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ヒデちゃん  作者: 一条美紀あらため建水
22/25

ヒデちゃん23 神農さん

 初詣の帰り道、前坂さんと手を繋いで奇漫亭(キーマンてい)に行った。

「いらっしゃいませ」

 扉を開けると和服姿の妖精が二人、三つ指をついて挨拶してくれた。

 おお、思わず口から歓声が漏れてしまった。やっぱり、新年は和服だよね。

「あけおめ、元旦早々なかよしさんね」

 カウンタの向うから、ヒデちゃんがあたしたちを見て笑った。新年早々恥ずかしいって言うか、ヒデちゃんその言い回しはちょっと似合わなすぎるぜ。

 時間が早かったのか、奇漫亭には客があたしたちしかいない。

「それはちがうぞよ、ついさっきまでは満席だったのじゃ」

 ヒデちゃんの横に、紅いチャイナ服を着た美人が立っていた。その声と、切れ長の目を見れば一目で解る。あたしは思わず叫ん

でいた。

「キヨミ娘娘(ニャンニャン)!」

「あけおめぞよ」

 だからさ、二人ともその言い回し似合わなすぎます。

 カウンタに座ってコーヒーを頼んだ時、奇漫亭の扉が開いた。

「いらっしゃいませ」

 妖精たちの声につられて、あたしは後を振り返った。

 雄牛の仮面を被った人が、扉の前に立っていた。その姿を見て、ヒデちゃんがおやおやと呟く。

「これは瑞兆、炎帝さまじゃ」

 キヨミ娘娘が叫ぶ。エンテイ? 目を点にしてヒデちゃんを見ると、彼女は笑って答えた。

「神農さんのことよ」

 シンノウサン? 頭の中が疑問符でいっぱいになる。牛の仮面の人は、松葉の服を身に纏っている。濃い焦茶色の壺を右手で抱えていた。なんだろう、あの壺。赤い紙を壺の口に当てて、荒紐で封をしてある。紹興酒かな?

「違う、あれは古酒(フース)だ!」

 あたしの心を読んだかのように、前坂さんが叫んだ。よく当てたとでも言いたげに、雄牛の仮面がこくりと肯く。身を乗り出して、前坂さんは再び言った。

「な、何年もの」

 神農さんは左手を前に突き出した。五本の指をいっぱいに開いている。意外に小さな指だとあたしは思う。

「五年……」

 ふるふると神農さんは頭を振った。

「変よね」

 あたしの側でヒデちゃんが言った。

「神農さんにしては手足が小さい気が……」

「じゃあ、五十年?」

 前坂さん、声が変だよ。そもそも古酒ってなんなのさ。再び神農さんは頭を振る。ごくりと喉を鳴らして、三度前坂さんは言った。

「まさか五百年」

 重々しく炎帝さまは肯いた。素頓狂な声を上げた後、前坂さんは叫んだ。

「嘘だァ」

 キヨミ娘娘の羽扇が前坂さんの頭を叩いた。

「たわけもの、炎帝さまに向かって嘘とはなんぞよ」

「だって、現存する最古の古酒は百四十年ものだって……」

「ほう、前坂はあれを飲みたくはないのじゃな」

「えっ」

 前坂さんが固まっていると、初めて神農さんが口を開いた。

「酒は百薬の長、ネ」

 あのさ、ほんとに古酒ってなにさ。

「古酒は琉球王朝に伝わるお酒のことよ」

 ヒデちゃんが言った。

「インドのソーマ、オリンポスのネクトルと並ぶ幻の美酒ぞよ。炎帝さまは自ら草木、動鉱物を食して三百六十種の医薬を定めた薬師の神ぞよ。その炎帝さまが五百年と言っておるのじゃ、疑うなぞ罰あたりめ」

 キヨミ娘娘、結構炎帝さまのファンみたいだ。しかし、そこまで言われる酒ならちょっと飲んでみたい気がする。

「勝てたら、あげる、ネ」

 勝てたらって、もしかして飲み比べをするって事?

