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優勝校との対戦

 去年の優勝高、神奈川県立壁苔高校との二回戦が始まる。

 試合場の真ん中に行って整列し相手校の選手と顔を合わせる。

 俺の目の前には轟霧笛が居る。去年、轟は個人戦でも優勝している。高校生の頂点の選手だ。

 身長は180cmくらいある。スリムだが締まった体をしている。髪は短髪で目が大きく精悍な顔をしている。俺を睨んでいるようだ。

 何で睨まれているのか分からないが、まあ余裕ぶって舐められるよりかはずっとましだ。

「礼」

 先鋒の磁場流、岩永、二人だけが残る。

 じゃんけんで岩永辰也が先攻になったようだ。

 岩永は少し歩いて5メートル距離で磁場流に向かって乳首必中の構えをする。

 打撃は選手によって得意な距離というのがあるらしいが、プロでも5メートル間隔というのはなかなかいないだろう。岩永は指突の命中に相当自信があるに違いない。

 腰で溜めたまま集中しているようだ。

 そして必中の突きを出した。

「うごっ」

 磁場流が少し前かがみになった。

 ニヤリとする岩永。

 ピンポンピンポン

「一本」

 磁場流は後ろを向き「指子先輩の突きに比べたら全然大した事ないっす」

「なんだと?」

 岩永の顔がみるみる赤くなる。

 岩永は定位置につく。後攻の磁場流はスッと指を突く。

 ピンポンピンポン

「一本」

 次のターン。先攻の岩永は1メートル間隔に変えた。

「お前は俺を侮辱した。俺の指突が大した事ないか、じっくりその身で味わえ」

「あー。余計な事を言わなければ良かったっす」

 必中の構えをして、溜めている。こめかみに血管を走らせ磁場流を睨んでいる。

「くらえええいいい」岩永は叫んで必中の突きを出す。

 ドムッ

「おごおっ」

 磁場流が前かがみになり、口から涎が垂れた。

 ピンポンピンポン

「一本」

「まずいわねこれは」

「どうした指子?」

「長期戦になると、打撃がボディーブローのように効いて来て、ミスが出て負けるパターンだわ」

「そんなことを言っても磁場流には対抗できる打撃技が無いんだ。どうしようもないだろ」

「そうね。これが普通の高校生選手とプロに近い選手の差なんだわ」

 それでも磁場流は打撃に耐え、必死に食らいついた。だが強烈な打撃に対して普通に突くしかなかった。

 8ターン目、痛みに顔を歪ませた磁場流の突きにミスが出る。

 ピンポン

「技あり。勝負あり。壁苔高校」

 磁場流が前かがみになり、床に倒れた。

「いてぇ。乳首が。もう駄目だ」

「どうだ。俺の必中の突きは?強烈だったろ?」

 相手選手はスッキリした顔をしていた。

「くそう、くそ」

 磁場流は床を叩いた。

 審判に促され、立ち上がると、礼をしてこっちに戻ってくる。眼に涙を浮かべていた。

 俺はかける言葉が無い。


「寸止頼むぞ」肩を叩く。

「はい部長」

 次は寸止次郎と胸筋太郎との中堅戦だ。

 胸筋太郎はその名に恥じない凄い胸筋をしていた。

「胸筋だけが凄いんですね」寸止が言った。

「乳首当ての為だけに鍛えているからな」胸筋が言った。

 じゃんけんで寸止が先攻になった。

 寸止の超接近が始まる。ざわざわする会場。

 キャーという女子の声が聞こえる。笑い声も聞こえる。でも思っていたよりは受け入れられてるのではないだろうか。

 長考する寸止。

「ここです」

 胸筋太郎がニヤリとする。

 音が鳴らない。どうしたんだ?

