22 計画
私はぽかんと口を開いていた。
いきなり「あなたは王族ですよ」なんて言われた時、どう反応するのが正解なんだろう。
どうしたものかと困っていると、それが伝わったようでランスレッド王は軽く肩を竦めた。
「まあ、いきなり言われてもっていう気持ちはわかる。徐々に理解してくれればいい」
そう言って、手元にあった紅茶を飲んだ。
私はいつの間にか淹れられていた紅茶ようやく気付き、慌てて口に含んだ。けっこうな温さになっていた。
ランスレッド王は紅茶を皿に戻し、また息をついて話始めた。
「君は元々20年程度でこちらに帰ってくる予定だったんだ。色々と都合があってね。君に真実を話すかどうかはキルダ次第だったが、結局彼は何も君に説明しないままこちらに送った」
お父さんは、どうして私に何も言わなかったんだろう?
ぼんやりと考えてしまう。
その間にも話は進む。
「で、ここからだ。私たちはある計画を進めている」
「そうですよ、結局計画って一体なんのことだか」
また手で制される。
私はこんなに性急な性格だっただろうか?
気になることが多すぎるのがいけないんだよ。
「そうだね。結論としては、私を殺してアリスを王にするのさ」
本当に楽しそうに、ランスレッド王は私に打ち明けた。
「黒い瞳は元々魔族が持つ特徴なんだ。イレリア王家の初代イレイル王の父親は魔族出身で、彼の名前から黒眼とも呼ばれる。イレリア王家の祖先を知らない国民は、不吉の色として好まない」
本当なら素晴らしい力の証だというのに、とランスレッド王はぼやく。
「双球の黒眼はイレリア王家にのみ現れる特徴だ。歴代王家の中でも1桁しか確認されていないが、魔力持ちであると同時に特殊能力を持つ」
「特殊能力……ですか」
なんだよそのなんでもありな超人。
「そう。内容は異なるけどね。キルダは記憶に関わる能力を持っていて、色々工夫してなんとか向こうでも生きていけたらしい」
ん?じゃあ、もしかして、
「そう。君も何か持っているよ。生まれた時から風の精霊に守られていたっていうし、主力は風の特性なんだろうね」
ランスレッド王はにやにやと笑う。
「黒眼の内容は秀でた魔術師にも把握できない。本人が理解するしかないから、サラが自分はどういった力を持っているのか判断しなければならない。これはおいおいだな」
とにかく、とランスレッド王は続ける。
「つまり不吉の象徴である黒眼を持つ人間が王になることに反対するやつらがいるんだ。というよりも、セント・ラ・ルーア公爵家が自分の家の人間を王にしたがっているんだよ。彼らは時期王が自分の家の出身じゃないと満足できないのさ」
なあ?と後ろに控えるフォーラさんを振り仰ぐ。
「そうですねぇ。私がランス様付きになる時も、とやかく言ってきましたからね」
「おまえとセントの三男坊が拮抗していたからな。まあ人格的にフォーラが順当だ」
ジークさんがうんうんと頷きながら言う。
フォーラさんは肩をすくめてどうも、と答えた。
「しかもあいつら、女王に対して反感ありすぎなんだよなー。一時期女王だからって理由だけで俺の決定に反対したんだよね。あれはうざかった。宰相にも迷惑かけたしな」
「まあとにかく、成人していてすぐに主権を取れるアリスが一番危ない。ローズ姫は成人前だから、言いくるめてとにかくセントの男を婿にさせるつもりだろう」
ジークの補足に対し、ああ嫌だ嫌だ、とランスレッド王はぼやく。
「そこで、アリスが敷地内にいると噂を流して主犯を現行犯逮捕、さらに王宮に賊を乱入させて14代国主の命を亡き者にした犯人をアリス側が捕らえる。これが俺たちの計画だよ」
簡単だろ?とランスレッド王は私に笑いかける。
なぜこの人は、自分が死ぬための計画をこんなに楽しそうに話せるのだろう。
私には、理解できなかった。
この国に来て初めて、私は得体の知れない恐怖を感じていた。
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