「やります」

「やるぞよ」

 前坂さんとキヨミ娘娘の二人が叫ぶ。でもさぁ、いくら百薬の長でも飲み比べは不味いんじゃない。

「新年、ネ。無礼講、ネ」

 そういう問題ですか、炎帝さま。

「グラスを並べるのじゃ」

 キヨミ娘娘が叫ぶ。カウンタの上が片づけられて、ショットグラスが三列並ぶ。古酒の封が開かれると、透明? 琥珀色? どちらとも言えない不思議な色のお酒がグラスに注がれる。

 炎帝さまが仮面を外した。赤い髪の小柄な女性が顔を見せる。なるほど髪が赤いから炎帝なのか。

「違う、神農さんじゃないわ」

 ヒデちゃんの言葉にあたしはえっとなった。じゃあ、この人は何者なの? でも五百年ものの古酒に目が眩んでいる二人は、そんな事なぞ気にしてもいない。少しは気にしろよ二人とも。

「勝負、ネ」

「負けぬぞよ」

「五百年、五百年」

 三人はグラスを手にとると一気に飲み干す。絶対体に悪いって、それ。端っこのグラスをあたしはくすねる。一口含んだら、思わずむせた。凄いキック。

「こら、零すんじゃない」

 なんて奴だろ前坂さん、あたしより古酒の方が大事なのかい。文句を言ってやろうかと思う間もなく、音を立ててキヨミ娘娘が崩れ落ちていた。

「キヨミ娘娘!」

 あたしとヒデちゃんが叫ぶ。

「不覚ぞよ」

 なんだ、キヨミ娘娘ってお酒に弱かったんだ、意外な魅力発見。近づいたヒデちゃんの右手にタッチするとキヨミ娘娘は言った。

「後は任せたぞよ」

 その場ですやすやと眠りに入る。あたしとヒデちゃんは顔を見合わせた。

「仕方ないわね」

 そう言ってヒデちゃんはグラスを手に取った。ゆるゆると口に含むと、あっと言う間にグラスを空ける。飲み残しがないことを見せる為、グラスを逆さにすると、そのままカウンタに置いた。ワオ、なんだか映画のシーンみたい。

 

 十五分も過ぎただろうか。カウンタの上には、空になった二十一のグラスが伏せられている。ねえ、これってペース早くない?

炎帝さまのほほが少し紅くなっていた。ちょっとばかり酔いが廻った彼女の姿は、なかなか色っぽい。それに対してヒデちゃんときたら、おやおやと言いつつビクともしていない。あんたは不死身か、ヒデちゃん!

 三人の中で一番分が悪いのは前坂さんだった。すでに足元がふらふらしている。なるほど立ち飲みだから足に来るのね。左手に持ったグラスを睨みながら、前坂さんは言った。

「いかん、このままでは負けてしまう、五百年ものの古酒が手にはいらないぞ」

 それって、なにか説明っぽいセリフだよ前坂さん、まっ、酔ってるから仕方がないか。

「うむ、こんな時こそ召還術だ」

 それ、全然意味わかんないよ。

 前坂さんは、右手を上着のポケットに入れる。引き抜かれると、その手にはハンカチが握られていた。描かれているのは、言わずと知れた魔法陣だ。カウンタの空いている場所に魔法陣を広げると、左手に持った古酒を飲み干す。勢いがついたところでおもむろに呪文を唱え始めた。元旦はそれやめると、去年あたしと約束した筈なのに、隠し持ってやがったなこのやろ。

 ぽんと魔法陣から白い煙が上がる。新年早々煙たいぞ。

「あけおめつかまつる」

 声が聞こえて、あたしは思わずため息をついた。ブルータスお前もかい。シーザーじゃないけど、そう言いたくなる気分。

 現れたのは将軍だった。百九十センチ、太い首、アメフトの選手か海兵隊を思わせる体つき、なのに何故か中華風の甲冑を身に着けている。魔法陣の上に立っていた将軍は、ひらりとカウンタから飛び下りる。ん? 将軍閣下なにかお腹、前回見たときより五十パーセント増しになってない。飛び下りた将軍はカウンタに並ぶグラスを見つけた。思わずにこりと笑みが浮かぶ。わー、将軍って笑うと笑窪が出来るんだ。思わず可愛いって思っちゃう。あたしも古酒で酔ったかな?

