」」」」


 同時に叫び、俺達に掴みかかってくる。そして、それに呼応するように嫌悪の視線を送っていた4人も加勢して集まってくる。 


 俺とグランは臨戦態勢を取るが


「何をやってんだ! そんなに戦闘鍛練がしたいなら我らが相手をしてやろうか?」


 後方に、鎧を着た二名の騎士が立っていた。


「昨日の報告を聞いてまさかとは思っていたが案の定揉めるか。いっその事〆(しめ)るか?」


「まぁまぁ、リセィアム先生、落ち着いてください。先ずは先に進めましょう」


 しかし等、色々聞こえてたが、最終的に、リセィアムと呼ばれた騎士が強引に全員席に着くように怒鳴り場を収めてから、教壇に二人の騎士は並び。


「あー、初日から問題を起こす者がいたようだが今回に限り目を瞑る。しかし、次また問題を起こすようなら容赦なく〆(しめ)るいいな」


 俺やグランもだが、一部の人間は納得できないように振る舞い。他のは巻き込むなよなと言いたげだった


 すると、二度手を鳴らす音がして


「では、初日ですし我々の自己紹介の(のち)、模擬戦闘のレクリエーションをしましょうか……決定です。皆さんのレベルも解りますし、ペアわけも楽ですしね」


 リセィアムと呼ばれた騎士が一瞬、私より無茶をや他に何か言うが一睨みで一蹴された。


 その光景に冗談だろと思った。体格差だけでも1.5倍は違う優男が睨みだけで大男を一蹴するなんてどんな実力差だよ。


 と驚愕していると


「決まりですね。では、先ずは私から自己紹介をします。皆さんの座学と戦闘戦略講師を担当する、ジン・クウェルと申します。気軽にジン先生と呼んでください」


 ささ次宜しくと促し、それに合わせ


「リセィアム・バン・テウタテスだ、貴様らの武術鍛練と剣術指南を担当する。武術と剣術を極めれば遠距離魔法なぞ恐れる必要は無い。魔法騎士課が上だと間違っても思うなよ」


 なんだろう……この脳筋は……しかし、騎士課と魔法騎士課は仲が悪いのか?


 ふと疑問に思っていると。


「では自己紹介も終わりましたので、これから貴方達の自己紹介を兼ねた模擬戦闘のレクリエーションを行ないます。全員準備をして付いて来てください」


 全員が言葉の途中で横暴だという視線を向けたが、最後の言葉に殺気のようなものを乗せて放った事によって全員が黙った。俺とグランは、この程度の殺気には慣れていてダルイという表情を崩さないでいると。


 感心感心と笑顔を作るジン、俺はその笑顔に寒気を感じた。


「どうしたんだヒルト? 変な顔して。行くぞ?」


 グランが俺に話しかけて来る。


 辺りを見ると全員が教室から出ようとしていた。俺は慌てて剣を持ち、念の為、ナイフを太腿のホルダーに収めてからグランを追いかける。


 それにしても……何だったんだ、あの悪寒は……


 俺達は、二人の騎士……もといい先生に付いて行き、最初の試験を行なった、だだっ広い校庭に案内されてから、唐突に


「では、主席ヒルト君と次席グラン君、前に来てくれるかな?」


 ジン先生が呼ぶ。俺達が前に出て行く、


「この二人と……そうですね。エルピス君にカリス君、キルケー君、ランパス君、ニュクス君――」


 さっき俺達と揉めていた9人を呼ぶ。その9人も前に来るが、俺達と睨み合いになる。


 それを確認してから。


「じゃぁ、2対9で模擬戦を始めようか」


 凄く軽く言うジン先生。それを慌てたようにリセィアム先生が無茶だと言うが、大丈夫ですよと流す。


 そして、


「「余裕ですよ」」


 俺とグランは同意してから、相手の9人を挑発する態度をとる。


 クソ雑魚の相手なんか余裕。むしろ魔法も使ってボコボコにしてやる。

 内心俺はそう思う。グランも同じようで笑っていた。相手は俺達の挑発に憎悪を向けてから快諾した。


 リセィアム先生は頭を抱え、ジン先生は明るく手を叩き準備するように促す。


 そして、互いに距離をとり武器を構えて向かい合う。相手は、人数的優位からか余裕を見せる。正直怖くもなんともない。真面目に構えるのもバカらしいので、俺は剣を片手に持つだけで他になんの構えもしないでいる。


