第11話 蟲の結末と黒と白と
前話の続きなので、全後編に近いです。
次話投稿は、ゴールデンウィーク以降もしくは3日を予定していますが、春のや新年度開始のため、展覧会やら受注が増えて更に、副業が重なっている状態なので。投稿ペースが落ちます。読んでいただいている方々にはご迷惑おかけします。
5月1、5時に新話を投稿します。 何とか令和に間に合ったぞーーーーー
――――――――――――――――――――――――――――――
「あはははっ。傑作だったろヒルト」
頬に手形をつけて笑うグラン。
「傑作だったけど……なんで俺まで」
俺もまた、頬に二つの手形をつける。
ビンタをした本人達は、後ろで鬼の形相を作っていたが、呆れたとばかりに。
「はぁ、貴方達は本当に反省してるの? 私は、あいつ等に恥を掻かせてくれたから許すけど。でもねっ、フランさん」
「僕も別に怒ってわないけど……でも、卑猥すぎるよヒルト君」
とんだトバッチリの風評被害だ。元凶はグランだろ。
『そうグランの考えとは』
「この魔法は、私から離れると30秒程で効力が切れるからね気をつけてね」
エイルはボロ切れで身体を隠しながら言う。そして、フランも同じようにボロ切れで体を隠している。ちなみにこのボロ切れは奴らの衣服だ。
そして、俺達はエイルの魔法で姿を消して先ほどの騎士達を追い越し、講堂の入り口に先回りして魔法が切れるタイミングで
「騎士さん、友達が……友達がいないんだ、外を捜し回ったが居ないんだ。最後に別れた壇上を最後に……頼む何か知らないか? 本当に少しの情報でも良いんだ、頼みます」
さすがグランだ演技が凄い。
その演技に騎士は騙され
「何があったか落ち着いて話してくれ。必ず力になるから安心してくれ」
グランが作り話しを展開して行く。そして、
「さっき壇上裏で凄い音がして見に行ったが……異常は……しかし、念のために一緒に見に行くか?」
騎士が提案する。
それに乗っかり俺達は入り口前まで騎士と行ってから行動を開始する。
「開かないぞ! エイル、フラン! いるのか」
俺は扉を全力で叩く。
騎士は、さっきは開いていたのにと言いながら扉を引くが開かない。
まぁ、そら俺が全力で引く振りをしながら押してますからね。
そして、打ち合わせ通り
「「きゃぁぁぁぁ、来ないで」」
中からエイル、フランが叫んだ。
「おい、鍵を取りに行け! 急げ」
「わかった」
一人の騎士が鍵を取りに行こうとするが。
「待ってられるかよ」
グランが騎士を押し退けてから、扉に体当たりをしてから、わざとらしく。
「カテー」
なんて言う。
それを確認してから俺は、迅雷を発動して
「全員どけ。邪魔だ!」
扉に対して全力で体当たりをして電圧をかける。すると扉が電圧で爆散した。
予想外だったが、まぁ結果的に爆散した事で内部に煙が発生して視界を悪くできたからな、
そして、
「大丈夫か?!」
一気に俺とグランで突入してから
「何やってやがる」
等と演技をしながらエイルとフランの前に行く
「何があったんだ? 大丈夫か? ……これ……は」
一人の騎士達の表情が驚愕的な物から、
「貴様ら! なんと破廉恥な」
その言葉から鬼の形相に変化する。そしてもう一人の騎士も同様だったが、
「君達、その娘達にこれを着せて上げなさい」
顔を逸らして言い、自分のマントを差し出してから鬼の形相に変わり。二人の騎士は、裸や半裸で転がる五人を睨む。
俺達は騎士の反応に少し疑問を抱きながらも後方のフランとエイルへと向き直る。すると、そこには、爆風でボロ切れを吹き飛ばされてしまい、お互いの大事な部分を隠し合う様に抱き合いながら
怯えた様にする二人。グランは、目をキョロキョロとさせ何処を見れば良いか分からない様だった。
そして俺は、
あぁぁ、そらあの騎士さん達があの形相になるわな。散乱した衣服に、怯えて抱き合う女性、これじゃまるで強姦後だな……
そう思いながらマジマジと見てしまい、エイルに鬼を超える形相で睨まれた。その事で慌てて騎士のマントをかけた。
その時耳元で
「覚えてろよ……」
怨念が篭った言い方だった。
そして、
「この破廉恥者達は、我々が連行する。その女性達を任せても良いか?」
一人の騎士が声をかけてくる。その後ろではもう一人がロープでゴミ蟲達を巻いていた。
