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アニマルレスキュー  作者: コトリコトリ
137/229

137 猫のブレスレット


『カナ、カナ、パンですよー、ピーちゃんですよー』

『カナカナ、あたしパン食べたい!』


「うーん……えっ? あれ? ピーちゃん!」

『カナ、カナ、ピーちゃん、パンですよー』


「フフッ、おはよー。リトくん、ピーちゃん。今日は一緒に来てくれたんだ」

『うん、あたしもカナカナパン食べたいから―』


「えっ? カナカナパン?」

『カナ、カナ、パンちょーだい、おきなさーい!』


「もー、リトくん、起きてるってば」


 かなえはゆっくりベットから起き上がると、居間まで歩いて行く。


 リトくんとピーちゃんは、かなえを追い越して飛んで行くと、イスの背に並んでとまった。


「はい、リトくん、ピーちゃん、どれがいい?」

 かなえはまだ半分以上あるご褒美パンを取り出して、2羽に見せると、


『ぼくねー、ムラサキパンがいい』と、リトくん。

 リトくんのは、黒米が練り込まれている赤紫っぽい色のパンだ。


『あたし、みどりパンがイイ!』と、ピーちゃんが選んだのは、バジルが練り込まれたパンだ。


「はい、どうぞ。ゆっくり食べてね」

 かなえがちぎったパンをリトくんとピーちゃんの前に置くと、仲良く食べ始める。


 食べ終わると、

『おいしーな。ムラサキパン』と、リトくんが歌い、

『まあまあね。みどりパン』と、ピーちゃんはそれほど好みではなかったようだ。


「ピーちゃん、また今度来たら違うパン選びなよ。おいしいパンもあると思うよ」

『うん、わかった。こんどは、ちがうパンにする!』


 リトくんとピーちゃんは、珍しく一緒にアニマルドームに行くそうで、壁に設置した小さなジャンプミラーの中へ、スーッと消えて行った。


 さっ、私も準備をしよう。

「シロン、ジジさん達はどんな感じ?」

「はい、今は流れる温泉で泳いでいます」


 へー、朝からもう泳いでいるんだー……。

 


 かなえは出掛ける支度を終えると、ジミーさんの家の庭へ移動して行く。


 テーブルにウオッシュを掛けて、朝食の準備をしていると、ジミーさんが家の中から出て来た。


「おはようございます」

 ジミーさん、眠そうだな……。

「やぁ、おはよう。昨夜はあれから3人で話し込んでしまってね」


 ジミーさんは、スミス夫妻がこの島に引っ越して来てから、楽しそうだな。

 話に熱中して、寝不足になるくらいの方が刺激があって良いのかも……。


「おはようございます」

 リリララ姉妹が、早足で庭に入って来る。


「おはよう。良く寝られた?」

「はい、でもララに蹴られて一回目が覚めました」


「えーっ、ララ覚えてない」

 ララちゃんは相変わらず寝相が悪いようだ。


「さっ、食べましょう」

 

 かなえが用意したのは、モチモチとしたポテトパンケーキに、プロの実ボール。


 トマトとチーズがタップリのグリーンサラダ。それにカリフラワーのスープ。


 島で採れたミックスフルーツにヨーグルトと雑穀をかける。

 飲み物はバナナココナッツジュースにハーブティー、ジミーさんにはカフェラテだ。


「ララねー、もうお絵描き教室レベル2になるんだよー」と、ララちゃん。

「そう、おめでとう。レベル2だと、リアちゃんと同じクラスになるの?」


「ううん、リアちゃんはレベル3になったんだってー」

 えー、そうか。リアちゃんも毎日教室に通っていれば上達するだろうな。


「そうなんだ。いつか同じクラスになれるといいね」

「うん、ララ休まないで教室に行くんだー!」

 

 ララちゃんはやる気になっているようで良かった。


「じゃぁー、リリちゃんもレベルは上がりそうなの?」

「私は少し前にレベル2になりました」


「えー、そうなんだ。それは早いね」

 やっぱり、リリちゃんは優秀だなー。


 ジミーさんが静かなので、

「ジミーさん。飴舐めますか?」と、聞いて見ると、


「いや、いいよ。あとで温泉に行ってこようと思っているんだ」

「そうですか、それなら体調も良くなるでしょうね」


 島のみんなもますます忙しくなって来るし、温泉には入ってもらえた方がいいな。


「あ、そうか!」

 急にかなえが声を上げたから、みんなが驚いている。


「あ、ごめんね。何でもない」

 かなえは島のみんなの家に温泉を付ける事を閃いたのだ。

 

 このアニマルドームに住む動物達はいつでも温泉やシャワードームに入れる環境なのに、人間用の温泉が無かった。


 早速造ってみよう。かなえはどんな温泉を造ろうか考えていると、


「かなえさん、行って来ますねー」

「いってきまーす」と、リリララ姉妹が食べ終わり教室に向かって行く。

 

