第10話 入学式と主席と蟲と
本当に暖かくなりましたね。
マジで虫が大量に出現して来ましたね。細かい羽虫が一番厄介ですよ
「グラン、回り込め」
「わかってるよ、クソ、貫けねー」
俺達、一人相手に苦戦を強いられている。その人物は涼しい顔で、俺達の剣をいなす。
「連携は良し、だが、魔法を使わないとその程度か、二人とも」
くそ、言い返せない。確かに純粋な剣技のみだと、この男、スラン・サーバーには、手も足も出ない。
「チッ、クソが。これならどうだ。オッサン!」
俺はスラン目掛けて、渾身の横薙ぎを放つ。
「ふん、良い踏み込みだが……切っ先が安定していない」
俺の横薙ぎを、親父や母さんが使う防御法である、剣の勢いを殺す[清流法]というやり方で止められる。
流石、親父の剣の師匠だ。親父や母さんなら、打撃音位は出せる程度には剣技は有るのに、完全に音も、衝撃も無く止められた。
だが、剣を逆さまにして受ける防御法だ、これで完全に動きを封じた。
「グラン、今だ!」
「わかってんよ。くたばれぇぇぇ!」
俺の合図と共にグランが、俺を踏み台にして上空からの一閃。剣は俺が抑えている、反撃はおろか防御も……
ところがスランは、鼻で笑い。
「それで、極めたつもりかぁぁぁ!」
「うぇ?」「うぁぁ」
俺の視界が一瞬のうちに回転する。そして、上空から一撃を加えるはずだったグランも又、一回転してスランの後方へと落下した。
俺もグランも、何が起きたのか理解できなかった。
そんな転がる俺達に、
「筋はいいんだがな。力押しだけじゃ勝てるモノも勝てないぞ。まぁ、今日はこれぐらいにしておくか」
そういって、背中を向けるスラン。その背中を逆の視界で見て、
デカイ背中だな……おっと
「おーい、グラン生きてるか?」
そう言うと
「なんとかな。ヒルトはぁ?」
頓珍漢な事を言う元気は有るのかよ。
そう感じていると
「ヒルト君、グラン君、お疲れ様。大丈夫?」
そう言って、俺達にタオルを持ってきてくれる、フラン。
そして、
「本当に、君達は……毎回毎回、朝から治癒させるとか、私を何だと思ってるんだよ」
そう言って、黒髪ロングの髪をなびかせやって来る褐色の女性。年に似つかわしくない身体付きで、フランと並ぶと、まるで大人と子供、いや、山と平地……それぐらいボディーラインに格差がある。
そう感じていると、俺とグランの間で膝をつき、俺達に手をかざすので。
「わりいな、エイル」
俺が礼を言うこの女性は、医療魔道課主席、エイル・ロタ・フェーデ。治癒に関してはピカイチだ。
学園に入学してからは、俺、グラン、フラン、エイル、この四人で居る事が増えた。
理由は簡単だ。『特選外の上位者』これが原因だ。
本当にどこの世界でも同じで、枠に填まらない者は忌み嫌われ、除外しようとする。無意味な話だよ。
【時は遡り師弟事件、翌日】
約束どおり日課の早朝鍛練の時間、宿から出るとスランが居た。
「ヒルト、では行くか」
そう言い、俺を連れて、王都南区の端に位置する今は使われていない兵舎の方に歩く。
道中、後ろから人影が追いかけて来た。まだ日も昇らない時間だ、起きているのなんて俺達位のものなのに誰だろうかと、思っていると。
「ヒルト、スラン師匠、待ってくれよ。俺も参加させてくれ」
声でわかった。
「グラン、どうしたんだよ? こんな朝っぱらから」
俺の言葉に、今言っただろうと、合いの手をうってきた。そのやり取りを無言で見ていたスランが、
「ちょうど良いかもしれないな。ついて来い」
スランが了承した事で、朝の鍛練の人数が増えた。そして、目的地である兵舎グラウンドに着くと。
「ヒルト、グラン、二人で魔法を使用しない模擬戦を行なうぞ、互いの力量を知るいい機会だろ。今回は、回復役が居ないからな、木剣で行なう」
俺とグランの剣を回収してから、代わりに木剣を渡してきた。準備が整い、剣を構える俺達。
「オイ、グラン、俺に勝てる気でいるだろ?」
正眼で構え言うと
「はぁん、それが事実だろ。剣技だけなら負けねぇよ」
剣を逆手で持ち、左手を持ち手に添える、昔に見たヴェードさんと同じ構えをするグラン。