「準備は良いですね。私の魔法が弾けたら始めようか」


 ジン先生は手を頭上に翳してから一つの光球を放つ。その魔法は10秒ほど滞空しながら上に上がり、8メートル位の位置で弾けた。


 俺はそれを確認してから


「やるぞグラン。速攻で仕舞いだ」


「わかってるけど、へマすんなよ」


 俺の言葉に真剣に返事をするグラン。そんなやり取りをしているうちに相手は、9人で円陣を組んで囲みにきた。


 それを確認してから俺は迅雷を纏う。そしてグランは足に炎を溜めて浮く。


「スゲーな。新技か?」


「炎風輪な。まぁ、お前のマネだよ。マネ」


 俺達が余裕なのが気に食わないようで、円陣を完成させる前に三名が


「なに余裕こいてんだよ!」


「水凍剣!」


「消し飛べ。土練弾」


 技を放ちながら突っ込んでくる。


「待て、陣形が先だ!」


 グループのリーダー的なヤツが叫ぶが遅い。


 俺は石を飛ばすヤツを潰す為に、電撃の反動を利用した移動法で全ての攻撃を回避しながら距離を一瞬で詰め、


「ノロマ」


 俺は言葉と共に左手で後頭部を掴み電流を流す。

 無様な悲鳴を上げて感電するスキンヘッドの豚。


 たしかコイツ壇上裏で一番最初に絡んできた豚か? まぁ、懲りないこって。

 そんな感想を持ちながらも、残り二人を見る。


 氷の剣を形成して突っ込んだヤツは、グランの炎で囲まれて身動きを封じられジワジワ焼かれていた。残りの一人は瞬時に二人をやられた事で呆然としていた。


「水泉闘! ゴル、下がって来い」


 俺とグランの間に巨大な水柱が沸き立つ。途中参加のグループのリーダーの技のようだ。撒き散らかされた水のせいでグランの炎は鎮火、俺も迅雷での反発移動を封じられたが、


「これ位で逃がすかよ」


 俺は、反発移動を封じられたが生体電流の加速を封じられたわけではないので、体術での高速移動で引こうとするゴルと呼ばれる男に迫る。

 グランも同じで炎風輪を使用してロケットのように飛翔しながら迫る。


「たすて……カリス――」


 男の声虚しく、俺とグランの蹴りが男のケツに入り声にならない声を上げて悶絶する。その光景に相手全員がケツを押さえていた。


「次は誰だよ?」


 俺は相手のリーダー格二人を睨んで言い放つ。


 すると


「人数的に有利なのは俺達だ怯むなバカ。一斉に掛かれば倒せる」


「そうだ、強がりに決まってる。電撃も炎も俺の水で使えない、ビビる必要はない」


 その強気な発言で他の奴らも我に返り、戦闘態勢を再び取り俺とグランに剣を向ける。

 その光景にタメ息がでる。


 俺はグランに目配せを送り意思疎通をすると、理解したのかグランは頷く。

 同時に俺とグランは指示をだすリーダー格2人の目の前まで移動する。それも全力でのダッシュによる移動だ。 


「よっ、でも残念。仕舞いだ」


 俺とグランが消えたとでも思ったのだろう、俺が声を掛けるまで全く認知されなかった。


 俺の声に反応してから、慌てて俺に剣を向けるが、


「剣……が……」


 他の2名も同じように剣を俺に向けようとするが、刀身が融解して失われていて愕然としていた。

 完全に戦意を喪失したように剣の柄を落としたので俺は反対側のグランを見る。


 「終わったかー」


 あちらも同じで剣を全て融解させて制圧していて、俺に腕を振って合図をする。


 しかし


「うあぁぁぁぁぁ。貧民に、平民に貴族である俺があぁぁぁぁぁぁ」


 グランがその発狂と同時に何かを叫んだ。それで俺は、発狂元に目をやると、発狂しながら水の刃を発生させて、俺に切りかかって来る禿ではない方のリーダー格の男が見えた。


 やべっ殺さなきゃ俺が殺される。


 そう咄嗟に判断して全力で剣を横薙ぎに振るう。あたれば確実に上腹部と下腹部が切り離された一撃だったが


「本当に危ないですね。でも躊躇が無いのは素晴らしいですけど、私の評価に傷が付くので『今は』やめて貰えますか?」


 俺の剣を手のひらの魔法障壁で止め、リーダー格の男の腹部に拳をめり込まして昏倒させたジンが()みを浮かべながら俺に言う。