てか、そのロープどこから? 等とツッコミたかった。
そして、グランが
「お願いします。本当にありがとうございました。彼らがもう彼女達に近付かないようにお願いします」
少し泣くような演技を入れて言う。
その事で騎士達の怒りのボルテージが振り切れたのは言うまでもない。そのボルテージのまま騎士達がゴミ蟲一行を連行して行き、壇上裏には俺達4人だけになった……俺は一抹の不安と恐怖を感じ、グランはそれに気が付かず、
「どうよ、俺の作戦すご……」
グランは言葉の途中で気が付いたようだ、背後に迫る狂気で振り返る俺とグラン。
「原因はヒルトに有るんだ。爆発させたのは俺じゃない」
――グランのその言葉虚しくエイルの平手音が響く。
次に俺へ迫る狂気は二つに増えていた。グランの一言のせいで俺には同時に平手音が響いた。両サイドからの平手威力は3倍にも4倍にも感じられた。
『そして、冒頭へ』
「それより、とっとと入寮手続きすますぞ」
俺は、この風評被害から逃げたい一心に話の方向を変える、だが
「え? 俺はリジルさんの所に住むんだけど? 試験の時の騎士さんだけど覚えてるだろ?」
「私は、王都に家があるから入寮しないよ」
俺は、嘘だろ俺だけ入寮なのかと思い少し疎外感を感じたが
「あっ、僕は入寮だよ」
フランが少し嬉そうに言う。
そして、フランも入寮なら学園生支援課へと急ごうとなり、俺は心にダメージを負った。
「申し訳ありません。今年は入寮希望者が想定よりも多く……先ほど満寮により入寮手続きが終了になりまして……」
学園生支援課で入寮手続きをする為にカウンターの女性に声をかけての第一声がこれだ。俺とフランは、その女性に抗議したり、温情に訴えたが
「申し訳ありません。現状他にも入寮できない方もいらっしゃるので特別な対応は致しかねます」
無駄だった。途方にくれる俺とフラン。
そこに
「私の家から通わない? 私が巻き込んだ事が原因だし――」
エイルが女神に見えた。しかし……
「ゴメンね、ヒルト君……僕だけが家が決まって……」
「へ? 俺は?」
「何言ってんのよ、女の家に男が泊まれるハズ無いでしょ。スケベ」
俺は喜びの余り聞き逃していたようだ。確かに女の家に泊まれる道理は無い。
俺はグランに救いを求めたが、
「あっ悪い、さすがに二人は無理だと思うぞ」
俺は、絶望した。
その光景に呆れたのか
「はぁ……アンタ確か、エイズル・フェール様の弟子なんでしょ?」
エイルの言葉で俺は、急いで行動に移る。流石に最低1年も宿を取る金も無いし、根無し草の様に転々とする訳にも行かない。その思いから、某青い未来狸よろしく。師匠の店まで走り
「師匠ーー、俺をここに置いてよーー」
工房の扉を開けるなり言う
「なんじゃ? なんじゃ? 来ていきなり」
エイズルは戸惑いながら尋ねてくる。俺は某のび○のように説明すると。
「なんじゃ御主、タングから聞いてないのか? 手紙にここに住み込むように書いてあったぞ」
俺が聞いてないという顔をすると、タメ息をしてから首を振り、タング……と呆れたように言い。俺に荷物を取りに行くように急かした。
俺は、それで荷物を取りに行こうと振り返ると、グランにエイルとフランが後ろで笑ってた。
いるなら言えよとも思ったが、
「丁度良かった。手伝ってくれよ」
後ろから殴られ振り返ると、エイズル師匠が長い鎚を持っていた。
「バカもん、自分の荷物位、自分で運んでこんか。お客さんはワシがもてなしておく」
キレられた。そして、エイズルは新顔じゃな、等とエイルに言い三人を前の様に木台に座らせお茶を沸かす。
俺は、渋々宿に向かい荷物をまとめ、宿主さんから荷台を借りて工房へと運んでいった。荷物を下ろし荷台を全力で往復して、工房に顔を出し
「只今帰りました。荷物はどこに……」
顔を出した俺を、三人が気味の悪い笑顔で迎え、エイズルは俺に近付いてから肩を叩き、
「そう言う事じゃ、最高の武器を二人に作ってやるんじゃぞ。荷物はワシが部屋に運んでおく」
どう言う事? となるが直ぐに判った。
「悪いね、ヒルト君。私とフランさんの武器まで」
「良いのかな? 僕まで」
そして、悪いと言う顔をするグラン。
つまりは、グランだけズルイとなったのだろう。
そう推測していると
