135 メラニーさんとランチ
「メラニーさん、何か食べたいものはありますか?」
「うーん、そうね。どうしようかしら……かなえのお勧めがいいわ」
お勧めかー……メラニーさんにはどこがいいんだろう。
雰囲気がいいのは、テラスカフェだけど量が多くて美味しいのはオアシスカフェだな。飲茶は食べたばかりだしな……。
「あのー『テラスカフェ』って言う、人気のレストランがあるんですけれどどうですか?」
「いいわよー。そこにしましょう!」
メラニーさんは、知らないところへ食べに行くのが楽しそうだ。
「一旦、動物ギルドに移動します」
「ここに置いてある、動物ギルドの家具もあの、ジョーさんの家具なんですって?」
メラニーさんは動物ギルドにやって来ると、ジョーさんの作成した木の切り株型のカウンターや、テーブルなどを観察している。
メラニーさんも、家具職人のジョーさんの事は以前から知っていたようだ。
「はい、そうなんです」かなえはお気に入りの家具に、興味を持たれて嬉しくなる。
「そうそう、ここの鍵を返しておくわね」
朝、メラニーさんに貸した動物ギルドの鍵を返そうとするので。
「いいえ、それはメラニーさんに持っていて欲しいです。ジャンプミラーがありますから、今日のようにオクタゴンに行く時や、この周辺に来る時は便利ですよ。必要でしたらジョンさんの鍵もお渡ししますから言ってくださいね」
「そう。ありがとう。助かるわ」
「それでは行きましょうか?」
かなえはメラニーさんと一緒に動物ギルドから、公園を横切りテラスカフェに歩いて行く。
もう1階のテラス席には半分ぐらいお客さんでテーブルが埋まっている。
「まぁ、まだお昼前なのに……人気があるのねー」と、メラニーさんはお店を外から観察している。
「ここから入りますよー」
かなえはメラニーさんに声を掛けて、中に入って行く。
「ここは、テイクアウト専門のコーナーです。私はよくここでハンバーガーや、ピザを買うんですよ」
「まぁー、おいしそうね」
メラニーさんは売り物のお菓子や惣菜を、目に焼き付けるように観察している。
「ここで買った物を、あっちのカウンターやテーブルで食べる事も出来ます」
メラニーさんへ説明をすると、
「それではレストランの方へ行きましょう」と、奥へ入って行く。
奥のカウンターの、お洒落なユニフォームをピシッと着こなした細身の男の人に、2階のバルコニー席に案内される。
席はテラスの外側で公園の緑が広がっている。
「まぁー、パラソルが素敵ね」
大きなパラソルが付いたテーブルに、お皿やグラスがコーディネイトされて並んでいる。
席に着くとウエイターに飲み物を聞かれ、メラニーさんはレモンソーダ。かなえはピンクベリージュースを頼む。
「かなえ、どれが美味しいの?」メラニーさんは目をキラキラさせて聞いて来る。
メラニーさんは料理を作る事も食べる事も、本当に好きなんだな……。
「普段は下のテイクアウトばかりで、レストランに来たのは2回目なんですよ。前に来た時はランチセットにしました」
でもあの時は、パティさんとカイさんに偶然ここで会って一緒にランチしたんだ……。正直に言うとパティさんが強烈で、どんなものを食べたのかよく覚えていない。
しばらくメニューを真剣に見ていたメラニーさんは、
「私、これにするわ」と、ランチメニューから決めたようだ。
選んだのは、カボチャとトリフのポットパイ。それに、前菜、スープ、サラダに、デザートが付いて来る。
なので、かなえもランチメニューの中から、メインを季節の野菜とプロの実のチーズの包み焼きにした。
料理を待っている間、かなえはこの周辺に何があるかを説明する。
「この公園の中を向こうへ歩いて行くと、市場があるんですよ。その向かいには飲茶のレストラン、ラウンドカフェがあります」
「まぁ、そうなの? どちらも行ってみたいわ」
市場も新鮮な野菜や様々な食材を売っているので。メラニーさんは気に入ってくれるだろう。
それに、家具職人のジョーさんの所でのジョンさんの様子も報告する。
「まぁー ……ジョンなら何とかなるでしょう」
話していると、2人の料理が運ばれて来る。
「おいしそうね。いただきましょう」
今日は落ち付いて、料理を味わう事が出来る。
お互いに料理を味見したりしながら、ゆっくりとランチを楽しむ。
気が付くと、テラスの席は一杯になっている。
「おいしいわ。人気があるのもわかるわ」
「そうですね」
味も良く、お店の雰囲気も良くて、接客も洗練されている。
これで人気が出ないわけは無いな……。
メラニーさんが、気に入ってくれたようで良かった。
会計はどちらが払うかで少しもめたが、メラニーさんがご馳走してくれることになった。
今日の夕食からは美味しい料理を準備しなきゃな……。
メラニーさんは、仕立屋のフィーナさんの所へ洋服の注文に行きたいそうなので、お店の前まで案内する。
前にミーティングであった時に、フィーナさんが来ていた服を気に入ったそうだ。
「かなえ、楽しかったわ」
「こちらこそ、ご馳走さまでした。ここからでしたら、南門の温泉に近いですよ」
「そうだったわね。ありがとう」
メラニーさんはお店の中へ入って行く。
かなえは、ランチを食べ終え砂浜へ戻って行く。
さぁー、きれいにしちゃおう!