でもなんだろう? 今まで感じた事が無いザラザラした感じがする。
そう感じていると、
「よし、準備は良いな? ――では、始め」
スランの掛け声共に、一足飛びで動き出すグラン。逆手の利点を生かした変則的な斬撃での戦法。
はん、逆手はリーチを読みにくくする剣技。でもな、
「鍛冶師を舐めんなよ。そんな事で目測が狂うかよ!」
一撃目は一歩下がって避ける。反しの突きは打ち上げて払う。
「あぁん? 舐めてんのはお前だろ」
手首を捻って打ち上げを逸らしながら、体を捻って三撃目を狙ってくる。俺は、――
「そこまで!」
スランが叫んで模擬戦を止めた。グランの剣が俺の顔の横で止まった。
「ちっ……俺の負けかよ」
グランが呟く。
俺の剣の切っ先は、グランの喉元で止まっている。
「引き分けだよ、悔しいけどな」
あともう少し打ち上げの力を逸らされてたら、剣を止められずに、最後の踏み込みと突きを出せなかった。
そう思って言うと、スランが
「お前達は、舞踏会にでも出る気か! 動きがデカイ、特にヒルト。なんだあの魔法の強化有りきの動きは――」
確かに俺は、一撃目を避けながら弾き、カウンターを狙ったけど体がついて来なくて、あの流れになったのは確かだった。
しかし、それ以外にも有るらしく長い長い説教が始まった。途中、説教されている俺に対して、グランがチョッカイをいれしまい、その事で飛び火して更に長い説教になったのは言うまでもない。
それにしても、あの数撃の動きだけで的確に俺達の欠点を言うのは流石だと思った。
「まぁ、説教はこれ位にして。では、俺の剣を交互に受けようか」
そう言うと、悪餓鬼ような表情を浮かべた。
嫌な予感しかしない。バカな事をする時に、親父も同じような顔をするからだ……
「ふぅ、今日はこれ位にしておくか」
予感が的中した。俺とグランは、スランの剣によって地面へ叩きつけられ、這い蹲っていた。
うん、最初は、どうにか受けれてたんだよ? でも、受けれると分かってからは、剣撃が一撃一撃重くなっていき最後には、受けが甘いと言われ、訳が解らないまま天地が回りこの様である。
これが日課になっていくのだが、それは後の話。
そして鍛練終了後、傷が癒えぬまま、昨日師匠から言われたとおりに俺はグランと共に工房に行くことにした。
店に出てなかったので、工房への扉を開けて挨拶をすると
「おおう、よう来たのう……それにしてもえらいボロボロじゃのう、朝からようやるのう」
俺達を見てエイズル師匠が苦笑い交じりで言う。
「そうですよね……ところで昨日、グランも連れて来いって言ってましたが何かあるんですか?」
そうい言いながら俺は、荷物を降ろす。
「ああそうじゃったな。彼の武器を見せてもろてもええかのう?」
俺は、グランを見る。すると頷いて了承するので、
「これなんですけど……コイツの技で刀身がナマッテしまってますよ」
預かっていた剣を渡す。まだ修理をしてない剣を受け取り、検査を始めた。
「うーん、この剣は、刀身が完全に死んでしまってるのう……打ち直しても実戦ではもう駄目じゃな」
その発言を聞いたグランは、少し慌てたように
「俺の技でそうなったのか? 俺が壊したのか?」
いつもと何か違う、そう感じてると
グランを止めるようにエイズルは手を出し
「まてまて、安心せい。それ以前に何かが有って、芯金から破砕が進んでおるんじゃ。表面的なナマリが原因じゃない。それにこの剣はワシが打ったもんじゃ、御主の炎でどうこうなる程やわじゃないわ」
え? その剣、師匠の作品だったのかよ。それにしても特別凄い技術で造られたようには見えなかったけどな。
そう思いながらも、グランが心配で目を向けると、複雑そうな顔をしていた。
「そうですか、直らないんですか?」
「そうじゃのう……」
俺の顔をみてから、グランの方を見直し
「君が良いのなら、この剣を芯金に使って新たに作れば、共に在れるかもしれん。どうじゃ?」
グランは悩み、答えを出せずにいたが。
「なぁ……その剣の命はそれで続くんですか?」
「うむ、姿は変わるがのう」
少し重たい空気が漂う。
「わかりました、お願いします」
グランが承諾した。すると剣を鞘に収めてから。