 ジミーさんも食べ終わっているようだ。

 かなえは急いで最後の一口を食べ終わると、


「ごめんなさい、私、ボーっとしていましたね」


「はは、いいんだよ。かなえさんの事だからまた何か閃いたんだろう?」と、ジミーさん。


 ジミーさん、鋭いな。

「まー、そうですね。でも何かはまだ秘密です」

「そうかい。わかったよ」


 

 食事が終わると、かなえは動物達の様子を見に行く事にする。


「シロン、子供たちはどうしてる?」


「子猫達とパオちゃんは砂浜で泥遊びです。そしてバニーちゃんは牧草地の鏡の前にいます」


 えっ? バニーちゃん、また鏡の所へ行っているんだ。

 かなえは気になったので、バニーちゃんの所までジャンプして行く。


「バニーちゃん、おはよう。その鏡が気に入ったの?」

『あー、カナカナ、お願いこれ着けて、自分では着けれないのー』


 そうか、ゴーグルを自分で装着するのは難しいかな。

「はい、貸して」

 かなえはバニーちゃんのゴーグルを着けてあげると、

『ヤッター! よく見える! ウフッ、アハハハ』


 昨日もさんざん見ていたのに、まだゴーグル姿の自分が面白いようだ。


『ねー、カナカナ。あのー……』

「何? バニーちゃん。何か必要な物があるの?」


『うん、あたし、人間みたいな恰好がしてみたい!』

「えっ? バニーちゃん、洋服が着たいの?」


『うん、あたし、この鏡で見てみたいのー』

 うーん、そうか。


「シロン、まさか、ウサギ用の服なんて無いよね?」

「あります、バニーちゃん用に女の子らしい服も用意しています」


 へー、そうなんだ。女神さま、まさかこんな状況も予想していたのかな……。


 かなえは「ウサギの服、大」のリストの画像から、バニーちゃんに似合いそうなピンクのフリルの付いた服を選んで取り出す。


「バニーちゃん、これはどう?」

『これは可愛いの?』


 えっ、あーそうか。

 バニーちゃんはどんな服が女の子用なんて、わからないよね。


「うん、可愛い服だよ。バニーちゃんに似合うと思うんだけど、着てみる?」

『うん!』


 かなえはゴーグルを外してピンク色の服を、着させやすいように広げて頭を通す。

「次は前足をこの穴に入れてねー」


 前足を2か所の穴に通すと、お腹の所で留める。

「バニーちゃん、いいよー。どうかな?」


 バニーちゃんは鏡の前に行くと、前や横から身体をひねってジックリと見ている。

『うーん、ほんとだー! アハハッ。へんなのー』


「バニーちゃん、その服でいい? 他にもあるけど」

『うん、いいよ。今日はこれにする』


 えっ、もしかしてこれからも服を着るのかな?

 まあ、今は気にしないでおこう。


「バニーちゃん、私はもう行くけどいい?」

『まって、頭にも着けて』


 そうだった。 

 鏡の前のバニーちゃんにゴーグルを着けると、かなえは牧場へ移動して行く。



 牛舎にやって来ると、ウオッシュを順番に掛けて行く。

 ふと、気になったのでシロンに質問する。


「シロン、バニーちゃんは色は識別できるの?」

「青や緑はわかりますが、赤は良くわからないようです」


 そうなんだ。ならピンク色もわからないかもな。


「シロン、バニーちゃんのゴーグルに色が見えるようになる機能は付けられる?」


「出来ますがそれはお勧めしません。例えばかなえが急に紫外線が見えるようになったらどうでしょう?」


「えっ、紫外線って言われても……わからないけど、混乱する?」


「はい。ゴーグルで少し遠くまで見えるくらいならまだ負担は少ないですが、いきなり全ての色が見えるようになったら、体に影響があるでしょう」


 それもそうね。それでなくてもバニーちゃんの生活環境はここに来て一気に変わったからな……。


「わかった、シロン。動物達に必要以上に機能を付けない様に気を付けるわ」


 かなえは牛舎と、スミス夫妻の家の周辺にもウオッシュを掛けると、ジジさん達のいる、温泉へ向かう。


「シロン、ジジさん達はあのグレーの牛の隣の牛?」

「いいえ、違います。スロープの入口の右側の牛達です」


 あー、わかった。

 かなえはジジさん達の側に近寄って行くと、

「おはようございます」と、声を掛ける。


『カナカナ、おはよう。今日も見回りありがとうね』と、ババさん。

『今の所、何も問題は起きて居ないようだよ』と、ジジさん。


「そうですか。それは良かったです」


 そういいながら、温泉を見渡してみるが、どの牛も常連のようにゆったりと温泉を楽しんでいる。


「それではまた様子を見に来ますね」


 かなえは温泉と、下の流れる温泉にウオッシュを掛けてアニマルドームの砂浜に戻って来る。


 