かなえは、アニマルドームの掃除がまだっだので、動物達の小屋から始める。
クイーンの小屋からリキさんの小屋まできれいにし、スクーターに乗り橋や牧草地とプロの実畑にもウオッシュを掛ける。
最近は猫達が広い範囲で活動しているようなので、観察しながらウオッシュを掛けて行く。
1合目の温泉に行くと、グレとシシーそれにもう一匹白黒の猫が温泉に浸かっていた。
「こんにちは、皆さん。お湯加減は如何ですか?」
『ああ、いいぞ』と、主のような態度のグレ。
『あんたは、いつも態度がデカすぎるんだよ』と、仲が悪そうなシシー。
『ここの温泉も良いわねー』と、温泉を楽しむ白黒の猫。
「こんにちは。あなたは初めてここに来たんですか?」
『ええ、さっき偶然ここを見つけたのよ』
「そうですか。もし何か気が付いたところがあれば教えてくださいね」
『ええ、ありがとう。私はみんなからマルって呼ばれているの。ほら、背中の模様が丸いでしょ?』
ああ、ほんとだ。模様の一つがきれいな丸い形をしている。
大人の女性って感じだな。
かなえは1合目にウオッシュを掛け、順番に頂上まできれいにして行く。
雲の上の温泉まで移動して来るが、誰も居ない。
ウオッシュを掛けると。シャワードームへジャンプして行く。
今日はジジさん達のドーム以外の3ヶ所でみんなが、元気に弾んでいる。
かなえは休憩場やドーム周辺にウオッシュを掛けて、猫の庭へ向かう。
猫の庭には、パッと見た所子供達は居ないようだ。
「シロン、みんなは何処にいるの?」
「子猫達はシャワードームの隣のキャットタワーで、パオちゃんと眠っています」
「そうなんだ……じゃー、バニーちゃんは?」
「橋を渡った牧草地で食事をしていたようですが、今は休んでいます」
へー、バニーちゃん向こうまで渡って行ったんだ。ゴーグルがあると活動的になれるのかな……。
「そういえば、昨夜ゴーグルしたまま行っちゃった、猫のトラちゃんは大丈夫そう?」
「今は外しているようですが、ちょっと疲れていますね。橋を渡った先の花畑にいます。
かなえは心配になったので、トラちゃんの様子を見に行く。
花畑までジャンプして来て、辺りを見回すと少し離れた木の根元にトラちゃんが横になっている。
「トラちゃん、具合は大丈夫? 長い間ゴーグル付けてたんじゃない?」
『アーッ! えーと、カマカマ?』
「惜しいけど違うわ。カナカナよ」
『カナカナかー……』
本当だ、あんまり元気が無さそうね。
トラちゃんは、ゴーグルを首まで下げて首輪の様にしている。
「トラちゃん、ゴーグルをずっと着けたままだと、目が疲れて頭が痛くなったりするのよ。あなた大丈夫?」
『うーん、ぼくちょっと疲れた。だって、遠くまで見えるから楽しいし』
「でも、目に負担が掛かるから、短い時間だけにしてね。出来なかったら返してもらうよ。わかった?」
『うん、わかったよ』
そのまま立ち去るのは不安だったので、トラちゃんを1合目の温泉に連れて行く。
温泉ではグレは眠っていたが、シシーと、マルちゃんは一緒に泡風呂に入っていた。
『おや、トラじゃないか。どうしたんだいグッタリして』と、シシー。
かなえはゴーグルが原因で具合が悪くなったと、簡単に説明する。
『へー、そんなに良く見えるのかい?』と、シシーもゴーグルを使ってみたそうだ。
かなえはトラちゃんにウオッシュを掛け、泡風呂に入れる。
「トラちゃん、ゴーグルは外すよ」
かなえは元気の無いトラちゃんからゴーグルを外して、シシーに見せる。
「試してみる? 短時間だったら大丈夫よ」
マルちゃんは、静かにかなえとシシーのやり取りを見ている。
『そうだね。あたしに着けてみてくれないかい?』
シシーは湯船から上がって来てかなえの側に寄って来る。
『すごくよく見えるから、ぶったまげるよー』と、お湯の効果で少し回復して来たトラちゃんが声を上げる。
『こら、トラ! ぶったまげるなんて下品な言葉を使うんじゃないよ』
『はぁーい……』
フフッ、トラちゃんはシシーには頭が上がらないのね。
かなえはシシーの頭にゴーグルを装着すると、
『あ? 壁の模様がいつもより良く見えるようだが、そこまで凄いのかね?』と、シシー。
「あっ、ここは視界が狭いからわかりにくいかも。外に出てみましょう」
かなえはシシーにウオッシュを掛けて乾かすと、外の広場に出て来る。
すると……。
『はぁー?! なんだいこれは。先の先まで見えるじゃないか!』
外に出てみると、シシーもゴーグルの効果に気が付いたようだ。
「良く見えますけど、目が疲れやすくなりますから、短い時間にしておいた方がいいですよ」
『ああ、わかってるよ。しばらく着けて、具合が悪くなる前に外すから』と、シシーは気に入ったようだ。
『まぁー、そうなの? それならあたしにも着けてくれない?』と、様子を見に来たマルちゃん。
かなえはビショビショなマルちゃんにもウオッシュ掛ける。
そして、猫用のゴーグルを取り出して装着する。
『わぁー、凄いわぁー! ここからプロの実の木が見える!』
かなえはもう一度「長時間ゴーグルを着けないように」と、猫達に注意をしてバニーちゃんの様子を見に行く。




