012話-お手軽な最強(最凶)の召還
第一章のスタートライン:冒険者ギルド編
「お待たせ、エリナ、ククル、私も終わったわ」
朱里はステータス+適正ジョブシートを持って、
2人の待つテーブルについた。
「わたしは戦闘指揮の経験があるの。
良かったらアカリさんのシートを見せてもらってもいいかな?」
エリナはつとめて笑顔で提案する。
品があるのに人懐っこい感じは人柄だろう。
「うーん、正直2人にくらべて恥ずかしいんだけど、お願い」
朱里は自分のシートをエリナに渡す。
「!!」
そのシートを覗き込んだ2人はビックリした顔をした。
特に目立った能力は記載されてないはずなのだが……。
「ねぇ、変なところがあったの?」
「え?いえ、アカリさんは異界の人なのに魔力が凄いのね。
見習いとは言え、貴重な職業の適正があったのでつい……」
エリナは驚いた顔でシートを朱里に返した。
うしろではククルもコクコクと真剣な顔でうなづいている。
「特にサモナー。いわゆる召還術を自前で行えるのは凄いことなの。
基本能力と関係なく、神の祝福がなければまず行えないといわれる、
魔法ではなく奇跡にちかいスキルね」
エリナの説明する口調はいたって真面目だ。
「並の召還が可能なら、戦闘要員が単純に1人いつでも増やせるの。
しかも人と違って旅の時の食料や、負傷した際の治療もいらない。
チームにいるだけで、純粋な戦士が1人いるより手軽かつ戦術の幅が広がるジョブよ」
説明を聞いているうちに朱里にもわかってきたようだ。
(要は私は戦わなくて良い職業か……)
やや斜めな理解だが、あながち間違っていない。
戦いにおいて、捨て駒に出来る純粋な戦闘要員が出したり消したりできたら、
そりゃ便利だろう。
『たしかに朱里に向いているかもな。ただし、あくまでオレは朱里の意見を尊重しよう』
「私はサモナーやりたい!」
朱里は即答で手を上げて答えていた。
まぁ魔力以外が全部低い朱里は、戦闘に関してはそれがベストか……。
「そうですね。前衛はわたしを基点、後方支援と援護をククル、
前衛や後衛に追加で召還獣を使い分ければ、バランスは完璧だと思うわ。
わたしも賛成よ。ククルはそれで良い?」
エリナがパパッと構成のバランスを提案してくれる。
「はい、アタシは問題ありません」
ククルは真剣な顔でコクリと頷く。
「では、申請して講習を受けましょう!」
エリナは朱里とククルを見てそう言うと、席を立った。
***
「はい、【聖騎士】【魔法剣士】【サモナー見習い】ですね。かしこまりました。
職業ごとの講習がありますから、先生から基本スキルを教えてもらって下さい。
スキルを最低1つ教わって、登録は完了ですよ」
シートをエリナから受け取った受付のお姉さんはそう言って微笑んだ。
「講習と言っても、大体の職業を体験したベテランの方が講師として数名いるだけです。
一応、基本スキルは覚えている人たちなので、
ご自分の職業の基本スキルを1つ2つ教わる形です」
「先生をお呼びして向かわせますから、
1階カウンター裏の講習室の1~3番でお待ち下さい」
受付のお姉さんはそう言うと、横で帳簿をつけていた別のお姉さんに声をかけた。
「ヒーラー先生、メイジ先生、サモナー先生の招集をお願いね」
「オッケー」
お願いされたお姉さんは了解とジェスチャーすると目をつぶって何か祈っていた。
あとで受付で聞いたのだが、
電話がないこの世界の業務では念話役(テレパス?)がいるのが普通だそうだ。
と言うわけで、朱里の初の魔法講習がはじまる。
***
「よろしくね。お嬢ちゃん。さっそくだけど……」
言われた部屋にきたのは、
レースのカーテンみたいなスケスケの布をまとった変なお姉さん(?)。
大人っぽい外見、眠そうな顔は一応美人、
ほぼ見えてしまっている身体のスタイルはかなり良い。
(タロー、あんたあんまりみるんじゃないわよ!)