 動物達の小屋に順番にウオッシュを掛けていると、


『あー。カナ、カナ』と、声がしてリトくんとピーちゃんがすぐ横の木の枝にとまる。


「あら、リトくん達どうしたの?」

『うーんとね、ねこ、カナカナ探してるよー』


「えっ、そうなの? どうして探しているかわかる?」

『えーとねー、頭に付けたいけど、出来ないんだってー』


『トラだよー、ちゃいろいネコ―』と、ピーちゃん。

 リトくんやピーちゃんは色の違いは良くわかるようだ。

 

「わかった、ありがとう。トラちゃんは今何処にいるの?」

『えーとねー、山だよー』

 

 かなえはリキさんの小屋までウオッシュを終えると、スクーターを取り出す。



「じゃー、トラちゃんの所へ連れて行ってくれる?」

『いいよー!』と、リトくんとピーちゃんは一気に舞い上がり、山に向かって行く。


「ちょっとー、待ってー」

 空中で自由自在のリトくん達を追いかけるのは大変だ。


 山の方へスクーターを飛ばせて行くと、リトくん達が戻って来てかなえを誘導し、1合目の温泉の入口にとまる。


『ほらー、トラ、ここだよー』

「ありがとう、リトくん、ピーちゃん」


 かなえは温泉の中に入って行くと、トラにシシー、マルにグレが揃って温泉の湯船に浸かっていた。


「みなさん、おはようございます。トラちゃんが困っているって聞いたんだけど」


『カナカナ! ぼくゴーグル自分で付けれないんだよー』


『そうなんだよ、私らも目が疲れたから外したんだが、一度外すと自分では難しそうだね』


『そうよ、もっと私達に簡単に付けられるようにしてくれない?』

『俺のもくれ。良く見えるって言うじゃないか』


 猫達はみんな自分の希望を、かなえに言ってくる。

 うーんどうしようかな……。

 

 後ろを振り返ると、様子を伺っているリトくんとピーちゃん。

「リトくん、ピーちゃん、ここはもう大丈夫だから好きな所に行っていいよ」


『うん、わかった。行こ―ピーちゃん』

『うん』

 2羽はあっという間に姿を消した。


「シロン、猫達の装着しやすいゴーグルってある?」

「はい、ゴーグルではありませんが、同じように見えるブレスレットがあります」


「えっ、ブレスレット? それってどんな機能が付いているの?」


「色々付けられますが、猫用に視力を3.0で見えるようにも出来ます。それにオンオフ機能と、時間設定も可能です」


 それくらいならいいかな……。


「そう、それならお願いできる? 時間は2時間以上オンにしていると、1時間切れるようにしてくれる?」

「はい、わかりました……どうぞ」


 かなえはポーチを開くと、半透明の幅の広い輪ゴムが4つ出て来た。

 へー、こんな簡単なのでいいんだ。


「皆さーん、違うのを用意しましたから、試してみてもらえますか?」

『うん、ぼくやってみたーい!』


 トラちゃんがすぐに近寄って来たので、トラちゃんと、みんなに向かって説明する。


「これは遠くまで見えるようになるブレスレットです。足に着けて使ってくっださい」


『えー、これで見えるようになるのー?』


「うん、そうよ。どっちの足に付ける?」

 かなえはトラちゃん希望の右足に、ブレスレットを着ける。


『えー、何も変わらないよー』と、トラちゃん。

「遠くを見たい時は、そのブレスレットをもう一つの足でこすってみて」


『うん……あー見えたー!』

 トラちゃんは使えるようになったようだ。


 かなえは他の3匹の猫達にもブレスレットを着けると、


『目が疲れて来たら、もう一度こすってオフにしてください。もし長時間使用すると、しばらく自動的にオフになりますよー』


『うん、わかったー!』

 トラちゃんは嬉しそうに外へ走って行った。


「どうですか、良く見えるようになりましたか?」

 かなえは他の猫達に聞くと、


『ああ、私のは大丈夫みたいだ』

『そうね、これなら簡単でいいわ』


 2匹の雌猫には好評のようだ。


「グレさんはどうですか?」

『……お? おお、そうだな。良く見えているよ』


 何だか変な反応だな。


「グレさん、この温泉の中では変化がわかりにくいので、外の景色も試してみてくださいね」


『ああ、わかった』

『ハハッ、グレのやつあんまりよく見えるもんだから、怖気づいてるんだよ』


『な、なんだ! 違うぞー!』

 どうやら当たりらしい。


「それでは、長時間使わない様に気を付けて下さいね」



 かなえは1合目の温泉にウオッシュを掛けると、上へ移動して行く。




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