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異世界なのだから最強の剣を求めるのは普通だろ  作者: 雪兎
1章 始まりと学園と青年紀
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第9話 剣と孫と師と

春が近付き、入学シーズンですよ。

花粉症の方には辛いシーズンの前触れ。そして、出会いの季節……私には関係ないですけどね

リア充爆発しろ。

       【怒涛の試験を終えて翌日】


 早朝の自己鍛練(たんれん)を終え、宿に帰った俺は、昨日グランから預かった剣を眺めていた。


「てか、この剣をどうしろと? 完全にナマッテ※じゃん。打ち締直しとかどこでやるんだよ……あっ、そういや預かった手紙の届け先が、武器工房だったよな、届けるついでに聞いてみるか」


 思い立ったが吉日。そう思い、出掛ける準備をしていた。

 すると、グランとフランが部屋に入ってきた。そして、無言で俺を掴むと、半ば強制的に拉致しようとしてくる。それに対し抵抗したが、俺の抵抗(むな)しく……二人に引きずられながら、目的地まで拉致された。


 目的地で解放された俺は、速攻で文句を言う。


「オイ! 俺はナイフの修理、それに、お前の剣の修理まで有るんだが……どうしてこうなるんだ?」


 俺達は今……王立グランスト学園の大講堂前に居る。目的は、公布された、試験結果を見る事らしいが。

 辺りは、発表を見に来た他の受験者で溢れかえり、結果を見る事すら出来ない。そんな状況に放り込んで、あまつさえ、俺の予定を大幅に狂わせた元凶である、二人に苛立っていた。


「うわぁ、本当に人だらけで、前が見えないね。ヒルト君、グラン君、どうしようか?」


「ヒルト、お前がチンタラやってるから乗り遅れたじゃないか。どうすんだよ?」


 うん、俺の話聞いてた? グラン。

 それを言う事で、発生するであろう時間的ロスを惜しんで。半ば諦めた俺は、 


「なぁ……見に来る必要性有ったか? 通知が宿の方に来るんだよな?」


 俺の言葉に対して、フランとグランは、顔を見合わせてから。


「おいおい、見に来ないといけないだろ。俺達のクラス分けだぞ」


「そうだよヒルト君、ここは、見に来ないと行けない時だよ」


 等と同時に、俺に言ってくる。

 こいつ等お祭り気分かよ、フランは、まぁ良いとして。グラン、俺に剣の修理を頼んだよな? なんで()もあたり前なんだよ。


 そんな感じで俺達が話していたら。


「おおっ、ヒルト、お友達と一緒に来ていたのなら、声を掛けてくれればよいものを」


 爺ちゃん事、騎士団長スラン・サーバーが声を掛けてきた。


 騎士団長スラン・サーバーが登場した事で、周囲の人達がどよめいて、俺達の周りから人が離れて空間が開いた。


「あっ、ヒルト君のお爺さん。いえ、騎士団長さん、おはようございます」


 フランが声を掛けると


「ヒルトのお爺さんで、良いんだよ。フランシスさん」


 凄い笑顔になり、喜んだ様子(ようす)で、言い返していた。だが、


「おい、おっさん。俺は()だ、爺さんだと認めたわけじゃないからな」


 俺の、水を差す言葉により、落ち込んだように表情を変える。


「ヒルト君、あんまりお爺さんを虐めちゃダメだよ。ちゃんと約束したんだよね?」


 しかし、フランの助け船で表情が戻り、その言葉に便乗して何やら言っている。

 俺は、グランに助けを求めるように見るが、頷いていやがった。



 『何でこんな状況になったのかは、スラン・サーバーこと、爺の話までさかのぼる』

 

