139 みんなの温泉
「シロン、子猫達とパオちゃんはどうしてる?」
「今は、砂浜で遊び疲れて眠っています」
フフ、そうなんだ。
かなえは様子を見に行く事にした。
いつも子猫達が遊んでいる、猫の温泉の前の砂浜に移動して来ると、
「わぁー、なにこれー!」
目の前にはドロドロの変な物体が転がっている。
『ああ、カナカナ……あたしにはこの子達は手に負えないよ』と、側で眠っていたクーちゃん。
「クーちゃん、ご苦労さま。仕方が無いわ。この子達は1日ごとに成長しているんだもの」
『だけど、酷いだろ。寝る前に水に入って体を洗えって何度も言ったんだよ』
うーん、確かに酷い。パッと見はナッツの塊をチョコでコーティングしたみたいな感じだ。
でもパオちゃんはもっと、大きくて……失敗したおはぎみたい。
フフッ、面白いからこのままにして、みんなにも見せたいけどな……。
そうもいかないか。
かなえは順番にウオッシュを掛けて、泥を取り除いて行く。
体の隅々までこびりついているので、何度も掛けないとキレイにならない。
『へーっ、凄いじゃないか。あっという間にキレイになって行くよ』と、クーちゃん。
でもかなえの感覚では、今までの中で上位に入るぐらい汚れている。
やっと汚れが落ちたので、近くの草の上に移動させる。
全く目を覚まさずに、ゴロンと転がる子猫達とパオちゃん。
……まぁ、一先ずこれで良いだろう。
『はぁー、助かったよ。これでやっと動物に戻ったね』
フフッ、いったいクーちゃんには、この子達が何に見えていたんだろう……。
「クーちゃん、いつもこの子達の世話をしてくれてありがとう。そうだっ!」
かなえは温泉の猫達にも着けてあげた、半透明なブレスレットをシロンに出してもらう。
「クーちゃん、これ着けてくれる? あのゴーグルと同じように良く見えるから。それにもう着けたり外したりしなくていいのよ」
『へー、そうかい。それなら楽でいいね』
かなえはクーちゃんの前足に、ブレスレットを装着する。
「遠くを見たい時は、そのブレスレットをもう一方の足でこすってみて?」
『うーん、こうかね? ……あっ、急に遠くまで見えるようになったよ』
「その機能を解除する時は、もう一度こすってね。長時間使用していると、しばらく使えなくなるから気を付けて」
『ふーん、前のよりも使い勝手が良さそうだね』
「ええ、だから楽しんでね。バニーちゃんも牧草地に行って、いろいろ楽しんでいるみたい」
『へー、そうかい。あの子も何か興味を持ったんだね』
かなえはクーちゃんとの話が終わると、猫の温泉や小屋にウオッシュを掛けて行く。
隣のバニーちゃんの小屋や、子猫達の小屋とシャワードームもきれいにして、掃除はお終いだ。
さぁーやっと、温泉に取りかかれるな。
かなえはまず、すぐ隣のジミーさんの家に移動して来ると裏庭に回る。
裏口からも出られるようになっているが、ほとんど使用していないようだ。
かなえは画面を表示させて、ジミーさんの裏庭を映すと一旦、植わっている木や草を取り除く。
裏庭の真ん中に直径6メートルの丸い白い床を設置し、中心の直径3メートルの部分を掘り下げて浴槽を作る。
1か所に階段を造り手すりを付けて、出入りが楽に出来るようにする。
そして浴槽の中は、座って丁度良い背もたれになるようにカーブを付ける。
床と浴槽にはドームシティーの温泉と同じように、灯りの効果を付け滑り止め加工を施す。
自動浄化装置と、温泉の温度や種類を変えられる、スイッチも付ける。
泡風呂、美容効果、肉体疲労緩和、免疫強化などの中からその日の体調に合わせて、効能を付けられるようにする。
床と浴槽が出来たので、上から丸い大きなドームをかぶせて、床との境界線を無くす。
