141 動物達の日常
牛舎と牧場にウオッシュをかけて、温泉も見回りに行く。
ジジさん達が居なくても、問題無さそうだな。
かなえはアニマルドームに戻って来ると、動物達の小屋にウオッシュを掛けて行く。
牧草地に移動して行くと、バニーちゃんが鏡に映る自分の姿を観察していた。
「バニーちゃん、鏡が気に入ったのねー」
『あー、カナカナ。あたし、どう? 可愛い?』
バニーちゃんは背中を向けて、洋服を着た姿をかなえに見せる。
「うん、可愛いよ。バニーちゃんに似合っているよ」と言うと、
『ウフフッ、あたし可愛いのー!』と、バニーちゃんが鏡の前で嬉しそうに飛び跳ねる。
「そうだ、バニーちゃん。ゴーグルじゃなくてもっといいのがあるから見せるね」
かなえはシロンに頼み、クーちゃんにも着けた半透明なブレスレットを取り出して見せる。
『何それ、可愛いの?』
「えっ? うーん……」
半透明なブレスレットで特に可愛いわけでは無い。
かなえはもう一度シロンに頼む。
「シロン、このブレスレットをもっと可愛く出来る?」
「可愛くですか……わかりました」
しばらくしてポーチを開けると、半透明のブレスレットにワンポイントでニンジンの模様が付いている。
うーん、まぁーいいか。
「はい、バニーちゃん。可愛いブレスレットよ」
かなえはバニーちゃんにニンジンの模様の付いたブレスレットを見せると、
『わぁー! 可愛いのねー』と、バニーちゃん。
かなえはバニーちゃんのゴーグルを取り除き、ブレスレットを前足に取り付ける。
丁度足首の所にニンジンの模様が来て腕時計の様で、かなえの想像よりも可愛らしくなった。
「バニーちゃん、遠くを見たい時はそのブレスレットをこすってみて?」
『わぁー、良く見える!』
「でも、長い時間見ていると、自然にスイッチがオフになるからね」
バニーちゃんは嬉しそうに、鏡の自分に向かって話しかけている。
「バニーちゃん、後で森のドームに行くんだけど、一緒に行かない?」
『うーん、どうしよう』
「可愛い、バニーちゃんの姿をみんなに見せてあげようよ」
『うん、わかったー!』
バニーちゃん、急に可愛いくなる事に目覚めたみたいね……。
かなえは、後で迎えに来ると約束し、周辺にウオッシュを掛けて行く。
山の1合目の温泉に移動して来ると、シシーだけが泡風呂にいた。
「こんにちはー、今日はシシーさんだけなんですか?」
『そうさ、若いもんは色々行きたいところがあるんだろう』
「その、ブレスレットの具合はどうですか?」
『ああ、問題無いよ』
かなえはウオッシュを掛けると、次に行こうとするが、
「シシーさん、私と一緒に他の温泉も見に行きませんか? また後でここへ送りますので」
『うーん、そうかい……?』
「この山の頂上からの景色もきれいですよ」
『ふーん、それなら行ってみようかね』
かなえはシシーを連れて、3合目の温泉に移動しウオッシュを掛けると、頂上へ移動する。
「はい、ここが山の頂上です。どうですか? 良い眺めでしょう」
『へー、ここからだと随分と、遠くまで見渡せるんだねー』
シシーは驚いているようだが、冷静さをまだ保っている。
「次はこの上の温泉に行きますねー」
『へっ、上?』
かなえは特に説明はしないで、シシーを雲の上の温泉に連れて行くと、
『はー?! 何だいここは! 雲の上に温泉があるじゃないか!』
今度はシシーも驚きを隠せないようだ。
「はい、ここは大型中型動物用の温泉なので、シシーさん達には深すぎると思いますが……」
『全く、たまげたよ。へー、ここから山の頂上の様子も良く見えるじゃないか!』
やはり猫達用の温泉も、眺めの良いこの辺りに造ってあげた方が良いのかな……。
山の中の温泉では眺めは見えないからな。
かなえはウオッシュを掛け終わると、シシーを連れてシャワードームへ移動して来る。
『なんだい、ここは!? 馬や牛が飛び跳ねてるじゃないかい!』
キングス達やルークス達に、今日はジジさん達も飛び跳ねている。
かなえはもう慣れたが、初めて見るとインパクトがある景色だろう。
マリー達は居ないようなので、もう森のドームへ行ったかな……。
「そうですよー、ここは中型大型動物用の運動するためのドームです」
『あたしゃ、こんなもの見たこと無いね……』
かなえはシシーが辺りを見学している間に、休憩場やその周辺にウオッシュを掛けていると、ドームの中からキングスが出て来た。
『やぁー、カナカナ、ちょっと話があるんだが……』
「えっ! キングスも私の事をカナカナって呼ぶの?」
『ああ、だってみんなあんたの事は、カナカナって呼んでいるじゃないか』
まぁー、そうだけど……まぁー、いいか。
「それで、どうしたの? 昨日、ドームシティーの温泉で何かあった?」
『いや、そうじゃないんだが……」
すると、シャワードームからクイーンも出て来る。
『キングス、ダメって言ったでっしょ!? しつこいと怒るわよ!』と、クイーン。
「キングス、もしかして昨日の首輪の事?」
『ああ、そうなんだ……だがクイーンが嫌がるからな』
「そうね、キングス。悪いけどお互いの同意が無いと首輪は付けてあげられないわ。わかるでしょ?」
『ああ……』
フフッ、キングスはクイーンが本当に好きなんだな。
「クイーン、ごめんなさいね。私がちゃんと説明もしないで昨日、首輪を着けたりしたから。これからは気を付けるわ」
『ええ、そうしてくれる? だってほら、メスには秘密にしたい事だってあるでしょ?』
「ええ……そうよね」
まぁー、いろいろあるんだろう。
キングスは側でシュンとしている。
何か気分転換をしてもらいたいな……。
「私、お昼を過ぎたら森のドームへ馬車で行こうと思うんだけど、キングスとクイーンも一緒に来る?」
『えっ? それって馬車を引いて欲しいの?』
「いいえ、別にそれは大丈夫なんだけど、他のドームに行くから気分が変わって良いかと思ったのよ」
『そうねー、どうしようかしら』
クイーン達は昨日、ドームシティーに出掛けたから、今日はここに居たいかな?
