140 ヤシの木シャワー
『カナ、カナ、アサですよー、パンですよー』
『カナカナ、おはよー、ピーちゃん来たよー』
「うーん……えっ? ピーちゃん! あー、おはよー」
『カナ、カナ、パンですよー、おきて―!』
『カナカナ、美味しいパン、ちょーだい!』
「フフ、あなた達仲が良いわねー」
『うん、ぼくピーちゃんと仲いいよー』
『そうだよー!』
かなえは今朝も2羽に起こされ、ベットから出ると居間に歩いて来る。
「はい、どうぞ。どれがいい?」
かなえはパンをポーチから取り出して尋ねる。
『うーんとねー、ぼくオレンジパンがイイ!』
『あたし、黄色パンにするー!』
「はいどうぞー!」
リトくんが選んだのは、ニンジンのみじん切りが練り込まれているパンで、ピーちゃんのはコーンミールとコーンの粒が入ったパンだ。
『おいしいなー、オレンジパン。野菜のあじ―!』
『おいしいな、黄色パン。あーまいよー』
リトくんもピーちゃんも、今朝のパンが気に入ったようで、一緒にテーブルの上で飛び跳ねている。
「あなた達、今日午後から森のドームへ行くけど一緒に行く?」
『うん、ぼく行きたい!』
『いいよー』
リトくんとピーちゃんがかなえの肩に飛び乗って来たので、
「でも行くのは午後からだけど……そうか! 今から先に連れて行ってあげるね」
かなえは起きたままの恰好で、リトくん達を連れて森のドームへ移動して行く。
「はい、着いたよー。私は午後からまた来るから迎えに行くね」
『うん、わかったー』
『ハーイ!』
リトくんとピーちゃんは、森の中へスーッと飛んで行く。
かなえは自分の部屋に戻って来て、出掛ける準備をする。
「シロン、ジジさん達は今日も温泉に居るの?」
「いいえ、丘の上で待っているようです」
そうなんだ……今日はアニマルドームに行く事にしたんだな。
かなえは牧場へジャンプして行く。
「おはようございます」
『おはよう』
『おはよう、カナカナ。たまには向こうのドームへも行って、気分転換しないとね』
「そうですね。それでは出発します!』
かなえはジジさんババさんを連れて、アニマルドームの砂浜へ移動する。
「いってらっしゃーい!」
かなえは、エスカ機能で空中を登って行く、ジジさんババさんを見送る。
さー、次は朝食の時間ね。
かなえはジミーさんの家の庭にジャンプして行く。
ジミーさんはいつもより薄着のシャツ一枚で、テラスの椅子に坐っていた。
「おはようございます!」
「やぁー、おはよう」
ジミーさんは、なんとなく顔が赤いような……。
「ジミーさん、大丈夫ですか?」
「えっ? 私は何も問題無いよ。ただ、あの温泉が気持ち良すぎてね……昨夜も入ったんだが、今も入って来たんだよ」
フフッ、ジミーさん朝風呂に入ってまだ火照っているのね。
「それなら、いいんですが……あまり長湯をすると湯あたりを起こすので気を付けて下さいね」
「ああわかったよ。それにしても家に温泉があるとは贅沢な事だよ。ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
そんなに喜んでくれるなら、もっと早く温泉設置が出来ればよかった。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
リリララ姉妹が、庭の扉を開けて入って来る。
「おはよう、あれ? あなた達もちょっと顔が赤いけど……」
「はい、朝も温泉に入って来て、気持ち良かったです」
「ララねー、温泉で泳いだんだよー!」
二人も朝風呂を楽しんだようだ。
朝食の準備が出来たので、みんなで席に着く。
献立は、プロの実ベーコンとレタスにトマトの雑穀パンのオープンサンド。
上にアルファルファがこんもりと乗っている。
それにチーズの乗ったベイクドポテトとレンズ豆のスープ。
フルーツは大きなハニデュ―メロンを4等分にする。
飲み物はオレンジジュースと、ホットアーモンドミルク。ジミーさんにはカフェラテにした。
「それでね、ピンクのお風呂でねー……」と、ララちゃんが昨日初めて入った家の温泉の話を始める。
「かなえさん、あんなに可愛く造ってくれてありがとうございます!」
「ララね、お湯の中に潜ったよー!」
みんなに喜んでもらえて良かった。
「この二人の温泉は、ピンク色なのかい?」と、ジミーさん。
「はい、女の子っぽく浴槽と床を淡いピンク色にして、灯りをお花にしたんです」
「それに、マットもお花なんだよー!」と、ララちゃん。
「へー、そうかい。それは是非見てみたいな」
「いいよー、ララのお風呂みせてあげるー!」と、ララちゃんは朝から元気いっぱいだ。
「ジミーさんの所と、スミス夫妻の温泉はシンプルな内装なので、もし希望があれば言って下さいね」
「いやー、家に温泉があるだけでも凄いのに、それ以上贅沢は言えないよ」