『見てどうこう思うような年齢じゃない。気にするな』
(……)
「???……とりあえず、サモナーに必要な魔法は2つよ」
「それは前に出て戦う戦士の召還と、後方で魔弾を撃つ援護使い魔の召還」
眠そうなエロいお姉さんは指を二本立てて言った。
「ただ、サモナーにも得手・不得手があるから、どちらかでも習得すればいいわ。
それだけ召還できるというメリットは大きいから」
そういうと眠そうなエロいお姉さんは、
「よっこらしょ」とガチャガチャとした箱を引っ張り出した。
「この中には、剣から杖から水晶球まで、他の職業の武器が入ってるの。
これがアナタが呼び出す使い魔の触媒ね。
アナタがこれを使う時、その武器はその武器に相応しい使い魔を呼び寄せる」
「フィーリングが大事よ。アナタと適正の高い使い魔はアナタの武器に呼ばれやすい」
お姉さんはそういうと、大変そうに箱からやや大きめの西洋剣を引っ張り出した。
明らかに当の本人は振り回したりできそうにない。
お姉さんは若干、フラフラしながら西洋剣を構えると、目を閉じてつぶやく。
<聖霊よ……>
手に持つ西洋剣が淡く一瞬光りだし、輝きが消えると、
先ほどの西洋剣を持ち、全身に銀甲冑、逆手に盾をフル装備したロボみたいなものが居た。
「これはわたしのシルバーナイト。魔族でいう動く鎧という呪いの魔物の上位版。
簡単な魔法も使えるかなり上位の使い魔よ。
使い魔は術者が解呪して消すか、致命傷を受けない限り、魔力消費なしで維持できるの。
複数体の使役もできて応用性と実用性は高いスキルなのよぉ」
「す、すごい……」
たしかに、朱里がコレを呼び出せるなら、朱里の戦闘能力はかなり凄いことになる。
「さ、次はアナタの番。
好きな武器を選んだら、武器に神経を集中させて言霊はご自由に……。
サモナーは自由に自分にあった方法でやるのが最適で決まりは無いわぁ~」
「はぁ……」
自由に魔法を使え、という無茶振りに朱里も戸惑っているようだ。
『おい朱里。恥をかく覚悟はあるか?』
(へ?いや、先生しかいないから……ちょっとだけなら)
『なら、武器はいらん。オレの言うのを試して見ろ』
オレは朱里に先生で言うフィーリングとやらで浮かんだ方法を教える。
(……それ、本気?何も起きなかったらスゴイ恥ずかしいんだけど……)
『だから恥をかく覚悟があれば、と言った』
(ん~……ここまで意味わかんないんだから、1回くらい気にしないわ……やってみる!)
朱里はグッと姿勢を正して、集中力を高める。
***
「先生、いきます!」
朱里は拳を握り前に出し、姿勢を正して言った。
「触媒となる武器はぁ?」
エロいお姉さんは不思議そうに朱里を見ている。
「触媒は私の魂とこの拳です。いきます!」
朱里はグッと手に力をこめて、精一杯の集中力で唱える。
<来て!タロー!!!>
その瞬間、朱里の拳はスタングレネードのように周囲を光りで覆い尽くした。
***
「ふむ……」
手を開いて、閉じて見る。
腕を軽く回して見る。
「大丈夫か?なんか凄い苦しそうだが……」
「ちょ……ちょっと待った。なんか……ぜ、全力疾走した後みたいに……疲れが」
朱里がゼーゼー息も絶え絶えに言っているが、
ピークは去ったようで徐々に息は整っている。
少し体力を多めに消費するようだが、パッと見ではオレを顕現できているようだ。
「え?あなたは……使い魔?」
「うむ、その呼称はやや不満が残るが……そうなるのか」
この部屋で一番驚いているのはエロい先生のようだ。
驚きすぎて服がはだけているので無駄にエロさが増している。
先ほどそのエロい先生が呼んだシルバーナイトとかいうのは、
全力でオレを警戒している。
「はぁ~、やっと疲れが取れてきたわ。きっついけどタローって呼べるのね」
「恥をかかなくてよかったわ」
朱里が呼吸を整えていった。
「ほぼ生身の人間を召還するなんて……聞いたこと無いわ。
でもアナタ、人間を召還しても戦闘ではメリットが少ないわよ?」
ようやく調子が戻ってきたエロいお姉さんが、乱れた服を調えながら言う。
「あ、そうか。タローを使い捨てってできるのかな?」
「おぃ……」
発想が物騒すぎる……なんか猟奇的だ。
「まぁいい。シルバーナイトとか言うのはやられても平気な使い捨てなんだよな?
