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秘密戦隊シークレットファイブ ~戦隊やってて副業はありなんですか?~  作者: 芦名 雅


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12/19

第11話 子どもとの約束は、在庫切れでは済まされません 中編

 最初に二人が向かったのは、駅前の大型玩具店だった。


 五階建ての商業施設。その三階を丸ごと使った売り場には、ぬいぐるみから電子玩具まで、子どもの夢を詰め込んだような商品が並んでいる。


 しかし、スピンブレイカーの特設棚だけは見事に空だった。


 棚の上には『次回入荷未定』と書かれた札が、申し訳なさそうに下がっている。


「やっぱりないか……」


 レッド――赤城太陽は、空っぽの棚の前で肩を落とした。


「当然だ。正規流通品は発売直後から品薄が続いている」


 隣に立つブルーは、棚そのものではなく、床や防犯カメラ、従業員用の出入口へ視線を走らせている。


「爆弾を持ち込んだ連中が正規の商品へ紛れ込ませるつもりなら、人の多い大型店は候補になる。ただし監視も厳しい」


「じゃあ、ここにはないのか?」


「まだ決めつけるな」


 ブルーは店員へ近づいた。


「すみません。スピンブレイカーについて伺いたいのですが」


「申し訳ございません。本日は完売しておりまして、次回の入荷も未定なんです」


 若い男性店員は、何度も同じ質問を受けているのだろう。慣れた口調で答えた。


「最近、正規の配送業者以外から商品を持ち込まれたことはありませんか」


「え?」


「箱に傷があった、伝票の記載が不自然だった、予定にない納品があった。その程度でも構いません」


 店員の表情が警戒へ変わる。


「お客様、どうしてそんなことを?」


 ブルーは一瞬も表情を崩さなかった。


「海外商品の流通を調査している者です」


「調査?」


「市場に模倣品が出回っている可能性があります」


 完全な嘘ではない。


 爆弾に偽装された玩具は、正規品ではない。市場へ出れば、模倣品どころでは済まない危険物になる。


「そういうことでしたら、店長を呼びます」


 店員が事務所へ向かう。


 太陽はブルーへ顔を寄せ、小声で尋ねた。


「今の、本当なのか?」


「何がだ」


「海外商品の流通を調べてるってやつ」


「必要な説明をしただけだ」


「便利だな、それ」


「お前は使うな。表情ですぐに嘘だと分かる」


「俺、そんなに分かりやすいか?」


「自覚がないなら重症だ」


 数分後、店長が持ってきた入荷記録をブルーが確認した。


 正規品は予定どおりの数量が届き、その日のうちに完売している。不審な業者からの持ち込みも、記録にない臨時納品もなかった。


「ここではない」


 ブルーは店を出ると、端末上の候補を一つ消した。


「次は?」


「商店街の玩具専門店だ」


「よし、急ごう!」


「待て」


「何だよ」


「お前、その姿で歩き回るつもりか」


 太陽は自分の服を見下ろした。


 今の彼は制服姿だった。


「別にいいだろ。学校帰りなんだから」


「問題はそこではない」


 ブルーは周囲を確認し、声を落とす。


「俺たちは戦隊用通信回線を使って合流した。変身前の姿で長時間行動を共にすれば、互いの私生活へ踏み込みすぎる」


「あ」


 シークレットファイブは、互いの裏の顔を知らない。


 太陽もブルーの本名や職業を知らず、ブルーも太陽がどこの高校へ通っているのか知らない。変身前に偶然出会っても、必要以上に詮索しない。それが五人の間にある暗黙の取り決めだった。


