ヒルク
お友達って大切
「はじめまして、ミサレイです」
きちんとカーテシーで挨拶する。
「僕、ヒルク」
私と同じ年のまだ5歳だから、泣かないだけ良しとしよう。
ぼんやりとした男の子で、突っ立ったまま、名前を言っただけだ。
顔はきれいだけど、それだけ。
金色の髪をなびかせて、にへら、と笑ってる。
この子が遊び相手って、ただの子守りじゃん。
「お父様、ヒルク君と遊んでいいの?」
本音を隠して、天真爛漫に振る舞う。
「ああ、もちろんだ。お庭を案内してあげなさい」
「あんまりはしゃいで怪我しちゃだめよ?」
ヒルク君を連れて来たお爺様も、にこにことしている。
「賢いお嬢様ですな」
褒められて両親は、照れまくっている。
「それでは、行ってまいります」
丁寧にお爺様へもカーテシーを披露してヒルク君の手を掴んで走り出す。
「行こう!ヒルク君!」
ぼーっとしながらも、なんとか私に着いてくる。
まあ、これで両親が安心してくれるならいいか。
私が子供らしくないって心配してるみたいだったから。
ヒルク君は、ぼんやりしてて、とてもこの子と遊ぶのが教育に良いとは思えないけど。
「ねぇ、ヒルク君は、何が好き?」
そう聞くと、うーん、と空を見て考える。
うーん
うーん
全っ然、答えないわ、この子。
疲れる。
「じゃあ、いつも何をして過ごしてるの?」
「えーっとね、地面と空を見てる」
は?なに?
「へぇ。地面と空見て、なにかあるの?」
急に瞳をキラキラさせて、ヒルク君が話し出す。
「たくさんあるよ!地面は虫がたくさん歩いていてね、すごいんだ!小さな虫が大きな葉っぱを運んでて、それに、空はね、、、」
おいおい、よく話すな、こいつ。
全然、女の子の話を聞くつもりないだろ。
こういうタイプって、イケメンでも、モテないんだよね。
私も、適当に相槌を打ちながら、流して聞く。
「へー、すごいねー、ヒルク君って」
感情なんて全く籠らない声でそう言ったのに。
「えっ!すごい?!僕って、すごい?!」
ものすごく喜ばれた。
さすが5歳児、細かいところは気付かない。
てことは、相当、適当でもバレないな。
「うん、私、ヒルク君てすごいと思うの。そんなに詳しく知ってる子なんて、他にいないわ。尊敬しちゃうなー、ミサ」
棒読み感ハンパないけど、どうせ気付かないし。
「ミサレイちゃん、ミサちゃんって呼んでいい?」
「ええ、いいわよ、もちろん」
心の距離が近付いたらしい。
「じゃあ、私もヒル君て呼んでいい?ヒルク君って、クが2つあって面倒でしょ?」
そう言うと、紫の瞳を細めて笑った。
「あははっミサちゃんって、おもしろいね!」
なんとか、友達になれたらしい。
まあ、子守りも人生勉強だ。
適当に流していこう。
仲良くね