「ということじゃ、その加工が出来るのは御主だけじゃ、ヒルト」
俺に剣を渡してくる。
正直状況が掴めない。それに、今の雰囲気から考えると、そんなに大事な剣を加工するなんて自信がなく。
「でも師匠、俺には……重すぎます……」
渡された剣が重く感じる。武器の命については考えた事が有ったが、こんなに重い物とは思っていなかった。
「そうじゃな……今の御主なら、無理じゃな。じゃが、加工できるのは御主だけじゃ」
俺は、悩んでグランの顔を見る。
いつも俺に何かを頼む時と同じ顔をしていたが、なぜかザラついた感覚が俺に纏わりつく。それを俺は、大切な物を託すには心元無いからだと思い断ろうとしたら。
「いいぜヒルト。俺はお前に任せるよ。今直ぐじゃなくて良いんだ」
ザラついた感じが無くなる。そして、
「そうじゃな、それに今は材料が足らんからのう。炎にも負けない素材が手に入るまでには、一人前になっておるよな?」
二人が俺の顔を見てくる。
「わかりました。絶対に打ち上げてみせます」
不安では有ったが期待には応えたい。その思いを込めて返事をする。
「決まったのう。じゃが、剣士が武器無しとは格好がつかんのう。どれ手を見せなさい」
グランの手を見てからエイズルは奥に行き、双振りの剣を持ってきて渡した。
「えっ? 何で二刀も有るんですか?」
その事で困惑しているグラン。
「二刀で戦った方が良い。それに、、理由があって片手剣じゃったが、御主の父も元は二刀使いじゃ。何の問題もない」
グランは言葉を出さなかったが驚いていた。その後、グランを師匠が奥へと連れて行き、何か二人で話していた。俺には聞こえなかったが、話が終わり、グランが戻ってきた。その顔は、少しスッキリした感じだった。
そして、俺の前で剣を抜いて見せた。
「ちょっ? それって……」
グランが悪い顔をして
「師匠さんの、ウーツ鋼製の剣らしいぞ」
俺は有る意味羨ましく思っていると
「そうじゃ言っとくぞ。打ち直す時は、その剣を超える事を今約束したからのう。そのつもりでおれよ」
俺はその言葉でデカイ重荷を背負った気持ちになって、固まった。
その後、硬直が解けてからは工房でナイフの修理を見てもらい、駄目だしをされながら一日が終わった。
グランは、工房の裏で試し斬りをしていたようで。修理が終わったと同時に工房に入ってきて、師匠の剣を褒めた後に、〈この剣より、凄いのを造ってもらえるんだよな〉等とプレッシャーを掛けて来たのは余談である。
【翌日】
いつものメンバーである俺達三人は、学園の入学式に参加してる。大講堂の入り口には、生徒、関係者、そして国王も参加するとあって、護衛の兵士達でごった返していた。
そして、俺達が大講堂へと入ろうと入学者証明書を提示して中に入ろうとした時。
「あぁっと、君達三人は壇上側に通す様に言われていますので、ついて来てください」
俺達は、少し困惑したが理由を聞いて渋々ついて行く。理由は簡単だ、各課の主席、次席は式で紹介されるようだ。そ
して、壇上裏に案内されると聞き覚えのある声が俺達に声を掛けて来た。
「ファラさん、それにヒルト君、三日ぶりだね、やっぱり君達が主席だったんだね」
「おう、ノエル。それにしても何だそのマント姿は?」
「お久しぶりです、ノエル君」
挨拶を返す俺達、グランは誰だよコイツと何か睨みつけていたが、なぜだろうか?
そして、俺達の背後から声が聞こてくる。
「おいおい、なんで平民風情のA等がこんな所にいるんだ?」
その声に俺達が振り返ると、深緑の服を着てパルチザンを背負った男と、金の刺繍が施された黒衣のローブを着て漫画に出てくるような杖を携えた男がこちらを睨んでいた。
「おいっ、ノエル様もいらっしゃるんだぞ」
ノエルに気がついて、なにか慌てて姿勢をなおしノエルの前で二人は一礼をしてから。
パルチザンの男が跪いて、
「失礼いたしました、ノエル様。しかし、貴方様がこのような者達と関わるのは権威に関わります」
その言葉を聴いたノエルは、やめて、やめてと、言いながら手で仕草をしていたが、どこか満足そうに感じたのは気のせいなんだろうか?
