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第三章 天才軍師アルフォンソ

あらすじ

大河ローゼンバッハと渡河し、森林地帯に逃げ込んだでんすけ達は、軍師を得る為に天才でありながら変人でもある。ラグドールのアルフォンソを訪ねた。

燃え盛るヘリングの街を背に、でんすけが率いる避難民の群れは、南へとひたすら走り続けていた。

背後から迫る重低音の地鳴りは、帝国アムレシア軍の重装甲部隊が容赦なく街を蹂躙している証だった。雑種ミックスたちの血と汗の結晶であった交易都市は、傲慢な侵略者の炎によって赤々と夜空を焦がしている。

「急げ! 立ち止まるな! 」

でんすけは極端に短い四肢を激しく回転させ、群れの後方を鼓舞し続けていた。その腕の中には、心身ともに疲れ果て、うつろな目で涙を流し続けるマシロがいる。実家の大邸宅を焼かれ、両親の安否も分からぬ彼女の小さな身体は、壊れた人形のように冷たかった。

やがて一行の目の前に、行く手を阻むようにして漆黒の巨流が現れた。

大河ローゼンバッハ。ヘリングの南を悠々と流れるこの大河こそが、街の天然の要害であり、同時に今回の逃亡劇における最大の難所であった。日頃の交易に使われる頑丈な木造の橋が架かっているが、すでにそこには追撃を察知した避難民が殺到し、怒号と悲鳴が渦巻く地獄絵図と化している。

「ちっ、橋の上が大渋滞じゃねえか! これじゃ追いつかれちまうぞ!」

血と煤で「おたまじゃくしのベントラ模様」を汚したサスケが、路地の壁を蹴り上げて周囲を警戒しながら鋭く叫んだ。

「……いや、それだけではない。路地の奥から黒い鎧の波が来ている」

巨大な木刀を肩に担いだムサシが、無口な表情をさらに険しくして言った。彼の言葉通り、防衛線を突破したノルウェージャンフォレストキャットの先鋒隊が、長槍を揃えてこちらへ突撃してくる足音が聞こえ始めていた。

「でんすけ、どうするの!? このままじゃ全員、あのクソ重い鎧の生け贄よ!」

マリアが衣服の裾を乱しながらも、手首にぶら下げたマタタビの匂い袋を握り締め、でんすけを睨みつけた。彼女の瞳には珍しく、焦燥のの色が浮かんでいる。

でんすけは激しく歯を食いしばった。自分と身近な仲間だけなら、その気になれば包囲網を突破できる実力がある。だが、自分を信じてついてきたヘリングの生き残りたちを、ここで見捨てるわけにはいかなかった。

「ムサシ、サスケ! 橋の手前で敵の先鋒を食い止めるぞ! マリアは避難民を誘導して先に橋を渡らせろ!」

「応よ! そうこなくっちゃな!」

サスケが不敵に笑い、驚異的な運動神経で空中へと跳躍した。変幻自在の『空中殺法』が炸裂し、鋭い爪が帝国兵の鎧の隙間を的確に切り裂いていく。

「……フン。ヘリングの誇り、これ以上は踏みにじらせない」

ムサシが短く吐き捨て、巨大な木刀を豪快に一閃した。凄まじい風切り音とともに放たれたハイパワーな一撃が、迫り来る長槍を根元から叩き折り、衝撃波だけで数匹の帝国兵を消し飛ばす。

二人の親友が命懸けで稼いだわずかな時間の中で、でんすけはマシロをマリアに託した。

「マリア、マシロを頼む! 先に大河を渡れ!」

「あんた……死んだら承知しないからね!」

マリアは毒づきながらも、マシロの身体を支えて混雑する橋へと走り出した。

敵の増援は果てしなく押し寄せてくる。ムサシの木刀が激しい金属音を立てて敵の戦斧と噛み合い、サスケのスタミナにもわずかな陰りが見え始めたその時、すべての避難民が橋を渡り終えた。

「引くぞ、二人とも! 走れ!」

でんすけの合図とともに、三匹は一斉に橋を駆け抜けた。対岸にたどり着いた瞬間、サスケが仕掛けておいた油樽に火矢を放ち、木造の橋は爆炎とともに崩れ落ちた。ローゼンバッハの激流が、帝国軍の追撃を物理的に遮断する。

