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赤い髪のリリス 短編集 12、黒いコートの旅の魔導師(全2話)  作者: LLX
10、ルビーとサファイヤ(守護者就任の時の話)
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2、ルビーとサファイヤ(ルビーは家に帰りたい)

イネスが、木のスコップと小さな木の箱を手に、側近たちの目を盗んでそうっと部屋を出る。

サファイアに、変な意地を張ってしまって、なかなか仲直りのきっかけがつかめない。

こういう時は、やっぱり釣りだと思う。

川釣りで一緒に並んで座って、じっと釣り糸を眺めて、お魚が釣れた時に一緒にニッコリすると、いつも上手く行く。


「いつもの場所で沢山ミミズを捕ってこよう。

失敗しても、やり直せるように。

サファイアがビックリして、ニッコリするように捕ってこよう。」


いつもの場所は庭師が沢山肥料をまいて、土の肥えている、花のいっぱい咲いているところだ。

見つからないようにしないと、泥だらけで巫子服を汚すと怒られるからね。

いつもこっそり、こっそりと捕るんだ。


「うふふ……」


サファイアの喜ぶ顔を思い浮かべながら、嬉しそうに庭園の土を掘ってミミズを探していく。


土の中にミミズがにょろんと隠れた。

パッと指で押さえ、つまみ出して箱に入れる。


イネスは明日、サファイアと神殿の敷地内の川で川釣りをしようと思ったのだ。

神殿の敷地はたいそう広いので、森や川など山一つそっくり修行の場だ。

これでサファイアと仲直りできたらとても嬉しい。


きっと仲直りできる。


そうだ、お魚が取れたら焼いて食べてもいいな。

きっと二人でにっこり笑いあって、もう一度ちゃんと言うんだ。


これからよろしくねって。

僕に、ちゃんと付いてきてねって。

いつも、そばにいてねって。


サファイアが来たら、僕は一人じゃなくなる。

僕の、大事な家族になるんだから。



そうして、箱にはけっこうの量のミミズが取れた。


このくらいでいいかな?


なんて言おうか、明日釣りに行こうねって。

そうだ、今夜寝所に入って、サファイアが蝋燭に火を付けた時、思い切って……


くすん……


立ち上がろうとした時、近くですすり泣く声が聞こえたような気がした。

誰かいる。


くすん……

くすん……


心臓がドキッとして、イネスが身動きできずしゃがんでいると、サファイアの声が近づいてきた。


「ルビー!


ルビー、何でこんなところで……なんだお前、泣いているのか?!セレス様は?

泣いちゃ駄目だ、こんな……、人に見られたらどうする?!」


「兄ちゃん……」


「兄ちゃんじゃない、サファイアだ。」


「だって、兄ちゃんは兄ちゃんだ。僕、もうルビーじゃなくていい。」


「またそんなこと……

お前は守護者に選ばれたんだ、これはとても名誉なことなんだぞ。」


「名誉なんていらない!僕村に帰る!お母さんの顔が見たい、お父さんもきっと許してくれる!

兄ちゃんは村に帰りたくないの?

巫子なんか、なんで守らなきゃならないんだ。」


ぺちんっ!


サファイアが、ルビーの頬を叩く音が響く。


ビクッとイネスが身体を震わせて、そうっと木陰からのぞき込んだ。


サファイアが、ギュッと弟の身体を抱きしめている。


「帰りたいさ。でも、これは試練だ。ヴァシュラム様はそう仰った。

ルビー、がんばれ。俺もがんばる。みんなそうやってがんばってきたんだ。

お前は一人じゃ無いだろ?俺もここにいるじゃないか。

家族から離れても、一人じゃ無いから。」


「……うん、ごめん。二人なら、きっと頑張れる……

うん、二人なら……」


二人の足音が遠ざかり消える。

イネスは呆然と立ち上がり、手を握りしめた。


家族と離れて……二人……


僕は?兄様は?家族じゃないの?


“巫子なんか……”


ルビーの言った言葉が、何度も頭の中でぐるぐる回る。



お父さん……、お母さん……


そんな物、そんなもの知らない。


何かしら、言いようのない感情がわき上がった。

手に持った、ミミズの入った箱を見る。

その場にガチャンと落とした。


箱がひっくり返ると、ミミズは急いで逃げて行く。

泥だらけの手で上着を握りしめ、イネスが神殿の裏山に走り出す。

目から、ボロボロと涙がこぼれた。


僕は、僕は、なんのためにいるんだろう。


こんなきれいな服着て、


巫子様って言われて、


修行して、


他の子供を家族から引き離して、なんでそんな事をさせるんだろう、


そんなこと、僕は望んでない。


なんのために、誰のために……




お父さん!お母さん!


僕の、僕の!!お母さん!!!


僕の肌は、髪は、なんで真っ白なの?!!


だから僕を、きらいになったの?!



イネスは泣きながらその日、日が暮れるまで森を走り、彷徨い続けた。


宝石の名前の地の巫子の守護者は、同年代の子がミスリルの村から選ばれます。

選ばれると親元から離され、巫子にずっと添い遂げる夫婦のような感じです。

共に修行する巫子への守護者の必要性は、最初あまり感じられないので、親から離された子供の不満は大きいです。

イネスは楽しみにしていましたが、サファイアたちには大変な重荷でした。

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