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アニマルレスキュー  作者: コトリコトリ
123/229

123 農園レストラン

 

 かなえがジャンプして来たのは、農園レストランから少し離れた木の影だ。

 

 シロンによると、この農園レストランがある農場ドームは、ミルクドームからは馬車で2時間、森のドームの隣に位置している。


 広さはドームシティーより一回り大きく、森のドームと同じサイズだそうだ。

 その広い土地で、様々な植物が栽培されている。


 採れた野菜や果物は、周辺のドームへ運ばれて行く。

 その農場ドームの食材を使った農園レストランが最近出来て、なかなか人気があるようだ。


 もうお昼なので、駐車場には何台か馬車が停まっている。

 

 

 レストランって、あそこよね……。

 パッと見は、倉庫のような建物だが、人が入って行くのが見える。


 近寄って行くと、看板に「農園レストラン」と表示されている。

 ああ、ここでいいんだな。


 建物の中に入って行くと、入口は野菜や果物が籠に綺麗に並んでいて、食材も販売しているようだ。


 中は3階ぐらいの高さまでの吹き抜けになっていて、外からの光が降り注いでいる。


「すみません、ここでランチが食べられるんですか?」

 かなえは近くに居た、カウンターの女の人に聞くと、


「はい、ランチはこの奥で好きな物をトレイに乗せて注文してください」と、言われる。


 かなえは言われた通り、野菜売り場から奥へ入って行くと、広いフードコートの様な所があった。

 

 トレイが置いてあり、幾つもの料理が並んでいる。

 なるほどー。セルフサービスなのね。


 まずかなえが来たのは、サラダが山盛りになっている屋台だ。数種類の葉っぱと、トッピングが並んでいる。

 

 かなえは中ぐらいの器を選び、野菜を盛り付けて行く。

 コーンやトマト、オリーブ、アボカド、ブロッコリなど、色とりどりで美味しそう。


 隣に行くと、小さな器に盛り付けられた、惣菜が幾つも並んでいる。

 うーん、どうしよう。どれも美味しそうで迷ってしまう。


 かなえが選んだのは焼き豆腐のバジルソースだ。

 他にも選びたかったが、まだ料理があるようなので止めておく。


 その隣はスープが何種類も並んでいる。

 

 うーん、どれがいいかな。

 

 かなえの目に留まったのは、カボチャ色のスープ。

 中に入っているのは玉ねぎ、にんじん、リーク、ジャガイモ、カブだそう。

 

 かなえは、小さな器を選び、野菜スープを注ぐ。

 ああー、いい香り。何か香辛料が入っているんだろうな。


 さー、次はお待ちかねのメインだ。

 うーん、何にしよう……。

 

 ここではいくつか料理も並んでいるが、メニューだけの物もある。

 奥に人がいるので、注文できるのだろう。


 これは食べたことが無いなー。

 

 かなえが興味を持ったのはアーティチョークとポートベラマッシュルームのパスタだ。


 うーん、試して見たいな。

 かなえは声を掛けると、中から白いコックコートを着た人が出て来る。


「はい、いらっしゃいませ。お決まりですか?」と、30前後の男の人だ。


「あのー、このアーティチョークとポートベラマッシュルームのパスタを頼みたいんですが」


「はい、どれも採れたてで新鮮な野菜を使っていますから美味しいですよ」と、優しそうな笑顔で言われる。


「このチケットを一緒に持って行ってください」


 かなえはチケットをトレイに乗せ、隣のデザートセクションに移動する。


 うーん、どうしよう。デザートも美味しそうだけど、きっと食べきれないなぁー。

 かなえは後で、お土産に買う事にして飲み物を選ぶ。


 飲み物はレモングラスティーとザクロジュースに決め支払いをする。


「はい、では隣でポットにお湯を注いでください」

 かなえは支払いを済まし、言われた通りお湯を注ぐと座る場所を探す。



 この建物の中や外にも沢山のテーブルが置いてあったが、かなえは重くなったトレイを持つのが辛くなって来た。なので、すぐ外に出た所の切り株の椅子に腰を掛ける。


「あー、何だかのんびりしていていいなぁー」


 目の前には野菜畑が広がっている。

 ここで採った野菜を料理してくれるなら新鮮だな。


 かなえは辺りの景色を楽しみながら、食事を始める。

 近くのテーブルでは、可愛い女の子が家族と一緒に食事をしている。

 

 今度はみんなも連れて来たいなぁー。

 


 食べていると、先ほどのコックさんがパスタを運んで来た。


「はーい、お待たせしました。コショウはかけますか?」

「えっ? はい、お願いします」


 するとコックさんがスルスルとコショウの容器を回してパスタの上に振りかけてくれる。

「では、ごゆっくり」


 うーん、いい香り―。


 出来立てのパスタが湯気を立てている。

 かなえは迷わず、パスタを食べ始める。


「あー、美味しいなぁー」

 黒コショウのピリッとした感じがクリームソースに合う。


 

 どの料理も野菜のうまみが際立っていて、とても美味しかった。

 食べ終わると、少し近くを見て回る事にする。



 かなえは食べ終わったトレイを片付け、庭から外へ出て行く。

 回って行くと、建物の入り口に戻って来た。


 

 さて、何処へ行けばいいんだろう。


「シロン、ここは他に見る所がある?」


「はい、この道を右に行くと幾つかお店があります。ハーブティーの店、パン工房、草木染の店、かご細工の店などが人気の様です」


「そうなのー? 楽しそう!」

 かなえはお店のある方角へ歩いて行く。



 始めに見えて来たのは小さな平屋の一軒家。

 広い庭に、さまざまな花が咲き、周りにはフルーツの木が植わっている。


 家の中にはドライフラワーがいくつも吊り下げられているようだ。

 入口には「ハーブの店」と表示されている。 

 