「でも、今さら別々に探すのも効率悪いだろ」


「だから変身する」


「街中で?」


「姿を隠せる場所でだ。戦隊として行動すれば問題ない」


「なるほど」


 二人は商業施設の非常階段へ移動した。


「シークレットチェンジ!」


 赤と青の光が弾け、二人の身体を戦闘スーツが包む。


 数分後。


 裏口から姿を現したシークレットレッドとシークレットブルーは、堂々と商店街を歩いていた。


 当然、目立った。


「シークレットファイブだ!」


「レッドとブルーがいる!」


「怪人が出たの?」


 通行人が次々と振り返り、スマートフォンを向ける。


 レッドは笑顔で手を振った。


「大丈夫! 危険がないか見回ってるだけだから!」


「おい」


 ブルーが低い声で呼び止める。


「何だ?」


「それでは今から危険が起きると宣伝しているようなものだ」


「じゃあ、何て言えばいいんだよ」


「地域安全活動だ」


「同じじゃないか?」


「言葉の印象が違う」


 商店街の小さな玩具店も、スピンブレイカーは完売していた。


 次の家電量販店も売り切れ。


 百貨店の玩具売り場も入荷待ち。


 ブルーは店員や配送担当者から、納品時刻、配送車両の特徴、倉庫の施錠状況まで聞き出していく。


 一方のレッドは、店の前にいた子どもや保護者へ聞き込みをしていた。


「最近、どこかでスピンブレイカーを売ってるのを見なかった?」


「ネットならあるよ!」


「すっごく高いけど」


「お父さんが、転売屋からは買わないって言ってた」


「そうか。ありがとな!」


 別の店では、少年たちがレッドを取り囲んだ。


「レッドもスピンブレイカーやるの?」


「最強のパーツは何だと思う?」


「必殺技見せて!」


「玩具の話と戦隊の必殺技は別だろ!」


 そう言いながらも、レッドは一人一人の質問へ律儀に答えていく。


 ブルーは少し離れた場所から、その様子を見ていた。


 レッドは子どもの扱いに慣れているわけではない。


 言葉を選ぶのも上手くない。子どもが泣けば困り、難しい質問をされれば一緒になって悩む。


 それでも、決して面倒そうな顔をしない。


 自分へ向けられた期待に、真正面から応えようとする。


「ブルー!」


 レッドが子どもたちの輪から手を振った。


「こっちの子が、昨日駅の反対側にある店で見たかもしれないって!」


「店の名前は?」


「分からないけど、看板に大きなクマが描いてあるって」


 ブルーは端末へ条件を入力した。


「候補は二店だ。行くぞ」


「みんな、ありがとな!」


 レッドが走り出すと、子どもたちが嬉しそうに手を振った。


「レッド、絶対見つけてね!」


「任せろ!」


 ブルーは、その返事に小さく息をついた。


「また約束を増やしたな」


「約束じゃない。応援に応えただけだ」


「お前の中では何が違う」


「約束は絶対に守る。応援は全力で頑張る」


「結局どちらも全力ではないか」


「当たり前だろ」


 レッドは迷いなく答えた。


 その単純さを無謀と呼ぶこともできる。


 だが、人は時に、計算ではなくその単純さへ救われる。


 ブルーはそれを口にはしなかった。


     ◇


 駅の反対側にあった二店も空振りだった。


 陽はすでに傾き始め、街の建物が橙色に染まっている。


 河川敷の少年と交わした約束は、明日の夕方まで。


 まだ時間はある。


 しかし、爆弾については違う。


 敵対組織がいつ起爆するか分からない以上、一分でも早く発見しなければならない。


 ブルーは人気の少ない路地へ入り、通信端末を耳へ当てた。


『対象組織の協力者を一名確保した。だが、搬入後の経路は知らないと供述している』


 ZEROの連絡員から届く声は、冷静だった。


「運搬担当者は?」


『国内へ入った直後に消息を絶った。組織側に処分された可能性が高い』


「爆弾の起爆方式は」


『遠隔と時限の併用。内部へ傾斜センサーと回転検知装置がある』


 ブルーの目が細くなる。


「回転検知装置?」


『玩具として遊ばれた場合、自動的に安全装置が解除される仕組みらしい。ただし解除から起爆までの正確な時間は不明だ』


「最悪だな」


 子どもが正規品だと思って遊べば、その瞬間から爆発への秒読みが始まる。


『蒼井。状況によっては一般警察への情報開示も許可する』


「まだ早い。爆弾の外見が人気商品と同一だ。情報が広がれば、正規品まで危険物として扱われて混乱する」


『判断は任せる』


 通信が切れた。


「本業か?」


 背後からレッドの声がした。


 ブルーは振り返る。


「詮索するな」


「分かってる。ただ、何か新しいことが分かった顔してたから」


「爆弾には回転を検知する仕組みがある。玩具として遊べば起爆準備へ入る可能性が高い」


「そんな……」


「だから急ぐ」


 レッドは拳を握った。


「どこかに手掛かりはないのか?」


「敵は記録に残らない小規模店舗や個人商店へ商品を紛れ込ませた可能性が高い。だが、この地域だけでも該当する店は多い」