 俺の話の後、スランが語る。


「お前の母であるクリスは、実は俺の娘でな。そしてタングは、俺の弟子だったんだ」


 妙に真剣に語り始めるスラン。

 まぁ予想はつく、どうせ結婚に反対して。親父達が駆け落ちとかだろう

 そう思って、スランの長い長い娘語りを、話半分に聞いていたら、


「それでな俺は、妻のアリシアに離婚されてしまってな。クリスは、妻に引き取られれたんだ」


「はぁ?」


 爆弾発言すぎる


 その後も長い話が続いたが、要約するとこうだ。

 スランは、アールヴ※との混血児で、母さんはクオーターになるらしい。スランが若く見える原因もこれに起因するらしい。そして、ハーフだという事が原因らしく、母さんがまだ幼い頃に離婚したようだ。

 その十数年後、剣の弟子としてタングが就く事になり、剣術を教えながら半分親のように生活を共にしたこと。その後、なのん因果か知らないが、タングが結婚相手として連れてきたのがクリスだった。しかし、父親だとも言えずじまいで、現在に到るということらしい。


 まぁ、嘘を言う感じでもないし。もう亡くなっているが、祖母さんの名前も合っている。信用しても良いのかもしれないが、


「でも、証拠がないよな? 剣技は確かに、親父(オヤジ)と同じだから、そこは本当だとしても。他がな……」


 母さんとの繋がりが、どうも信用できないでいた。

 そう言ってから悩んでいると、


「これなら、信用してもらえるか?」


 一つのペンダントを差し出してきた。そのロケットペンダントは、母さんが大事に持っていたペンダントと同じ物で、中には一枚の絵が入っていた。


 一度見たことがある絵だった。しかし、母さんの物は千切(ちぎ)れて存在しなかった部分が有った。しかし、この絵にはその部分が存在していて、そこには、若い頃のスランが描かれていた。

 ペンダントを返す時に見たスランの顔は、本当に一人の父親がする、悲しく、哀愁ある顔をしていた。


 信用するしかない、でも


「爺さんだって信用はするよ」


 そう言うと、明るい顔をしたが、


「でも俺は、お爺ちゃんとは呼ばないよ。そう呼ぶ時は、母さんと親父(オヤジ)にちゃんと話した時だよ、スラン・サーバーさん」


 その後の言葉で思う事が有ったのか、色々考えてから、少しだけスッキリした顔をした後、


「わかった。ヒルト約束をしよう。俺は、お前に説明したように、クリスとタングに伝えに行く。その時は、お爺ちゃんと呼んでくれるか?」


 俺は、その言葉を了承した。


「って事が有ってさ。俺のオトンとコイツのオヤジが、同門の弟子関係で俺も、弟子みたいなもんだって話が有ったんだよ」


 俺達が試験終了後、合流が遅くなり、待ちぼうけ寸前で涙目になっていたフランに、勝手に話すグラン。

 その事で、俺のした約束がフランに知れ、現在に到る。



「はぁ……とりあえず、オッサンが話すまでは、身内でも家族でもない。他人だ他人」


 俺は、とりあえずこれ以上話が長引いたり、(こじ)れたりして、この後にある、用事が終わらない事だけは避けたかった。だから話を切るために、他人だと発言した。


 すると、少し反省したのか。


「そうだったな。だが、此処は、お爺ちゃんとして格好付けさせてもらうぞ」


 そう言うと、


「すまぬが、後方の者が発表を見れんようだ、前列で、もう結果を見れた者は場所を譲ってもらえんか?」


 そう叫ぶと、さながら「モーセの海割り」のように俺達の前に居た生徒が道を開け、こちらを見てくる。


「さぁ、発表を見に行くか」


 軽く言い放つスラン。

 俺達は、好奇の目にさらされてしまった。その事でフランは、はわわわ等と声を上げ慌て、グランは、スゲー、マジスゲー等とハシャイでいる。


 頭が痛い……


 割れた道をスランが、騎士団長らしく歩んで行き、その後ろを俺達は付いて行った。巨大な掲示板の前に着いた。距離を開けてだが周囲を野次馬のように、受験生に取り囲まれた。


 いやぁぁ、止めて欲しい。これでもし、結果が悪かったらいい笑いものだぞ。


 そんな、針の(むしろ)の中に居る気分で、自分の名前を下から探す。


「おい、上だよ上、上に俺達の名前が有るぞ」


 俺は、グランに促され掲示板の上のほうに目をやると


 

