129 農場ドーム訪問
ララちゃんを、リビングのソファに寝かせて、引っ越し作業を始める。
「では、何処から始めましょうか?」
「そうねー。それなら寝室のベットからでもいいかしら?」
「はい、わかりました」
スミス夫妻と一緒に主寝室に入って行く。
「それでは、ここにある家具は一旦しまいますね」
かなえはベットを含めた、既に置いてあった家具をポーチの家具フォルダに片付ける。
「では、ベットはどの方向に置いたらいいですか?」
「そうだな……その窓の横がいいんじゃないか?」
「そうね」
かなえはスミス夫妻の希望通り、家具を動かしながら配置して行く。
「かなえ、ありがとう。居心地の良い寝室になったわ」
「そうだなー」
寝室は、スミス夫妻の家からの家具や、フォルダにあった家具を合わせて、落ち着いた雰囲気の寝室が出来上がった。
その後も雑貨や衣類を取り出して、住まいの方は荷物を出し終わったので、ジョンさんと作業場の方へ移動する。
「では、一旦この台に出しますねー」
かなえは道具や木材など全て取り出すと、重い物だけ棚にしまって行く。
「ありがとう。残りの細かいものは、自分でやるよ」と、ジョンさんは新しくて広い作業場が嬉しそうだ。
次に寝室で衣類をしまっているメラニーさんの所へ行く。
「メラニーさん、ジョンさんの所は終わりましたよ」
「そう? ありがとう。そうしたら向こうのキッチンもお願いできる?」
「はい、わかりました」
かなえはメラニーさんと、仕事部屋のキッチンに移動して来ると、台に牧場の家から持って来た物を並べて行く。
「メラニーさん、キッチングッズは全てここでいいんですか?」
「うーん、そうねー。隣の家のキッチンの方にも必要かしら?……いいわ、とりあえず全部出してもらえる? 後で考えるわ」
かなえは言われた通り、全て出し終えると大きな台が道具類やカゴ等で一杯になった。
「ありがとう、かなえ。後は私がやるから、ここは良いわ」
「メラニーさん。でもこのままでは後で大変ですから、そこの棚に置けるものは移動しておきましょうか?」
「うーん、そうね。それならそのカゴや容器はこっちにお願いできる?」
かなえはメラニーさんに言われた場所へ、次々と移動させて行く。
大きいものは移動出来たので、後はメラニーさんの使いやすいようにして行くだろう。
「ありがとう、かなえ。すっかり片付いちゃったわ。かなえがいてくれると作業があっという間ね」
物もジャンプで移動出来るので、引っ越しの時はとても便利だ。
母屋の方へ戻り、出来る所を手伝い荷物が大体片付いたので、一旦休憩にする。
ララちゃんはまだぐっすり眠っている。
リリちゃんと一緒に毎日教室や温泉にと、忙しい毎日をおくっているので、たまにはいいだろう……。
作業場にいるジョンさんを呼んで来ると、テラスでお茶をいただく。
芝生が敷き詰められ、フルーツの木が植わっている庭を眺めながらのんびりとする。
「ここが、これからは私達の家になるのねー」
「ああ、そうだな……」
重労働は無かったが、スミス夫妻は早朝から引っ越しの準備をしていたようで大分疲れているように見える。
「シロン、お願い」
ポーチを開けると、半透明な飴が2つ出て来た。注意書きには「寝不足引っ越しの疲れの緩和飴、シニア用」と、表示されている。
「はい、この飴をどうぞ美味しいですよ」
かなえは二人に飴を渡すと「まぁー、ありがとう」と、口に入れて舐め始める。
「おおっ、なんだか頭がスッキリして来たなー」
「ええ、肩のコリが無くなったみたい……」
良かった。効果があったみたい。
「あのーもう少ししたらお昼ですけど、どうしますか?」
「そうねー、朝の残り物があるから、簡単に済まそうかしら」
「それでは、みんなで一緒に食べませんか? 最近人気が出て来たお勧めの場所があるんです」
「えっ、どこかへ行くの? でも私はこんな格好だし……」
「そのままで大丈夫です。ドームシティーではありません。近くの農家の人も行くような所です」
「そうかい、それなら連れて行ってもらおう」
「うーん、そうね。気分転換になるわね」
かなえはみんなと一緒に農場ドームのレストランへ、行きたくなったのだ。
あそこなら美味しいし気取っていなくて、メラニーさん達も喜ぶだろう。
「それでは先に用事を済ませて来ますので、1時間後に出発でいいですか?」
「ええ、準備しておくわ」
かなえはジミーさんの仕事場の前に移動して来ると、中にいるジミーさんに声を掛ける。
「ジミーさーん」
「やぁ、かなえさん。もうお昼かい?」
「いいえ……」
かなえはスミス夫妻の引っ越しが大体終わったので、農場ドームのレストランに行く事にしたと説明する。
「そうかい。それなら私も連れて行ってもらおうか。1時間後だね」
かなえはジミーさんに知らせると、掃除をしに動物達の小屋へ向かう。