「小さい店……」


 レッドが立ち止まる。


「どうした」


「一軒だけ、思い出した」


「玩具店か?」


「駄菓子屋だ」


 ブルーは無言でレッドを見た。


「子どもの頃、よく行ってたんだ。駄菓子だけじゃなくて、カードとか、小さい玩具とかも売ってた」


「最近も営業しているのか」


「分からない。しばらく行ってないから」


「場所は?」


「ここから走れば十分くらいだ!」


 レッドは返事を待たずに走り出した。


「待て。人目のある場所で全力を出すな」


「急ぐんだろ!」


「限度がある!」


 二人の姿は、夕暮れの商店街から住宅地へ消えていった。


     ◇


 そこは、再開発された大通りから一本外れた細い路地の奥にあった。


 周囲の建物が新しくなっている中、その店だけは何十年も時間が止まったように残っている。


 色褪せた赤い屋根。


 軒先へ吊るされた風鈴。


 ガラス戸には、昔の菓子や玩具の広告が何枚も貼られていた。


『みつば駄菓子店』


 レッドは懐かしそうに看板を見上げた。


「まだあった……」


「知り合いの店なのか」


「小学生の頃、百円持ってよく来たんだ。店のおばあちゃんが、十円足りないくらいならおまけしてくれてさ」


「それは店として問題がある」


「そういう話じゃないだろ」


 ガラス戸を開けると、軽い鈴の音が鳴った。


「いらっしゃい……まあ」


 奥の椅子へ座っていた小柄な老婦人が、二人を見て目を丸くする。


「シークレットファイブさんじゃないかい」


「こんにちは!」


 レッドは元気よく頭を下げた。


「ちょっと探してる物があるんだけど」


「怪人なら、うちにはいないよ」


「玩具なんだ」


「戦隊さんも玩具で遊ぶのかい?」


「俺のじゃなくて、子どものために」


 老婦人は目を細めた。


「そうかい。優しいねえ」


 ブルーが店内を見回す。


 狭い店には菓子、文房具、くじ引き、古いカードゲームまで所狭しと並んでいる。高価な新商品を大量に仕入れる店には見えない。


「スピンブレイカーっていう、回る玩具なんだけど」


「ああ、それなら一つだけあるよ」


「本当か!」


 レッドの声が店内へ響いた。


 老婦人は奥の棚を指差す。


「昨日、若い配達員さんが持ってきてくれたんだよ。注文した覚えはなかったんだけど、今人気の商品だから、試しに置いてくださいって」


 ブルーの視線が鋭くなる。


「配達員の会社名は」


「さあねえ。帽子を深くかぶっていたから、顔もよく見えなかったよ」


「伝票は残っていますか」


「あると思うけど……」


「レッド、商品へ触るな」


 レッドは棚へ伸ばしかけていた手を止めた。


「分かってる」


「今の動きは分かっている人間のものではなかった」


 棚の一番上。


 そこに、赤と銀の箱が一つだけ置かれていた。


 大きく描かれた商品名。


『超高速回転バトル スピンブレイカー』


 見た目は、太陽がスマートフォンで何度も確認した正規品と変わらない。


 少年が欲しがっていた限定モデル、そのものだった。


「やっと見つけたのに……」


「まだ爆弾と決まったわけではない」


 ブルーは腰の装備から、小型の検査端末を取り出した。


「それ、戦隊の道具か?」


「似たようなものだ」


「似たようなもの?」


「細かいことは気にするな」


 ブルーが箱へ端末を近づける。


 低い電子音。


 画面へ内部構造の簡易画像が表示される。


 円盤型の玩具。


 その内部に、本来存在しない金属筒と複数の配線。


 さらに、微量の爆薬反応。


 端末の警告表示が赤く点滅した。


「間違いない」


 ブルーの声が低くなる。


「爆弾だ」


 レッドは棚の箱を見つめた。


 見た目は子どもが喜ぶ玩具でしかない。


 しかし、知らずに買った子どもが遊べば命を奪われる。


「ばあちゃん。この店から出てくれ」


「え?」


「危ない物が置かれてる。俺たちが何とかするから、急いで外へ!」


 老婦人は事情を飲み込めないまま、レッドの真剣な声に頷いた。


「わ、分かったよ」


 ブルーは出口まで付き添い、周囲の住民へ避難を促す。


 店へ戻ると、レッドは棚から距離を取ったまま箱を睨んでいた。


「解除できるか?」


「箱を開けなければ詳細は分からない。だが、振動や回転で安全装置が外れる可能性がある」


「じゃあ動かせない」


「ああ」


「このまま店に置いておくのも危険だ」


「ああ」


「どうするんだよ」


「今考えている」


 ブルーは端末へ目を落とす。


 検査波を最低出力へ切り替え、内部の信号を読み取る。


 時限回路。


 遠隔受信機。


 回転検知。


 そして、画面の隅で小さく動く数字。


 残り時間を示している可能性が高い。


「三十七分……」


「爆発までか?」


「断定はできない。だが、楽観はしない方がいい」


 その時。


 店の外から、金属が地面を削るような甲高い音が響いた。


 ギュイイイイイイン――!