しかし、一時の安全を手に入れたに過ぎなかった。

大河を渡った先には、昼なお暗い「南の森林地帯」が広がっている。行くあてもなく、食料もなく、ただ傷ついた体を引きずる避難民たちの間には、絶望と疲弊が蔓延していた。

「でんすけさん……私は、これからどうすればいいの……?」

地面に座り込んだマシロが、涙を流しながらでんすけの衣類を小さな爪でギュッと掴んだ。かつて高級キャットフード商家の令嬢として、清廉で無垢な光を放っていた彼女の面影はどこにもない。

でんすけは彼女の細い肩を抱き寄せ、優しく、しかし確かな覚悟を込めて言った。

「大丈夫だ、マシロ。俺が必ずお前を守る。……それに、この近くにお前の身内がいるはずだろ?」

マシロがはっと目を見張った。

「身内……? まさか、アルフォンス従兄様にいさま?」

「ああ。純血のラグドールで、血統書付きの貴族階級でありながら、天才ゆえに変人で、この森の奥深くに隠遁しているっていう……あの『アルフォンス』だ」

マンチカンであるでんすけが闇市商人として這い上がってきた一方で、マシロの実家を通じて、その従兄弟であるアルフォンスの噂は耳にしていた。戦況が完全にアムレシア帝国軍に傾き、圧倒的な武力の前にヘリングが崩壊した今、でんすけたちが生き残るためには、単なる力任せの戦いではなく、帝国を覆すための「知略」が必要不可欠だった。

「あの変人に頼るっていうの? 噂じゃ、まともに会話も通じない偏屈猫だって話じゃない」

マリアが懐から形が崩れたマタタビの葉を取り出し、指先で弄びながら眉をひそめた。

「背に腹は代えられねえさ。あの巨大なトラ、クセルクセス皇帝に一太刀浴びせるにゃあ、化け物並みの頭脳が必要だ」

サスケが首を振りながら言う。ムサシも黙って木刀を構え直し、でんすけの判断に同意の視線を送った。

マシロの記憶を頼りに、でんすけたちは避難民を森の入り口に残し、幹の太い巨木が立ち並ぶ獣道を奥へと進んだ。湿った土の匂いと、不気味なほどの静寂が立ち込める森の深部。しばらく進むと、苔むした岩肌の前に、周囲の自然に溶け込むようにして建てられた風変わりな木小屋が現れた。

小屋の周囲には、一見するとただのガラクタに見える、精巧な木製の歯車や天体観測の道具、そしてテラコッタ大陸の複雑な地図が散乱している。

「ここよ……。間違いないわ」

マシロが緊張した面持ちで木小屋の扉を叩いた。

「アルフォンス従兄様にいさま! マシロです! ヘリングが……ヘリングがアムレシア軍に襲われて……!」

しばらくの沈黙の後、ギィと不穏な音を立てて扉が開いた。

そこから姿を現したのは、マシロと同じ純白の毛並みを持つ、しかしひどく寝癖のついたラグドールの男だった。目は爛々と輝いているが、どこか焦点が合っておらず、着古した外套を羽織っている。彼こそが、大陸屈指の頭脳を持ちながらも、世俗を嫌って消えた天才、アルフォンスであった。

アルフォンスはマシロの顔を見ると、驚く風でもなく、ただ冷淡に、しかし哀れむような声で呟いた。

「ふん……やはり来たか。自由自治都市の崩壊。計算通りの周期だな」

「計算通り……って、どういうことよ!」

マリアが鋭い声を上げたが、アルフォンスはそれを完全に無視し、でんすけの極端に短い四肢へと視線を移した。

「そこの短足。君が闇市でマタタビの流通を裏からコントロールしている『でんすけ』か。マンチカンでありながら『ハンビラキ法典』による特権階級の申請を拒み、平民雑種のままでいる変わり者だ。君のその『アメイジング・ショートストライド』の回転数と低重心のデータは、物理学的に非常に興味深い」

アルフォンスは早口で捲し立て、勝手にでんすけの周囲を回り始めた。

「アルフォンスさん。挨拶はここまでだ」

でんすけはぐっと短足を踏みしめ、低い姿勢をとって、真剣な眼差しをその天才に向けた。

「ヘリングは焼かれた。アムールトラの猛獣『クセルクセス』が率いる帝国軍の前に、俺たちの防衛網は一晩で瓦礫になったんだ。この状況をひっくり返す知恵を、俺たちに貸してほしい」

