14 事件
やっと動き出します。
その報せが届いたのは夕刻前、役所の人間が帰った後だった。
聞いた瞬間、アリスは馬に飛び乗った。
「先に向かう!」
「了解!」
アリスの声にオルティカが答える。
一目散に駆け、街の店に向かう。
着いた時には店で待機していた人間が険しい顔でテントの入口に立っていた。
「どうなっているんだ!?」
「食糧庫に火が付けられた。怪我人はいない」
「そうか」
店の食糧庫は寝泊り用のテントの近くにある。その近くまで侵入を許してしまったということだった。
アリスは渋い顔をした。
「まあ、怪我が無かったのならそれで十分か」
「アリス、サラが居ない」
アリスは目を見開いて目の前の男を凝視した。
普段隊長と呼ばれる男シグは、さらに険しい表情をしている。
アリスは自分より頭1つはゆうに高いシグの胸ぐらを掴んだ。
「なぜだ、なぜおまえが居ながら」
「すまない」
アリスは爛々と目を光らせていたが、深く息を吐いて手を離した。
「すまん、取り乱した」
「あたりまえだ。それよりどうするか、だ」
「いや、検討はついている」
「サラを連れて行ったやつらか?」
アリスが頷くと、今度はシグが目を見開いた。
「まさか、じゃあ」
「そうだ。おそらく計画が最終段階に入った。サラがこちらに来た時点で、あの人は動くことを決めていたんだろう」
「だが、まだ2年じゃないか、そこまで……」
「もう2年、だ。あの人にとっては半年ですら奇跡だったんだから」
アリスはまた深く息を吐き、くるりと踵を返した。すでにオルティカたち芸人やグランド、イルアドが店の前に到着していた。
「あの人のお望みだ。わたしたちは全力で答えなければならない」
「おおせのままに、我らが主」
左胸に手を当て、全員がアリスに向けて頭を垂れた。
アリスはぐるりと見渡し、にやりと笑った。
「さて、まずは正面から。お姫様をもらいにいこう。少し待つか」
アリスは再び馬に跨り、案を練るべく本拠地に戻った。
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