そして、
「ハルト君、そんな態度を取らないでくれよ。僕達は友達であり、同じ学園の生徒なんだから身分なんて関係ないよ、エリック君もだよ」
そう言って笑顔を作る。
俺は、言葉は正論だと賛同する物だったが、どこか胡散臭さを感じた。それに、あの笑顔も、元の世界でよく見てきた作り笑顔のように見えて仕方なかった。
「ノエル様、寛大な御心感謝いたします」
そういって立ち上がりノエルの後ろに並ぶ。ローブの男も又ノエルの横に並ぶが、俺達を見て小さな舌打ちをするのが見えた。
ムカつきはしたが小物と判断して無視し。それよりも、ノエルの事が気になり
「おい、ノエル。お前っていったい――」
「それよりも、全員揃ったみたいだし壇上に上がっておかないと」
俺の質問に被せるように言ってから、壇上へと進むように合図してくる。後ろを振り返ると、ここまで案内してきた職員らしき人が壇上に上がるように合図している。
ノエルに続いて俺は壇上に上がっていく、後ろを発表時の順位通り並んで壇上に上がる。4席2列でネームプレートが床にあり各自、自分の名前が書かれた場所へ立つ。
ノエル、後ろにハルト・俺の後ろにグラン・フランの後ろにエリック・ エイルの後ろに天色髪の女
この順番にならぶ。
俺達が壇上に上がると講堂内は静かになり一気に視線が集まった。その視線をどこか痛く感じながら居ると、壇上に一人の女性が上がっていく。
そして、壇上中央に立つと辺りを見渡してから。
「これより、王立グランスト学園の入学式を始める。私は今期より、この学園の理事長を務める事になった、スルーズ・エスパダ・ロペラだ。祝辞を述べる前に一言伝えておく、王立グランスト学園は完全実力主義の学園であり、身分に関係なく実力で評価されるべきだった筈だが前理事長と一部の教師により歪められ、今では忌むべき悪習がこの学園に存在している。私は、陛下より元の学園に戻すように頼まれてこの場にいる生徒諸君は、この事を肝に命じて学園生活をおくってもらいたい。そして、以上の理由から、入学にあたり今回は特別に国王陛下からの訓示を賜る栄誉をいただいた。心して聞くように」
理事長のスルーズが、話している途中小さく、雌狐や成り上がり平民風情が、等という罵詈雑言が微かに俺には聞こえたが、国王陛下の言葉が聞こえてからは講堂内の人々は一斉に直立の姿勢になり静かになった。俺は、ワンテンポ遅れたが空気を読んで直立姿勢になる。
スルーズが壇上から降りると入れ替わりで、紅の刺繍が施された白銀のマントをした男性が壇上に上がってくる。全員その男性を確認すると最敬礼の姿勢になり迎える。しかし
「皆、頭を上げよ。この式の主役である生徒が頭を下げる必要はない。また、私は来賓という対場であり、主役の引き立て役なのだ」
そう言いながら壇上の真ん中に立つ。会場がザワつくが俺と一部の教員以外の者は頭を上げなかった。俺が頭を上げている事で更に周囲が更に騒がしくなる。俺は慌ててもう一度、最敬礼の体勢を取ろうとするが。
「ふっははっは、それで良いのだ。皆にもう一度言おう、頭を上げよ」
その言葉で全員が頭を上げ。そして、一部の人が俺を見る。その視線が凄まじく訝しい物だった。
陛下は周囲を見渡し、全員が頭を上げているのを確認して、スルーズに目配せする。
「これより、第45代グラズトルニ皇帝にして国王陛下、クヴァシル・ソル・ヘイムダル陛下より訓示」
一部がまた最敬礼を取ろうとするが。
「頭を下げるな! 先ほども言ったが、私は来賓であり主役は入学生諸君だ。そして、スルーズ理事長が発言した通りこの学園は完全実力主義であり。爵位や地位に媚びる場ではない。この学園の本来の存在意義とは、勉学に励み、武に励み、仲間や学友と支え合うことで、力の有り方、真に国を民を守るとは如何なることか、その答えを見出し卒業していく事にある……しかし、現状この学園では存在意義に反して、爵位をひけらかし特別意識に浸る者、力有る者が力なき者を力で屈服さる者、そのような輩が溢れかえっている。そして、本来それを抑制し導く立場で有るはずの教師までもが増長し特選課なるものを設立する始末。生徒諸君にもう一度言う、真に国を守るとは、真に民を守るとは如何なることか、もう一度、自分に問うて貰いたい。そして、その答えが新たな学園の……いや、国の守り手としての理念になるよう切に願う――」