 ふーん、面白そうだな……。

 庭を通ってお店の中に入って行くと、強い香りで頭がクラクラして来る。


「いらっしゃい、可愛いお嬢さん」と、白髪の穏やかそうなお婆さんが迎えてくれる。

「こんにちは。ここは色々な香りがするんですね」


「ええ、そうなの。始めて来ると驚かれるわね。私はもう慣れたけど」

「ここは、ハーブティーのお店なんですか?」


「そうですよ。ハーブティーや、香りを楽しむポプリや、エッセンスもありますよ」


 そのお婆さんによると、植物を乾燥させ香りや味を楽しめるハーブが置いてあるそうで、ここにあるものは全てお婆さんの手作りだそうだ。


「えーと、ハーブティーが欲しいんですが、何かお勧めはありますが?」

「そうね、あなたになら、これと、これに……」


 お婆さんはかごに入った葉を少しづつ容器に移し、かなえ用に選んでくれるようだ。


「はい、出来ました。このハーブティーはあなたにピッタリだと思うわ」

 お婆さんがブレンドしてくれたのは、ストロベリーやラベンダーにアップルなど10種類が入ったハーブだ。


「あのー、ピッタリってわかるんですか?」

「ええ、なんとなく。その人を顔色を見るとね」

 

 えーっ、それってどういう事?


「それで、これはどんな効果があるんですか?」


「そうねー、あなたは若いけど、ちょっと疲れているように見えたの。だからリラックス出来るハーブにしたわ……夕食の後に飲むのがお勧めね」


 えー、なんと、そんなことがわかるなんて!

「早速今晩、試して見ます」


 他にも面白そうな物が並んでいたが、気分的に満足したので、今日はこのブレンドのハーブを購入し、お店を出る。


 はぁー、驚いた。その人に合ったハーブティーをブレンド出来るなんて、凄いなぁー。

 メラニーさんも興味を持ってくれそうだな。


 しばらく歩いていると、香ばしい匂いがして来た。

 ああー、この美味しそうな匂いはあそこからだな……。

 


 次のお店はパン屋さんだ。

 同じく平屋の小さな一軒家の外の看板には「農場パン」と、表示されている。

 

 お店の前に停まっている荷馬車には、小さな馬が……違うロバかな?

 かなえは前に行き、ロバを見に行くと、


「あ、あなたはあの時のー!」

 

 かなえがドームシティーに初めてやって来て、南門入口のに並んでいる時にいたロバだ。

 その後に、ドームシティーの市場でも再会したっけ。


『……何? 言葉がわかるの?』と、言われる。

「えっ、あなた、私の事覚えてない? ほら、足の爪を怪我していたじゃない?」


『……ああ、あんた、もしかしたら、兄ちゃんが言ってた人でしょ?』

「兄ちゃんって、あー違ったんだ……あなたはあのロバの弟なの?」


『うん、そうだよー。兄ちゃんが言ってたよ。足怪我したけど助けてもらったって


「フフッ、そうよ。まさか弟だったなんて。あなた達よく似てるのねー……ところで、あなたは何か困っていることは無いの?」


『ボク? うーん、ぼくは平気だよ。でもおじさんが最近元気ないんだよ』

「おじさんって、あなたと一緒に来た人?」


『うん、そうだよ。今日は麦の配達だから、おじさんもうすぐ戻って来るよ』


 かなえは暫らく、ロバの弟くんと話していると、中から農家の人らしき男の人が出て来た。

 

 あっ、あの人だ。

「こんにちは、お久しぶりです」


「……あっ、むすめさん。また会ったね。こんな遠くまでよく来たね―」

「はい、そこのレストランの評判を聞いて来たんです」


「そうかい……」

 

 そうだな。このおじさん、前よりも元気が無さそうだ。


「あのー、何処か体の調子が悪いんですか?」

「えっ? あー、職業病だよ。いつも畑仕事をしているから腰がね……」

「シロンお願い」

 

 ポーチに入っていたのは、小さな飴が沢山詰まった袋だ。注意書きには「神経痛腰痛緩和飴、農家の人用、1日1回服用」と、表示されている。


「あのーこれ、舐めてみて下さい」

 かなえは袋から一粒渡すと、


「えっ、飴かい。ありがとう」と、おじさんは口の中に入れる。

「おっ? うーん……なんだか腰の辺りがポカポカして来たな」

 

 おじさんは不思議そうに首を傾げている。


「あのー、この飴は神経痛などに聞くと思います。辛い時に舐めてみて下さい。1日1回までにしてくださいね」

 

 かなえはそう言いながら、飴の入った袋をおじさんに渡す。


「えっ? こんなに沢山いいのかい?」

「はい、いいですよ、どうぞ」


「今日は野菜も積んでいないし、何もお礼出来る物が無いな……」と、おじさんは困っている。


「気にしないでください。私は普段は動物の為に働いていますし、お給料ももらっています。たまに人用の飴をあげることもあるので、気にしないでください」


「うーん、そうかい? ありがとよ。ドームシティーの市場においで。週末はいつもいるから」


「おじさんは、元気そうに荷馬車に乗って帰って行った」


 荷馬車を見送っていると、

「かなえ、そろそろバニーちゃんを迎えに行ってください」と、シロンに言われる。


「あっ、そうね!」

 

 かなえは急いで西門の温泉へジャンプして行く。



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