「ヒルトや、お友達は平等に扱わんとな。あと、この袋の中身はタングの手紙にあった素材かのう?」
その手には、魔石のルースを入れた袋と何時の間にか紛れ込んでいて一度も開けた事のない袋を持ってきた。
「手紙にあった素材って、ソーンスコルの事かな?」
その言葉でエイズルは頷く。エイルとフランはソーンスコルの名前を聞いて飲んでいたお茶を噴き出し
「え? ソーンスコルって、あの、雷獣のソーンスコル?」
「はわわわわ」
俺に掴み掛かって来る。余程の事らしく質問攻めに遭った。いろいろ納得いかない様子だったが。
「まぁ、君の技を見て似てるとは思ったけど……それより、その白髪の理由を聞いたから納得しとくよ。ぷっ」
「うん……ゴメンね、でも……ぷっ」
含み笑いをされた。自分でも話していて笑い話だから良いけど、グランは、どこか憮然としない様だった。
「話は終わったかのう? スマンが中を見ても良いかのう?」
俺は快諾する。
そして、机の上にある工具類を退かしてから袋の中を丁寧に出していく。中身を興味深々に覗くグランとフランとエイルの三人。
魔石のルースが出た時は、エイズルは、ホォォと感嘆句を述べてから俺の剣と鞘を見て納得する。三人はズルイ等と言っていたが知らん。そして、もう一つの謎袋の番になり、俺も覗き込みに行く。
中身はなんと、ソーンスコル爪やら犬歯以外の歯やらの素材にカーバンクルの魔石まで混じっていた。
俺が、家の為にと置いて来た物ばかりだった。その事で少し複雑な気持ちになったが、中に一枚の紙切れが入っていて、それをエイズルから渡された。
その紙には、
『要らん気を使うな。必要な時に使え。バカ息子が』
とだけタングの筆跡で書き殴られていた。
泣き笑いそうになる俺。そして
「この素材はどうする? どの素材も貴重な品じゃが、使い道が無いなら倉庫に鍵を掛けて保存しておくが」
その言葉は有り難いけど
「師匠、半分だけ使い道が決まってます。て言うより、今決まりました」
その言葉に師匠は少し笑い俺の背中を数度軽く叩いた。よく言ったという事だろう。褒めてもらえたことだし
「てっ、事で、エイルにフラン、明日の早朝鍛練に加入な」
俺の言葉に、エイルとフランは何やら文句を言ってきた。そこで
「いやだってさ、グランとは長いこと剣の鍛練をしてきたから癖や使い方を知っているから良いけど、エイルの癖や、フランの戦い方を全く知らないから、どんな武器を作れば良いか、どんな武器が合うのか判らないんだ」
俺の言葉に対して、エイルは
「魔法師が杖以外の武器を持つなんて無いでしょ、魔法主体なんだから。それに私は回復専門よ」
フランは、それに合わせて頷く。俺はそれについて異論を唱える。
「いや、それは可笑しいだろ。エイルの家系は騎士なんだろ? それなら、技術は有るわけだよな? 魔法師が杖って、近接戦闘を余儀なくされたら死ねって事だろ技術を使わずに。フランも、魔法で防御がいくら出来ても押し込まれてジリ貧になったらどうするんだ? それに師匠、杖と剣って製法も素材も殆ど一緒ですよね?」
二人は話の途中、納得できないという表情だったので、エイズル師匠に話題を振ってみた。
「うん? そうじゃな……魔法騎士が使う物の中には杖と同様に、高位の魔石を埋め込んだ物もあるからのう一緒じゃな。でもまぁ、普通はかなりの大金になって一介の者が手にできる代物ではないがのう」
その言葉を聴いた二人は、驚いていたがエイズルはトドメとばかりに、どこからか一本の剣を持ってきて
「これが、その武器になるな。値段じゃと金貨50枚かのう?」
魔石を柄の中央に添えたウーツ鋼の刀身に金の細工を施した剣だ、
金貨2枚で一級品の武器と防具が揃う事を考えると、とんでもない代物だ。元の世界で言えば『ジャイロトゥールビヨン3・ジュビリー』の腕時計と同じ値段位の代物だろう。
値段を聞いて硬直する二人は置いておいて
「でもなんで、金細工を施してあるんですか? ウーツ鋼はグランから聞く限りだと魔力伝道は良いと思うのですが?」
少しニヤつくエイズル、そして
「金が一番、魔力伝道が良いのは知っているな? それに此の金文様はのう、ヒエログリフ※と言ってのう、魔力を流すとその模様によって様々な効果を発揮する。ワシが名工なんて呼ばれる原因の一つじゃよ。じゃがオカシイのう……タングにも同じ技法は教えたはずじゃが、教えてもらっとらんか?」
