147 オアシスカフェへ
上空へ上って行く元気なモモちゃんとルークスを見送り、泳ぎ疲れて眠っている動物達を、小屋や山の温泉に戻し終えてかなえは一息つく。
「シロン、もしかしてもうお昼過ぎてる?」
「はい、12時30分です」
何処で食べようかな。
ジミーさんは、最近忙しいようで「ランチは当分いらない」って言われたのよね……。
かなえは久しぶりに、オアシスカフェに顔を出すことにする。
「かなえ、その前に服に着替えた方が良いでしょう」
「えっ? あー!」
かなえは流れる温泉の時に水着に着替えたままだった。
慌てて、元の服に着替える。
「シロン、ありがとう。助かったわ」
この世界では膝上のパンツやミニスカートをはいている人はいない。
子供ならまだしも16才のかなえが、ショートパンツにタンクトップの水着で町中に現れたら、驚かれるだろう。
ジャンプでオアシスインの横に移動して中に入って行くと、ルルちゃんがカウンターで迎えてくれた。
「かなえさん、お久しぶりです!」
ルルちゃんは、ピンクのフワッとしたワンピースに白いフリルのエプロン。
髪は大きな赤いリボンでポニーテールにしている。
「ルルちゃん、今日も可愛いね!」
お世辞ではなく、今日のルルちゃんも抜群に可愛い。
「えー? かなえさんのほうがずっとキレイですー!」と、ルルちゃん。
えっ? 何を言ってるんだろう……。
あーそうか、かなえも今は女神さまに可愛くしてもらったんだった。
なんかもー、容姿の事は全く気にしていなかった。
でもルルちゃんの可愛さは、会う度に増しているような気がする。
「かなえさん、またリリちゃんに手紙を書いてもいいですか?」
「うんいいよー」
かなえは最近のリリちゃんの様子を簡単に話すと、
「はい、たまにリリちゃんとは手紙を交換したり、共通の友達から聞いたりしてました」と、ルルちゃん。
リリちゃんは、毎日忙しくしているけど、ちゃんと休みをあげないとな。
あー、リリちゃんはもうメラニーさんの所で働いているんだった……。
メラニーさんに任せておけば大丈夫だろう。
かなえはルルちゃんのいるカウンターの、隣の扉を開けてオアシスカフェに入って行く。
「やぁー、かなえじゃないか!」
カーラさんが前に来た時と同じように、元気そうに迎えてくれる。
「お久しぶりです。体の調子はどうですか?」
「あたしは元気さ。何処も問題無いよ」と、カーラさんはそう言いながらお客さんの対応もしている。
かなえはカウンターの席に座り、手伝いの人にピンクベリージュースを頼みメニューを眺める。
テーブルはお客さんで一杯だが、もうピークを過ぎたようで、食べ終えている人も結構いる。
かなえは迷ったがランチの中から、プロの実バーガーデラックスに決めた。
注文を済ますと、側にカーラさんがやって来たので声を掛ける。
「カーラさん、ここのランチをテイクアウトする事は出来るの?」
「もちろんさ。ここで注文して上の部屋で食べるお客さんもいるからね」
「それなら6人分お任せで、ランチのテイクアウトを注文する事は出来る?」
「ハハッ、お任せかい? いいよ。うちの人に抜群に美味しいのを作ってもらうよ」
カーラさんはキッチンに入って行き、しばらくすると出て来る。
「注文しといたからね。かなえのだって言ったら、オマケしとくってさ」と、カーラさん。
ここのオアシスカフェの料理も、みんなに食べてもらいたかったので、丁度良かった。
かなえのハンバーガーデラックスが運ばれて来る。
オープンサンドになっていて、プロの実バーグの上にアツアツのチーズ。
反対側に厚切りのトマトにレタスと玉ねぎが積み重なっている。
付け合わせは山盛りのポテトフライとオニオンフライにコールスローと、キュウリのピクルス。それに、ミネストローネと大きなチーズケーキ。
今日はカロリーオーバーだけど、たまにはいいか……。
ハンバーガーの具を全て重ねて一つにし、手でギュっと挟んで大きな口を開けてかじりつく。
「あー、おいしー!」
ハンバーガーはテラスカフェのも好きだが、ここの方が美味しいかもしれない。
アツアツのフライに、ケチャップをタップリかけて口いっぱいに詰め込む。
「そんないっぺんに食べると、喉につかえるよ!」と、横から話し掛けるカーラさん。
「だって、おいしいから……」
「ハハッ、そうかい? あたしらは毎日見てるから特に何とも思わないよ」と、カーラさん。
そうは言うが、ここのお店は間違いなくドームシティーの中でも上位に入るだろうと、かなえは思う。
かなえは最後のチーズケーキに取り掛かる。