アルフォンスは動きを止め、ふっと冷笑を浮かべた。

「断るね。僕は俗世の権力争いにも、雑種たちの茶番劇にも興味はない。にゃんこ聖教の総主教レオ2世が徹底交戦を呼びかけた時点で、テラコッタ大陸全土が戦火に包まれるのは必然だった。帝国軍のノルウェージャン重装甲部隊の規律と戦斧の破壊力は、現在のヘリングの防衛力では防ぎようがない。僕が力を貸したところで、結果としての『死』の確率が数パーセント変動するだけだ。犬死(猫死)にするだけ無駄さ」

その言葉を聞いた瞬間、マシロの身体が再び激しく震え、涙が溢れ出た。

「そんな……、じゃあ、お父様やお母様は……ヘリングのみんなは、ただ無駄に死んでいったというの……!?」

絶望するマシロの前に、でんすけが一歩踏み出した。彼の肉球は激しい怒りと悔しさで固く握りしめられ、爪が食い込むほどだった。しかし、その声は驚くほど冷静で、かつ絶対のブレない覚悟に満ちていた。

「無駄じゃない」

でんすけの声が、静かな森に響いた。

「アルフォンス。あんたの言う通り、俺たちは負けた。街を焼かれ、大河の向こうへ逃げ出すしかなかった。だがな、俺たちはまだ生きてる。生きてさえいれば、いくらでもやり直せる。男だから、仲間を生かすために俺は撤退を選んだんだ」

でんすけはアルフォンスの目を真っ直ぐに見据えた。

「俺たちの商売と、愛する仲間たちの街を荒らしに来た帝国軍を、タダで通すわけにはいかない。あのアムールトラだか何だか知らない巨大なトラに、俺たちの攻撃を見舞ってやる。あんたの頭脳があれば、その確率を『確信』に変えられるはずだ」

でんすけの瞳に宿る、烈火のごとき決意。決してブレない強い眼差しに、さしもの天才軍師も一瞬だけ気圧されたように目を見張った。

アルフォンスはしばらくでんすけを凝視していたが、やがてハハハと奇妙な乾いた笑い声を上げた。

「面白い。実におぞましく、非論理的で、そして美しい意思だ。君のような泥臭い男の計算式は、僕の理論の範疇を超えている。……いいだろう、でんすけ。君たちのその『意地』という名の不確定要素が、アムレシア帝国の完璧な軍隊をどう狂わせるか、僕の頭脳で証明してあげよう」

アルフォンスは外套を翻し、小屋の奥から一枚の巨大な羊皮紙を取り出してきた。そこには、大河ローゼンバッハ周辺の地形と、帝国軍の進軍ルートが緻密に予測された作戦図が描かれていた。

「クセルクセス皇帝の先鋒隊は、崩落した橋の修復を進めている。彼らがこの大河を渡ってくるまでに、残された時間は少ない。だが、この『南の森林地帯』の地形を利用すれば、重装甲で身を固めたノルウェージャンたちの機動力を完全に奪うことができる」

アルフォンスの目が、冷徹な軍師のそれへと変貌していく。

「ククッ、そうこなくっちゃな」

サスケがファイティングポーズの構えを見せ、ムサシも木刀を握る手に力を込めた。マリアは冷ややかな笑みを浮かべ、マシロはでんすけの横顔を見上げ、その瞳に微かな希望の光を取り戻していた。

ヘリングを捨て、大河を渡った短足のマタタビ売りとヘリングの若者たち。

いま、テラコッタ大陸の歴史を揺るがす「天才軍師」を迎え、帝国軍への反撃の歯車が、暗い森の奥深くで激しく動き始めた。



◯でんすけ

名前の由来は『でんすけスイカ』の模様に似ているから。彼のマタタビ商業グループは『でんすけ商会』で『3本髭のスイカ』のマークが目印。

優しく、器の大きい、義侠心に溢れる人気者。

ラグドールの『マシロ』が大好き。

ロードランナーを捉えた伝説を持つ。

短足の高回転、高出力、低重心は『アメイジング・ストライド』と呼ばれる。

闇市でマタタビの流通をコントロールしているので、敵も多く喧嘩も多いが『ムサシ』と『サスケ』2人の親友とロードランナーの伝説により、喧嘩を売ってくる猫はいなくなった。