ドームの色は透明から真っ白まで、好きなように調節出来るようにして、必要に応じてプライバシーが保てるようにする。
温泉のドームにトンネルシャワーと、温風トンネルを付けて、その先にもう一つ小さなドームを造って脱衣所にする。
そして脱衣所と裏口をつなげて、家の中から直接温泉に入れるようにする。
「シロン、何か他にやった方がいい事はある?」
「そうですね、ここはこのままで良いですが、リリララ姉妹の所はお湯の高さが変えられると良いかもしれません」
あーそうね。リリララ姉妹は大人と同じ湯量では深すぎるだろう。
かなえは、どの温泉も湯量調節機能を追加する事にする。
よし、こんな感じでいいな。
かなえはジミーさんの温泉を終わらすと、隣のリリララ姉妹の所へ移動して行く。
リリララ姉妹の所もジミーさんの温泉と基本は同じだが、床と浴槽の色を淡いピンクにして、ドームの壁に何ヶ所かお花の形の灯りを設置する。
脱衣所の棚も淡いピンクにして、白いカゴに赤いギンガムチェックのリボンで縁取りを付ける。
その他にも鏡や雑貨を飾り、可愛らしい女の子用の空間にする。
足拭きマットもお花の形にして、自動浄化作用を付ける。
可愛い温泉が出来たなー。
でもここと比べると、ジミーさんの所があまりにもシンプルすぎる。
かなえはジミーさんの温泉へ戻って行くと、観葉植物を置いたり、足ふきマットや鏡、棚にタオルを並べておく。
次はスミス夫妻の所だな。
かなえは移動して来ると、同じように温泉を設置する。
「シロン、メラニーさんは家にいるの?」
「いいえ、温泉でリリララ姉妹と、待ち合わせをしているようです」
……今日から一緒に働くのかな。
スミス夫妻の温泉を造り終えて、居心地の良い落ち着いた雰囲気の雑貨を追加して行く。
ドームの端に何か所か、観葉植物を置いて、脱衣所にはバスローブを二つ掛けておく。
リリララ姉妹の所とジミーさんの脱衣所にも、バスローブを追加する。
こんな感じでいいかな……。
後は、みんなに入ってもらって調整しよう。
この温泉で1日の疲れをとってもらえるといいな……。
「かなえ、そろそろ迎えに行く時間です」
「えっ、もう?」
温泉造りに熱中している間に、時間が経過していたようだ。
まぁー、3ヶ所を何度も移動して造ったからなぁ。
かなえは、シャワードームへジャンプして行く。
「えっ、誰も居ない!?」
「かなえ、キングス達はドームシティーですよ」
「あっ、そうだった」
誰も居ないなんて、珍しい。
こんな日もあるんだな。
かなえはシャワードームにウオッシュを掛けてきれいにし、キングス達を迎えに行く。
放牧地の角に移動して来ると、キングスとクイーンがいるかと目を凝らして見るが、よくわからない。
「シロン、キングス達は何処にいるの?」
「今は、温泉の広場で眠っています」
そうよねー、この時間はいつも眠ているものね。
かなえは自分にもウオッシュを掛けて、大型動物用の温泉の広場に移動して来る。
あらら……本当だ、キングスとクイーンが仲良く並んで眠っている。
他にも何頭かウトウトしている馬がいる。
そして、何頭か湯船に浸かっている馬達。
「シロン、このままキングス達をアニマルドームへ移動させたらまずい?」
他の動物達に、派手な動きは見られない方がいいのかな。
「問題無いかもしれませんが……今からスチームを出します。だんだん視界が悪くなったところで、ジャンプしてください」
「ふーん、霧が出て来るみたいなものね。わかったわ」
かなえはしばらく待っていると、何処からかモクモクとスチームが出て来て、瞬く間に2メートル先が見えなくなった。
「かなえ、今です」
「うん」
かなえはキングスとクイーンを連れて、アニマルドームの島の小屋へ移動して来る。
そして、それぞれの小屋に寝かせる。