           順位          クラス

      ノエル・エイジス/ブレイバー 魔法騎士課・特選

        ヒルト・レーヴァ     騎士課

       フランシス・ネロ・セレンス 魔法師課

       エリック・ヴァン・ゼルト  魔法師課・特選

       ハルト・シンス・メイゼン  魔法騎士課・特選

       グラン・ファルカ      騎士課

       エイル・ロタ・フェーデ   医療魔道課

                 Etc


 そう貼り出されていた。


 俺が次席? それにしてもノエルだけ「/」なんだ? あとブレイバーってなんだ?……


 なんて考えていると


「ニル……また、あのような事を」


 スランが、小声で怒気を放っていた。その原因はきっと

 一部のセカンドネーム持ちは、順位に関係なく『特選』と書かれており。上位であっても、没落貴族や一般階級には、そのような掲示は無い。

 その事が原因だろうと推測して、俺は、声を掛けようとしたが。


「すまんな、少し用事を思い出してしまったよ。フランシスさん、グラン、ヒルトの事を頼んだよ」


 そういい残し、再び、割れた群衆の道を越えていった。

 俺達も、邪魔になりそう……というよりも、群集の目が痛かったので逃げるようにその場を後にした。


 帰りの道中、俺達は一軒の武器屋へ足を運んだ。


「すいません、タング・レーヴァの息子のヒルトです。父さんから、手紙を預かってきました」


 俺は、扉を開け声を掛けた。しかし、店内は暗くてとても営業してるようには感じなかったが、武器だけが怪しく光を放っていた。


 奥から大きな金属音がしてから、


「なんじゃ? 今日はもう店仕舞(じま)いじゃ、帰った帰った」


 そう言いながら、ススにまみれた顔で、身体に似つかわしくない大きさの鎚を担いだ、一人の老人が顔を出した。


「あのう……エイズルさんですか? 父から手紙」


 言いかけの言葉を遮るように


「だから、店仕舞いだといっておろう。それに、お前達に武器は作らんと先日にも言ったはずじゃが」


 そう言い、手を払って出て行けという合図をしてきた。しかも、まともにこちらを見ることもなくだ。


 俺は、その人の話を聞かない態度にカチンときて。


「人の話を、聞きやがれ。このクソ(ジジイ)!」


 俺は剣を抜く。


 しかし、ダメだよとか、()めろ()めろと慌てた、フランとグランに止められた。そうしていると。ジジイは、俺の剣に目をやり、


「ほう、御主良い剣を持っておるの。この感じは……タングの仕事か? 腕を上げたもんじゃな」


 顎を触りながら、ジロジロと俺の顔と剣を交互に見る。


 親父の仕事だ? それに、何様だこのジジイ。親父からの手紙を届けるだけで、俺がこんなに不快な思いをしないといけないんだよ。


 再びイラッとして。剣を収めてから、ジジイに見せ付けるように前に出した。


「俺の剣だよ、親父の剣と間違えんなクソ(じじい)。銘も刻んであるだろ、見てみろ」


 俺の剣を手に取り、銘の刻んである持ち手を見てから。


「ヒルト・レーヴァと言う事は。なんじゃ御主、タングの息子のヒルトか! それならそうと早く言わんか。それにしても若いのに良い剣を打つのう。あの不器用もんがここまで教えられるとは」


 感慨深い表情をして、なにやら感傷に浸っている。そのやり取りで蚊帳(かや)の外になる、フランとグラン。


 俺は、頭痛で頭が痛い状態になり。


「いやっだから、最初から言って」


「スマンすまん、こんな所で立ち話もなんだのう。ちいと汚れておるが中に入れ。お友達の二人もおいで」


 俺の言葉をまた遮り。ホレホレと俺達三人を、カウンターの裏へと案内する。その案内に従い中に入る二人。


 俺は、躊躇してから拒むと。強制的に中へと押し込んでくる。


「いや……マジで人の話をだな……俺は、手紙を渡しにきただけで。って……人の話を聞けェェェェ」


 俺の断末魔のような叫びは意味を持たず、三人の無邪気により中に連れ込まれた。


 カウンターの奥の扉を抜けると、工房になっており。中には先ほどまで打っていたであろう剣が湯※の中に浸かっており、炉には火が入っていた。しかし、不思議と熱気を感じなかった。


