王子様
嵐の前の静けさ
俺は努力してきた。
幼い頃から、家庭教師に朝から晩まで、みっちり勉強させられて。
体力もつけるように、トレーニングも毎日欠かさない。
王族は身の危険もあるから、武術も嗜む。
こんなに血の滲むような努力をしているのに、俺には勝てない相手がいる。
2歳上の兄、継承権第1位のテーテル。
兄は、なんでも最初から良く出来た。
俺と違って。
そう周りから言われる度に、俺たちの溝は深まっていった。
同じ学院にいるのに、全然顔も合わせない。
どうせ、どんなに努力しても、俺は国王にはなれないし。
そう思うと虚しくて。
父上と母上は忙しく、なかなか会うことすら許されない。
兄は、最近、帝王学も学び始めたらしい。
そんな噂も耳に入る。
そうだよな、兄が国王になるんだものな。
俺は劣等感の塊だった。
「へぇー、さっすが王子様ね。やっぱり優秀だわ」
俺が教師に指されて発表すると、女生徒の一人がそう呟いた。
見ると、焦げ茶色の髪と目の、まあまあかわいらしい女生徒だった。
ふん、と無視する。
俺は王子としての地位でしか評価されない。
擦り寄ってくるのは、その地位目当ての奴ばかりだ。
しかし、その女生徒は、俺には近付いて来なかった。
しかも、その女生徒 ミサレイ・ユングは、期末試験では、この俺を差し置いて、クラスの最優秀生徒となった。
悔しい。
あんなに努力してきたのに。
こんなのほほんとした女生徒に抜かされたなんて。
「ミサですか?幼い頃から、とても勉強熱心でしたよ」
男子生徒のみの授業で、よく一緒にいる男子生徒に聞いてみる。
こいつ、無駄にキラキラしてんな。
「ミサは特別な子ですから、ドレイン様も成績のことは気にしない方がいいですよ。僕も置いていかれないように、毎日必死です」
にこにこ笑うけど、目が笑ってない。
「いずれは、2人でダグラス商会を支えて行こうと頑張っているところですから、ね」
俺に、あの女生徒に近付くなと言ってるのか。
良い度胸だ。
そのケンカ、買ってやろう。
「だが、婚約をしてる訳ではないんだろう?」
明らかにムッとしている。
まだまだ子供だな。
「ミサは、僕の髪と目の色のネックレスを大切にしてくれてます」
ふふん、と自慢してくる。
「そうか、それは羨ましいことだ。俺も早く婚約者を見つけるよう言われていて、困ってるんだ。ヒルク君は、幸せ者だな」
そう言って肩を叩くと、すっかり気を良くしたのか
「大変ですね、王子様というのは。自由に恋愛が出来る今、羽を伸ばされてはいかがですか?」
ふぅん、羽、ね。
これから、、何が始めるのか。