「シロン、カーラさんや旦那さんの体調はどう?」
「カーラさんは今は安定期で問題無いです。ただ、少し身体を動かし過ぎですのでもう少しゆっくりした方が良いでしょう。旦那さんの方は慢性的な疲労が溜まっています。二人に飴を用意しましょうか?」
「うん、お願いできる?」
かなえは二人分の飴を用意して後で、渡すことにする。
「あー、食べたー!」
かなえは全て、デザートのケーキまできれいに平らげた。
おかげでお腹は大きく腫れている。
「アハハッ、かなえ。そのお腹じゃあたしとたいして変わらないよ」とカーラさんが自分の大きくなって来たお腹をさすりながら言う。
「えーっ! そうですか?」
うーん、ちょっと調子に乗って食べ過ぎたかも……。
「テイクアウトは出来たから、カウンターに置いておくよー」と、元気いっぱいにカーラさんはお客さんの対応をしながら、次々と開いたテーブルを片付けて行く。
あーあ、あんなに動いちゃって……。
かなえは椅子から降りると、支払いをしにカウンターに向かう。
「かなえ、もう帰るのかい?」と、キッチンから出て来たカーラさんが近づいて来る。
「カーラさん、体調が良くても転んだりしたら大変ですから、なるべくおとなしくしていてくださいね」
「ハハッ、なんだよ、かなえまで!」
きっとカーラさんは周りの人から、同じような事を言われているのだろう。
「重たいから、気を付けなよ」と、カーラさんから受け取ったテイクアウトの料理を取り出しておいたカバンに積めて行く。
「カーラさん、これはいつものカーラさんの飴と、こっちは旦那さんにどうぞ」
かなえはカーラさんに飴の包みを二つ渡す。
「えっ? うちの人のもあるのかい? いつもありがとう」
「こっちのピンクの飴はカーラさん用ですから、間違えない様に気を付けて下さいね」
「ああ、わかった」
かなえは大きいカバンを抱えて、わざと重そうにしながらお店を出て行く。
「ルルちゃん、手紙は書けた?」
「はい、これです。お願いします」
かなえはリリちゃん宛ての手紙を預かると、オアシスインを出て建物の影でアニマルドームの砂浜に戻って来る。
テイクアウトをポーチに移動した後の、大きなカバンもしまい砂浜の椅子に坐り込む。
「はあー……眠くなって来たー。シロン、30分したら起こして?」
「はい、わかりました」
かなえは眠気が襲って来たので、砂浜に寝転がると一気に眠りに就いた。
「かなえ、時間ですが……」
「うん、わかった」
かなえは一瞬で目を覚まし、起き上がろうとするがいつもと違う気配に辺りを見回すと、子猫達とパオちゃんにバニーちゃんもすぐ側で眠っていた。
そして、クーちゃんは荷車の上を独占して横になっている。
「えっ……シロン、どういう事?」
「眠っているかなえを見つけて、一緒に寝ることにしたようです」
フフッ、この子達はきっと荷車が楽しくて、休まないで遊んでいたんだろう。
この島を1周して来たのかな。
かなえは砂が付いた自分にウオッシュを掛けて、近くの椅子に坐る。
「ねー、シロン。ここの動物達とピクニックに行こうと思うんだけど、何処かお勧めはある?」
「ピクニックですか? 具体的にどのような事がしたいのでしょう?」
「そうねー。みんなが好きなように走り回れて、食事も出来て美味しい水があれば良いわね」
「それなら、このアニマルドームが一番だと思いますが」
「そうだけど……たまには知らないところへ行って、気分転換もしたいじゃない? 例えば南の島とか、山登りとか?」
「そう言われましても……」
「このドームの先はどうなっているの?」
「かなえは、この世界に来た時の事を覚えていますか?」
「えっ? もちろんよ」
女神さまに穴から落とされ、気が付いたら池のある草原にいたのだった。
まるで昨日の事の様に覚えている。
「このドームから先は、あの様な草原が続いているだけです」
「えっ? この先には他のドームがあって人々が住んで居たりしないの?」
「いいえ、私の知る限りこのアニマルドームを含めた50のドーム以外にはこの世界にはありません」
そうなんだ……なんだか不思議だ。
「ですから、何処かかなえが行きたいところがあるようでしたら、自分で造って下さい」
うーん、そうなるか。
もうかなえは湖や山に川も造って来たのだから、ブレスレットがあれば出来ない事は無いが、知らないところへ遊びに行くワクワク感は味わえない。
でも他の動物達には喜んでもらえるだろう……。
「わかったわ、シロン。私、ピクニックドームを造るわ!」
かなえは新しくドームを造る事にした。