親父も極稀に似たような細工をしたり、自分の剣にやっていた記憶がある。でも質問してもカッコイイだろとしか言わなかったぞ。
と内心愚痴りながら首を振ると、呆れたと言わんばかりに頭を抱えていた。
「ところで師匠、文様の模倣とかなら誰でも出来そうなんですけど? なぜ他の職人は真似しないんですか? あと、金以外の材料でも再現は可能なんですか?」
正直後半が本題だ。金なんてバカ高いわりに、強度不足、磨耗耐性のない素材使いたくない。
「ふむ、ヒエログリフの解読が出来ないのと、少しでも文様を間違うとそれこそ危険じゃからのう。以前に模倣した職人がいたが、失敗した上に工房を爆破しよったわ。それ以来模倣者は居らん。あと金以外でも可能は可能じゃ、魔力伝道の異差が大きければ良いからのう。じゃが、技術的に厄介じゃぞ、そもそも此の文様は象嵌※じゃ、金以外じゃと文様が細かすぎてほぼ不可能にちかいじゃろうな、他に方法が有るなら知りたいもんじゃな」
俺は、その言葉で一つの方法を思いつくが、問題はヒエログリフの解読だったが、剣に刻まれたヒエログリフを見て俺は元の世界にあった一つの文字を思い出し
「師匠……この文様の意味って、水の矢を放つ魔法の付与ですよね?」
「なんと、ヒルト読めるのか」
読めると言うより、厨二時代の知識が役にたつなんて……だってこれ『梵字』じゃん。
流石に全て意味が同じとは限らないけど、梵字の神と対応した力だとは察しはつく。
「まぁ……もしかして、この魔法の水って蛇のような形状になったりしないですよね?」
「そうじゃが、そこまで判るのか?」
もう少し詳しく教えてもらう必要は有るが……ほぼ一緒だろう、と思い肩の力が抜ける。
「あのう……もしかして、発現系統以外の魔法も使用って可能なんですか?」
「残念じゃが、そんな便利な訳が無かろう。発現系統と適正範囲だけじゃて。しかし、通常の武器よりは格段に強化された魔法を使用できるうえに、魔法消費も抑えれる優れもんじゃ」
さすがにそこまで便利な訳ないか……しかし、
「師匠、一つ実験したいんですが良いですか?」
師匠は少し不安そうな顔をしたが、一応了承してくれた。
俺は、一枚の銅板の端切れを使い或る梵字を彫り込み、その彫り込みに錫を流し込んで表面を削る。所謂流し込み象嵌※だ。
正直彫って流し削るだけなので2時間ほどでできた。
「フラン、ゴメン外でこれに魔力を流してくれないかな?」
その言葉でフランは嫌そうな顔をしたが、周りの説得とエイズル師匠の押しの強さに負けて渋々実験に協力してくれた。
「えっと、流すだけで良いんだよね? 爆発しないよね?」
物凄く不安そうだな、
でも
「ああ、大丈夫な筈だ。でも、少量だけにしてくれよ、俺も怖いからな」
フランはまたふえぇぇぇ等と言うが、全員の眼差しに負けて覚悟を決めたように目を閉じ、魔力を流す。
すると、フランの足に風が纏い、ホバリングのように軽く浮く。
「えっ? 浮いた?」
「よし、成功だな。フラン移動できるか試してくれないか?」
最初は、普通に歩こうとしてふらついたり、転倒しそうになったりしていたが。
「見て見て」
慣れてきたのか、足首を器用に動かしてのホバリングでの移動を成功させた。
「そろそろかのう……」
俺やグラン、エイルは疑問符を浮かべて首を傾げる。
すると、魔法で金属の壁を生成してその裏に隠れて手招きし始める。俺達はその手招きに従い移動する。
「どうしたんです――」
フランは新しい玩具を貰った子供の様にハシャイでいるため、その事に気付かないでアイススケートの様にクインティプルアクセルを決めた時だった。
足に纏っていた風の渦が四散してコケたと同時に、ヒエログリフを刻んだ銅片から注ぎ込んだ分の魔力が暴走し始め一気に膨張して弾ける。弾けた衝撃で石やら砂利が吹き飛び鉄の壁に当たり金属音を響き渡らせた。
「やべぇ」
衝撃が収まってから俺は感嘆句を言って、フランの元に駆け寄った。
フランは、何が起きたのか理解していないようで
「ふぇ? えっと……何があったの?」
フランは、完全に無傷だった。
俺はアレだけの爆発にも関わらず周囲にしか被害が出ていない事に疑問を持った。
