もう少しで卒業
ヒルクでしたー
卒業まで、あと少し。
私の周りも随分とうるさい。
ドレインと婚約したのか、とか、結婚は、とか。
いや、そういう関係じゃないし。
適当に流してると、更に噂は広がっていく。
めんどくさいわー。
「私、仕事をしたいの。結婚とかは、まだ考えてないから」
にっこりそう言うと、あと数年で結婚って噂になってる。
ドレインは、もっと適当だ。
「あー、うん、まあ、そのうちな」
そんなこと言うから、いつまでも噂が消えないんじゃない!
でも、この学院とも、もう少しでサヨナラだ。
私は両親のところへ帰って、仕事をする。
「ミサ、、、話があるんだ」
何年ぶりだろう。
ヒルクが話しかけてきた。
「なに?ヒルクっ」
嬉しい。
「あの、実は、、、」
「何の用だ」
ドレイン登場。
なに、このタイミング。
見てた?ねえ、見てたでしょ?
「ここはお前の教室じゃない。さっさと自分のクラスへ戻れ」
周りがクスクスと笑う。
ヒルクが最下位クラスだからだ。
「じゃあ、私がヒルクのところへ行くわ」
ヒルクの手を掴んで教室を飛び出す。
「えっミサ?!」
「それでいい?」
笑って聞くと、ヒルクは立ち止まる。
「あの練習場で話したい」
私達は、手を繋いだまま、練習場へ向かう。
ドキドキするけれど、手は離さない。
もう、掴めなくなりそうで。
「話って?」
「僕、ずっと──」
「邪魔するぞ」
おお、また来たか。
ドレインよ、そのフットワークの軽さ、我が家の商会で働いてくれ。
「なんだよ!さっきから!僕はミサと話が、、、」
「ちょうど良かった。俺もミサに話がある」
ドレインは、ポケットから、小さな箱を出した。
「とても大切な話だ。お前の方が気を利かせろ」
え、それって、、、まさか、、、?
「なんだよ、それ!待てよ!僕の方が、僕の方が、、、」
ドレインは、私の前に跪こうとする。
「やめろーーーっ!僕の方が、ミサが好きなんだ!ミサは、僕と結婚するんだ!僕達二人で幸せを作るんだぁーーーーーっ!!!!!」
泣きながら、ヒルクが私の前に立ちはだかった。
私の目の前は、ヒルクの背中だけ。
久しぶりに見るヒルクの背中は、驚く程に大きくなっていた。
あんな子供だったのに。
「ばーか、あなたなんて、あなたなんてね、私を幸せになんて出来るわけないじゃない」
ヒルクの背中に顔を埋めながら、言ってやる。
「どん臭くて、空気読めなくて、友達もいないし、あげく勉強までサボって、商人になんて向いてないわよ」
ヒルクがどんよりとしていく。
「大体、あなたなんてね、自力で、なんにも出来ないじゃない、いつもお爺様頼りで、男のくせに情けないわよ」
「うん、、、ごめん、、、」
また泣いてる?
「あなたなんかに、毎年刺繍入りのハンカチ贈る馬鹿なんて、私の他にいるはずないじゃない」
「うん、、、」
あーもう、バカ
「だーかーら!しょーがないから、私があなたを幸せにしてやるって言ってんの!」
「えええっ!!!!????」
ほんと、どんくさいわー。
でも、かわいいのよね。この子犬。
見捨てられないのよ。
なぜか前世の自分と重なって。
「そうなるだろうと思っていた」
ドレインの箱から出てきたのは、靴紐だ。
私が新しく開発した、紐すべラーぬ。
「俺は、靴紐を縛ろうとしただけだ」
素知らぬ顔をして、ドレインは出て行った。
「王妃には、俺から言っておく。心配するな」
最後までかっこいい王子だわー。
手汗びっしょりだろうけどね、きっと。
俺だって、ミサしかいなかったんだ。
他の奴らは、王子の地位にしか興味なくて。
王妃だって、ミサのことが気になって、俺と関わるようになっただけだ。
また、ミサが離れれば、俺は一人になるだけ。
誰にも必要とされない第2王子。
それが俺だ。
「よぉ」
いつの間にか、学院の外れまで歩いて来ていた。
教室には、帰り辛い。
「おーい、何してるんだ?」
会うのは何年ぶりだろう。
兄がそこにいた。
「ちょっと用事で寄ったんだ。最近、よくお前の話を聞く。面白い娘と婚約するとかなんとか」
笑ってる。
兄が、俺に向かって。
「いや、今、失恋してきたところだ」
これで、兄も二度と話しかけて来ないだろう。
俺に価値なんて無いのだから。
「そりゃあ残念だな。しかし、いいんじゃないか、誰でも苦い経験があってこそ、成長出来る。私だってそうさ。母上も、お前と話せて喜んでたぞ」
そう言うと、兄は手を振って去って行った。
俺は、何を見てきたんだろう。
俺とヒルクは、同じだったのかもしれない。
自分を哀れんでいたのは俺もだ。
本当は、ヒルクが羨ましかった。
あんなにミサへの思いだけで生きれる奴。
笑いが込み上げる。
まだ、何も終わってない。
俺は17だ。
これからの未来は、自分で作っていく。
幸せも、自分で作る。
王子いいやつー