 俺はその笑みに再び悪寒が走り、咄嗟に飛び下がり抜刀の体勢に入り。


「アンタ何者(なにもん)だよ……」


 俺は冷や汗を額から流しながら言うが、


「ヒルトー大丈夫か?」


 グランが近寄ってくる。それを見たジンは、嫌な笑顔を浮かべてから背をむけて


「終了です。素晴らしいレクリエーションでしたね。皆さんも主席と次席に負けないよう頑張ってくださいね」


 と言い、次の組み合わせを発表する。


 他の対戦中グランは俺にジンが何をしたのかを話してくれた。

 そして、あの人に教えて貰えないかな、とか言っていたが俺はあのジンという先生を信じれなかった。



 初日の授業も終わり帰り仕度をしていると、


「最初は無視していてゴメンな。貴族相手に喧嘩を売るから後が怖くて、話せなかったんだ俺達。でも、平民平民と馬鹿にしていた貴族を倒してくれてありがとう。スカッとしたよ」


 クラスメートの奴らが俺とグランに声を掛けてきた。 

 話を纏めると、特にあいつ等9人は身分を笠に着て、平民出身者を馬鹿にしていてヘイトを溜めていたらしい。そして、称賛された事で俺とグランはこの騎士課の中心になった。それ以降、一部の貴族グループの嫌がらせは無くなった。


 もう少し俺は教室で話していたかったが、師匠の事を思い出して俺は直ぐにその場を後にした。グランは、暫く残ると言って残った。 


 翌日の早朝鍛練の時フランとエイルに初日の様子を聞いたが、俺達と同じで貴族と平民で一部イザコザがあるとの事だったが、2人は問題なかったそうだ。

 その後数日過ごしたが、特に問題なく日々は過ぎていった。一つ問題があるとすれば、武術の授業がツマラナイ事だろう。リセィアム先生自体弱い訳ではないが、先生でも練習相手にならないのだ。その為、俺とグランで模擬戦ばっかりしている。




「――こんな感じですね。わりと問題ないと思いますよ」


 俺は、掻い摘んで上記の事を思い出しながら師匠に話す。


「……貴族との問題のう……その問題をあまり煽るでないぞ。余りにも大きな動きは時として全てを巻き込んで破壊を起こすでな」


 師匠は顎髭を触りながら難しい顔をして言う。

 俺はその言葉の真意を元の世界の出来事に照らし合わせて考えたが、理解できなかったが。


「わかりました。どちらの味方もしませんが、酷い事が起きればどちらの味方もしますよ」


 俺は自分の正義を言葉にする。

 だってそうだろう、貴族であろうが、平民であろうがイジメのような事が起きたりしていて、それを見て見ない振りをして過ごすなんて事、俺には決して出来ないし、したくない。


 俺の言葉に師匠は悩んだ顔をしながら俺の目を見て


「ふむ……あまり自分の力に溺れるで無いぞ。常に己を律し、常に己を磨き、全ての事柄を半面だけで判断しては成らんぞ。わかっておるな?」


 師匠は少しだけキツメの言葉で言い。そして、少しだけ悲しい顔をした。


「わかっていますよ。その教えはここで弟子になると決めた時に、師匠に誓ったじゃないですか」


 俺は休憩を終えて、何時もの注意だろうと師匠の表情を見ずに次の打ち延ばしの準備をしながら、返事をした。


「なら()いのじゃがのう……心配じゃよ御主は……」


 小声で言うエイズル師匠。


 俺は何か言いましたか? と言うが、イやなんも言っとらんよと言いながら俺の打ち伸べ作業を見守るポーズを取る。



 再び俺は圧延作業を始める。


 大きな鎚からはじめ最後に行くにつれて小型の鎚に変えていく。鎚を変える理由は小型の方が細かい鎚目にできて均一な厚み調整をおこなえるからだ。

 しかし、小型のナラシ鎚※は角を落としていない物を使うため少しでも角度が入ると鎚傷※を付ける事になる。このナラシ過程で何度も鎚傷入れてその度にドヤされた事か。

 そんな思い出を思い出しながら慎重に最終ナラシを行う。


 最後に焼き入れ※のために湯に入れる。湯と言っても水ではなく油だ、温度は75℃~79℃で行なう。赤黒い金属が液体と触れると蒸発する音が響く、手に伝わる振動を頼りにユックリ全体を沈める。