 路地の入口から、火花を散らしながら何かが高速で迫ってくる。


「レッド、伏せろ!」


 二人が左右へ飛ぶ。


 円盤状の物体がガラス戸を突き破り、店内の柱へ激突した。


 木片と菓子の袋が飛び散る。


 円盤はなおも回転を続け、床へ深い溝を刻んでいく。


「何だ、これ!」


「攻撃だ!」


 二人が店外へ飛び出す。


 夕暮れの路地に、異形の怪人が立っていた。


 全身を覆う黒と銀の装甲。


 両肩には巨大な回転円盤。


 胸には競技台を思わせる円形の装置があり、頭部は鋭い刃の付いた独楽のような形をしている。


「クルルルル……ようやく見つけたぞ、最後の一個!」


 怪人は両腕を広げた。


「我が名は、回転怪人スピンドラー!」


「最後の一個?」


 レッドが構える。


「この玩具を置いたのはお前か!」


「玩具?」


 スピンドラーが首を傾げた。


「もちろん、洗脳装置付きスピンブレイカーのことだ!」


「洗脳装置?」


 ブルーの声が鋭くなる。


「爆弾ではないのか」


「爆弾?」


 怪人も聞き返した。


 三者の間へ、妙な沈黙が落ちる。


 レッドがブルーを見た。


 ブルーが怪人を見る。


 怪人は背後に控えるギギンたちへ振り返った。


「おい。あれは爆弾なのか?」


「ギギ?」


「知らんのか」


「ギギン」


「何でお前らまで分かってないんだよ!」


 レッドが思わず叫んだ。


 スピンドラーは咳払いし、胸を張り直す。


「細かいことはどうでもよい! 帝国がばらまいた洗脳玩具は、すでにこの国の子どもたちへ行き渡った!」


「待て」


 ブルーが遮った。


「帝国が製造した玩具と、この店の爆弾は別物なのか」


「知らんと言っているだろう!」


「堂々と言うな!」


「とにかく!」


 スピンドラーの胸部装置が赤く輝く。


「これより、すべての洗脳玩具が発する忠誠電波を増幅する! 子どもたちはギアノクス帝国を崇拝し、やがて全人類が皇帝陛下へ忠誠を誓うのだ!」


 路地の空気が震える。


 目には見えない波動が、怪人を中心に広がり始めた。


 ブルーの検査端末が警告音を鳴らす。


「高周波信号を確認。こいつの言っていることは本当らしい」


「だったら止めるだけだ!」


 レッドは拳を構えた。


「シークレットレッド!」


 ブルーも静かに銃型装備を抜く。


「シークレットブルー」


「子どもを道具にする作戦なんて、絶対に許さない!」


「任務を開始する」


 スピンドラーが両腕を振り上げる。


「やれ、ギギン!」


「ギギン!」


 路地の屋根、塀の上、曲がり角の陰から、量産機兵ギギンが次々と姿を現した。


 その数、二十体以上。


「多いな!」


「玩具の回収と護衛を兼ねているのだろう」


「だったら、まとめて倒す!」


 レッドが地面を蹴た。


 先頭のギギンへ拳を叩き込み、続く一体を回し蹴りで吹き飛ばす。


 ブルーは狭い路地で射線を正確に選び、住居や店へ一発も流さず、ギギンの関節だけを撃ち抜いていく。


「ギギッ!」


「動きが止まった奴から倒せ!」


「了解!」


 二人は言葉を交わすだけで、互いの動きを補い合った。


 レッドが前へ出て敵の注意を集める。


 ブルーが死角から支援し、攻撃を受ける直前の敵だけを止める。


 長く組んできたわけではない。


 互いの私生活も、本当の名前すら知らない。


 それでも、戦場では相手が何をするか分かる。


 レッドが跳べば、ブルーは着地点を空ける。


 ブルーが銃口を向ければ、レッドは迷わず射線から外れる。


「クルルルル! そんな雑兵を倒したところで、洗脳電波は止まらん!」


 スピンドラーの肩の円盤が高速回転する。


「スピン・クラッシュ!」


 二枚の円盤が射出された。


 壁と地面を跳ねながら、不規則な軌道で二人へ迫る。


「右から来る!」


「見えている!」


 レッドが一枚を腕で弾く。


 だが、もう一枚が背後へ回り込む。