「で、タングの息子が何の用じゃ? お友達まで連れて」


 そう言いながら、木台を運び、椅子代わりに座るように促し、耳栓を取る。

その光景に、俺は気力を持っていかれ用意された木台に手を着いた。


「「え? 気付いてなかったの」」


 と二人に言われ。気付いてるなら早く言えと思い、更に気力を持っていかれた。


 そうして項垂(うなだ)れていると。


「どうしたんじゃ?」


 そう言いながら、お茶を運んできたエイズル。その光景で、俺は諦めた。


「いえ……あのう、親父から手紙を預かってきています」


 工房の花押印が押された、一通の封書を差し出す。その封書をエイズルが受け取り、封蝋を剥がして中の手紙を見ていた。 

 その間、俺達は出されたお茶をすすっていた。そのお茶は、どことなく日本茶に似た風味がして落ち着いた。まぁ渋みが強かったけどな。


 手紙を読み終えたのか、


「ヒルト、御主の剣をもう一度見せて貰えるか?」


 俺は、真剣な目をするエイズルに気圧された。その真剣さに、剣を丁重に渡した。


 渡した後は、歪みの有無や剣のツクリ、刃の状態などを、細部に到るまでジックリ調べ始めた。

 時々、頭を(かし)げる仕草が見られたが、最後には納得して、


「フム、かなり特殊な割込(わりこ)み造り※のようじゃが、軽すぎるのう……いや、バランスが取れとらんのか?」


 ブツクサと独り言を呟き、俺の目を見てから。


「ヒルト、ワシの工房で剣を打ってみぬか?」


 はぁ? 何言ってんだ? このジジイ。


「爺さん、悪いがさ。偉そうな事を言う割りに、ショボイ剣しか打てない人の下で打つ気は無いよ」


 湯に浸かっている剣や、店の剣を見る限り、親父の物よりランクが低い。むしろ、俺の剣よりも劣る物しか無い。そんな人物の戯言を聞く気はない。


「ふんっ、目はタングの手紙どおり()いか。なら、ちょいと待っておれ」


 工房の奥に行き、飾り気の一切無い、一本の剣を持ってきた。

 どこと無く俺の剣に似た剣だ。


「この剣ならどうじゃ?」


 俺は、ろくでもない物だろうと思い受け取ったが、驚かされた。

 剣は、軽い訳でも、重い訳でもなく、不思議と手に吸い付くような感覚が手に伝わってきた。そして、鞘から抜くと更に驚いた。元の世界では、再現不可能といわれる刀身が姿を現したからだ。


「はぁ!? なんだよこれ、ダマス……いや、ウーツ鋼※?……ありえない! そんな事ありえる訳が無い!」


 俺は、刀身を見て取り乱した。


 それを見て、グランとフランが心配そうにしているが、それどころじゃない。疑心に駆られ、ジジイを睨んでから銘を確認する。

【Ejzer・Feer/Blacksmith】 見る限り間違いない、この人の剣だ。


「ふぉぉふぉふぉ、類似鋼の、ダマスカス※と見分けがつくか。本当に目が()いのう。その通り、ウーツ鋼じゃよ」


 俺は、何にも考えられなくなる。そして、剣を、落としそうになっている事に気がついた。慌てて鞘にしまい、返そうとするが。


「お友達も、気になっているようじゃぞ。そっちの坊主にも持たせてやれ」


 俺は、呆然としながらグランに手渡した。グランは受け取ってから、何やらハシャイでいた。でも、それすら気にならない。自分の中で状況を整理するので一杯一杯(いっぱいいっぱい)だった。