喧嘩の時の技は高い所からの『ムーンサルト・ボディプレス』

同じく高所からの『フロントWフリップツインクロー』※この技は強力ではあるが腕が短いので失敗して自分の顎もぶつかってしまう事もある。ロケット式ヘッドショット(ジャンピング頭突き)。応用技で高所からの垂直落下式ピルムショット(逆さ頭突き)。短足の為、重心や軸がぶれない回転をする。

頭突き技も『短足の気をつけ姿勢』は空気抵抗が少ない。


◯ムサシ

サバトラの正統派のマッチョ。無口で不器用だが

若いメス猫には王道のイケメンとして密かな人気がある。居合の名手で猫パンチ(爪あり爪なし含む)は1式から10式まであり、一撃必殺である。噛みつきからのデスロールは「一度、噛みつかれたら待つのは死のみ」と恐れらている。両手によるスリーパーからの両足爪による「百烈蹴り」は大陸特有の赤い岩石も粉々になると言われている。見た目に寄らず叫び声は異様に高音質で『怪鳥・ボイス』と呼ばれ喧嘩の際はこの声を、聞くともうやられていると言われる。喜んだ時は腕立てジャンプから両手を3回叩くを繰り返すので『オットセイ・ターン』と呼ばれている。一部のメス猫は『オットセイ・ターン』を見ると求愛されている様で非常にセクシーに見えると言う猫もいる。


◯サスケ

ベンガルと茶トラのハーフ。

豹柄とトラ柄が混ざり『おたまじゃくしの大群』の様な模様の為、若いメス猫達からは「サスケの身体を見ただけで妊娠するしちゃうかも」が、定番の決まり文句に、なっている。

こちらは逆にイケボを超えた超低音ボイスで、低すぎて会話が聞き取りにくいのが難点である。

ノリは軽いが声は低いのが特徴。プレイボーイであちらこちらで浮名を流している。人妻もイケる口で夫達から恨みを買っている事も多い。得意技は脅威の運動神経から来る空中殺法で変幻自在。無尽蔵のスタミナ。ベンガル譲りの喧嘩早さもあって一対一では負け知らずである。ムサシが相手なら勝敗は全く予想がつかないが喧嘩した事はないし、この先一生ない。でんすけが相手ならそもそも追いかけれないし、逃げれないので勝負にならない。こちらも大親友すぎて喧嘩はありえない。


◯マリア

ペルシャ混じりの美人猫。

マタタビ中毒者で『グダグダのマリア』。

ヘリングのドラッグクイーン。

ビッチな為、町中の男子はほとんどお世話になった事があるので『聖女マリア』とか『天使マリア』と呼ばれている。逆にほとんどのメス猫より恨みを買っているので嫌われている。マシロだけは利害関係がない為、関係は意外にも良好で数少ない同性の友人である。マシロの父親は彼女らとマシロが仲良くするのは気に入らないがマリアにお世話になった事がある為、割り込んで口出し出来ないでいる。

マリアはこの関係は知らない。

でんすけとはマタタビ商人とマタタビ中毒者の関係で誘惑したオス猫に割高のマタタビを買わせるので上客であり、セールスレディでもある。どんなにでんすけを誘惑してもマシロを好きなでんすけは落ちる事が無い為、そんな意味ででんすけを表向きは嫌っている。実際は男女を超えた友情があり、絆は硬い。

得意技は『三角絞め』股間に首を挟まれた、オス猫は歓喜して涎を垂らしまま失神する。

『腕ひしぎ逆十字』、『アキレス腱固め』と股間に何かしら挟む必殺技が多い。声はも仕草もセクシーで艶めかしい。


◯マシロ

純白のラグドールで高級キャットフード商家の令嬢。本来なら血統書付きで貴族階級なのだが、

名声よりも実を選んで商家を営んでいるので、

1段階敷居が低い家系になっている。それでも雑種の平民とは身分に差があるので、でんすけともすんなりと付き合う事は難しかった。

でんすけが闇市商人をしていた為、更に両親は軽蔑していたのだが、ロードランナー捕獲を境に一目置く様になり、でんすけとの交際は黙認されている。

必殺技は『プリンセスクロー』で普段爪を使わない為に他の猫より鋭利で長い爪をしている。

ここ1番で繰り出す爪は切り口が深くなり危険。

薔薇には棘があるように、マシロにも鋭利な爪がある。従兄弟に天才だが変人で隠遁しているラグドールのアルフォンスがいる。




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