手合わせ願おうか。どっちが消えるか試そうじゃないか」
オレに剣を向けて警戒しているシルバーナイトに話しかける。
講習室は幸いにも広い。
今いる場所は部屋の隅のテーブルだが、
部屋全体はちょっとした学校の教室くらいの広さはあるだろう。
オレはその中央のひらけたスペースへと移動する。
「ちょっとタロー。あんた武器は?」
「まぁなんだ。大型のバケモノでもあるまいし、素手でためすさ」
オレのセリフにシルバーナイトはツカツカと歩み寄ってくる。
一丁前に怒ったりするのだろうか?
「シルバーナイト。魔法は無しで剣術だけで対応しなさい。
あと、アカリちゃんだったかしら?部屋が血まみれになったら掃除よろしくねぇ」
エロい先生もやや本気だ。
オレを召還という異例がやや癪に障ったのだろう。
***
轟音とともに銀製の両刃の剣が空気を両断する。
シルバーナイトと打ち合いをしてすでに4半刻(30分)。
日本の剣道と違い、刺突と打撃による力任せの剣術は武器が頑丈だからだろう。
当たればかすり傷どころか、並の人間なら骨折しそうだ。
遅すぎて当たる気がしないが……。
「少々、期待はずれかもしれん」
首にめがけて横なぎに払われた剣の芯を上方向への払いで軌道を変えてやる。
この程度なら避けなくても無効化できる。
「……」
「……」
見れば召還した先生も朱里も唖然としている。
先ほどから必死でガチャガチャやっているのはシルバーナイトのみ。
オレは一歩も動かず、片手で対応可能だ。
特に体力の消費も無く、この程度のあしらいなら24時間だってできる。
やはり、朱里に憑依するのと自分の身体では性能がダン違いだ。
生前のオレはナニモノなんだか……。
「朱里、終わらせてもいいのか?」
いちおう、我が主に意思の確認をする。
「あ……うん。なにか武器はいる?」
「いや、銀甲冑なんだろ?特に必要ない」
銀だろうと鉄だろうと、たかだか人が着る鎧ということは薄い板だ。
厚さが数十センチあるならともかく、ベニヤ板みたいなものに武器は不要だ。
ズッ……
隙を見て、低く構えた利き腕の手刀でシルバーナイトの下腹部を丸ごと、
横なぎに大きく抉る。
ガシャン!
やはりというか、中は空洞だったが胴甲冑はその8割を切り裂かれ、
姿勢の維持が不可能になったシルバーナイトは上半身がちぎれ落ち、
不恰好な下半身のみになる。
それもひと時のことで、完全に崩れ落ちたシルバーナイトはフワリ光の泡と消えて、
そこには何も無くなってしまった。
「まずまず、だな」
手刀に使った手をグーパーしながらつぶやく。
特に手を痛めたりもしていないようだ。
「あ……あはは、あんた無茶苦茶ね」
「ところでオレはどうやって消えるんだ?」
「あ……」
「あ……」
初心者の朱里はともかく、指導者のエロいお姉さんも「あ」って…おぃ。
***
結局、オレは朱里と共に講習を終えた。
ちなみに『オレという存在』は致命傷を受けないと消えない召還使い魔で、
ファミリアーという分類だそうだが、先生が使役固定をしてくれた。
お陰でいちいち召還しなくていい、
ガーディアンとかいう見える触れる守護霊に落ち着いた。
活動力、体力や能力の回復は朱里の魔力で補充するので、
円陣のような紋章が朱里の手に記載された。
(契約時と使用中以外は消えているようだ)
「さて、無事にオレを呼び出せたわけだが……」
「問題はエリナとククルちゃんに何て説明するか?よね……?」
「それだ。とりあえず面倒なので任せる。我が主よ」
「……はぁ」
オレは、心底からため息をついた朱里の後ろについて、
合流予定の酒場スペースへ向かう。
***
⇒金曜の朝になるべく確定で更新(落とさないように頑張ります)
⇒追加で不定期に更新(質が下がらないように頑張ります)
※期待しないで気長に見てくれると嬉しいです(涙目)
方向修正しつつ書き直し繰り返しています。
単話に慣れてしまったので、
ゴールを決めてダレないように書く練習中です。