その発言で、頭垂れる者、目を逸らす者、決意を新たにする者、三者三様の行動をとる。そして最後に
皇帝陛下自ら、格課の主席の紹介を行なう流れになった。一人一人名前を呼ばれて陛下の横に出て行くと、主席に選ばれた理由と各人に対しての激励と、模範で有るようにという言葉をいただいていく。
そして、俺の名前が呼ばれ、横に並ぶと
「ヒルト・レーヴァは、試験で、この国の騎士団長であるスランを敗り、騎士課主席にえらばれた。また、この国随一と言われるブラックスミス、エイズル・フェールの弟子でも有り、その卓越した技術と精神を受け継ぐ者として選ばれた。この学園でも受け継いだ精神を発揮して騎士としての模範になってもらいたい」
その言葉に対し、師匠との関係が陛下に筒抜けな事に驚いたが、こんな場所で変な行動を取れるほどの心臓を俺は持ち合わせていないので、陛下に向き直り片膝をついて
「陛下の言葉を裏切らぬよう、そして、師エイズル・フェールの名に恥じぬよう、一層の努力と研鑽を積む事をここに誓います」
満足そうに頷く陛下。そして、腕を差し出し握手を求めてくる、俺は手を差し出し手を握ると、掴み上げて俺を立たせてから、期待していると一言い元の位置に戻るように促される。俺が元の位置に戻ると、ノエルの名前が最後に呼ばれた、
そして
「ノエル・エイジス、皆はもう知っていると思うが、この者はこの国で唯一勇者の称号を持ち、その称号に恥じぬ力と技術を発揮して、魔法騎士課主席に選ばれた――」
俺は、勇者の称号=/ブレイバーだとこの場で初めて知り。ホントにどこまで漫画や小説の主人公を地で行くんだと、内心突っ込みを入れてしまい陛下の言葉を聞き逃した。
その後、陛下の話も終わり。式は順調に進み、最後に事務から。
「最後になりますが学園寮への入寮希望者は式終了後、学園生支援課にて受付を行ないます」
これで入学式も終わりひと段落と思い、グランとフランに声をかけ壇上から降りようとすると。
「貴族の面汚しのデミ・ヒューマンが、よくもまぁ、顔を出せたもんだな」
等と複数人の声が壇上裏から聞こえてきた。
先の陛下の言葉の後にも関わらず、よくもまぁやるよと思いグランとフランに先に行ってくれと頼み、興味本意で覗きに行く。
すると、一人の女性が五人の男性生徒に囲まれ絡まれていた。そして、女性が五人を睨み何かを言おうとした時、
一人の男子生徒が女性を突き飛ばした。
「なぜお前のようなデミ・ヒューマンが、陛下からのお言葉を頂き、学課主席になれるんだよ。どうせ母親のアルブのように、その体で試験官に取り入ったんだろう。この売女が」
そして、女性の服に手を伸ばした。さすがの俺も、放置するのは寝覚めが悪くなるので
「おい、変態野朗共、女相手に何をやってるんだよ。陛下の言葉をもう忘れたのか? ゴミ蟲」
俺の声で、五人が同時に俺を見た。
うはー、漫画のGの反応そっくり。キメー
等と思いなが睨んでいると、身長が低めの豚のようなやつが、
「あぁ? お前に関係ないだろうスッコンでろよ平民。それとも痛い目見ないとわからないか?」
俺の胸倉に掴み掛かってくるので、顎に剣の柄での一撃を入れると、一撃で失神。内心
はぁ? 避けれないとかマジか? 弱すぎるだろ。
と思っていたら。
「俺達、貴族に剣を向けてるのか? この学園でそんな事をしてただで済むと思ってるのか?」
呆れてモノを言う気力すら出ないでいると、残りの四人が俺を囲み、剣を抜きこちらに向けてから、口々に技名を言って剣に纏わせ、
「平民が逆らうから痛い目を見るんだぜ。この場で全裸で土下座でもすれば命はたす――」
リーダー風の男が言葉の途中で前に倒れた。その背後に人影がある。