「なかなか良いものが並んでいるでござるな」

 その顔を見たら将軍の五十パーセント増しの理由が解った。酒太りなんだ。

「五百年もの、五百年ものの古酒。勝負に勝ったら、あれが全部もらえるんですよ」

「なんと勝負でござるか」

 前坂さんに耳元で囁かれて、将軍の目の色が変わった。なんだか、とってもやる気充分に見える。

「その勝負、受けた」

 そう言うと将軍閣下は右手を空に差し伸べる。そして叫んだ。

呉鉤(ごこう)!」

 音もなく奇漫亭の扉が開く、そして幅広の歪曲刀が将軍の手に飛び込んで来た。

「覚悟!」

 将軍は呉鉤を振り下ろす。

「げわ」

 松葉の服を投げつけられ、将軍は思わず叫んでいた。

「おおー」

 あたしたちも思わず叫んでいた。

 炎帝さまは松葉を脱ぎ捨てると純白のレオタード姿になっていた。小柄だけれどスタイルの良い体つき。

「うむ、清冽なお色気を感じるでござる。しかし、拙者は嫁も子供もいる身の上、かのお色気など、対象外でござる」

 将軍、その心ばえは立派よ、立派なのは認めるけどさ、勝負って飲み比べなのよ、決闘じゃないの。あたしは思わず前坂さんを見た。止めてって言おうかと思ったけど、顔を見たらそれどころではなくなる。前坂さん、ぼうっとレオタードに見とれてたんだ。あたしの視線に気づいて、前坂さんは慌てて言う。

「もちろん、俺も対象外だよ」

 ふーん、ちょっと間の空く対象外な訳ね。そんな事を考えてたので、将軍閣下を止めるの、すっかり忘れてしまう。

「いざ参る」

 将軍閣下、呉鉤を再び振り下ろす。

 助走もつけずに炎帝さまは飛んだ。見事なバック転、それも三回続けてだ。だけど古酒を七杯も飲んで、そんな急激な運動をしたら……。

 案の定、炎帝さまは急にふらふらし始めた。

「ちょっと、気持ち悪い、ネ」

 そのまま、へなへなと崩れ落ちる。

「しまった、ちとやりすぎたでござるか」

 将軍が呉鉤を下げて、困ったように叫んだ。

「うーん、うーん、気持ち悪い、ネ」

「薬取ってくる」

 ヒデちゃんはそう言って奥の厨房に駆け込んだ。

「うーん、うーん」

 倒れた炎帝さまは、がくがくと体を動かしている。あたしは彼女に近づいた。

「あっ」

 びっくりした、炎帝さまはレオタードの上が猫になっていた。つまり炎帝さまって猫娘?

「美紀殿、これはバステトでござるぞ」

 猫娘は、黒毛の美しい顔だちをして唸っていた。やはり美人は猫娘になっても美しいってこと。

「とにかく、ああして苦しんでいる以上なんとかせねばならぬでござる。拙者対象外でござるから、介抱するときも、ひたすら善意からこと故でござる。決して邪念などござらぬ」