 寸止はギリギリの所で突かなかった。指を止めていた。

「どうしたんだ寸止?何故突かない?」

「動きましたよ。乳首が」

「フフ。勘がいい奴だ。よく気が付いたな」

「どういうことなんだ寸止?」

「大胸筋を動かして乳首の位置をずらしたんです」

「なんだって?そんなのありなのか?」

「ルールで禁止はされていないわ。こんなことはプロの世界でもよくあることよ」

「これがよくあること?ほんとか?」

 胸筋太郎は余裕の表情をしている。

「そう。俺の乳首の動く先を予測して突かなければ、お前に勝利は無い。時には動かない事もあるけどな」

 白い歯を見せた。

 寸止の動きが止まる。どうすればいいのか考えているようだ。

「俺が甘かったんだ。でも、この程度で負けるわけにはいかない」

 寸止は呟き、また超接近して相手の顔から解を出そうとする。

「いいだろう。何度でもそれをやるがいいさ」

 持ち時間が無くなってくる。寸止は語り出した。

「とある4団体統一王者は相手の呼吸のタイミングでパンチを出すと言っていた」

「なに?」

「ここです」

「うっ」

 ピンポンピンポン

「一本」

 観衆が沸く。胸筋太郎の高難易度乳首から一本取ったからだろう。

「俺の呼吸で乳首の動きを読んだのか?ちょっと見くびっていたな」

 余裕ぶるのを止めた胸筋太郎は表情が真剣になり、2メートル距離で必中の構えをしている。

「うちの高校は打撃が出来ないと試合に出して貰えないんだ」

 そして必中の突きを出す。

「うぐっ」

 寸止が前かがみになる。

 ピンポンピンポン

「一本」

「キャー。やめてー」

 悲鳴なのか何なのかわからないが騒いでる女子がいる。

 指子の方を見て「寸止にファンが出来たのかな?」

 指子は試合に集中しているらしく、恐ろしい顔をしていたので俺はそれ以上話しかけるのをやめた。

 視線を寸止に戻すと必中の構えをしていた。

「あっ寸止、何をしている?その動く乳首に必中で当てるのは無理だろ」

「相手の挑発に乗ってしまったようね」

「なに?」

「うちの高校は打撃が出来ないと試合に出して貰えないと胸筋太郎が言ったわ」

「そうだ。寸止は実は負けず嫌いだったんだ」

 寸止は構えたまま長考している。相手の胸筋太郎はまた余裕が出て来たのかニヤニヤしている。

「私には分かるわ。あいつは服の中でずっと胸筋を動かしている。変則的なリズムでね」

「寸止。2メートル距離だぞ。必中で当てるのは無理だ。冷静なお前がどうしてしまったんだ?」

「この動く乳首を必中の突きで一本取れなければ俺達は全国制覇なんて出来ませんよ部長」

「そうか。本気で優勝目指してるんだな寸止。お前は凄いよ」

「ここです」

 寸止が必中の突きを出す。

 ピンポン

「技あり」

「ああ、寸止が外してしまった」

 寸止は呆然と立ち尽くしていた。審判に促され定位置に行く。

 後攻の胸筋太郎が笑みを浮かべて寸止に近付く。

「お疲れ」

 軽く寸止の胸を突く。

 ピンポンピンポン

「一本。勝負あり。壁苔高校」

 負けた。俺達は2回戦で敗退だ。

「さあ。帰る支度するか」俺は立ち上がる。

「ちょっと。何言ってるのよ。あなた大将でしょ。負けていても大将戦はするのよ」

「あ、そうだっけ?」

 指子は信じられないという顔で俺を見ている。

 俺は慌てて真ん中に行く。


 もう団体戦が負けてしまったので俺はやる気ゼロに近かったが、目の前の男は何故かギラギラと闘志に溢れていた。

 じゃんけんすると、先攻が轟霧笛になった。2メートル程距離を取って立っている。

 そいつは見たことも無い構えをした。

 人差し指を立てた前腕を顔の前でクロスする。俺の方には手の甲が向いている。

 なんかカッコいい構えだ。でもあの構えでどうやって指突するんだ?