 ブルーが射撃で軌道を逸らし、円盤は電柱へ食い込んだ。


「助かった!」


「礼は後だ。店の中の爆弾も忘れるな」


 ブルーの端末が再び警告音を鳴らす。


 数字は、二十九分へ減っていた。


「白石さんたちへ連絡する!」


 レッドが通信機を起動する。


「博士! 聞こえるか! 怪人が出た!」


 数秒後、天才寺博士の怒鳴り声が返ってきた。


『こんな夜中に何事じゃ!』


 レッドは夕焼け空を見上げた。


「昼間だよ!」


『若者が夜遊びとは感心せんぞ!』


「だから昼間だって!」


『何っ! 昼間から寝言を言うでない!』


「今朝は夜中を昼間だと思ってたんだろ!」


『何の話じゃ!』


 通信の向こうで、白石の疲れた声が聞こえた。


『博士、現在は午後五時十二分です。昼間ですので、しっかりしてください』


『白石くん、夜中に寿司など頼んでおらんぞ!』


『昼間です。寿司とも言っていません』


「白石さん! この地域に怪人が出た! 子どもを洗脳する電波を出してる!」


『位置情報を確認しました。残りの三名にも出撃を要請します』


「それと、店の中に爆弾がある!」


『爆弾?』


 白石の声が一段低くなった。


「人気玩具に偽装されてる。あと三十分弱で爆発する可能性がある!」


『周辺住民の避難を開始します。ブルー、解除は可能ですか』


「現場で解析中だ。起爆装置が複数あり、無理に動かせない」


『分かりました。爆発物処理班を向かわせます。ただし到着まで二十分以上かかります』


「ぎりぎりだな」


『時間を稼いでください』


 博士の声が割り込む。


『玩具ならわしにも一つ買ってくれ!』


「爆弾だって言ってるだろ!」


『耳までチーズじゃと?』


「もうピザから離れろ!」


 通信を切った直後、スピンドラーの回転円盤が迫った。


 レッドとブルーは左右へ跳ぶ。


 円盤が二人の間を通過し、路地の奥で爆発する。


「戦闘中に雑談とは余裕だな!」


「雑談じゃない!」


 レッドが怪人へ突進する。


 ブルーはその背中を追いながら、店内の爆弾と怪人の洗脳電波、そして増え続けるギギンの数を同時に計算していた。


 時間は少ない。


 だが、まだ手はある。


 その時、上空から桃色の光が降り注いだ。


「お待たせしました!」


 シークレットピンクが路地へ着地する。


 続いて黄色い閃光が走り、ギギン数体をまとめて吹き飛ばした。


「ずいぶん賑やかな玩具屋ですね!」


 シークレットイエローが剣を構える。


 最後に黒い影が屋根から舞い降りた。


「この電波、精神へ干渉する性質があります。長く浴びない方がよいでしょう」


 シークレットブラックが、細い札を指先へ挟んで告げる。


「みんな!」


 レッドの声が弾む。


 ブルーは短く息をついた。


「状況を説明する。怪人は洗脳電波を拡散中。店内には別勢力が持ち込んだ玩具型爆弾がある。推定残り時間は二十七分」


 ピンクが目を瞬いた。


「別勢力の爆弾と、怪人の玩具が偶然同じ商品だったということですか?」


「そうらしい」


 イエローが怪人を見る。


「随分とややこしいことになっていますね」


 ブラックは静かに答えた。


「最近の怪異より複雑です」


「怪異と比較しないでください」


 スピンドラーが怒鳴った。


「勝手に話をまとめるな! 我が忠誠電波はすでに街中へ広がっている!」


 胸部装置の光がさらに強くなる。


 路地の外では、避難を始めた住民たちが不安そうに空を見上げていた。


 五人は怪人へ向き直る。


 レッドが一歩前へ出た。


「子どもに危ない玩具を配って、心まで勝手に変えようとするなんて許さない!」


「それに爆弾処理の時間も必要だ」


 ブルーが続ける。


「ここからは、五人で止める」


 怪人の回転音が路地を震わせる。


 そして、店内の爆弾では、赤い数字が静かに減り続けていた。

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