↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】キスからその先は。  作者: もぁらす


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/53

15話 あと5分だけ


意識の遠くで、アラームの音が響いていた。


……煩い。


せっかく気持ちよく眠っているのに。


止めようと手を伸ばし、布団の中から身体を起こしかけた、その時だった。


自分の身体にまとわりつく、誰かの肌の感触。


そこでようやく、意識が一気に鮮明になる。


「……っ!」


思わず声が出そうになり、慌てて飲み込んだ。


鼻先をかすめる、昨夜の名残みたいな生々しい香り。


すぐそばにある体温。


そして。


私の身体に回された腕。


「ん……ああ、煩いから早くそれ止めて」


もぞり、と隣で先輩が動いた。


寝起きの掠れた声でそう言うと、私の身体をぐっと引き寄せる。


「わっ……」


そのまま、また布団の中に閉じ込められた。


「なに? まだ足りないって?」


耳元でそんなことを言われて、一瞬で昨夜の記憶が蘇る。


恥ずかしい。


でも。


気持ちを認めてしまったあとの胸の中は、不思議なくらい満ち足りていた。


「足りてます」


ぼそっと呟いて。


私は自分から、先輩の胸にしがみついた。


もう少しだけ。


こうして肌を重ねていたい。


伝わってくる体温が心地いい。


腕の中にいるだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。


離れたくない。


そんな気持ちが、時間が経つほど募っていく。


けれど。


いつまでもこうしているわけにはいかない。


今日は仕事だ。


しかも朝から搬入がある。


わかっているのに。


「起きましょう」


その一言が、なかなか口から出てこなかった。


先輩の手が、ゆっくりと私の髪を撫でる。


そのまま指先が肌の上を滑った。


「く、くすぐったいです」


「そう? ビクンビクンなってっけど」


「だから、くすぐったいんです……」


恥ずかしい。


でも。


嫌じゃない。


むしろ。


こうして触れられていることが、どこかこそばゆくて。


嬉しい。


「起きなきゃ……」


「まだ時間あるだろ」


「女子は朝に色々と時間がかかるんです」


「そう?」


先輩は、まるで起きる気がない。


今日が仕事じゃなければいいのに。


そんなことを本気で思いながら、私は渋々、先輩の腕の中から抜け出そうとした。


けれど。


逃がすつもりがないのか、また少しだけ腕に力が入る。


「……先輩」


「なに?」


「起きなきゃ、って」


「あと五分」


「……」


子供みたい。


思わず笑いそうになる。


それでも。


私だって、本当は同じ気持ちだった。


「じゃあ、あと五分」


そう言って。


私はもう一度、先輩の胸に頬を寄せた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。