120 流れる温泉
かなえはアニマルドームに戻って来ると、動物達の小屋の掃除を始める。
クイーンの小屋からリキさんの小屋にウオッシュを掛けると、牧草地とプロの実の木の周辺もきれいにする。
動物達が増えて来たので、プロの実の木をもう少し増やし、猫達用のプロの実も植えプロの実畑にする。
次に山の一合目から頂上までウオッシュを掛け、雲の上の温泉まできれいにし、シャワードームへ向かう。
シャワードームは、ジジさん達以外の3か所で動物達が楽しそうに飛び跳ねていた。
マリーと、リキさんも互いがぶつからないようにタイミングよく跳んでいる。
かなえは気になる所にだけ軽くウオッシュをかけ、ジミーさんの庭へ向かう。
テーブルの上にウオッシュを掛け、ランチの準備をしているとジミーさんが仕事場から出て来た。
今日のランチは、ジミーさんはパスタが食べたいそうなので、ポテトとプロの実ハム入りのクリームパスタ、かなえはその代わりにアボカドバーガーとオレンジポテトフライにした。
付け合わせはサラダにトマトスープ。デザートはパパイヤのレモンソース。
飲み物はかなえはアイスアップルティー、ジミーさんにはアイスカフェラテにした。
食べながら昨日ジミーさんか、看板屋のアナンさんの所へ行った時の話を聞く。
「良い話が出来たよ。アナンさんもいろいろアイディアを出してくれてね」
ジミーさんによると、アナンさんと仕立屋のフィーナさん、印刷職人のジョディ―さん3人は時々会って話を勧めているそうだ。
ジミーさんは後でメラニーさんの家へ行き、今度のミーティングにはメラニーさんも来てくれるように誘うそうだ。
ジミーさん、楽しそうで良かった……。
かなえは牧場のチューブ型の温泉の事を簡単にジミーさんに話し、後でメラニーさん達にも報告に行くと伝えた。
食事が終わると、かなえはバニーちゃんの様子を見に行く事にした。
「シロン、バニーちゃんはどうしてる?」
「外へは行かずに、温泉にいるようです」
それは良く無いなぁー。せっかくだんだんスリムになって来たのに、このままではまた元の体形に戻ってしまう。
かなえは猫の温泉へ移動して来ると、中の様子を覗いてみる。
あーっ、いたいた。バニーちゃんは休憩場でゴロゴロしている。
かなえは水着に着替えてウオッシュを掛けてから、ジャンプしてバニーちゃんの所へ行くと、話しかける。
「バニーちゃん、調子はどう?」
『あーっ、カナカナ……』
「子猫達と遊ばないの?」
『うん、だってあの子達、砂浜でかけっこばかりしてるんだもの』
そうか……やっぱり一緒には遊べないかな。
「それなら私と一緒に牧場に行く?」
『えーっ、どうしようかな―』
「さっき面白い物を造ったからバニーちゃんに、一番に見せてあげようと思ったんだけど……」
『えっ、面白い物ってなーに?』
フフッ、バニーちゃん、ちょっと興味があるみたい。
「一緒に来たらわかるよ。どうする?」
『うーん、それなら行ってみようかな』
「いいよ。決まりね」
かなえはバニーちゃんを持ち上げて抱っこすると、牧場へ移動して行く。
『面白いのって何?』
牧場に来たがパッと見は、いつもと同じ風景が広がっている。
かなえは牛舎から直ぐの、チューブの温泉が外から見える所まで歩いて行き、シールドを解除する。
「ほら、下を見て。水が流れているでしょ?」
チューブの上の部分が地面から少し出て居る所に、バニーちゃんを降ろす。
『えーっ、何ここー。下に川が流れてるの?』
「うん、そんな感じよ。でもお水じゃなくてお湯だから温かいのよ」
『ふーん、面白いの?』
そうか、見ているだけでは良さがわからないよなー。
そうだ!