「エイズル・フェール……えぇぇぇ!! (じい)さんが?」


 それの声で、目を向けると。グランが叫んでから、固まっていた。フランも似たように固まっていた。


「なんじゃ、お友達の方が知っておるのか。しかし、ワシはそんなに驚く程の人間ではないぞ。唯の武器好きのジジイじゃよ」


 そういって笑い、上機嫌に他の武器を幾つか並べた。固まっていた二人がだったが、その光景にテンションが振り切れたのか。


「「ヒルト(ヒルト君)、凄いぞ(よ)。名工の武器がこんな身近に有るんだぞ(よ)」」


ハモりながら、俺を揺すってくる。


 どれも、丁重な造りで。中には、美術品や装飾品をも凌駕する輝きを放つ物まである。


 並べられた武器を手に取り、ハシャグ二人。

そして俺も、並べられた武器の一つに目を奪われていた。その一つは、他の物と異質で、全く違っていた。とても質素で、とても簡素に造り上げられていた、黒皮※の剣。不思議と、その一振りへと手が伸びていく。そして、手に掴むと、心を吸い込むような感覚が襲い、俺の身体を支配していった。


「やはり、その剣を選ぶかのう……その剣はこの中で唯一、命を奪う為だけに、鍛えたものじゃよ……」


 少し悲しげで、どこか寂しげな顔をしてから。俺の肩を叩き、


「ヒルトよ、よく聞きなさい。その剣には、ブラックスミスの享受も、名誉も、プライドも、そして、心も無い。そういった物なのだ、決して造ってはならん。そして、目を奪われては……」


 剣に意識を持っていかれた俺には、その声は聞こえていなかった。

 エイズルは、それを察したのか。落ち着きながら、ゆっくりと剣を、俺の手から取り上げた。

 取り上げられた事で、意識が戻り。エイズル・フェールと目が合った。しかし、俺の焦点は剣に向けられてた。それを見たエイズルは、タメ息を吐いてから、


「手紙を見て、まさかとは思ったが、危ういのう……ヒルト・レーヴァ!」


 俺の名前を叫ばれた事で、心が戻り。焦点がエイズルに向いた。俺の状態を確認してから。


「ワシの元へ着け。御主の父、タング・レーヴァの『師』として、責任を果たそう」


 その言葉で、剣に心を支配された事実に気がつき。そして、自身で吐き捨てた言葉が徐々に甦ってくる。

 天に唾を吐いた、その恥ずかしさで心が押し潰されそうになる。そして、俺は下を向いた。


 しかし、エイズルは


「なにを、恥じておるんじゃ?」


 少し呆れたように言い、俺の肩を掴んでから後ろに向ける。

 押されるまま、俺が後ろを向くと、


「ヒルト、お前凄いじゃんか。あの名工『エイズル・フェール』さんの、弟子だぞ」


「本当にすごいよ。ヒルト君」


 グランとフランの声が聞こえ俺は頭を上げた。目に映った二人は、明るい笑顔で自分の事のように喜んでくれていた。その光景に俺は、心が救われた気がした。


 俺は、改めてエイズル・フェールに向き直り。頭を深く下げてから、


「よろしくお願いします。エイズル・フェール『師匠』。俺に、武器制作を教えてください」


 少し涙が出た気がする……


「ふぉふぉふぉ、()()い。ワシは、師としての責任を取りたいだけじゃ。それに、タングの息子ならワシの孫みたいなもんじゃからな」


 肩を押し上げ、俺の頭を上げさせた。エイズル・フェールの顔は、本当に優しく微笑んでいて、俺を優しく包んでくれた。 そして、


「やったな、ヒルト。俺にもお前の剣造ってくれよ。名工フェールの弟子」


「あー、ズルイヨォ。グラン君ばっかり、僕にも造ってくれるよね? ヒルト君」


 後ろから二人で、俺の肩に腕を廻してきた。はたから見たその光景は、とても美しく見えたんだろう。


 そう盛り上がっていると、扉が開く音がした。


(えら)くにぎやかだが、何かあったのか? エイズル。あと、俺の武器は出来上がってるか?」


 スランが顔をだした。それを見てエイズルは、


「なんじゃスランか、お前の武器か……完全に忘れておったは。はははは。許せ」


「エイズル、それはないぞ」


 そういって、何か抗議をするスラン。仕方ないと、適当なロングソードを手に取り。


「仕方ないのう、当分はこれを使え。これからはチト、弟子のヒルトを鍛えるので忙しくなるでな。ひと段落したら。とっときのヤツを打ってやるから、許せい。ワシと御主の仲じゃろ」