「師匠……どうですか?」


 俺は湯から取り出した延べ棒の油をふき取り師匠に渡す。

 すると、何時もの様に光で面を確認してから触診を行い、


「ふむ……まだまだ甘さは残るが合格点じゃろう。しかし、ここまで早く習得するとはのう。タングの苦労が目に浮かぶわ」


 そう言い笑う。

 俺は、ようやく合格点をもらえた事で小さくガッツポーズをとる。


 しかし


「じゃがのう、最低ラインじゃからの。これ以下は許さんぞ」


 その一言で俺は、この先更に厳しくなる事がわかり


「師匠~」


 情けなく抑揚のついた言葉を発すると


「ははは、じゃが次の段階に入れるぞ。ウーツ鋼の製法工程じゃ。嬉しいじゃろ?」


 その言葉に俺は飛び上がるほど喜ぶ。

 念願のウーツ鋼の秘密を知れるチャンスだ、元の世界ですら復元不可能と言われた代物をこの手で作れるなんて思うと、居ても立っても居られず。


「師匠、今すぐやりましょう。早く」


 俺はエイズル師匠の肩を掴みながら言う


「まてまて先ずは、素材の説明をしなくてはならんが、御主はウーツ鋼の事をどの程度しっておるんじゃ?」


 エイズル師匠は俺を木台に座らせてから質問してきた。


 元の世界での伝記とこの世界のウーツ鋼を照らし合わせながら、俺は答える。


「その切れ味は鋭く、その上頑丈で刃こぼれすらせず、曲げても折れない。そして、錆びない素材だと認知しています。材料は……鉄の合金という事しか」


 俺の剣に使っている不銹鋼も、ウーツ鋼を再現する過程で誕生した金属素材だ。鉄を素材とした金属合金なのは確実。でも、製法も合金比率も添加物も不明なのだ。


「そうじゃのう。すこし大げさじゃが大方の見方はおうとるのう。剣の素材としては、人間が作れる素材の中では最適の物じゃ」


 少し自慢げに話すが、どこか悲しそうだったと感じたが。


「師匠! お願いします。製法をお教えいただけないですか?」


 俺は我慢ができずに、師匠に本題に入るよう土下座する勢いでその場で頭を下げる


「さっきから言っておるじゃろう教えると。素材の事となると我慢の効かんヤツじゃな」


 少し呆れたという感じをだしながら、一つの坩堝をとりだす。


「なんですか? 坩堝なんて出して」


 俺は坩堝を覗き込む。中には木炭と一緒に砂のような粉が入っている。


「それがウーツ鋼の材料じゃよ。砂鉄に硼砂、透輝石、褐鉛鉱、苦土白亜※ 其々を粉にして詰めてその上に木炭を入れるのじゃ」


 俺はその言葉に絶句した。

 鉄以外全て精製していない原石をそのまま粉にしているだけなんて、余りにも原始的な素材群なのだから。


「冗談ですよね? 師匠」


 師匠は首を振り、坩堝に蓋をすると高炉の中に入れて、


「まぁ見ておれ、今日の感じじゃと……3時間位かのう。それまでワシと原石の仕分け作業じゃ」


 そう言うとどこからか大量の袋を持ってきて、中を見せてきた。


「えっと……全て原石の宝石ですよね?」


 そう中身は濃緑色の石や赤みの強い褐色の石が詰まっていたのだ。


「何を言っておるんじゃ? これは全て材料じゃよ。ほれ、ぶつくさ言っておらんで仕分けをするぞ」


 師匠はその後、仕分けの仕方、使える石の見分け方を教えてくれた。

 なんでも色の濃い物を使用しないと失敗するらしい。俺はその教えの通り仕分けをするが、2割ほど使えない石が混じっていた為叱られたりしながら時間が過ぎていった。


「そろそろ頃合かのう」


