落第?
ジョセフ
僕の世界は灰色で。
勉強も、もう手に付かなかった。
元々、ミサに近付きたくて始めただけだ。
王都に来たのも、学院に入ったのも、何もかも、全てミサと近付く為だけに。
わずかに居た友人も、1人も居なくなった。
僕は、幽霊のようだ。
誰の目にも映らない。
時々、学院内でミサと王子を見かけると、死にそうに胸が苦しくて、急いで逃げた。
そうして逃げ暮らして、とうとう最後の学年になった。
僕は、最低のクラスになっていた。
お爺様も、両親も、とても心配して、いろいろと手を尽くしてくれた。
でも、ミサは王子と婚約することが、まず間違いないだろうと言われた。
王妃様にも気に入られて、毎月お茶会に呼ばれ、既に結婚の準備も進められてるとさえ噂されている。
僕は、最終学年を落第しそうになっていた。
「どうじゃ、一度、王都を離れてみては」
お爺様は、休みを利用して、僕を、あの頃の街へと連れて行ってくれた。
王都なんて、行かなければ良かった。
ミサの御両親には会わなかった。
でも、街で偶然、ジョセフに会った。
会いたくなかった。
「ヒルク!」
のろのろと振り向くと
思いっきり殴られた。
まだ14のくせに、やたらに力が強い。
僕は、簡単に吹き飛ばされた。
「お姉様を守れよ!お前、お姉様は、ずっと僕のお姉様だって言っただろ!このままじゃ、お姉様は、お姉様は、、、」
ジョセフは泣き出した。
きっと、王都での噂が届いているのだろう。
ユング商会は、大繁盛らしい。
良いことじゃないか。
「ごめんな、ジョセフ。僕じゃあ、ミサを幸せに出来ない」
頭を撫でようとすると、手を払い退けられる。
「ふざけんな!ばーか!僕のお姉様が、お前なんかに幸せに出来る訳ないだろ!お姉様は、自分の幸せは自分で作るんだよ!」
また殴られた。
「思い上がんのもいい加減にしろよ!この金持ちボンボンが!自分の力でなんとかしてみろよ!ばーかばーか!」
僕は頭を鈍器で殴られたようにショックを受けた。
僕は、何も自分の力でやったことなんて無い。
いつも、お爺様や両親、ミサの後に付いて、やってもらって、言われる通りに生きてきた。
ミサのことも、自分から諦めると決めておきながら、諦めきれずに家族に手を尽くしてもらって、それでダメと言われたから、自暴自棄になって、ただ全てを投げ出してここにいる。
「僕は、、、バカだな」
笑ってしまう。
可哀想な自分に酔っていたんだ。
良い未来を。