 俺の名前がエイズルから出た事で、錆びた機械のように首を振り周囲を確認した。その事で、俺達がこの場に居た事にようやく気がついたらしく。


「何で、こんな場所にお前達が……」


 暫くの沈黙の後、焦ったように、


「それよりも、本当にエイズルの弟子になったのか? ヒルト」


 俺の肩を掴んでくるが、


「おう、親父の師匠だし、俺の事を孫だと言ってくれた人だよ……当たり前じゃん」


 俺が即答した事で、俺を掴んでいた手のターゲットが、エイズルへと変わり。取り乱したように騒ぐスラン。

 それを鎚で撃退したエイズル。撃退されて、暫く沈黙していたが突如立ち上がり。何をトチ狂ったのか急に、


「ヒルト! 剣の弟子になれ。俺が、剣術を教える」


「はぁ?」


 なぜそうなる? 剣は学園でも教わるし。それに、エイズル師匠からの、教えを受ける時間が削られるのは嫌だ……。

 そう思い答えを言おうとしたが、余りにも悲壮な顔をするスランに同情して、躊躇していると。小声で


「ヒルトよ、弟子になってやれ……アレでも、こと剣術に於いてなら、国随一なんじゃ。習って損はせん。あとのう、これはヤツの友人としての頼みじゃ。御主の祖父でも有るんじゃから。少しは優しくしてやってくれい。見ておれんわ……」


 エイズル師匠が、すごく可哀想な者を見る顔で、スランを見ていたため。俺は、不本意ながらも


「わかったよ、スラン……さん。その代わり、早めに約束を果たして……」


 スランは、水を得た魚……いや、九死に一生が正解かもしれないが、超上機嫌になり。


「明日の早朝鍛錬は、俺が教えるからなぁぁぁ。こうしちゃおれん。エイズル、祝杯じゃぁぁぁ」


 そう言って、エイズルを拉致して工房から出て行くスラン。拉致される途中、必死にエイズルが一言


「明日、その坊主と共に工房に……スラン、ワシは御主の様に、ぬわぁぁぁ」


 取り残された俺達は、呆然としたままお互いを見てから、


「「帰るか(帰ろっか)」」


 同時に言い合い。

 念のため、店の扉にClosedの看板を掛けて、宿屋に帰った。


おいおい書きます すいません。

ナマッテ※ ナマルとは、金属を熱して柔らかくした状態を言う。鉄や鋼の焼き入れの反対で、焼き戻しもナマス、ナマルと言う。


アールヴ※ 北欧神話に登場する妖精族の総称で、エルフと同一とされるが違う存在です。この作品では、人と殆ど外見的異差が存在しないエルフとして書いてます。


割込(わりこ)み造り※ 金属のサンドイッチ構造で作る事。異種素材でサンドして出来ているため強度が強く折れにくい。 クラッド鋼の和名みたな物です。


ウーツ鋼※ダマスカス※ ウーツ鋼とダマスカス鋼は、混同されがちですが根本的に違います。ウーツ鋼の模様を再現するために、異種素材を重ねて、溶着してから有る程度まで薄く延ばしてから、表面を削って模様を出してから、また、延ばすのがダマスカス鋼

ウーツ鋼は、るつぼ鋼というインゴットを延ばすだけで、模様はカーバイドによるもので、元々インゴットから有るものです。しかも、カーボンナノチューブ構造まで有る金属素材のようで、現代技術でも再現できていません。作中に研究発表された造り方を乗せる予定ですけど、本当かわかりませんのでご了承ください。


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