 師匠は徐に炉の方に行き、中から坩堝を取り出し床に置くと再び仕分けをし始める。


 俺はその行動を質問すると、自然に冷ます為と言ってから、見てわからんか? と少し怒られた。

 理不尽だと思ったが、何でも聞く俺も悪いと思い反省した。 


 全ての作業が終わった頃


「もう冷めておるじゃろう」


 俺は師匠と共に坩堝を見に行く、まだ陽炎が出ている所を見ると温度は200℃は有るだろう。


 しかし、師匠は坩堝を水槽に放り込んだ。


「え? 割れ……」


 案の定、坩堝は急冷された事で水槽内で、破裂音と共に砕けた音がした。


 水の沸騰が止んだ時


「ホレ、成功じゃ」


 師匠は水槽の中から一つの塊を取り出して、俺に渡した。


「嘘だー、インゴットの状態で模様が出てる」


 俺は渡されたインゴットを見て驚いた。


 上には真っ黒なガラス層が形成されていたが、その下にある少量の金属塊にはウーツ鋼特有の文様が形成された塊になっていたのだ。


 俺が口をパクパクとさせていると


「じゃから言ったじゃろう、これがウーツ鋼の製造方法じゃ。種が解れば簡単なもんじゃろう」


 軽く言う師匠。


 しかし、俺は納得がいかなくて、


「でも師匠、こんなに簡単ならもっと知られていておかしくは……」


 自分の言葉で俺はハッと思った。

 簡単だから消えた精錬法……この異世界でも元の世界でも精錬された物や鉄鉱石を使うから、そもそも純度が全て高い。

 最も原始的な精錬が最高の素材を作るのは、玉鋼の例を見れば明確な事実だ。


 その事を考えながら師匠を見ると


「気が付いたみたいじゃのう。一定の素材を作る事はできんし、そもそも大量生産にむかんのじゃ。廃れた理由がわかったかのう? まぁ此れは先代のやり方でのう、本来は――」


 師匠の言葉の途中で後ろの扉が開き


「エイズル来てやったぞ。俺も暇じゃないんだぞ、もう少し事前にだな」


 スランが姿を現した。


「え? なんでここに?」


 俺はスランが来た理由がわからず疑問符を浮かべて質問した。


「丁度よい時に来たのう、ヒルトに見せてやってくれんか?」


 師匠がスランにさっき仕分けしていた袋を渡しながら言う。


 その袋を受け取ったスランは


「人の話を……まぁ、いつも世話になってるからしゃーないか」


 そういうと、机の上に原石を置き手をかざし


「ツェアレーゲン・ジウェ」


 そう言うと、机に魔法陣が出現してから原石が全て砂になった。

 そして、その砂はそれぞれの色によって分けられていく。まるで意思を持った生き物の様に動いてだ。


 俺は、全ての原石が分解され終わるまで驚愕しながら見ていた。


「さて、この袋に入れたのさっきと同じ分量の原石じゃ。それをスランに分解してもらったが、この意味が解るかのう」


 師匠の質問が聞こえて俺は我に返って


「もしかして?」


 ニっと口角を上げて笑う師匠。そして一種類ずつ袋に詰め直してから秤に載せて


「これなら、一定の配合比率が確保できるぞ。後のう、先代のやり方じゃとガラスばかりでのう武器には向かんのじゃ」


 そのやり取りをしていると


「まさか、これだけの為に……」


「そんなわけ無いじゃろう。ほれ、こっちの屑石も頼むぞ」


 後ろで騒がしくやり取りをしはじめる師匠とスラン。多すぎるだろとか、孫の為に頑張らんかとか、色々聞こえて来たが、俺は秤の数値を記録する事に熱中した。


 