放牧地や、プロの実畑にもウオッシュを掛けると、山の温泉に移動して行く。
1合目の温泉には、大柄な猫のグレさんが湯船に浸かっていた。
「グレさん、こんにちは。湯加減はどうですか?」
『ああ、カナカナか。浅くなって入りやすいよ。お湯は丁度いい』
「そうですか。何処か気が付いたところがあれば、いつでも言ってくださいね」
かなえはウオッシュを掛けると、移動して行く。山の頂上まで終わらすと、雲の上の温泉までジャンプして行く。
「あっ、マリーと、リキさん。ここに居たんだ」
『かなえー。私達、昨夜ここで寝ちゃったのよー』
「えーっ、そうだったの?」
そういえばキングス達を送って行ったけど、マリー達の事は考えて居なかった。
「それなら、昨夜からずっとここに居るの?」
『いや、それだとオヤジが心配するからな。朝顔を出しに行って来たよ』
『そうなの。さっきここへ戻って来たばかりよ』
「そう。それならいいけど。これからはマリーとリキさんは、夕方森のドームへ送った方がいいの?」
『いや、日に何度か顔を出せば心配はしないだろう』
「でも、たまには向こうでも長めに過ごしてね」
『ああ、わかったよ』
かなえはウオッシュを温泉と休憩場に掛けると、シャワードームへ移動する。
今日もキングス達と、ルークス達がドームの中で弾んでいる。
みんな飽きずに続いてるなぁー。
相当このシャワードームが気に入っているようだ。
でもそろそろ新しい物も考えた方がいいのかな……。
かなえは軽くウオッシュを掛けると、パオちゃん達の好きな砂浜に移動して行く。
「あらっ?」 違った。ここには居なかった。
「シロン、パオちゃん達は何処にいるの?」
今は、子猫のドームのキャットタワーで、眠っています。
子猫のドームへ移動して行くと、キャットタワーの台の一番下の段に、パオちゃんと子猫達が積み重なるようになって眠っていた。
パオちゃんは身体が頑丈そうだから、子猫達に上に乗られても問題無さそうだ。
そして、1段高い台にバニーちゃん、もう一つ上の段に黒猫のクーちゃんが眠っていた。
でもパオちゃんと子猫達の台は、窮屈そうだなぁー。
かなえはキャットタワーのすぐ隣に、新しく広めの台を設置する。
この大きさなら、子猫達とパオちゃんが一緒に寝ても十分な広さがある。
かなえは眠っているパオちゃんと子猫達を、そっとジャンプで移動させる。
みんなグッスリ眠っていて目を覚まさない。
シャワードーム周辺にもウオッシュを掛けると、スミス夫妻の所へ歩いて行く。
「お待たせしましたー」
スミス夫妻の庭ではみんな揃ってかなえを待っていた。
ララちゃんは起こされたのか、眠そうにしながら椅子に坐っている。
「いいのよー。お仕事ごくろうさまー」と、ララちゃんの隣に座っているメラニーさん。
ジミーさんは、ジョンさんと仕事の話をしていたようだ。
「どこかに行くの?」と、ララちゃん。
「そうよ。みんなでランチを食べに行きましょう」
大人数なので、前に使用した2頭立ての馬車を庭に用意する。
「それでは馬車に乗ってくださーい」
「はーい!」ララちゃんは嬉しそうに馬車に走って行く。
本物そっくりな立体映像の馬が、鼻を鳴らしたり足踏みをしている。
大人達とララちゃんが馬車に乗り込んだのを確認すると、かなえも御者台に乗る。
「それでは出発しまーす」
かなえは馬車を農場ドームの人気の無い道へ移動させ、そのまま走らせて行く。
しばらく行くと、農園レストランの倉庫の様な建物が見えて来た。
かなえは速度を落として、駐車場に馬車を停める。
「はーい、お待たせしましたー。着きましたよ」
「えーっ、もう着いたの?」
ララちゃんはちょっと残念そうだ。
「そうよ。ララちゃんも降りてね」
ララちゃんはメラニーさんに手伝ってもらい、馬車から降りて来る。
「ここは農場ドームです。ミルクドームからは馬車で2時間ぐらい離れていて、森のドームの隣に位置しています」
スミス夫妻は知っているようで頷いている。
でもこのレストランは出来て間もないので、知らなかったそうだ。
「では、中に入りましょうか?」
かなえはみんなを連れてお店の中に入って行く。
「このお店の入口は、このドームで採れた野菜やフルーツが売られています」
「まぁー、おいしそうな野菜が沢山あるのね」
メラニーさんの目が輝いている。
「随分広いんだなぁー」と、ジョンさん。
「ここは、倉庫を改造して造られたので、簡単な造りですけど、広さだけはあるんですよ」と、近くに居たお店の人。
「天井が随分高いのねー」と、メラニーさんが言うと、
「はい、元は2階建てだったんですが、天井を外して一つの空間にしたんです」と、教えてくれる。
ララちゃんが退屈し始めたので、
「そろそろ行きましょうか」と、奥のレストランの方へ歩いて行く。