「シロン、さっきのスチームはあのままで大丈夫?」
「はい、すぐに消えるように設定しました」
ふーん、さすがシロンに抜かりはないわね。
かなえは忘れないうちに、キングスとクイーンの首輪を外しておく。
この首輪は、お互いの合意が無ければ付けてはダメよね……。
かなえはスミス夫妻の家の庭にジャンプして来ると、夕食の準備を始める。
もう、張り紙をしなくても言っておいたので、みんな真っ直ぐここへ来るだろう。
「シロン、みんなはいつ頃帰って来そう?」
「リリララ姉妹とメラニーさんは、温泉の売店にいてジミーさんと合流したので、もうすぐ戻って来るでしょう。ですが、ジョンさんはまだジョーさんの所にいます」
そうなんだ……温泉の事を説明するのは、食事の前にした方がいいかも。
「シロン、みんながこっちのジャンプミラーに着いたら教えてくれる?」
「はい、わかりました」
かなえは夕食時の準備を終わらせ、灯りの調節をしていると、
「かなえ、今ジャンプミラーで、みんなが戻って来ました」と、シロン。
「そう、ありがとう」
かなえはすぐに、島のジャンプミラーの小屋へ移動して行く。
「お帰りなさーい!」
「あーっ、かなえさん!」
「ただいまー」
「どうしたの? ここまでお出迎えしてくれて」
「あのー、皆さんにお見せしたい物があるので、食事の前に一緒に来て欲しいんです」
「えー!」
「何かしら?」
「ふーん」
ジミーさんだけは、予感がしているようだ。
「それでは、メラニーさんのお家の裏庭へ移動します」
かなえはみんなで、ジャンプして来ると、
「はーい、今日は皆さんに温泉を造りました。どの家にも造ったので、ここで一度に説明しまーす」
「わぁー!」
「温泉!」
「すごーい」
「ハハッ、これは驚いた……」
家の裏口から小さめの半透明なドーム、そしてそこからシャワートンネルと温風シャワーの通路が伸びて温泉のあるドームにつながっている。
「お家に温泉があるんですか?」
「素敵!」
「あのー、ここに住んで居る動物達はいつでも好きな時に温泉に入れるのに、人間だけ入れないのは変だと思いまして……でも家庭用に小さく造りましたから」
かなえは中に入りたくて、ウズウズしている感じのララちゃんを見ながら「ではここから入ってもらいます」と案内する。
みんなにウオッシュを掛けて「ここからは靴を脱いで来てくださいね」と、お願いする。
みんなを誘導して、脱衣所に来ると、
「ここは脱衣所です。ここで服を脱いでこっちのトンネルシャワーに入って行きます」
「凄いですねー! 専用の脱衣所まであるんですか?」と、リリちゃん。
今はみんな服を着たままなので、トンネルシャワーのスイッチを切り中に入ってもらう。
「はい、ここが温泉です。浴槽は2人なら十分な広さだと思います」
「まぁー、広いわぁー。これからは家で温泉に入れるのね!」と、メラニーさんは嬉しそうだ。
かなえはお湯の出し方や、効能の種類、それに温度や湯量の調節の仕方を説明して行く。
「わぁー、お家で泡のお風呂だー!」と、ララちゃん。
一通り説明が終わると、
「これで大体使い方は説明しました。質問はありますか?」
「かなえ、このドームは外から見えたりしないの?」
「その説明を忘れていました」
かなえは温泉のドームの色を自分の好みで変えられると説明する。
「例えば、今は半透明で外からもなんとなく人がいるのがわかります。でもこのダイヤルを右に回せば、白くなり外からは全くわかりません。そして左に回すと、このように透明になり外の様子も見えます」
「まぁー、そうなの。わかったわ」とメラニーさん。
リリララ姉妹は、とても嬉しそうにしている。
「まぁ、こんな感じです。もし何かわからないことがあればいつでも言って下さいね」