「やはりのう……さっきも話したが模倣に失敗した職人も同様に周囲を吹き飛ばしたんじゃよ。まぁ原因は違うがのう」
エイズルが壁を消してから、俺に近付きながら言った。
俺は原因が違うという言葉に反応してから、フランの横に落ちた銅片を見る。半田が溶けて完全に流れ広がっていた。
それを拾ってからエイズル師匠に渡すと。
「ふむ、錫が魔力に耐えれずに溶けたんじゃな……やはり金以外じゃと危険じゃな、発現する魔法と魔力圧に耐えれないんじゃな、しかし、溶かして流し込むとは考えたのう」
褒められて少し上機嫌になりながら
「そうでしょ。魔力で加熱すれば酸化膜を形成させずに溶かせるので――」
俺の言葉を止めてから真剣な顔で
「しかしのう、全てを理解してない者が模倣すればどうなるか、それは判るな? 御主は解読できるから安心して任せたのじゃが、この被害じゃ。もしも、これが街中で起きたらどうする?」
俺は爆発の痕に目を向けて想像した。結果は言うまでも無く恐怖その物だった。
「わかったな。けして他言するなよ。しかし、一文字でこれとは、あの娘の魔力圧はどうなっておるんじゃ?」
師匠の予想をはるかに超えた物だったようで、もし文様を刻むなら考えろと注意された。
余談だが、師匠の予想では軽く砂埃が舞い上がる程度と踏んでいたが、フランの魔力圧が強すぎてここまで大きな爆発になったらしいと全員が帰ってから話してくれた。
『翌日の朝』
エイズル師匠の店の前に全員が集まったが、
「本当に毎日、この時間にここなの? 学園の授業も有るのよ?」
エイルが、文句を言い始める。
「そうだけど? それに、授業が有るからこの時間なんだけど?」
納得いかないと顔に出すので、続けて俺は、
「嫌なら構わないぜ。武器造らないだけだし、たとえ造っても昨日のアレだぜ?」
その言葉でエイルが押し黙った。その後に
「友達が増えたんだな。この子はもしかして、ロタ家の息女、エイルちゃんかな?」
スランが俺に尋ねてくるので、
「そうだけど、知り合い?」
俺の問いに対して、俺だけに見えるように指を立てた後
「そうか、覚えてないだろうが昔に何度か君とは会っているんだよ。ゼィル……父上殿はお元気かな?」
エイルに話しかけてから、楽しげに立ち話を始めた。
その光景に俺とグランとフランは、嫌な予感がする等をコソコソと話していた。
「すまんすまん、遅くなったのう」
エイルは店の扉を開けながら言う。
そして、なにやら戦闘用のハンマーを担いでいる。
朝の修練メンバーが揃った事でスランが、行くぞ、と合図をして修練場へと出発した。
師匠が付いて来ている理由は本人曰く、俺の監視と、見立ての正確さを計る為だそうだ。
『そして、修練場に着くと』
「今回は人数が多いのもあるが、エイズルの頼みで前半は、ヒルト対エイルちゃんフランシスさんで模擬戦をやってもらうぞ。グランは俺とだ。あちらの監視を頼んだぞ」
エイズル師匠に俺達の監視を頼むスラン。
グランが凄く嫌そうな顔をしたのは置いといて、問題はこっちだ。フランの結界にエイルのは恐らく隠者だ、姿を消されると厄介すぎる。
そう思いながら対抗策を考えていると。師匠が、二人に武器を選ばせている。
「師匠? 何を?……」
俺に満面の笑みを返すだけで何も言わない。そして、武器を選んでいる女性陣は、師匠に対して何やら、本当に良いんですかとか、やったーラッキー等と盛り上がってからエイルが、
「悪いねヒルト。この武器より凄いの作ってもらうなんて」
刃の部分に独特な柄を持つランスを振り上げながら俺に言う。
予感が的中した。又、師匠の武器を越える物を作るようにという圧力だ洒落にならない。むしろ今の状況も洒落にはならなのだが、ただのウーツ鋼の武器だけど、ウーツ鋼というだけで正直不利だ。
自分の試作56号が無事でいられるか不安にかられる。
そして、女性陣の準備が出来たようで、俺は彼女達と向き合う。エイルはさっき振っていたランスを、フランは翡翠色の魔石を施された巨大な鎌を持っている。俺は、その余りにも女性の武器には不釣合いな装備に驚愕する。
しかし、さらに彼女達は、軽々と素振りを始め、わー軽いや、この武器凄いね等と師匠に言っている。師匠は照れている。