 将軍に介抱させるなんて、そんな訳いかないでしょうが。あたしはさらにバステトに近づいた。

 風切り音が聞こえた。やばい。予感がしてあたしは床に伏せる。

「美紀殿!」

 将軍が叫んだ。あたしの側に将軍が飛び込んでくる。こんな時、将軍閣下って頼りになる。将軍の呉鉤が何かに当たって鈍い音を

たてた。

「美紀ちゃん」

 前坂さんが叫ぶ、だけど足がふらふらだ。あれは相当来てるね

古酒。

「ぐわわ、拙者の呉鉤が!」

 将軍閣下が泣く。呉鉤が折れている。

「無念、涙を飲んで戦略的撤収でござる」

 将軍はあたしの腕を掴むと、急いで後退して行った。

 

 戦略的撤収と言っても、数メートル後カウンタの側まで下がっ

ただけなんだけど、あたしたちは顔を寄せ合って相談していた。

「思うにあれは強力な猫パンチでござる。やられたのは呉鉤だけ

ではござらぬ。拙者の甲冑も見てくだされ」

 呉鉤が折られただけかと思ったら、将軍の甲冑に左上から右下

にかけて、抉られたような傷が残っていた。それも見事な三本傷

だ。でも、なにも見えないのになんでそんな事が起きるんだろう。

「それはでござる」

 将軍が言った。

「それは……」

 あたしが言った。

「あのさ」

 あたしの横で前坂さんが囁くように言った。

「あの娘はバステトの化体であって、拙者が襲われた猫パンチこそバステトの本体かと」

「ああ、つまり泥酔で本性が現れているって事ね」

「この際、あの娘には酔いが覚めるまであそこで寝てもらうと言うのが、一番いい方法じゃないかと……」

「これはもう誰かが盾になるしかないでござる。ひとりが猫パンチをブロックしている隙にもう一人が、化体の側に近づくでござ

る。しかし、もうひとつ問題が」

「問題?」

「ほら言うじゃないですか、触らぬ神に祟りなしって」

「拙者が盾となるとしても、防げるのは左右の手どちらかひとつのみ、もう一方の手も防がぬ限りバステトの側に近づくことは不可能かと」

「つまりもう一人盾がいる訳ね」

「ぐー」

「前坂さん寝るな!」

「ござる!」

 あたしと将軍は同時に叫んだ。

「いや、だって俺対象外だし」

 もごもごと前坂さんは答える。

「いやいや前坂殿、貴殿は独身ゆえ充分責任がとれるでござる。いかがでござる、この際男らしく責任をとれば」

「えっー」

 今度はあたしと前坂さんが同時に叫んでいた。

「責任っていったいどういう意味?」

 恐る恐る前坂さんが尋ねる。

「それはもちろん……」

 将軍がにやりと笑った。

「結婚式には呼んでね、でござる」

 一瞬前坂さんの目が浮いた。しばし沈黙が走る。

「いや、それはちょっと」

 今、間が空いた。さっきと同じく、絶対確実に間が空いた。おのれ前坂、今ちょっと考えたな。あたしは切れていた。

「もういい! 前坂さんなんかもう確実にあたしの対象外。パステトはあたしが助ける」

 何か確実に論点が擦れてる感じがするけど、そんなことはもうどうでもいい。

「美紀ちゃん」

「対象外が、ちゃんづけであたしを呼ぶな!」

 あたしは叫ぶ。

「それはいいけど、バステトに近づいて、それからどうする訳?」

「それはいいけど、それはいいけどですって、つまり前坂さんはあたしの対象外になってもかまわないってこと!」

「ちょっとそれとこれとは話が違う……」

「ええい、この大馬鹿前坂、あたしに話かけるんじゃない」

 大馬鹿までつけちゃった、でも今さら後には引けないし。あたしはカウンタに残っている古酒のグラスを手に取った。一気に喉へ流し込む。体全体が熱くなると、将軍に向かっていった。

「将軍、バステトを助けるわよ」

「しかしでござる、もう片方の盾が……」

「そんなもの、なくても大丈夫よ」

「それは無謀というものでござるよ」

「美紀ちゃん、泥酔の人は寝かせておくしか方法がないんじゃないか」

 きー、前坂さんの意地悪。絶対許してやらないんだからね。

「あー、ヒック。おまちどうさま」

 カウンタの向う側に、ヒデちゃんの姿が見えた。ヒデちゃんちょっと色っぽい、何か変だと思うのはあたしだけ?