夕食が遅くなるので。温泉から出て表の庭に向かう。
「シロン、ジョンさんはどんな感じ?」
「はい、もう島に着きました」
それなら丁度良かったな。
かなえはみんなに手伝ってもらいながら、飲み物や食事を並べていると、ジョンさんが戻って来た。
「お帰りなさーい」
「お帰り」
「ご苦労様です」
「ああ、何だかみんな元気だな」
「あのねー、温泉がねー」ララちゃんが早速温泉の事をジョンさんに説明する。
「へー、家に温泉を造ってくれたのかい?」
ララちゃんの説明では、良くわからないようだ。
「それより、先に食べましょうよ!」とメラニーさん。
みんなでテーブルを囲む。
今日の夕食は、前に皆で食べたパエリア、大皿のトマトとプロの実ボールのパスタ。
ほうれん草のキッシュ、野菜スティックとひよこ豆のディップ。
チーズたっぷりのグリーンサラダ。
デザートはパンプキンパイ。
メラニーさんが他のお店のパイも、どんなものか試してみたいそうだ。
それに、大人はエール。リリララ姉妹とかなえはレモンソーダ。
食後にハーブティーをポットで出すことにする。
ララちゃんが温泉の話や今日の出来事を話すと、リリちゃんが温泉の売店のメラニーさんが使用する屋台の様子を話してくれる。
「思ったより、屋台が大きいから結構商品が置けそうなのよ」と、メラニーさん。
パイ以外にどんなお菓子がいいのか、みんなでアイディアを出し合う。
「今日は、ジョーさんの所はどうだったんですか?」かなえがジョンさんに聞くと、
「まぁー、2日目だから昨日とたいして変わらないよ。でも今日はちゃんとお昼は食べれたよ」と、ジョンさん。
今日もいろいろ学べたようで、明日も行く事にしたそう。
「毎日行くなんて、大変じゃないですか? 無理しないでくださいね」
「ああ、大丈夫さ。今日から温泉もあるって言うしな」
うーん、ジョンさんは楽しそうだからいいのかな……。
ジミーさんは、ゆっくり温泉に入ってのんびり出来たようだ。
かなえは今日のランチにアンディーに教えてもらい、ギロピタを食べたと話すと、
「あー、あそこの屋台ですね。いつも並んでいるから食べたことは無いんです」と、リリちゃん。
他のみんなもまだ食べたことが無いそうだ。
そのうち買って来る事にしよう。
みんな凄い食欲だなぁー。
今日は量にしたら、大人の6、7人分あったのにもうほとんど残っていない。
デザートのパイまで食べ終わると、みんな今日は早く帰りたそうにソワソワしている。
取り付けた、温泉が気になっているんだろう。
全て片付けると、みんな自分の家へ帰り始める。
「お休みなさーい」と、挨拶するとかなえもジャンプで自分の部屋へ戻って来る。
「シロン、島の温泉で何かあったら教えてね?」
「はい、わかりました」
かなえも泡風呂に美容効果と疲労回復効果を付けて、お風呂に入る。
「はー、いい気分。幸せ―!」
かなえはゆっくり鼻歌を歌いながら風呂に入り疲れを取ると、寝る準備をしてベットに入る。
みんなも温泉を楽しめたかな……。
おやすみなさい。
かなえはいつの間にか眠っていた。
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ポイント
プラス 3万 アニマルドームの温泉「小」3ヶ所
マイナス
残り 218万1400
パワー 498
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予定 動物達を連れてお出掛け
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給料30日目 牧場の従業員見習い 15万
動物ギルド長 20万ー6万(リリララ姉妹の残業代)=14万
アニマルドーム管理人 30万




