After 綾野
月曜定例会議。
いつもと変わらない日常。
仕事が優先順位の一番にある俺にとって、成果を示すこの会議は、一番満足のいく時間だったはずなのに。
胃がもたれているのか。
なんだか内側がざわついて、落ち着かない。
本社に着いて会議室へ入る。
転勤中の身だから、荷物が多い。
いつもの場所に一旦荷物を置き、一服するため非常階段へ向かった。
喫煙スペースは、喫煙者の俺でもうんざりするほど煙がひどい。
せっかくのスーツに濃い煙草の匂いがつくのも嫌で、携帯灰皿を手に扉を開けた。
当然、そこには誰もいない。
俺は咥えた煙草に火をつけた。
もう。
思い出さないと思っていた記憶。
文香と、他の女の違いってなんだったんだろう。
景色へ目を向けて、目を細める。
都合も良かった。
タイミングも良かった。
自由もくれた。
俺が仕事に没頭できるように、あいつは上手く俺の女をやってくれていた。
欲しいものも言わない。
束縛もしない。
余計な詮索もしない。
面倒じゃない女だっていうのは、最初からわかっていた。
それでも。
ずっと一緒に生きていくのは、あいつなんだと思っていた。
俺が歳を取って。
人生をリタイアするまで。
俺の心の支えになる女だって。
そう思ってたんだけど。
カン、カン、と。
階段を上がってくる足音が近づいてきた。
俺は、その音に顔を上げる。
一瞬。
視線がぶつかった。
西嶋。
俺はその視線に、思わず攻撃的なものを返した。
「お疲れ」
あー。
かっこ悪い。
「余裕、っすか」
「何が?」
はっ。
何が?
「別に」
俺のそんな声も聞かないうちに、西嶋は扉の向こうへ消えた。
散々。
社内の女を食い散らかしてきた罰なのかもしれない。
自分のものだと思っていた女が。
今。
知っている男に抱かれている。
そう考えただけで。
また、胃が重くなった。