見た目だけか? と思いながら、合図を待つ。エイルが前に出てランスを構え、フランがその後ろに隠れると
「では、始めるかのう」
エイズルは、ハンマーでどこから出したのか解らないが横にある銅鑼をならす。その音と共に、エイルが、風を纏って射出された一つの弾丸の様に突っ込んできた。
「はぁ? 風だ? ざけんな」
俺はランスを間一髪で身を捩って回避する。俺は内心、殺しに来ていると判断するが、
「ごめんなさいーー」
とフランの声と共に前方から風の刃が迫る。
俺は剣で防げないと悟りもう一度回避行動を取ろうとするが、左後方から嫌な感じがする事に気がついて、身を低くして右横に飛ぶ。
「惜しい」
エイルの声が左側から聞こえた。もし気がつかなかったらやばかったと焦りながらも迅雷を発動するが、
「ヒルトや、御主は魔法禁止じゃなかったかのう?」
その一言で昨日の修練内容が継続中だという事に絶望する。
俺は、絶望の中、迅雷を解き剣と体術だけで彼女達の猛攻に対処していく。最初こそ押され気味で武器が軽いなんて嘘だろうとか思いながら対応していたが、ランスも魔法も直線的な攻撃だった為、目も慣れるし、位置取りさえ気をつければ遠距離魔法は怖くなくなった。そしてエイルの隠者も音で感知できるため封殺する。
すると、
「女には、手加減しなさいよ。それに、戦い方もヤラシくない? 性癖が出てるよ」
エイルは、俺を罵倒しながらランスで乱れ突きをしてくる。
「何とでも言いやがれ……これで仕舞い」
エイルの突きを剣で滑らせ峰でカウンターを入れるが、透明の圧力に剣が弾かれる。
「させないよ。ヒルト君」
斥力での結界だ。
俺はすぐさま、エイルに脚払いをして体勢を崩させ、フランにターゲットを変え全力で潰しに行く。
「悪いなフラン、先ず防御を潰す」
フランは後方にエイルがいる為、射撃系魔法を封じられている。俺は肉薄と同時に抜刀での横薙ぎ峰打ちを狙うが、
「無駄だよ」
フランは又、斥力の結界で身を守る。
俺は、どうかな? と言い、お構い無しに連撃を叩き込む。流石に魔力的に耐えられないと判断したのか鎌で反撃してくる。
しかし、
「いやぁぁ、来ないで」
「遅いな。そんな物当たるかよ」
鎌の特性上、連撃に向かないうえに、相手に引っ掛けるように切るか、巻き込むしか方法が無いため後方に避けてから、カウンターで結界を割りにいくが。
「ヴァハトゥン・アルディ」
後方からのエイルの声で咄嗟に上にジャンプする、俺の下を水の玉が通り過ぎてからフランの斥力の結界に当たり俺に向けて兆弾する。
はめられた、元々これが狙いかよ。どうせ、後ろから……
案の定、後方から水の玉に遅れてエイルがランスで突進してきている。
「これで終わりだね。ヒルト君」
勝ったという顔を向けるフランだったが、俺が水の玉を剣で斬り裂き、後方から迫るエイルのランスを鞘で脚の下に誘導して蹴る。
エイルは突進の威力を殺せずフランにランスごと突っ込み、結界に接触したランスは斥力でエイルの手を離れ空を舞い、結界も限界からガラスが割れるような音を出し砕けた。
「何が終わりだよ」
地面に着地して、エイルとフランに向き直ると、二人が絡まるように転がっているのが目に入ると、スカートが捲れ上がり下着が丸見えだった。 その事に気が付いた二人は、顔を真っ赤にして
「見んなバカ。ヴァハトゥン・アルディ!」 「いやぁぁぁ。シルフ・パッラ!」
水と風の混合魔法が飛んでくる。
下着に夢中だったために回避不可能で俺はマトモにくらい後方に3回転しながら吹き飛ばされた。
「黒と白の紐……眼……福」
俺は気絶した。しかし、直ぐにエイルとフランの回復魔法により治療され、下着を見たのか見てないかを問い詰められる羽目になった。
そして、その後は俺とグランがスランと模擬戦。フランとエイルがエイズル師匠と模擬戦をする。
それで、第10話冒頭に繋がる。
「本当に悪いと思ってるなら、正直に見たか見てないか話しなさい」
まだ根に持ってるようだ。
そんなやり取りをしていると、いきなりフランがエイルと俺の間に割り込んできて、
「僕も回復魔法使えるんだから……」
エイルとフランの目線が交錯すると、私一人で大丈夫だとか、手伝うとかの押し問答を始めた。
なんだろうこの雰囲気……怖い……基本的に仲が良いと思うのになぜ?
