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【完結】キスからその先は。  作者: もぁらす


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1話 復縁はありかナシか


かつての恋人との復縁は、アリかナシか。


「まぁ、ナイよね」


頭の中で考えていただけのつもりだったのに、気づけば声に出ていた。


自分で問いかけて、自分で答える。


我ながら、何をしているんだろうと思う。


そんなことを考えたのには理由があった。


会社帰り。


最寄り駅から自宅へ向かう途中にある、いつものコンビニ。


そこで私は、元彼を見つけてしまった。


どうしてだ。


レジの前に立つ、背の高いスーツ姿。


見間違えるはずもない。


高校時代につき合っていた元彼――西嶋先輩。


そして今では、同じ会社で働く私の上司でもある。


高校時代の元彼と、社会人になってから偶然同じ会社で再会する。


言葉にしてみれば、いかにも運命めいた話だ。


普通なら、そこから昔の恋が再燃したりするのかもしれない。


けれど現実は、そんなロマンチックな展開にはならなかった。


そもそも私は今、別の人とつき合っている。


相手は会社の同期。


現在は関西エリアに赴任していて、課長代理をしている。


つまり、遠距離恋愛中だ。


最初に会った時は、正直なところ好みではなかった。


茶髪で、どこか軽そうに見えて。


私が今まで好きになってきたタイプとは、ずいぶん違ったから。


けれど、つき合ってみれば一緒にいるのは楽しかった。


話は合うし、気も遣わない。


そうなってしまえば、見た目なんて案外どうでもよくなるものらしい。


そもそも私は、恋愛に関してあまり器用な方ではない。


というより、かなり疎い。


自分から誰かを好きになって積極的に距離を縮めるというより、相手から好意を向けられて、それに応える。


昔から、そんな恋愛ばかりだった。


だからこそ。


今さら元彼との復縁なんて、考える理由もない。


……それにしても。


おかしいな。


どうして先輩がここにいるんだろう。


私は商品の棚越しに、もう一度そっとレジの方を覗いた。


やっぱり西嶋先輩だ。


同じ駅を利用している社員なら、だいたい把握しているつもりだった。


少なくとも、西嶋先輩がこの辺りに住んでいるなんて聞いたことはない。


いるはずのない人間が、生活圏のど真ん中にいる。


そのことに驚いた私は、反射的に棚の陰へ身を隠していた。


……いや。


なんで隠れてるんだ、私。


別に悪いことをしているわけでもない。


相手は今ではただの上司だ。


普通に会釈でもして、「お疲れさまです」と言えば、それで済む。


頭では分かっている。


それなのに、身体はまったく言うことを聞かなかった。


結局私は、西嶋先輩が会計を済ませ、店を出ていくまで棚の陰で息を潜めていた。


自動ドアの向こうへその姿が消えたのを確認してから、ようやく店を出る。


会社では上司と部下。


それだけの関係なのに。


こうして見つからないよう、こそこそ隠れてしまう理由は単純だった。


私は、西嶋先輩が苦手だ。


高校時代、私たちがつき合っていたことを知る人間は、今の会社にはいない。


ならば、わざわざこちらから親しくする必要もない。


余計な会話をして。


昔の癖が出て。


誰かに違和感を持たれて。


そこから過去の関係を知られる。


そんな無駄なリスクを背負うくらいなら、最初から距離を取っておいた方がいい。


――わざわざ先輩と親しくして、ボロを出す必要なんてない。


それが、社会人になって再会した私が出した結論だった。


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