 『その数日後』


「師匠ー! 出来ましたよ」


 俺はここ数日で25回以上の失敗を重ねたのち、ようやく完成したウーツ鋼のインゴットを手にエイズル師匠の下に駆けていった。


「ヒルトや……納得いくまでするのは良いが……この在庫はどうするんじゃ?」


 俺がこれまでに造ったウーツ鋼の延べ棒を指差して頭を抱えるエイズル師匠。


「それより、今回の物を見てくださいよ。前回の物より模様も均一な木目文様ですよ」


 俺の言葉を聞いた師匠は、


「いい加減にせんか! この山積みを見よ。いったい何本の剣を作るつもりじゃ? 最近では、ワシのウーツ鋼より質が良いから捨てるに捨てられん。たちが悪い冗談じゃよ全く」


 その後小声で、タングも同じ気持ちじゃったのかのう? と言った。


 そう俺が失敗としてきたウーツ鋼は自分で納得がいかないからだ。

 最近までそれ等は、スランに分解してもらい再利用をしていたが。質が上がるにつれて師匠が勿体無いと言い、溜めるようになったのである。

 後は、毎回朝の修練終了後、分解作業をしていたスランからも苦情があったのは後に知った事だ。


「すいません。でもどうしましょうか? この新しいインゴット。こちらの方が質が良いんですが? それ全部作り直しますか」


 俺の発言に頭を抱えて首を振る師匠。その後、新しいインゴット製作を全ての在庫が無くなるまで禁止されたのは言うまでも無い。



  そして数日後の早朝。


「ヒルト君……これ、本当に貰って良いの?」


「これって、買ったら幾らするの?」


 フランとエイルに約束していた武器を作って渡したら、こんな質問が返ってきたので。


「試作品だからな。でも約束の物としては自信作かな」


 俺は軽く流したが、


「おいヒルトそれ、俺がエイズルさんから貰った剣より凄くないか?」


 グランが口を挟んだ。


 確かに、ウーツ鋼だけで出来た武器じゃないし、ヒエログリフも施したから確かにそうだけど。


「でもまぁ、今の師匠の武器と比べたら微妙だぞ?」


 俺の言葉に、三人が嘘だーと叫んだが嘘じゃないんだよな…… 


 そう思っていると、


「今日は悪いが、この剣の試験に付き合ってもらうぞ」


 俺と師匠の合作の剣を携えてスランが修練場所に来て言う。


 俺は正直ワクワクしたが、グランとエイルにフランは、その剣を見て固まった。





後日です。 


ナラシ鎚※ 最終に使う鎚。普通の唐紙鎚は鏡側が若干曲面をとっているが、ナラシ鎚は平に仕上げてある。その為、鎚目を消す事ができるので、ナラシと呼ぶ


苦土白亜※ くどせっかいの事です。 肥料ですね。


ウーツ鋼 余談

予想ですが、本物は鉱石のまま坩堝に入れて作ってたのではないかと私は考えてます。現にインドで取れる鉱石と再現ウーツ鋼の添加物組成がほぼ同じなんですよね。 再現でも石英を添加していますので、もしかすると鉄鋼石内に宝石類の混入していたんじゃないかな? あと、木炭を入れる理由ですが不純物除去が目的です。 あとは低温での融解だった可能性もありますけどね。


焼き入れ※ 純粋に金属を硬くする技法なんですが、水には浸けません基本。 湯と有るとおり、お湯もしくは油に浸けます。今回、油にした理由ですが、過去、刀匠にとって湯の温度とは秘匿するべき事だったんです。もしも弟子が湯の温度を知る為に腕を浸けたなら、その腕を斬り落とすといった事が在ったとか。 まぁ一人の継承者に伝える事はあったとは思いますが基本秘伝ですので、消えたモノも多いんじゃないでしょうかね? 今では化学的に調べて最適な温度を割り出していますけど、過去の偉人は気温湿度でコンマの世界で微調整をするといった、化け物じみた人達です。しかも、温度計無しでね、私の知っている常磐職人さんで、輸送時の気圧変化による変形を計算してから、依頼者の作業場に到着した時に完璧な水平になるように ケサゲという道具で調整する狂人がいます。 本当にあのレベル人達の目は人間の物なんですかね? 多分機械より正確ですよ。 


次回ですが正直わかりません。もしかしたら3週間空くかもだしそれ以上の場合も有ります。まぁ、こんな事言ってまた早いなんて事も有るんで、あれなんですけど。失踪は無いんで安心してください。



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