 前に滑るような感じで霧笛の腕が動いた。指揮者の滑らかな、それでいて激しい動きのようだと見惚れてると、霧笛の最終ポーズは両人指し指を真っすぐ俺に向けていた。

「うぼあっ」

 俺は凄い衝撃を乳首に受けて一瞬呼吸が出来なくなった。

「おっ、おっ」

 ピンポンピンポン

「一本」

 だが倒れる寸前で踏みとどまった。

 指子じゃないから威力は大したことないと思ってたが、完全に舐めていたな。

 とんでもない威力だった。そういえば奴はプロ選手になるんだったな。

 しかし、こんな強烈な打撃を受け続けたら明日の個人戦に影響する。もう適当にやるか。

 俺は轟霧笛の前まで行き、スッとついた。

「技あり。勝負あり。壁苔高校」

「あー外しちゃったか。負けたな」

 俺は手を上げストレッチをした。

「ふっざけんなお前」

「えっ?」

 目の前の轟霧笛は凄い怒っていた。

「どうしてお前は早守の時のように本気出さないんだ?」

「明日は個人戦があるから怪我したくないんだよ」

「俺はこの対戦を楽しみにしてたんだぞ」

「そんな事言ったって、ここで頑張ってもうちの高校は敗退だから」

「俺のこのワクワク感を裏切ったな貴様」

 轟霧笛は俺の胸ぐらをつかんできた。

 すると両陣営の選手等が試合場に雪崩れ込んで来た。

「おい、霧笛何やってんだ。俺達勝ったんだろ?」

「ちょっと、うちの父首に手を出したらあんた等どうなるか分かってるんでしょうね」

 指子は片指指殺の構えをする。

「ゲッ。お前は乳狂指子」

 岩永辰也が怯えている。

「あんたは誰?」

「ええっ。乳狂治の娘さん。お父さんのファンです」

 胸筋太郎が握手を求めていた。

 そこに大会スタッフが飛んでくる。

「ちょっと君たち。試合が終わったんだから礼をしてすぐ離れなさい」

 真ん中に整列して礼をする。去ろうとすると、轟霧笛が言った。

「明日だ。明日の個人戦で俺と勝負しろ。俺を満足させろ」

「無茶苦茶言うな。お前と対戦する事になったらな」

 反対側に離れていく。

 まだ睨んでるよあいつ。まったく。


「さあ帰ろうか。明日の個人戦に備えて宿でゆっくり休もう」

「はい」

 後輩達が元気が無さそうなので、俺は肩を交互にもんでやる。

「俺達は全国レベルだと証明されたんだ。何を落ち込むことがある。団体戦は来年優勝だろ」

「そうですね」

 少しだけ雰囲気が明るくなった気がした。

 選手控室に行って私服に着替える。会場入り口の自販機で飲み物を買い、休憩しながら今日の試合内容について俺達はあれこれ話していた。

 急に会場どよめいた。

「誰かが一本取ったのかな」

 ずっとざわざわとしている。スタッフが会場を慌ただしく出入りしている。何か様子が変だ。試合中に何かあったんだろうか?

 俺達は会場内に戻り、人が集まっている場所に行ってみる。試合場で誰かが倒れているようだ。

 先程試合していた轟霧笛が試合場で仰向けに倒れている。ピクリとも動かない。

 大会スタッフが轟霧笛の近くで話し合っている。

 一体何があったんだこれは?

 センターライン向こうには対戦者らしき選手が立っている。長身で肌が白くハーフのような彫りが深い顔をした男だ。不敵な笑みを浮かべて倒れた霧笛を見ている。

 その奥には、一際目をひく巨大な体の女が杖をついてパイプ椅子に座っていた。顔を見ると高齢者のようだ。

 俺はどこがで見たことがあると思うのだが思い出せない。

 寸止に聞こうかと思ったら、寸止の方から俺の方に来て言った。

「あれはチックネンじゃないんですか部長?」

「チックネン?北欧の魔女の?まさか。何でこんな所にいるんだよ?」

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