「いいえ、細かく希望を言ってくれた方が、次への参考になりますから、是非お願いします」
きっと、瀬戸物職人のジミーさんなら、面白いアイディアがあるかもしれないな……。
かなえは食べ終わった食器を片付けて、リリララ姉妹を見送る。
そして、動物達の様子を見に行く。
「シロン、バニーちゃんはどうしてる?」
「今はクーちゃんや、みんなと一緒にいますが……」
「あら? シロンが言いにくそうにしている」
かなえはジャンプで、猫の温泉の前の砂浜へ移動して行く。
『あんた達、止めてよー! 汚れちゃったでしょー!』
バニーちゃんが叫んでいる。
あーあ。そう言う事かー。
バニーちゃんは昨日、かなえが着せた服を今も来ているので、子猫達とパオちゃんにからかわれたようだ。首にはゴーグルも着けている。
『だってー、バニーちゃん面白いんだもん』
『バニーちゃん、人みたい』
『バニーちゃん、おこってるー!』
クーちゃんは少し離れたところで、呆れているみたいだ。
「クーちゃん、おはよう。大体何があったかはわかったわ」
『ああ、そうだろう。あの子があんな格好をしているから、みんな面白がってるんだよ』
かなえは子供達に近づいて行くと、
「はぁーい、みんな。意地悪しないでー。バニーちゃんは女の子だからオシャレもしたいのよ」
『オシャレ?』
『何?』
『おもしろいの?』
あーあ、みんなにはピンと来ないだろうなー。
かなえはバニーちゃんのピンクの服にウオッシュを掛けて、ゴーグルも目につける。
「バニーちゃん、汚れたらすぐきれいにしてあげるから大丈夫よ」
『あー、キレイになったー!』
バニーちゃんは嬉しそうに、橋の方へピョンピョンと跳ねながら向かって行く。
また牧草地の鏡の所へ行くのだろう。
バニーちゃんの事は忘れて、またドロドロになって遊ぶ子猫達とパオちゃん。
パオちゃんが鼻で湖の水を吸い込み、子猫達にシャワーの様に噴き出すのが面白いようだ。
かなえはそれを見て閃いたので、砂浜に泥を落とすためのシャワーを設置する事にする。
フォルダの中のシャワーを見ると、いつの間にか種類が幾つも増えている。
かなえはその中からヤシの木シャワーを選択する。
床を砂浜の砂と同じクリームがかった白にして、ヤシの木シャワーを4つ設置する。
そしてその横に、温風ヤシの木も4つ付ける。
湖の方から見ると、ヤシの木が8つ並んでいるように見える。
自動浄化装置を付け、お湯の温度や強さも調節する。
流れて行くお湯は、床に吸収されるので問題無い。
これでいいかな。
『今度は何を造ったんだい?』と、クーちゃん。
「子供たちが、自分で体を洗えるようにシャワーを造ったの。温泉に入るにはドロドロ過ぎるでしょ?」
『ああ、そうかい。それは良かった』
それに、クーちゃんがみんなの様子を眺めたり、昼寝が出来るように台を造ろう。
いつもクーちゃんにはお世話になっているので、居心地良くしてもらいたい。
かなえは大きなキャットタワーを取り出して、ヤシの木シャワーの並びに設置する。
このキャットタワーも、パッと見は、背の高いヤシの木と低いヤシの木が並んでいるように見える。
そして、下の方にはパオちゃんも寝られるように大き目の台を設置する。
「クーちゃん、昼寝をする時はここも使ってね」
『へー、これは登れるようになっているのかい?』
クーちゃんはポンポンと、ヤシの木のキャットタワーに上手に登って行く。
それを見ていた子供たちが、近寄って来るが、
「はぁーい、あなた達。そんなドロドロのままではダメよ。先にこっちでシャワーを浴びてね」
『えー、シャワー?』
『わー、お湯が出た!』
『きもちいいー』
『パオーン』
説明しなくてもみんな並んでシャワーを浴び始める。
「はーい、きれいになったら、隣で体を乾かしてね」
『はぁーい』
『いいよー』
『あったかーい』
『パオーン!』
まー、みんな気に入ったようだからいいか。
クーちゃんはお婆ちゃん猫だが、まだまだ元気なのか、ヤシの木のキャットタワーの一番上の台まで行くと、丸くなり子供達の様子を眺めている。
「クーちゃん、そこからの眺めはどう?」
『悪くないよ。ここからだと悪ガキ共も良く見えるよ』と、クーちゃん。
子猫達がトントンっと、温風ヤシの木からキャットタワーに上って行く。
パオちゃんは子猫達の様にはいかないが、3段上まで上って行けた。
子猫達はあっという間に、一番上のクーちゃんの所へ辿り着く。
『ちょっと、あんた達ここはあたしがいるんだから、隣に移りなさい』
『えー、だってクーバーのところが一番上だよ』
『遠くまで見えるよー』
『パオちゃん、おいで―!』
なかなかクーちゃんが、ゆっくりできる場所は無いようだ。
……でも、クーちゃん、楽しそうだなー。
「クーちゃん、私はそろそろ行くねー」
『ああ、わかったよ』
かなえは牧場へ移動して行く。