「おい、ヒルト楽しいことなら俺も混ぜろよ」
グランが男の後頭部を鞘で殴ったようだ。そして、襲われていた女性を介抱するフランも見え。俺が見ているのに気付いたのか、任せてとポーズを取る。そして、残りのゴミ蟲は何が起きたのか分からず呆然としているので。
「いや、仕舞いだよ」
俺は、迅雷を発動させる。
わざと電撃を辺りに撒き散らすように纏う。その事で電気の弾ける音が響き渡り、残りの男達は 冷や汗をだしながら、倒れた仲間を連れて行こうとしながらも、
「本当に……覚えとけよ……貴族に、貴族に……」
まだ言ってくるので、ニコヤカニ
「そっか、なら焦げてもらおっか。残念だな」
といって、発言する男の前に移動する。
実力からすると俺が目の前に瞬間移動したように見えただろう、そして電撃を足元に落とす。その音で何故か失禁して気絶する男達に俺とグランは逆に呆気に取られた。
「おい、凄い音がしなかったか?」
「壇上裏からだ」
数名の声が聞こえ、俺は
「ヤベ……逃げるぞ」
呆けているグランの頭を叩き、遠巻きに何があったのと覗いているフランと女性の下に行き、逃げるように言ったが。
「ヒルト君どうやって逃げるの?」
その言葉で失念していた事実を思い出した。どちらの出入り口から出ても必ず人目についてしまう。
その事で俺が慌てていると。
「おい、どうすんだよ。もう人が来ちまうぞ」
グランが、俺達の方に慌てて来る。両方の出入り口の方からも声や物音が聞こえてくる。
もう駄目だと絶望していると。
「私に任せて。レーツェル ス カシェ」
小声で女性が魔法を唱えた。同時に
「誰かいるのか?」「そこで何をしている」
と両方から、騎士風の人が二名入ってきた。俺達は覚悟を決めたが、
「誰もいないのか? 確かに凄い音がしたハズなんだがな」
俺達に気付かずに辺りを見回る。そして、
「うわっ、なんだこの水溜りは……」
「また、清掃員がポカをしたんだろう。まぁ、異常もないようだし、水溜りの事だけ報告しにいくぞ」
騎士達は確かに聞こえたはずなんだが、等と話しながら出て行った。
「ふぅ……助けてもらった事には感謝するけど、もう少し考えてから助けて欲しかったな。ヒルト・レーヴェ君」
女性が俺の頬に手を伸ばしてきた。そして、手のひらが淡く蒼碧に光ると、俺の身体全体に広がり全身が軽くなった。俺は少し吃驚してから。その女性をよく見る。
すー、どっかで見たような……
「あっ、医療魔道課主席の、えぇぇっと」
「エイル・ロタ・フェーデよ」
そうだったなたしか。でも何で主席のコイツがこんな雑魚に絡まれてたんだ? それになんでやり返さなかったんだろう。
そう考えながらも礼を言ってから、さっきの魔法について尋ねたり、回復魔法が凄かったのでそれについても質問をする。
しかし、途中で
「そんな事よりも、何で、エイルさんは、こんな人達に絡まれていたんですか? それに貴方なら簡単に逃げられましたよね? なぜなんですか?」
フランが、少し機嫌悪そうに割り込んできた。そして
「そうだよな……さっきの魔法なら余裕だろうし、ロタ家って確か騎士の家系だろう。あんな雑魚相手なら」
グランも混じってくる。
そしてグランも機嫌が悪い。そんな空気のせいでエイルは戸惑いながらも話す。
「私は、アルブと人間のハーフ……それでもし、私が彼らに反抗すれば家の者や他のアルブに迷惑がかかるんだよ。反抗なんてできないよ……でも、貴方達を巻き込んでしまったのも事実だよね、本当にゴメンなさい」
そう言って謝るエイル。俺は、そこに転がっているゴミ蟲に殺意が沸き。
「沈めるか」
そういって立ち上がると
「落ち着けって。俺に良い考えが有るんだが乗らないか?」
そういって極悪な表情をうかべるグラン。
嫌な予感しかしない。
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次回は、早めに上げると思います
あと鍛冶回を考えてます




