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王子とヒルク

悲しいやつー

なんと、私のドレスは、全部真っ黒。


あちこちに宝石が散りばめられて豪華だけれど、こんなに真っ黒って、車に跳ねられるわよ。


この世界に車が無くて良かったわね。


馬車に乗った王子は、上機嫌。


「やっぱり、君には黒が良く似合う」


そうかしら。


焦げ茶色の髪と目で、全身真っ黒って。


忍者かよ。


これが王子の髪と目の色なことくらい知ってる。


この意味も。


「お褒めに預かり、光栄ですわ」


一応にっこり笑ってそう返すが


「もっと、砕けた話し方にしてくれ。あの幼なじみといる時のように」


いまいちだったようだ。


えー、この人と仲良くなって、得することある?


あ、あるか。


この人も、それなりに偉い立場になるんだわ、いずれ。


「じゃあ、なんて呼べばいい?ドレイン?」


急に距離を縮めてみた。


「っいいぞ、俺も、ミサ、、、と呼ぶからな」


真っ赤だぞ。


こいつ、チョロすぎだろ。


王子様なんだから、もっとしっかりしろよ。


「ドレイン、よろしくね?」


笑顔で握手をすると、ドレインの手は、汗でびっしょりだった。



会場に入ると、私達は注目の的。


キョロキョロと辺りを探すと、ヒルクが壁際で焦げ茶色の礼服で、ぼんやりとしていた。


まさか、あれ、、、


今日、ヒルクからのドレスが届いたのだ。


全体が薄い紫で、金の縁どりが施された、美しいドレス。


きっと手間がかかって、ギリギリになってしまったのだろう。


着れなかったことが、悲しくなるくらいに素敵なドレス。


「どうした?ミサ」


ぐいっと王子様に引き寄せられ、中央に連れて行かれる。


同時に音楽が流れ始まる。


ステップを踏みながら、余裕な王子は爽やかな笑顔だ。


とてもダンスがうまい。


「さすが王子様、上手ね」


褒めると、照れくさそうにする。


「努力したんだ。俺は、不器用だから」


だろうね、と思う。


余裕な顔とは反対に、手汗がすごい。


「努力出来る人って、すごいと思うわ。努力も才能の一つよ」


そう微笑むと、王子も微笑む。


「ミサなら、そう言ってくれると思ってた。俺の汗、すごいだろ?女の子には、嫌がられる」


ふふっと笑う。


「そうね。でも、いいじゃない。たくさん汗が出たほうが太りにくいのよ?歳を取っても太らないで済むわ」


冗談を言うと、王子もクハハっと笑う。


それはそれは楽しい雰囲気で終わった。


これで、私の義務は終わり。


一緒に入場して、最初に踊れば終わり。


あとは、それぞれ、自由に過ごす。


王子様は、次々と誘われて、何人もの女の子達と踊るし、男の子達も、女の子を誘う。


「じゃあ、またね」


手を振って離れる。


急いでヒルクがいたところへ向かう。


「ヒルクっ!」


呼ぶが、ヒルクは私の方を見ない。


「ねぇ、ヒルク?ドレス、ありがとう。今日、出かける直前に届いたわ」


「僕に見せないで」


聞いたことの無いような暗い声


「え?」


「そのドレスを僕に見せないで!」


ヒルクは、再び走り去って行った。

せつないやつー

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