 ヒデちゃんは、水無月と呼ばれるお盆を手にしていた。水無月の上には大ぶりのグラス、中には黄色の液体が入っていた。なにこれ。

「これは、ヒック、ウコン茶。それもスーパーグレートなウコン茶、ヒック、超ウコン茶と呼んで頂戴、うふふ」

 うふふって、ウコン茶を飲むとどうなる訳?

「あら美紀はウコンの力を知らないの。ヒック、ウコンの力はね、悪酔いに確実に効くのよ、ヒック」

 あー、ヒデちゃん、そんなに効くんなら少し飲んだ方がよくない。なんだか酔ってるみたいだし。

「うふふ、何か言った?」

 聞こえてないよこの人。だからウコン茶を少し飲めば。

「うーん、ヒック、でも私酔ってないから」

 いや酔ってます、確実に酔ってます。酔ってる人はみんなそう言うんです。恐るべし五百年ものの古酒、ヒデちゃんをここまで酔わせるなんて。

「で、みなさんは何でここにたむろしてる訳?」

「実はでござる……」

 将軍の話を聞いて、ヒデちゃんはにぱーと笑った。

「なんだそんなことか、ヒック、ちょっと待っててね」

 どうやってカウンタをスルーしたのか、あたしにはまるで解らなかった。両手ぶらりでヒデちゃんはバステトに近づいた。にぱーだったもんなぁ。あんなヒデちゃん、初めて見たかもしんない。

「はい、ヒック、大人しくしててね。うふふ」

 風切り音が聞こえてくる。見えない猫パンチをヒデちゃんは確実にスルーしていた。ときたま、ぼこっ、ぼこっ、と音が聞こえる。

「はいはい、ヒック、暴れすぎると、ヒック、私怒るよ」

 ばきばきと音がして奇漫亭全体が揺れた。ヒデちゃん、いま裏拳つかわなかった?

「はい、筋はいいけどね、ヒック、まだこの辺りに隙があるし」

 ぼこーんって音が響くと、奇漫亭のテーブルが全部飛び上がる。ちょっと、今使ったの掌底じゃないの?

「美紀ちゃん、あれ見て」

 引きつった声を出して前坂さんが言う。見れば、レオタードの猫娘が目茶苦茶苦しみまくってる。効いてるよ掌底。

「美紀殿、早くウコン茶を飲ませるでござる。竜猫殿が本気で怒れば、奇漫亭は壊滅でござる」

「えー、あたしなの」

「拙者では手に負えぬでござる。その気になった竜猫殿と互角に渡り合えるのはキヨミ娘娘だけでござろう」

 キヨミ娘娘って、そうか寝てるんだった。仕方がないか。ウコン茶はどこだっけ。カウンタの上に水無月があった。お盆の上にあるウコン茶をあたしは手にする。ふわりふわりと動くヒデちゃんの横をすり抜けて、あたしはバステトの側に近づいた。座って彼女を抱き抱える。

「ウコン茶よ、悪酔いが直るんだって、一口飲んで」

「駄目、ネ、もう寝かせて、ネ、お願い寝かせて、ネ」

 近づけたグラスを、バステトは右手で押し返す。ええい、往生際の悪い。あたしはウコン茶を口に含むと、唇を顔に近づけた。

 

 そんな訳で、あたしはいまバステトと暮らしている。小さな黒猫になったバステトは、あたしの膝で寝るのが大好きだ。対象外になった前坂さんとは、一週間話をしていない。責任問題であたしの怒りは決定的になった。

 とにかく、アイツはもう絶対対象外だもん。


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