『いいじゃないか。たまには知らないところへ行くのもいいな』
キングスもマリーもずっとドームシティーで生活していたので、他の場所は良く知らないようだ。
『そうね、でもあたしは馬車を引くのは苦手なの』
そうだ、クイーンはドームシティーで馬車を引いている時に、事故を起こして精神的にショックを受けていたんだ……。
「それなら、馬車を引かなくてもいいよ。ほら、これを見てくれる?」
かなえは何度か使用した、一頭立ての馬車をポーチから休憩場に移動させる。
『おお! 馬もいるのか? いや違うな……』
キングスは馬車を引く立体映像の馬の様子に気が付いたようだ。
『わー、この馬、なに?』と、クイーンも不思議そうに見ている。
「その馬は、映像で実在するように見せているだけです」
『ほー、これはワシらでも騙されそうだよ』
『そうねー、近くまで寄らないと分からないわ』
少し離れたところから、シシーはこちらの様子を見ている。
かなえはそれに気が付き、みんなに紹介する。
「この猫さんは、シシーさんです。よろしくね。シシーさん、こっちの黒い馬はキングスで、白い馬はクイーンよ」
『あたしは、ここに居るカナカナに命を拾われた、ただの年寄り猫さ』
『わしも、似たようなもんだ……キングスだ』
『私もそうよ。クイーンって言うの』
自己紹介が終わったようだ。
「それとも、あなた達2人で、この先のドーム以外の所へ探検に行ってみる?」
「かなえ、それは止めておいた方が、良いでしょう」
あら、そうなんだ……シロンが言うならしょうがないな。
「やっぱり、この先はまだどんなところがあるかわからないから、行くなら私と一緒の時にね」
『ふーん、まぁーいいさ。それなら今日はやはりここで過ごすことにするよ』
『そうね、またどこか面白そうなとこがあれば声を掛けてね』
結局、キングス達は行かないことになった。
どこか、ここの動物達を連れて行ける場所を、探しに行ってみようかな……。
かなえはシシーを連れて、1合目の温泉に戻って来る。
「はい、シシーさん、お待たせ―」
『ここはなかなか、おもしろいところだね、いい気分転換になったよ』と、シシーは満足したようだ。
かなえはジャンプで砂浜に移動して行く。
「シロン、今何時?」
「11時30分です」
そうか……まだ早いけど、先にランチを済ませよう。
ジミーさんは、また出掛けて行ったので、かなえはテラスカフェに行く事にする。
ジャンプで側まで移動して、お店に入って行くとテイクアウトコーナーのカウンターに並ぶ。
どれにしようかなー……。
まだ少し時間が早いので、かなえの前には2人しか居ない。
かなえの番が来たので店員さんに「すみません、お勧めのランチは何ですか?」と質問すると、
「そうですねー、今日は焼き立てのピザがお勧めです。セットにすると、スープにサラダにデザートと飲み物を付けられてお得ですよ」と、教えてくれる。
「そうですか、それならブロッコリとオリーブのピザセットで、デザートはこのチョコレートスフレ。スープはコーンクリームで、飲み物はピンクベリーソーダにして下さい」
かなえは少し奥にある、フランスパンを潰したような形のものが目に留まった。
「すみません、そこにあるのは何のパンですか?」
「はい、ここれはシュトゥルーデルです。層になった生地の中にピーチやアップルを入れて焼いたデザートです」
ふーん、おいしそうだな……メラニーさんが喜んでくれるかも。
「その、アップルのと、ピーチのを一つづつ下さい」
「はい」
かなえは自分のランチと一緒に、みんなのデザートを買うと、窓際のテイクアウトのカウンターに座り、食事を取る。
この席は、目の前の公園と外を歩いている人の様子が眺められて退屈しない。
市場が近いので、買い物カゴを下げた人がたまに通る。
いつの間にか、このお店に入って行くお客さんが増えて来て、テイクアウトのカウンターにも結構並んでいる。
ここのお店には、早めに来るのがお勧めね。
かなえはデザートまできれいに平らげると、アニマルドームへ戻って行く。