グランも戸惑いを隠せないようで、目を白黒させる。そんな事をやっていると
「ふぉふぉ、青春じゃな」
エイズル師匠が笑いながら近寄ってくる
「師匠、模擬戦の方は大丈夫だったんですか?」
回答せずに笑う師匠。そして、俺の言葉に押し問答をしていた二人が何故か反応して
「聞いてよヒルト君、エイズルさん凄いんだよ」「凄いよ師匠さん」
同時に話し始める。
とりあえず個別に話すように言うが同時の話が続き、大変だった
まぁ要約すると、エイズル師匠は二人を相手にハンマーと魔法だけで手玉にとり、一切の反撃しないまま全ての攻撃を余裕でいなしたそうだ。
俺はその話を聞いて、マジという顔を師匠にむけると
「所で御主等、学園の方は大丈夫なのかのう?」
王都の中心に在り、王都のどこからでも見えるように聳える巨大な時計塔を見るエイズル。俺達も時計塔を見る。俺達は時間を見て、慌てて荷物を持って学園に向けて走り始めた。
「学園が終わったら、ワシの授業もあるからのう。寄り道せずに帰ってくるんじゃぞ」
エイズル師匠が手を振りながら俺に言うので
「わかってますよ師匠」
俺も手を振って答える。 その後、後ろの方でスランの泣き言のような言葉とそれを宥めるエイズル師匠のゴタゴタが聞こえる。
今後も毎度毎度同じ流れが続くがそれはまた別のお話。
ヒエログリフ※ 聖刻文字とも神聖文字とも言われる文字で古代エジプトで使用されていた。現代一番有名な古代文字の一種である。作中では梵字をこう呼んでいるが、漢字の元を辿れば大体が象形文字に辿り付き、梵字などを代表するチベットなどの仏教文字も原型はエジプトからインドに象形文字が入る過程で形成されていき現代に到っている。その考えから梵字になっています。
嵌め込み象嵌※ 透かし彫りをした場所に異種金属を同じ形に切り抜き嵌め込む技法で、後からロウ付けなどをおこなうが、完璧に嵌め込めれば均一なロウ目が形成される。入れるだけなら簡単な分類ではあるが、正直国宝クラスや、熟練した職人クラスの、ロウ付けなくても摩擦や熱膨張・収縮だけで固定できるものになるともう異常である。
流し込み象嵌※ 続けて流し込み象嵌ですが、これは一番簡単な象嵌で、彫りに溶材を流して入れるだけです。後は削って磨くと、打ち込み象嵌・嵌め込み象嵌と表面上遜色ない物になりますが……色がね微妙に違うので気が付きますし、嵌め込みは裏にも文様がでるので
余談ですが、象嵌には、布目や嵌め込み、打ち込み、など多数の種類が存在するが、象嵌の殆どが基本、鏨彫りを施した文様に異種素材を入れる技法で、彫りの断面を逆テーパーで形成して其処に柔らかい金属を伸べ入れるため、技法としては難しい部類である。 克ち込み・もしくは打ち込み象嵌は逆になります。柔らかい地金に硬い金属をロウ付けしてから、打ち入れます。 ご注意を?




