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ご無沙汰しております。
キルダが湖に飛び込むと、途端に周囲が光に包まれた。思わず目を閉じると浮遊感があり、目を開けると鏡に映る自分の顔があった。
「おかえりなさいませ、お姉様」
声のしたほうに顔を向けると、紅茶を持って私に微笑みかけるローズがいて、隣のカウチにはリードさんが不機嫌な顔で座り込んでいた。
「……ただいま。どれくらい経った?」
「4時間ほどでしょうか。旅はいかがでしたか?」
「掴めたような、掴めないような……なんだか夢のようだった」
「幻などそういったものでしょう」
「そうかもしれない」
「問いかけの答えは見つかりましたか?」
温かいお茶のおかわりを注ぎながら、ローズが言った。
私はその様子を眺めながら考えた。
問いかけ。「13代目が考えていたこと」。
結局第三者からの目線からのことしかわからなかった。
本人がどういった思惑だったのか、キルダが考察しているだけで本人のものではない。
鏡は問いかけに答えていないのだろうか。
だが、
「……そうだね。納得はできた、かな」
本当に知りたいことなど、最初からわかっていた。
この世界に来て、一度も戻りたいと思わなかったことを。
この世界の空気に違和感を覚えないことを。
父が教えてくれた言葉を使う度に、この世界に「帰ってきた」と感じていたことを。
育った家を思い出して寂しくなっても、「戻る」という選択肢はなかったことを。
ずっと考えていた。
父は本当にあの世界の人間ではなかったのか。
私は本当はどちらの世界にあるべきなのか。
父のこの世界での生き様を知ることが全ての答えだということを、鏡は見抜いたのだ。
誰にも言わなかった疑問の答えを得られたということは、真の問いかけに気づかれたということなのだろう。
それは確かに、
私があの国で異質で、
この国では特殊だということだ。
「おい」
私とローズの会話にリードさんが割って入ってきた。
「断り無く国宝を使うとはどういうことだ。使用を感知した魔術局のやつらが慌てていたぞ。なんとかローズの名を出して凌いだが」
「まあ、それは失礼しました。でも何事も無かったでしょう?」
「何かあってからでは遅いんだぞ!夢に引っ張られたまま戻ってこれない可能性だって、」
「ありえませんわ、分かっているでしょう?」
ローズが言い切ると、リードさんはぐっと黙った。不思議そうに眺めていると、ローズはにこりと笑ってリードさんを見た。
「それで?何か伝言があったのでは?リオルド殿」
リードさんは眉間に皺を寄せたがはあと溜め息をつき、私に顔を向けた。
「決行日が決まった。3日後の夜だ。サラは離れに待機していろ。俺が来るまで部屋から出るな」
「分かりました」
私は頷いて、ローズが差し出したカップを手にとった。
水面を見て、どうやら自分は動揺しているようだとわかった。
正直現実味は全く無いが、囮作戦は決定したようだ。
本当に来るのだろうか。
その時が、着実に近づいてきている。
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