「バニーちゃん、それなら私と中に入ってみようか? 楽しいよ!」
かなえは牛達に見せる前に、バニーちゃんとこのチューブの温泉を、試すのも悪くないと思い出した。
目の前の、チューブの入口になっているトンネルシャワーへ、バニーちゃんを連れて行く。
「ちょっと待ってねー」
前に動物達と使用した、浮き輪をバニーちゃんとかなえの分を取り出す。
「バニーちゃん、これを背中に付けると沈まないから付けてあげるね」
かなえはバニーちゃんには動物用の背中に取り付けるタイプの浮き輪を、かなえは人間用のドーナツ型の浮き輪を装着する。
『えーっ、怖くない?』
「うん、大丈夫よ。このまま入ってみましょ?」
かなえは不安がるバニーちゃんと一緒に緩やかに下がって行くトンネルシャワーに入って行く。
すると全方向からシャワーが流れて来る。
『ワァー、キャー』
トンネルシャワーの勢いは牛用なのでかなえとバニーちゃんには少し強すぎた。
「大丈夫よー、もうこの先はシャワーは降って来ないから」
バニーちゃんと一緒に一歩づつ前に進み、チューブの温泉の中に入って行く。
中は十分に明るく広いので、気持ちの良い空間になっている。
「それじゃぁー、バニーちゃん行くよー」
「……なんか違うな」
水深1メートルなのでかなえには浅すぎて、立ったままの姿勢では浮かない。
かなえはバニーちゃんが流されない様に支えながら、なんとか浮き輪の上に座る。
するとお湯の流れに押されてどんどん進みだした。
『ワァー、流れてくー!』
バニーちゃんはお湯の流れに身を任すしかないので、怖い様だ。
「わぁー、バニーちゃん大丈夫よ。このままじっとしてればいいのよ」
時々天井から外の様子が見えて変化があっていい。
バニーちゃんも少しづつ慣れて来たようで、周りの様子を見る余裕が出来てきたようだ。
しばらくすると牛の温泉のすぐ側に差し掛かる。
流れに身を任せながら、天井から外の様子を見ると、外からこのチューブの温泉の中を覗いている牛達がいた。
フフッ『今度は何だろう』って顔をしていたなー。
バニーちゃんは段々慣れて、楽しくなって来たようだ。
でもこのままただ浮かんでいるだけでは運動にはならないなー。
それに水深1メートルでは牛達には浅そうだ。
かなえは実際このチューブの流れる温泉を試してみて、気づいたところを微調整する事にする。
上手く行ったら、猫達用の流れる温泉も造ってもいいな……。
1周したので、そろそろ出ようと浮き輪から降りて、バニーちゃんを連れ出口の温風シャワーに向かう。
浮き輪を外し、体を乾かして地上に登って来る。
「はぁー、中々良かったな。バニーちゃんはどうだった?」
『うーん、始めは怖かったけど、面白かったかな?』
うーん、そうか。まあまあってとこかな……。
『でも、足がつかないと怖いよー』
「そうね、ありがとう。参考にするね」
かなえはもう少し流れる温泉に手を加えることにしたので、バニーちゃんには牧草を食べていてもらう。
まず最初に1メートルから20センチ高くして、水深1メートル20センチにする。
次に、流れる温泉の両端に歩道を作り、歩いたり休んだり出来るようにする。
そして何処が出入り口かを知らせる標識を取り付ける。
牛舎の側は建物の絵、温泉の側の出入り口は、牛が温泉に浸かっている絵にしたので、牛達にもわかるだろう。
最後に、歩道を幅広く付けて崩れた所をきれいに治す。
後は牛達に実際入ってもらって確かめないとな……。
バニーちゃんはまだ牧草を食べたいと言うので、かなえ一人で牛の温泉に移動して行く。
「シロン、ジジさんは温泉にいるのかな?」
かなえは外から覗いてみるが、やはりどの牛がジジさんか見分けがつかない。
「はい、今休憩場でババさんと並んでいるのがジジさんです」
そうか……あの牛達だろうな。
かなえはウオッシュを掛けてから、休憩場に行きジジさんババさんらしき2頭に話しかける。
「ジジさん、ババさん、ちょっと試してもらいたいんですけどー」
『えっ、何?』
あら? 違ったみたい。
かなえが声を掛けた牛は、身体の大きさや色はそっくりだったが、まだ若い牛だった。
『カナカナ、私達に用があったんじゃないの?』
声がした方を見ると、ババさんとその横にジジさんがいた。
「あー、ババさん。沢山いて間違えちゃいましたー」
『まぁー、そうかしら? そんなに似てるかしらね……』
なるほど……きっとババさん達にとっては同じ牛どうしで、ちゃんと区別が付くんだろうな。
『それで何かあったのかい?』と、ジジさん。
かなえはジジさんとババさんに出来上がったばかりの、流れる温泉の事を説明し、試して欲しいと頼むと、
『まぁー、また何か違うものが出来たのね。いいわ、行きましょう』とババさんは積極的だ。
『ああ、そうだな』と、ジジさんも興味深そうにしているので、かなえは外にジャンプして2頭を連れて来る。
そして、どんなものを造ったのか簡単に説明する。
「それで、何ヶ所か出入り口を造ったんですが、ここが温泉に一番近い入口です」
『まぁー、そうなの? とにかく入ってみましょう、あなた』
ババさんはジジさんより先に流れる温泉に続くトンネルシャワーに入って行く。
そして、その後をジジさんも入って行く。
かなえはウオッシュを掛けてからジャンプで中に入ると、ジジさんババさんが横の歩道から地下を流れる温泉の様子を眺めていた。
『まぁー、凄いわー。地面の下にこんな大きな川が流れてるなんて!』
『そうだなぁー。これは驚いた……』
かなえは牛達の運動不足の解消のために、この流れる温泉を造った事をジジさん達に説明する。
『どうだろうな。この温泉の中を歩くのは……』
「はい、なのでジジさん達に試してもらいたいんです」
『うーん、そうか。わかった。行くぞ』
ジジさんはスロープからゆっくりとお湯の中に入って行く。
ババさんもその後に続く。
『わぁー、流れが結構強いのねー』
『そうだな……」
かなえはスクーターを取り出し、ジジさん達のすぐ近くを走らせて行く。




